HUNTER×HUNTERです
…何故、こんなにも私は必死になっているのだろう…
辺りは一面、真っ暗で、ひたすらに冷たい空気が肺を喉を凍えさせる。
足元にまとわりつく、不快な感覚。
泥、沼?
よくわからないけど、とにかく重たくて、冷たい何か。
それに引きずり込まれる。
のみこまれていく感覚。
どう逆らって、もがいても抜け出せそうにない「何か」。
(…最悪!)
一体ここはどこなんだ?
なんで、私はこんな目に遭っているのか。
闇しか広がらない、身体の自由が全くきかない、理不尽な世界の中に突如として放り込まれて、私は絶望の中で猛然と怒りを感じていた。
なぜ、なぜ、なぜ?
闇が意識すら、くいつくそうとする中でも疑問は消えない。
そして、意識の中で確かな感情が鮮明になる。
「会いたい」
その感情だけが。
そうだ。
あの方の存在。
会いたくて、どうしてもその姿をこの目で確かめたいお方が。
一度だけでいい。
叶えたい。
どうしても、あの方のお姿を…どうしても…
意識も、身体の感覚も全てが闇にのまれ、流され、「私」が消滅するのはもう不可避。
何も掴めぬまま、たった一つの願いさえ、叶えぬことができぬまま、私はこのまま、消えていく。
自分が何だったのか。どういう存在であったのか、それすら、わからぬままで。
(嫌だ…嫌だ…嫌だ!!)
知りたいのだ。
まだ見ぬ世界を。
視界に感じているのではない。
感情の奥底にある灯りの存在。
その根源であるものの形をこの目で確めたい。
それこそが、自分の存在理由なのだ。きっと。
光が…
見えた気がする。
導きかれる。
それに私の全てが。
諦めたくない。
光の中にきっとある。
私の望みの全てが。
だから、ここから抜け出そう。
この真っ暗な闇から抜け出して…
私はあの方のお姿を、この目に必ず…
それだけでいいから。
―本当にそれでいいのか?―
―…お前など…生まれたところで何の役にも立つまい―
―このまま、塵と消え無に還るがお前の幸せというもの―
闇の中、どこからとももなく響く、低い声。
その声に滲むのは、嘲りと卑下と、それから…憐れみ。
「かわいそうに」
「何の力もないくせに」
声に発せられているわけでないけど、そんな思念がひしひしと伝わってくる。
闇の泥沼が喉元まで迫る感覚。
抜けれないのだろうか。
―嫌だ!―
私は最後の望みをかけて、もう一度、光に手を伸ばした。
光の繭に触れると、その中に引き込まれる。
そこは不思議と暖かく、やわらかかった。
淡い光の中で身体のあちこちについた、冷たい泥はとけていった。
―わざわざ、その方に行くなど愚かな―
だけど、その声が聴こえたのは一瞬で…
光の繭の中で私の身体にまとわりついていた泥は消えていった。
そして、繭の中から、別の誰かの声が聴こえてきた。
―大丈夫。一緒に生まれよう―
そして、手を握られる感触。
―僕たちには役目がある。何よりも…どんなものより大切な、あの方を、全力でお護りするという役目が―
(…うん)
そうだ。それこそが、私の望み。
たった一人のあの方。
世界を統べる方。
唯一無二の、この世に二人としていない…
至高の存在。
私の…私達の「王」。
確固たる、使命の元、私達は生まれる。
だから、私は迷わずに傍らの誰かの手を握り返した。
生まれよう。
捧げよう。
たった一人の「王」に全てを…
祝おう。
世界を。
讃えようあの方を。
私達は産声を上げる。
生命の全てを。
全身全霊で渾身の願いと祈りを重ね、歓喜の中で生まれる。
もうすぐ…やっと、私は…私達は待ち望んだ時を迎えることができる。
たった一人の「王」にようやく…
私達は会えるのだ。
眩く輝く繭が破れる。
ようこそ…歓喜と狂喜の世界へ…