夜。
……カラ……ダ……
「…………」
……カラダ……ヨコセ……
「んん……」
「うううう……」
「んが……?」
奇妙な声から眠っていたショウは朦朧としながらも目が覚め、寝ぼけた表情のまま身体を起こす。
「夢か?さっきの妙に不気味な声は……」
ショウは頭を振って再度寝ようとするも、不意に視界に入ったオリガの姿を見て一気に眠気が吹き飛んだ。
「―――オリガ!?」
「ぐぅうううう……!」
ショウの言葉に返すことなく呻き声を上げるオリガは、全身から異様なオーラを放っている。少ししてその異様なオーラは消え去ったが、オリガは苦しげに顔を顰めていた。
「ハァ……ハァ……」
「オリガ、一体どうしたんだ!?」
「……別に何もない。小僧に心配される筋合いはない」
ショウの心配する言葉に、オリガは拒絶が混じった強気な態度で返す。だが、そんな言葉でショウは納得するわけがない。
「何もないわけあるか!明らかに苦しんでただろ!ひょっとして、あの剣が原因か!?」
「…………」
ショウの詰め寄るような質問に、オリガは答えずに顔を背ける。それが肯定だと察したショウはすぐに言葉を続けた。
「なら、すぐに取り出せ!原因を取り除いたら、少しはマシになるだろ!?」
「……出来ぬ」
「は?」
「あの剣……電波で作られた剣がワレの中で絡まって……自力で取り出せぬのだ」
オリガのその告白にショウは一瞬呆けた表情となるも、すぐに事態を理解してか頭を抱えたくなる心境となった。
「このポンコツ!何でそんなヤバイものを入れたんだよ!?」
「ポンコツ言うな!!あれほど強力な電波で構成された武器なら、取り込めばワレの失った力を取り戻せると思ったのだ!!」
「だから落ち込んでスターキャリアーの中に籠ったのかよ!!」
またしても目論見が失敗していたオリガに、ショウは本当に何とも言えない気分になる。オリガが失った力を取り戻そうと色々頑張っているのは知っているが、今回のは流石に看過できない事態である。
「明日、ナツヒの家に行ってその剣を取り出せないか相談しに行くぞ!」
「人間の手助けなぞ……」
「あれを見て放っておけるか!」
オリガの容態を心配したショウは、無理矢理にでもオリガをナツヒのところに連れていくと決めるのであった。
――――――
翌日。宇津木家のナツヒの部屋にて。
「朝早くから二人が来たからどうしたのかと思ったら……釣った物を自分の身体に入れるのはどうかと思うよ、オリガ」
「ムググ……」
ショウから一連の事情を聞き終えたナツヒの呆れた第一声に、強引に連れて来られたオリガは反論できずに悔しげに唸る。
「それにしても電波で作られた剣、ね……ちょっと気になるけど、今はそれを取り出せないか試してみないとね」
ナツヒはそう言って自身のスターキャリアーを掲げ、グローブの形をしたマテリアルウェーブを展開する。
「フレゾウブラザーズ。頼んだよ」
『『任せるでゴザァアル。ワレラの力で、その剣とやらを取り出してみせてシンゼヨウ』』
フレゾウブラザーズは歌舞伎口調でそう返したのを確認したナツヒは、フレゾウブラザーズを両手に装備してオリガの身体へとその両手を突っ込んだ。
「ムゥ!?」
「痛かったら、すぐに言ってね。すぐに中止するから」
ゴーグル型のマテリアルウェーブも装備し、ナツヒはオリガの身体の中にあるであろう剣を手探りで探していく。しばらくゴーグル越しににらめっこしていたナツヒは、困った表情でオリガから両手を引き抜いた。
「……ナツヒ?」
「ショウとオリガにとって悪いニュースだよ。その剣、現時点じゃ取り出せないわ」
『『豪語していたワレラが恥ずかしいでゴザル』』
ナツヒは溜め息混じりにそう言って、二つのマテリアルウェーブを収納する。そんなナツヒの返答に、ショウはすぐに問い質した。
「取り出せないって、どうしてだ!?」
「オリガの身体の中にあるせいなのか、その剣そのもののせいかは分かんないけど……周波数が絶えず変化しているみたいなのよ。そのせいで、剣の実体を掴めなくなってるのよ」
「嘘だろ……」
ナツヒのその言葉に、ショウは頭痛を堪えるように頭を抱えてしまう。何せ、オリガを苦しめている剣が取り出せないと知ったのだから。
