HUNTER幻想曲   作:akiko

1 / 26
オリ主
HUNTER×HUNTERです


プロローグ

 

 

…何故、こんなにも私は必死になっているのだろう…

 

辺りは一面、真っ暗で、ひたすらに冷たい空気が肺を喉を凍えさせる。

 

足元にまとわりつく、不快な感覚。

泥、沼?

よくわからないけど、とにかく重たくて、冷たい何か。

それに引きずり込まれる。

のみこまれていく感覚。

 

どう逆らって、もがいても抜け出せそうにない「何か」。

 

(…最悪!)

 

一体ここはどこなんだ?

なんで、私はこんな目に遭っているのか。

 

闇しか広がらない、身体の自由が全くきかない、理不尽な世界の中に突如として放り込まれて、私は絶望の中で猛然と怒りを感じていた。

 

 

なぜ、なぜ、なぜ?

 

闇が意識すら、くいつくそうとする中でも疑問は消えない。

そして、意識の中で確かな感情が鮮明になる。

 

 

「会いたい」

 

その感情だけが。

 

そうだ。

あの方の存在。

会いたくて、どうしてもその姿をこの目で確かめたいお方が。

一度だけでいい。

叶えたい。

どうしても、あの方のお姿を…どうしても…

 

 

意識も、身体の感覚も全てが闇にのまれ、流され、「私」が消滅するのはもう不可避。

何も掴めぬまま、たった一つの願いさえ、叶えぬことができぬまま、私はこのまま、消えていく。

自分が何だったのか。どういう存在であったのか、それすら、わからぬままで。

 

(嫌だ…嫌だ…嫌だ!!)

 

知りたいのだ。

まだ見ぬ世界を。

視界に感じているのではない。

感情の奥底にある灯りの存在。

その根源であるものの形をこの目で確めたい。

 

それこそが、自分の存在理由なのだ。きっと。

 

 

光が…

見えた気がする。

導きかれる。

 

それに私の全てが。

諦めたくない。

 

光の中にきっとある。

私の望みの全てが。

だから、ここから抜け出そう。

 

この真っ暗な闇から抜け出して…

私はあの方のお姿を、この目に必ず…

それだけでいいから。

 

 

―本当にそれでいいのか?―

―…お前など…生まれたところで何の役にも立つまい―

―このまま、塵と消え無に還るがお前の幸せというもの―

 

闇の中、どこからとももなく響く、低い声。

 

その声に滲むのは、嘲りと卑下と、それから…憐れみ。

 

「かわいそうに」

「何の力もないくせに」

 

 

声に発せられているわけでないけど、そんな思念がひしひしと伝わってくる。

 

闇の泥沼が喉元まで迫る感覚。

 

抜けれないのだろうか。

 

 

―嫌だ!―

 

私は最後の望みをかけて、もう一度、光に手を伸ばした。

 

光の繭に触れると、その中に引き込まれる。

 

 

そこは不思議と暖かく、やわらかかった。

 

淡い光の中で身体のあちこちについた、冷たい泥はとけていった。

 

―わざわざ、その方に行くなど愚かな―

だけど、その声が聴こえたのは一瞬で…

光の繭の中で私の身体にまとわりついていた泥は消えていった。

 

 

そして、繭の中から、別の誰かの声が聴こえてきた。

 

―大丈夫。一緒に生まれよう―

 

そして、手を握られる感触。

 

―僕たちには役目がある。何よりも…どんなものより大切な、あの方を、全力でお護りするという役目が―

 

(…うん)

 

 

そうだ。それこそが、私の望み。

たった一人のあの方。

世界を統べる方。

唯一無二の、この世に二人としていない…

至高の存在。

 

私の…私達の「王」。

 

確固たる、使命の元、私達は生まれる。

 

だから、私は迷わずに傍らの誰かの手を握り返した。

 

生まれよう。

捧げよう。

たった一人の「王」に全てを…

 

祝おう。

世界を。

讃えようあの方を。

 

私達は産声を上げる。

 

生命の全てを。

全身全霊で渾身の願いと祈りを重ね、歓喜の中で生まれる。

 

もうすぐ…やっと、私は…私達は待ち望んだ時を迎えることができる。

 

たった一人の「王」にようやく…

私達は会えるのだ。

 

眩く輝く繭が破れる。

 

 

ようこそ…歓喜と狂喜の世界へ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。