魔法少女世界にいる文化部どもが悪ふざけした結果、スーパーヒーローが爆誕してしまった   作:鳩胸な鴨

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A:中身がクソガキだから。


オカ研「性知識はあるくせに、なんで恋愛には疎いんだろ」

「………その、私たちを受け入れてくれたのは嬉しいのだが…、この状況はなんだ?」

 

フィシィの洗脳を解いてから1週間。

喫茶店にて集まった女性陣に囲まれ、リヴェリアがおずおずと口を開く。

結局、彼女は故郷に帰ることはしなかった。

というより、できなかった。

一度は帰ろうと思い、治めていた基地に戻ったところ、フィシィともども「反逆者」として大々的に報道されていたのである。

恐ろしく根回しが早い国に文句を垂れる暇もなく、彼女らはすごすごとその場を去った。

故郷を追い出され、行く宛などなく。そもそも戸籍がない時点でほぼほぼ詰んでいる。

それを見兼ねた帰宅部が、「しばらく俺ん家住むか?」と提案したことにより、彼女らはなんとかしばらくの衣食住を確保できた。

 

幾度となく文化の違いに困惑したが、今の困惑はソレとは違う。

リヴェリアを囲むのは、ギラギラと目を輝かせた、いわば獣。

野を駆ける猪よりも周りが見えていなさそうな瞳を前に、リヴェリアが萎縮していると。

締め切りを乗り越え、脱稿ハイに陥った漫研が詰め寄った。

 

「リヴェリアちゃん」

「う、うむ…。そ、その、状況の説明を、頼めないか…なんて…」

「帰宅部のこと、好き?」

 

多分これ、絶対に私の話聞いてないやつだ。

リヴェリアが遠い目をするのをよそに、漫研は「好きなの?どう?」と顔を近づける。

追い込まれていく獲物のような気分だ。

そんなことを思いつつ、リヴェリアはなんでもないように答えた。

 

「好きだな、うむ。好きだ」

「恋愛的な意味で?」

「…?好きは好きだろう?」

「……あー…。『好き』の判別がまだついてないパターンね、うん…」

 

言って、何度も頷く漫研。

リヴェリアがそれに首を傾げていると、視界の隅で天を仰いだアメジストが、「集合」と手を叩いた。

途端、びゅっ、と店内のカーテンが靡くほどの勢いで女性陣が集い、ひそひそとリヴェリアがうまく聞き取れないような声量で話し始める。

その中にはフィシィの姿もあり、取り残されたリヴェリアは、更なる困惑に眉を顰めた。

 

「あ、あの…、何を話して…」

「リヴィ。来ちゃダメ。

リヴィのこれからに必要な話し合い」

「私に必要な話し合いなのに私が入っちゃダメなのか!?」

「うん。ダメ。絶対」

「む、むぅ…」

 

リヴェリアはおずおずと身を引き、店長が置いたケーキにフォークを突き刺す。

何を話しているのだろうか、と聞き耳もたてるも聞き取れず。

フィシィが真剣な表情を浮かべている時点で、自分にとってはくだらないことか、と判断し、ケーキに集中を向けた。

 

「……むぅ」

 

何故だろうか。上等なものを食べているはずなのに、初めて食べたクレープよりも、美味しく感じない。

リヴェリアはそんな疑問に唸りながら、コーヒーを啜り、その苦さに顔を顰めた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「ぶははははっ!!

ははっ、あはははっ!!」

 

その頃、とある公園にて。

クソみたいな文言で構築された曲に合わせて、表情筋が死んだ帰宅部らがオタ芸をかます。

なんともシュールな光景である。

笑い転げているのは、男連中が開催したルドー対決に飛び入り参戦し、勝利したオカ研。

その豪運ぶりに物を言わせたパワープレイで帰宅部らを圧倒した彼女は、勝利の美酒ならぬ、美コーラに酔っていた。

 

罰ゲームとして、『らぶらぶどっきゅんきゅん』、『ぴゅあ☆ロマンティック』などという、童貞を拗らせた酔っ払いが考えたとしか思えないクソ歌のオタ芸をする羽目になった帰宅部らは恥辱に耐えながら、サイリウムを激しく動かす。

無論、公園のど真ん中でそんなことをすれば目立つ。

最悪なことに、コードレススピーカーの音声を最大にしていたことも合間って、公園中の視線が帰宅部らに向いている。

これがかれこれ1時間続いているのだ。

体力のないボドゲ部や工学部は、顔から生気が抜けていた。

と。ここで曲が終わるや否や、帰宅部がオカ研に問いかけた。

 

「なぁ、オカ研!