それも、剣を取り込んで数日どころか数時間で苦しみ始めたのだ。放置したら悪化することは確実だ。
「後、悪いニュースがもう一つ。ショウが昨日釣り上げたその剣、形は大体こんな感じじゃなかった?」
ナツヒは紙とペンを取り出すと、大雑把ではあるが、剣の絵を描き始めていく。その剣のイラストは、昨日ショウが釣り上げたものとそっくりだった。
「ああ。大体そんな感じだ」
「……これ、昨日私が行ってきた美術館に飾られていた展示品なのよね」
「……え?」
ナツヒのその言葉に、ショウは意味を理解してか汗がダラダラと流れ始めていく。オリガは意味が分からずに首を傾げていたが。
「……たまたまそっくりな物だったんじゃないのか?ほら、港と美術館は明らかに距離があるし」
「その美術館で、神隠し騒動が起きてたのは今朝のニュースで知ってるでしょ?その時に美術館の目玉であるオーパーツが全部消えたのよ」
「…………」
ナツヒの今朝のニュースも交えた言葉に、ショウは何も答えられずに大量の冷や汗を流していく。
ちなみにナツヒが撮影した映像は、通報を受けて駆けつけたサテラポリスに捜査資料として回収されている。そのことでナツヒは一晩不貞腐れていたが、今はいいだろう。
「つまり、そこで消えた展示品……オーパーツの一つを小僧がたまたま釣り上げたと?」
「そ。本当に凄い確率だよね」
そう言って、アハハハハとナツヒは乾いた笑い声を上げる。そんな笑い声を聞いても、ショウの心は軽くならなかった。
「嘘だろ!?これ、横領か窃盗になるだろ!!本当に何で釣り上げちまったんだよ!!」
「もう仕方ないんじゃない?」
ショウの焦りにナツヒはしょうがないと告げるも、ショウの心は一向に軽くならない。何せオーパーツ……超技術の遺産をネコババしたも同然なのだから。
「それよりも、オリガの体内にある剣をどうやって取り出すかが重要だよ。今のままじゃ、届けることもできないしね」
「取り出す必要はない。そのオーパーツとやらを、ワレが御せれば済む話だ」
「人の話をちゃんと聞けよ!!それ、展示品!返さなきゃ、駄目なやつ!つまり、制御できるできないの話じゃない!!」
現状を正しく理解していないオリガに、ショウは言い聞かせるように言葉を重ねていく。にも関わらず、オリガはそっぽを向くだけだ。
「そもそもこれ程の物を……!?」
その瞬間、オリガが腹を抱えて蹲ってしまう。同時にショウが昨晩見た異様なオーラが全身から放たれていく。
「ぬぅ……ウググググ……!」
「オリガ!?大丈夫なの!?」
苦悶の声を上げるオリガに、ナツヒは心配げな表情となる。ショウはオリガの不調がいぶり返した事で、焦った声を上げる。
「言ってる傍から不調がいぶり返しているじゃねぇか!早く取り―――」
ヨコセ……
「……え?」
キサマノカラダヲ、ヨコセ……!
突然聞こえてきた奇妙な声にショウは思わず周りを見渡す。部屋にはナツヒとオリガしかおらず、第三者が隠れている様子もない。
ヴィィィーン
謎の声にショウが困惑を隠せずに見渡す中、突如外から不気味な音が幾つも響き渡った。
「こ、今度は何だ?」
「え?この音って……」
その音にショウは再び困惑し、オリガの心配をしていたナツヒは聞き覚えがあるような反応を示す。そんなナツヒにショウは話しかけた。
「ナツヒ?さっきの音について何か知っているのか?」
「う、うん……あの音、昨日の神隠し騒動の直前に聞こえてきた音と同じなの……」
ナツヒのその言葉に、ショウは慌てて窓から外の様子を確認する。すると外では、黒い穴に吸い込まれかけている人々の姿があった。
「黒い穴に人が吸い込まれてるぞ!?」
「あれ、展示品を吸い込んでいた昨日の黒い穴だよ!人も吸い込めるのはシャレになってないよ!」
黒い穴に吸い込まれている人々はその穴から逃げ出そうと足掻いているが、吸引力が強いから一向に黒い穴から出られる気配がない。
「どうする!?あれを放置したら呑み込まれるぞ!」
「分かってるわよ!ロープで牽引して引き摺り出すしかないでしょ!」
善は急げと言わんばかりに外に出ようとしたショウとナツヒに、すっかり蚊帳の外であったオリガが疑問を露に二人に話しかけた。
