HUNTER幻想曲   作:akiko

2 / 26
ピトー登場です


弱小蟻の誕生日

知らない世界へと…

全く未知な、新しい世界に足を踏み入れるのは、なんだか怖い気もする。

 

でも「産まれる」決意をしたのは、他の誰でもない私自身だし、

私には「王」のお姿をこの目で確かめたいという、確固たる願いと目標があった。

 

それに、あの汚泥の沼を抜け、光の繭に吸収されてからは、傍らに常に誰かがいて、その誰かは、常に私の手を握ってくれていた。

 

そして、柔らかな声でずっと語りかけてくれていたのだ。

 

(僕たちは、『同じ』なんだニャ)

(あの方のお側で、命を賭してお仕えさせて頂ける慶び…こんな大任…これ以上ない幸福だニャ)

(早くお会いしたいニャ)

 

 

ふわふわと、脳裏に響く声に私は、同調するように頷いた。

どこまでも、輝かしく、慕わしいあの方。

我らが唯一無二の王よ。

 

どうか…どうか!

 

繭が破れる。

繭の切れ目から、輝かしい光が射す。

目をとじたくなる、そらしたくなる。

少し怖い…あんなに待ち望んでいたのに。

この繭から出るのが…

 

(大丈夫だよ。何も怖がらなくて一緒なのだから…と僕は)

手を強く握られる。

私も強く握り返して、頷いた。

迷わない。

そんな暇はないから。

 

だから、一緒に飛び出す。

私の半身ともいえる、その存在と共に。

 

足元がよろめく。

自分の足で踏みしめる、初めてのそとの世界。

 

周囲の空気はどこか、生暖かく湿気を帯びていた。

 

手を握られたまま、私は産まれた。

顔を覆う柔らかな癖のある毛。

獣耳。

繭の中でいつもみてきた、感情の読めない不思議な色を宿した瞳。

私と同じ志を持ち、同じ魂を抱くもの。

ああ、本当は…

繭の中で一つになり、同じ個体として生まれてくるはずだったのに。

そうすれば、私たちはもっと強くなり、もっと王のお役に立てるはずなのだ。

 

でも、どうしてか…

わかたれてしまった。

 

私は酷く悲しく、残念な気持ちでずっと一緒だった存在に視線を向けた。

実体を持った形で、こうして初めて向き合う、私の半身。

 

私は、おずおずとその名を唇にのせた。

「ネフェル…ピトー」

ネフェルピトーは、目を合わせたまま、目と口元をふっと緩ませた。

 

「なんて呼べばいいかニャ?」

「なんとでも…だって本当は私も『ネフェルピトー』として生まれてくるはずだったもの。…こんな…姿だけどさ」

 

ネフェルピトーと同じ形の耳。

同じ色の毛。

尾。

 

でも、身長はネフェルピトーの腰の辺りまでしかない。

体型はスッキリとした、洗練されたネフェルピトーと違い、丸く、ふくよか。

それが私。

何より違うのは、力の質。

ネフェルピトーには、圧倒的な力がある。

それこそ…あの方に相応しいような。

圧倒的な力が。

繭の中で分かたれた私には形ばかりの「命」が宿り、何故かなんの力も持たぬまま、こんな形で産まれおちてしまった。

 

うなだれる私に、ピトーは呑気な笑顔で語りかけてきた。

「僕のことは、ピトーとよぶといいニャ。そーだな。君は僕の妹みたいなものだから…『シスター』…『シー』とでもよぼうかな」

 

呑気に笑う半身に私は頷いた。

私の名は「シー」。

この先に見える景色がどんなものであっても…

前に進むことを今、ここに誓います。

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。