魔法少女世界にいる文化部どもが悪ふざけした結果、スーパーヒーローが爆誕してしまった   作:鳩胸な鴨

25 / 43
正ヒロインかな?


帰宅部「一緒にクレープ食ったら友だちって思ってんだよ」

「………まぁ、当然の結果だろうな」

 

深々と眼前のアスファルトに突き刺さった怪物の首を前に、リヴェリアはため息を吐く。

この怪物が猛威を振るったのも、ものの数秒だった。

駆けつけた魔法少女たちも困惑しているのか、あわあわとこちらへと向かってくるのが見える。

と。戦闘を終えた帰宅部が首のそばに降り立ち、リヴェリアに頭を下げた。

 

「すまんすまん。そっち首飛んだわ。

おーおー…。こーりゃ直すの大変そーだわ。

やっぱビームブッパのが良かったかねぇ。ビル巻き込みそうだったからやめたけど」

「…一応は高ランクの魔獣だったのだが」

「アレって、流行りの漫画みたくランク付けされてんの?」

「言ってもいいが…、総じて私より弱い。

お前からすれば区別つかないと思うぞ」

「………それに苦戦してる魔法少女って、もしかしなくてもハンパなく弱いだろ」

 

仮にも人類の希望だと言われている存在に対し、容赦ない一言である。

リヴェリアも擁護する気はないようで、深々と頷いた。

 

「マナリアの文明が少なからず残っているこちらと、マナリアの血筋の搾りかす。

どちらが上か、語るまでもないだろう?」

「言う割には、お前らの国、大したことなくね?クレープもないんだし」

 

帰宅部の鋭い一言に、びしっ、とリヴェリアが固まる。

と。彼女は途端に視線を右往左往させ、おずおずと口を開いた。

 

「…………し、仕方ないだろ…。

食文化も娯楽文化も、殆ど発展してないんだから…。

と、というか!文化についてお前らが言えたことか!?」

「エロ絵師が歴史の教科書載るくらいのガチ変態国家だからな。

ぐうの音も出ん正論だわ」

「認めるなっ!!」

 

リヴェリアがそう叫んでいるうちにも、魔法少女らがこちらに近づいてくる。

帰宅部は流し目でそちらを見ると、リヴェリアの体を抱え上げた。

 

「って、ンな雑談してる場合じゃねーわ。逃げなきゃいけねーんだった」

「…魔法少女たちとも敵対してるのか?」

「なんつーか、見つかると面倒なんだよ。

こっからは口閉じてろよ。舌噛むぞ」

 

帰宅部は言うと、その場から飛び立つ。

その体に襲いかかる風を前に、リヴェリアは声にならない叫びをあげた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「…っと。ここまで来れば、問題ねーだろ」

 

少し離れた、山を少しばかり拓いて設立された公園にて。

とっ、と着地すると共に、武装を解除する帰宅部。

帰宅部の首に掴まっていたリヴェリアは、乱れた髪をそのままに、彼を睨め付けた。

 

「ぜぇ…、ぜぇ…!し、死ぬ…かと…!

もう、少し…!ゆっくり…!飛べ…!!」

「え?お前、絶叫マシンとか無理な系?」

「ぜ、絶叫マシンが何かは…わからん…が…!

絶対に、碌でも…ないっ…、モノ、なのは…、わかった…!」

 

腰が抜けてしまったのか、帰宅部がその場におろしても、抱擁を止めないリヴェリア。

童貞なら理性が軒並み吹き飛んでしまいそうなシチュエーションだが、悲しきかな。

倫理観が死んでいるとはいえ、絶世の美少女…演劇部のマイクロビキニ姿を見て全力でバカにするような童貞は、その程度で動じなかった。

 

「あんま男にもたれかかるな。

そういうの、惚れた男にしかしねーもんなんじゃねーの?」

「…はぁっ!?だっ、誰がお前のようなイカれポンチに!?」

「心外」

 