「何故ワレに頼まん?いや、人間の言葉を聞く義理も義務もないが」
「明らかに不調なお前に無理をさせられるか!」
「そうだよ!オリガは休んでて!!」
オリガの言葉に対し、ショウとナツヒはオリガを気遣った発言で返す。そんな二人の気遣いに対し、オリガは怒りを露にした。
「ふざけるな!人間ごときに心配される程落ちぶれておらん!!」
「ふざけてねぇよ!病人を使うなんて外道な真似ができるか!!」
「ワレは病人ではない!!」
ギャイギャイと口喧嘩に発展したショウとオリガに、ナツヒはもう苦笑いするしかない。
「後からやっぱり病人とか言うなよ!?」
「当然だ!オーパーツの力なぞ、すぐに抑え込んでくれようぞ!!」
「じゃあ、行くぞ!電波変換ッ!!」
「結局二人が行くんだね」
ナツヒの呆れたような呟きにショウとオリガは耳を貸す事なく、オリガ・ジェネラルへと電波変換して家の外へと出る。周波数を変えているので、ナツヒの家が壊れたという事も起きていない。
「とにもかくにも人命救助だ!!」
ショウは車輪を猛回転させて近くにあった黒い穴へと近づき、その中心にいた男性を両手で掴んで引き上げようとする。
「ググ……凄い吸引力だ……!!」
『この程度で根を上げるな!ワレのパワーなら、余裕で引き上げられるんだぞ!!』
「分かってる……!だらっしゃあっ!!」
オリガの発破にショウは力みながら言葉を返し、男性をその剛腕で黒い穴から引き上げる。そのままバックして黒い穴から距離を取ったところで男性を地面へと降ろした。
「あ、ありがとう、ございます……?」
助けだした男性の困惑気味のお礼を余所に、ショウは次の人を助ける為に爆走していく。
オリガ・ジェネラルの持ち前のパワーで吸い込まれている人々を黒い穴から引き上げていくも、それを無意味と言わんばかりに黒い穴が人の足下に現れて吸い込んでいくから実質無意味である。
「これじゃ、いたちごっこだ!あの黒い穴が出てくる原因は何なんだよ!?」
『……小僧、右の方向を見ろ』
突然のオリガの指示に、ショウは内心で首を傾げながらもそちらへと顔を向ける。すると道の端には、不気味な黒い一つ目の球体が宙に浮いて佇んでいた。
「何だ?あのアイズを不気味にしたような黒い球は?」
『アレが黒い穴の発生源だ』
「マジで?その根拠は?」
『…………』
妙に確信を持って告げたオリガにショウはその理由を問い掛けるも、オリガは無言を貫く。
「いつもの黙りか?まあ、原因がアレならぶっ壊せば……」
ショウはオリガの反応に呆れながらも、黒い球体を破壊しようと動こうとした矢先、
……ワガシュゾクヲ……フッコウ……サセルノダ……
「!?」
……ワレワレガ……ホロビタノハ……ナニカノ、マチガイダ!!!
その瞬間、謎の圧迫感がショウに襲いかかった。
「ウグッ!?身体が、急に苦しく……!?」
急な体温の上昇と先の圧迫感からショウは胸に手を当て、跪くように倒れてしまう。
身体が奥底から熱くなり、自分の意思で動かせなくなる。だが、数秒と経たずそれは収まった。
「ハァハァ……ま、またあの声か……だけど、何で急に身体が……」
『……オーパーツだ。ワレの中のオーパーツが、ワレを乗っ取ろうと暴れているのだ』
苦しげに息を荒げるショウに、オリガがどこか苦痛を感じる声でそう答える。
「お前を乗っ取ろうとしているだって?じゃあ、今までの声は……」
『オーパーツの声であろうな。ワレと電波変換で“繋がり”がある故に、小僧も影響を受けているのだろう……予想外であったがな』
オリガの言葉であの奇妙な声がオーパーツにある事が分かったが、取り出すことが出来ない以上、現時点ではどうしようもない。
「嫌な予感しかしないが……今はあれをどうにかしないと」
ショウは体勢を整えると、黒い球体に向かって進んでいく。道中で黒い穴がショウのすぐ下に現れるも、車輪を活かした機動力で上手に避けていく。
ある程度不気味な黒い球体に近づくと、ショウは右腕を巨大な砲身へと変化させて狙いを定める。
「ジェネラル・キャノン!!」
豪快な砲撃である『ジェネラル・キャノン』を放ち、不気味な黒い球体を一撃で破壊する。