これ、いつまでやるんだ!?」

「あと三曲」

「ボドゲ部と工学部死ぬわ!

見ろ!このゾンビの方がまだ生気がありそうな顔!せめて一曲に絞れ!!」

「えー…。じゃ、『恋恋シューティングスター』で」

「10年くらい前の女児向けアニメのオープニングじゃねぇか!

なんでそんなチョイスなんだよ!!」

「絵面が面白いから」

「畜生!!」

 

帰宅部はそんな悪態を叫ぶものの、ポップな前奏が始まると、即座に構えを取る。

スマホやカメラまで回ってる。

ネットにアップされるだろうな、と思いつつ、帰宅部はメロディにあわせ、サイリウムを振った。

それをオカ研が馬鹿にしていると、とんとん、その肩を手芸部が叩いた。

 

「あ、手芸部。遅かったねー」

「ちょっと、『調教』に手間取って。

…面白いものって、あれ?面白くはあるけど、可愛くないわね」

「可愛いさのかけらもないメンバーだし、仕方ないじゃん」

 

面白いものが見れる、とオカ研に誘われていた手芸部は、眼前にて繰り広げられている恥辱のオタ芸を鼻で笑った。

無論、それに気づかない帰宅部ではない。

一瞬だけ目つきを鋭くして彼女を睨むも、即座に無表情へと戻る。

手芸部は彼の視線を無視し、オカ研に問いかけた。

 

「…話は変わるけど、少しいい?」

「ん、なぁに?」

「帰宅部って、リヴェリアちゃんに気があると思う?」

「いやぁ、ないんじゃない?

だってアイツ、『人類全員楽しかったらハッピーで仲良し』とか本気で思ってる小学生並みのクソガキだよ?」

「よねぇ」

 

オカ研の指摘は的確だった。

彼は普段こそ常識人ぶっているが、その中身は仲間内の誰よりも子供である。

好き勝手に人を振り回し、自分の欲求を満たす、世界最強の自由人。

その障害たり得たのは、家族と師のみ。

幸いなのは、ある程度の一般常識をわきまえ、道徳心や倫理観を持っていると言う点のみか。

 

閑話休題として。

そんな彼の興味が「恋愛」に向けられたことは、ほとんどない。

故に、「恋愛」というものを理解しない。

…否。漫画で読むような知識はあるが、それを現実に当てはめることができないと言った方が正しいだろう。

対するリヴェリアは、育ちが原因なのか、そもそも「恋愛」という概念が知識にない。

結果。男女両方、ラブコメの「ラブ」にすら至っていないという、奇妙な状況が完成していた。

 

「性知識はあるくせに、なんで恋愛には疎いんだろ」

「友達以上の関係を想像できないだけじゃないか…って、店長さんが言ってたわ」

「ふーん…。ま、見てて面白いからいいけど」

 

ラスサビに入り、激しさを増すオタ芸を前に、2人は心底愉快だと言わんばかりに笑みを浮かべた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「ひ、酷い目にあった…」

 

1時間後。

オタ芸により、疲労が溜まった体を引きずり、帰路につく帰宅部。

その手には、恥辱に耐えて手に入れた総額2000円のおひねりが握られている。

これでコンビニスイーツでも買って帰るか、と思っていると。

曲がり角から、なんとも言えない表情を浮かべたリヴェリアが歩いてくるのが見えた。

 

「……むっ」

「おっす。女子会終わったん?」

 

こちらに気づき、顔を上げたリヴェリアに、帰宅部は軽く笑みを向ける。

リヴェリアは先ほどよりも幾分か表情を柔らかくし、喫茶店がある方向を見やった。

 