異常者の自覚はあるが、イカれポンチとまで言われる筋合いはない。

イカれポンチというのは、社会的な迷惑を考慮せずに好き勝手やる、倫理観がすっぽ抜けた天才のことを言うのだ。

そんな謎の線引きを脳内で展開しながら、帰宅部はふと、視線を横に向ける。

 

「あ、もうンな時間か。

ほら、腰抜かしてる場合じゃねーぞ。こっち見てみろ」

「…?」

 

首を傾げ、帰宅部の視線に沿うように、顔を横に向けるリヴェリア。

と。広がる景色を前に、呼吸を忘れた。

一言で例えるならば、空が燃えていた。

空に鎮座していた火の玉が、景色の向こうへと沈んでいる。

全体を見渡すと、空の一部が吸い込まれそうな黒に飲み込まれている。

故郷の空では、絶対に見ることのできない光景。

リヴェリアは思い出したように、深く、深く、息を吐いた。

 

「綺麗…」

 

幻想的としか言えないその光景を前に、リヴェリアが見入っていると。

帰宅部が「こっち見てみろ」と、リヴェリアを促した。

リヴェリアが帰宅部の指に沿って、視線を燃える空から、暗く染まった空へと逸らす。

と。その黒に、負けるものか、と言わんばかりに光を放つ点が見えた。

 

「あれ、1番星な。夕方に真っ先に見える星なんだけどよ…。

もう1時間もすれば、もっと星が見え…、あーっと、なんか泣くようなことしたか?」

「………え?」

 

帰宅部が心配そうに、リヴェリアの顔を覗き込む。

リヴェリアは帰宅部の言葉を確かめるように、目元に指を這わせる。

濡れている。そう感じると共に、初めて自分が涙を流していることに気づいた。

 

「……っ、すまない…。醜いものを…」

「醜くはねーけど…。

その、大丈夫か?やっぱ昨日殴ったのが効いてるとかねーよな…?」

「……何故、私の心配をする?」

 

「アイツらが治療したから大丈夫なはずだけど」と心配する帰宅部に、リヴェリアが首を傾げる。

曲がりなりにも、リヴェリアは人類の敵だ。

その自覚があるからこそ、リヴェリアは帰宅部の心配を理解できなかった。

それに対し、帰宅部は心底不思議と言わんばかりに、呆けた顔を見せた。

 

「友だちを心配するのに、理由いるかよ。

一緒にクレープ食ったら友だちって思ってんだよ、こちとら」

「…正気か、お前?

私は、お前たちの敵なんだぞ…?」

「そういうなら、解除した時に首折れば良かったろ。お前なら出来るだろ?」

「っ…」

 

帰宅部の指摘に、言葉が詰まるリヴェリア。

無意識ながら、リヴェリアもまた、帰宅部を友人として認めていたのだろう。

自分はどうしてしまったのだろうか。

今の今まで築き上げてきた全てを崩すような真似を、どうして肯定できるのだろうか。

そんな葛藤に苛まれるリヴェリアを見て、何かを悟ったのだろう。

帰宅部はしゃがみ込み、ぽん、と、彼女の背中を叩いた。

 

「…今までよく頑張ったな。えらいぞ」

「………っ」

 

何がわかる、と叫ぶつもりだった。

だが、溢れた涙がそれを許さなかった。

リヴェリアは必死になって、次から次へと流れる涙を袖で拭う。

帰宅部は何も言わず、彼女の隣で、その背をさすった。




帰宅部…今までこんな感じで文化部共を落としてきた。尚、人垂らし度合いで言えば兄弟の中で一番下。帰るかどうかを聞こうと思ったが、泣き始めちゃったのでそれどころじゃなかった。

リヴェリア…お前、これから人類の敵やれる?故郷を裏切るつもりはないけど、もう戦えるメンタルじゃない。友達は帰宅部で二人目。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。