「これで黒い穴が消えたのか?」
『その筈だ』
ショウは改めて周囲を見やると、周りに発生していた黒い穴が消えている。オリガの言う通り、あの不気味な黒い球体があの黒い穴の発生源だったようだ。
周囲に誰もいなかったこともあり、ショウはその場で腰を降ろす。
「にしても、何だったんだ?あれは……」
『…………』
ショウは疑問を露に呟くも、それに答える者は誰もいない。
一先ず、見た限り黒い穴は全部消えたようなので、ナツヒの下に帰ろうと―――
「キャーッ!!」
した矢先、誰かの悲鳴がショウとオリガの耳に届いた。
「悲鳴!?まだ黒い穴があったのか!?」
その悲鳴にショウは驚きつつも、声がした方へと急いで走っていく。その先には、四人の男女が黒い穴に吸い込まれている光景が広がっており、その近くにはロックマンと紫のバイザーをした黒い男が対峙していた。
「大丈夫か!?」
「え……!?」
「…………」
オリガ・ジェネラルの登場にロックマン―――スバルは驚き、黒い男は無言を貫く。それを余所にショウは黒い穴に吸い込まれている四人に手を伸ばしていく。
「早く掴まれ!オレのパワーで引き上げ―――」
その瞬間、ショウの胸部に衝撃が走り抜け、そのまま後ろへと吹き飛ばされてしまった。
「がっ……!?」
「余計なことはしないでもらおうか」
仰向けに倒れたショウは上半身を起こすと、スバルと対峙していた黒い男が一瞬でショウが先程いた場所に立っていた。
「あの距離を、一瞬で……!?」
「……まだ喋れるか」
驚くショウを余所に、黒い男は再びショウと距離を詰めると、今度は上空へと蹴り上げる。重量が1500キロもあるにも関わらず、軽々と蹴り上げた黒い男にショウは二重の意味で衝撃を受けていると、すぐさま地面に叩き付けられた。
「ぐぁあああっ!!」
「止めるんだ!何でボク以外に手を出すんだ!!」
背中に強い衝撃を受けて悲鳴を上げるショウを見て、スバルは黒い男に止めるよう呼び掛ける。しかし、ショウを足蹴にしている黒い男は心底分からないといった表情で告げた。
「なぜオレがお前の指図を聞かねばならない?それに、『馴れ合いは排除しろ』とオレの中の血が騒いでいるんだよ」
黒い男はスバルに対してそう告げると、三度一瞬で移動してスバルを殴り飛ばす。オリガ・ジェネラルでさえ吹き飛ばすその拳をマトモに受け、スバルは吹き飛ばされた先にあった家の壁へと激突してしまう。
「うわぁっ!!」
「ロックマン様!」
「……だ、大丈夫……すぐに……助ける、から……」
黒い穴に吸い込まれている金髪の少女―――ルナの呼び掛けに、崩れ落ちたスバルは息が絶え絶えながらも何とか立ち上がろうとする。そんなスバルの姿を見た黒い男は、一層不快そうに顔を歪めた。
「聞こえていなかったのか?なら……今すぐ断ち切ってやる!!」
その瞬間、黒い穴の吸引力が格段に強まり、中にいた四人はあっという間に中へと呑み込まれてしまった。
「!そん、な……」
「安心しろ。すぐにお前も……」
目の前で黒い穴に吸い込まれたことにショックを受けるスバルに、黒い男はトドメを刺さんばかりに拳を振り上げる。
その直後、一条の射線が二人の間を遮った。
「……まだ動けるか」
黒い男が忌々しげに視線を向けた先には、左腕を【キャノン】にしたショウが上半身を僅かに起こしていた。そんなショウに黒い男はわざわざ歩いて近づくと、問答無用で足蹴を腹へと叩き込んだ。
「ぐふっ!」
「なぜそこまで他人に気をかける?そんなにそこの青い男同様、馴れ合いが大事か?オレから見れば、それは“弱い”証拠だ。強ければ他人など必要としない。違うか?」
「……違う」
「何?」
ショウの返答に黒い男は眉を顰める。そんな黒い男に構わず、ショウは言葉を続けていく。
「少なくともオレは“弱い”から馴れ合うんじゃない……“大切”だから馴れ合い、意地でも守ろうとするんだよ……!」
「…………」
黒い男はショウの言葉に不快感を露にしていくが、すぐに驚きの表情へと変化する。
「だから……意地でも手を伸ばすんだ!!」