「いや。『今回は先に帰っててくれ』と追い出されてしまってな。

なにやら、私に必要な話し合いをするとかで、フィシィもあちらに泊まるそうだ」

「……えっと…。お前に必要なのに、お前帰されてんの?」

「うむ。…何故なんだろうな?」

「意味なく仲間外れにするような奴らじゃねーしなぁ…。なんでだろ?」

 

恋愛の概念が頭に存在しない2人では、永遠に答えに到達することはないであろう疑問である。

2人は「まぁ、いいか」と思考を切り上げ、歩道を歩き始めた。

 

「こっちでの生活、どうだ?」

「楽しいぞ。少なくとも、向こうにいた時よりは充実している。

空は綺麗だし、周りに敵はいない。ご飯は美味しいし、毎日楽しいことばかりだ」

「そりゃよかった」

 

見たところ、リヴェリアの笑顔に嘘は見えなかった。

帰宅部が満足そうに頷くや否や、リヴェリアがそれを遮るように「いや、そういえば」と付け足した。

 

「少し不思議なことがあるのだ」

「不思議なこと?」

「うむ。なんというか…、楽しいはずなのに、満たされないことがあるのだ」

 

その言葉に、帰宅部は訝しげに眉を顰める。

彼にとって、「楽しい」と「満足」はイコールで繋がっている概念である。

「楽しい」はずなのに、満たされないなどということがあるものか。

だが、リヴェリアの様子を見ると、とても嘘とは思えない。

帰宅部が首を捻っていると、リヴェリアは「あまり気にしないでくれ」と苦笑した。

 

「許されないほどの幸せを享受しているというのに満たされないなどと…。

いつからこんな欲張りになっていたんだろうな、私は」

 

思い悩んでいる…と表現するには少し違う、悲痛さを感じさせない表情を前に、帰宅部は首を傾げた。

 

「欲張りでも別に良くね?

アイツらみたいに、超えちゃいけないラインで反復横跳びしてるわけでもあるまし」

「……それを言って仕舞えば、祖国の暴虐すら許されそうな気がするが」

「いんじゃね、別に。ウチ敗戦国だけど、独自文化はガッツリ残ってるぜ?」

「………は!?!?」

 

帰宅部の発言に、目をひん剥くリヴェリア。

あたりを見渡し、敗戦国というイメージにそぐわない発展ぶりを前に、彼女は素っ頓狂な声を上げた。

 

「敗戦国!?ここがか!?」

「おん。核爆弾っつーやべー兵器を二箇所に食らって白旗」

「…どのようにやばいのだ?」

「街一つ吹っ飛ぶわ、生き残っても汚染で死ぬわ、とにかく碌なことねーぞ。

あまりにヤバすぎて、使った国すら『もう二度と使わん』とか言い始めるくらいだ」

 

使った側に二度と使わないとまで言わせる兵器とは、どのようなものなのか。

リヴェリアが疑問に思っていると、帰宅部が続けた。

 

「ウチにゃあ、そんなモン使った国の人間と結婚して、幸せになってる奴もいる。

だから、アレだ…。その…」

 

いつもだったら恥ずかしげもなく言えるはずなのに、言葉に詰まる。

帰宅部はその違和感を疑問に思いながらも、リヴェリアに向け、はにかんだ笑顔を見せた。

 

「お前がどんな立場で、どんな過去があったって、幸せになることが『許されない』なんてことはないって俺は思うぜ?」

「………」

 

きょとん、と目を丸くするリヴェリアに、思わず不安を抱く帰宅部。

なにか気に障ることを言ってしまったか。

帰宅部が不安を口に出そうとするや否や、リヴェリアがソレを遮るように小さく笑った。

 

「ふふっ…。お前がそういうなら、存分に幸せになってやろうじゃないか。

まずは…、そうだな。明日、あのクレープを食わせろ」

「あいよ」




リヴェリア…恋を自覚してないタイプ。メンタルケア中なため、変身するための装備は持ってない。現在は帰宅部の家に居候している。こちらの常識を学んだあと、帰宅部たちの学校に転入する予定。教師らの胃は死ぬ。

フィシィ…文化部たちと意気投合した変人。お前、サイコパスの素質あるよ。

クソ兄…たぶん、生物部あたりにおもちゃにされてる。どんまい。
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