HUNTER幻想曲   作:akiko

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主役メイン(王ムギ)予定です!
今月は更新、すすめる予定です


絡む糸。廻る歯車

最近の王は、ますます勝負に熱を入れられるようになった。

 

描く儀譜の形は洗練されるばかりで、それは、もう至高の形といってもよい。

 

 

その儀譜の美しさは、私に言葉では表せない程の深い感動と感嘆を与えてくれていた。

恩恵、恩赦。

王のお姿を生きて、こうしてこの目で見つめさせて頂くことだけでも、私にはもったいない程の幸福であるのに…

かつて、自分が関わっていたことがある競技(まあ、王にとっては競技ではなく遊戯の一環かもしれないけど)に、携わって下さって、その中で毎回、最上の駒の運びを見せて下さるのだから。

身に余る幸福に、時に目がくらみ、足元がおぼつかなくなりそうになる。

 

けれども、そんな私の目を覚まさせるのは、いつもコムギだった。

 

どこまでも、自由に飛躍する王の駒。

しかし、コムギは、そこから更に新しく駒の道を拓く。

それは、王の手を潰す為でなく、

導く為に描かれた美しい世界。

儀譜の中でだけ紡がれる物語、奏でられる曲。

二人だけ…いや、二人だからしかつくれない世界の中で、糸が絡み始めたように見えた。

 

…何の糸?…

わからないけど、その糸はきっと切れない。

他の誰にも。

 

私はもう、コムギを単なる貧しい「アカズ」とは思えなくなっていた。

ここまで、圧巻の勝負を見せられて、王の信頼を得てるのだ。

私はもう、コムギの実力と運の強さに、感服し彼女の存在意義を認めざるを得ない。

だって、「運も実力もうち」だから…

 

中々、王の勝ちを見れず、プフは苛立っているようだった。

プフの気持ち、わからなくもないんだけど、私はそれでもいいと思った。

 

 

 

だって、二人の描く世界は美しい。

永遠に見ていたい。

だったら、勝負の決着の形なんて見なくてもいいのでは。

という気持ちになってくる。

まあ、こんな気持ち、持っちゃったら、蟻なんて失格かもだけどね。

 

いつも通り、私はコムギを王の元へと案内した。

 

相変わらず、二人は言葉少なに、しかし、見事な駒の運びを見せている。

 

 

駒を運んでいた、コムギの手が止まる。

 

勝負の運びは、コムギがやや、優勢で私は、不思議に感じて、コムギを見た。

 

「…素晴らしい手が次々、洪水みたいに頭になだれこんできて」

そう言ったコムギの目は、どこまでも明るかった。

そして、強く、意志に満ちた声がその細い喉から発された。

「もっともっと強くなれる!」

 

 

その言葉に驚愕する。

コムギはまだ、飛躍的に伸びる。

この方と勝負で、未だ…本気ではなかったと?

底知れぬ、才能と実力は未知だ。

私はそれに戦慄し背筋が凍る心地がした。

コムギの力は十分に知っているはずだった。

でも…

王を凌駕する可能性すらあるなんて!

私は、あまりの運命の引き合わせの皮肉さに、どうすればいいかわからず、呆然とするしかなかった。

未知の存在。力というのは、両刃の剣だ。

王の力を伸ばすトリガーにも、怒りや不興を買うマイナスのトリガーにもなりうる。

どちらに転ぶかわからない。

 

やがて、コムギは落ち着いた声で、王に自ら暇を申し出た。

コムギ自ら、王に自分の意志をこうして伝えるのは、初めてのことかもしれない。

 

そしてコムギは思い浮かんだ儀譜を全て記憶する為、部屋を退出する旨を王に伝えた。

 

王は、何か引っかかる事があるのか、コムギをよびとめた。

そして、尋ねる。

名を…

それは、王が目の前の対局者に「敬意」を表してのことか。

それとも、単なる好奇心か…

私ごときに、王の御心など図れるはずもない。

 

だが、コムギの存在が王にとって…

 

 

「総帥様は…総帥様のお名前はなんとおっしゃるのですか?」

 

私の思考を止めたのはコムギの声だった。

 

(王の御名?)

 

 

今まで、考えたことすらなかったかも。

けれども、愚問ね。

 

この方は、「王」。

この世の頂きに立ち、全てを統べる為に生まれた方だ。

それが、全ての存在意義であられるのよ。

 

 

だけど…

その問いは、コムギが王に名を尋ねたことは、ある種のトリガーになったのだろう。

 

あきらかに、何かの思考に耽られるようになることが増えたようにお見受けする。

 

その様すら、神々しい程、美しく、目を奪われるばかりだ。

 

 

突然に転機は訪れた。

 

コムギが鳥に襲撃されたのだ。

あけはなった、窓から侵入してきた鴉だった。

 

 

「なぜ、助けを呼ばぬ!?」

 

苛立ちの中に、滲む焦りの色。

王の声には、隠しきれない感情の乱れが如実に表れていた

 

そして、ピトーを呼び、すぐさまに傷だらけのコムギの手の治癒にあたらせていた。

 

王はコムギを「客人」と仰ったけど…

実際は…

違うと思う。

王自身、自らの感情にお気付きになられていないだけで…

それにしても、コムギ、あんた、本当にとんでもないことをしでかしてくれたわね?

 

揺れる王の御心。

 

何も知らないコムギ。

 

傍観するしかできない私。

 

駒の運びは予測不能。

絡む糸も、廻る歯車も…

全ては王の裁量で、行方も結末も決まるのだ。

 

ここに連れてこられたコムギを見て、私はすぐに「詰む」と思った。

そして、私自身もとても弱いからすぐに「詰む」と思っていた。

弱者は消えるのが、世の理だが、何故か私もコムギも生きている。

本当に運命とは、数奇だなと実感する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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