その瞬間、ショウの身体から圧倒的な電波のオーラが湯水のように湧き溢れていく。その黄色に輝く電波のオーラに当てられた黒い男はその衝撃で強引に距離を取らされる。
「その波長……ベルセルクのオーパーツ!?青い男の妨害で海に飛ばされたそれを、何故お前が持っている!?」
黒い男は驚愕を露にショウに問い掛けているが、身体を起こしたショウはそれに答えず、前のめりに構えていく。
「ジェネラル・ダッシュ!!」
そのまま猛然の勢いで体当たりを仕掛けるも、黒い男は飛び上がって躱してしまい、ウェーブロードの上へと着地する。
「くっ……!?」
だが、黒い男は身体が痺れたようにその場に蹲る。そこにショウに触発されたのか、ショウと同様に圧倒的な電波のオーラを纏ったスバルが左腕に展開した回転弾倉付きのキャノン砲を構えて狙いを定めていた。
「スター・アドバンス、【リボルバーキャノン1】!!」
緑色の電波のオーラを纏うスバルは、三枚の【キャノン】で発動した
「何っ……!?」
攻撃を受けた際の電波の乱れに関係なく、すべての砲撃が命中したことに黒い男は再び驚きを露にする。電波体は攻撃を受けた際、電波が大きく乱れると一時的に【インビジブル】状態となる。だが、スバルの放った砲撃はその【インビジブル】状態を無視して当ててきたのである。
「奴もオーパーツの力を……!?何故急に……」
黒い男は疑問を口にするも、スバルの決意が籠ったような言葉ですぐに解消される。
「みんなを、元に戻せ……!」
「……仲間を想う気持ちがそうさせたとでも?どうやら、お前たち二人はオレの一番気に食わないタイプのようだな……!」
黒い男は憎々しげに表情を歪めた直後、不意にその場に蹲った。
「な……!?これは、一体……!?」
ヨコセ……!
「「!?」」
ソノカラダヲ、ヨコセ……!!
三人の耳にオーパーツの声が聞こえた瞬間、黒い男の身体から赤色に輝く圧倒的な電波のオーラが放たれていく。
「ぐっ……!?ぐぅううう……!」
黒い男は苦悶の表情を浮かべるも、すぐに抑え込んだのか電波のオーラが身体から消え去っていく。その直後、上空からオーパーツとは違う別の声が響き渡った。
『ここまでのようだな、ソロ』
「……!その声は、オリヒメか?」
ソロと呼ばれた黒い男の問い掛けに、オリヒメと呼ばれた声の主は答えずに言葉を続けていく。
『ソロ、これ以上は事を荒立てるな……その辺にしておくがよい』
「オレに退けと?こいつらを倒さずに?」
『ソナタが本気ではないとはいえ、傷を負っておる……加えてオーパーツの件もある。今は無理をするな』
「…………」
オリヒメの言い分に筋があるからか、ソロは不本意な雰囲気を隠しもせずに構えを解く。
「運がいいな……決着はいずれ着けてやる……覚悟しておけ」
「待て!みんなを元に戻せ!!」
スバルが慌ててソロに近づこうとするも、それよりも早くソロは黒い球体と共にその場から消え去ってしまう。
「くっ!逃げられた!」
「奴のことは後だ!今はこっちの方だ!!」
悔しがるスバルにショウはそう告げると、徐々に小さくなっていた黒い穴に両手を突っ込んで収縮を無理矢理止めに入る。
「ヌググググ……!」
「ショウさん!」
「急げスバル!オレが穴を押さえている内に!!」
「は、はい!」
ショウの言葉にスバルは慌てた様子で頷くと、ウォーロックの顔がある左手を穴の中へと突っ込む。
「ウグググ……なんて力だ……!吸い込みの比じゃないぞ!」
「早くしないとみんなが……!」
『掴まえたぞ!早く引き上げろ!』
ウォーロックの言葉でスバルは力の限り引っ張り上げると、気絶したルナが服の襟首を掴まれた状態で引き上げられる。その引き上げた勢いで、スバルは後ろへと倒れ、ルナがその上へと落ちる。
「委員長!」
「まだ、閉じるな……ぐあっ!」
ショウは力の限り抵抗していたが、まるで穴から弾き飛ばされるように後ろへと倒されてしまう。その瞬間、黒い穴は影も形もなく消え去ってしまった。
「!!!み、みんな……」
「……クソッ!!」
三人を助けられなかったショックを受け、スバルはその場で膝を落とし、ショウは倒れたまま地面を殴る。
この日、スバルの友達であるミソラ、ゴン太、キザマロは行方不明となるのであった。