side???
「この門も入学式以来だね…アメリカもフランスも良かったけどやっぱり日本は落ち着く!」
制服に身を包んだ薄柿色の髪をした女の子が隣にいる妹に声をかける。
「そうね、まさか子役の頃にお世話になった監督に名指し指名されるとは思ってなかったわ」
同じく制服に身を包んだ白色の髪をした女の子が隣にいる姉に返す。
2人はどちらともなくこの学び舎…スターライト学園に足を踏み入れた。
彼女らがこの先紡ぎだす伝説は、今、この瞬間から始まった。
side織姫
私は今デスクの上に表示された2人分のプロフィールを確認している。
その2人は今日が初登校日。
しかし、先日編入してきた星宮いちご、霧矢あおいとは違い、4月に入学していた1年生。
その2人の名は結城イブと結城ノエル。
あの子たちがまだ1歳だった時に会ったことがある。
私のことなんて覚えていないでしょうけど、私はあの時のことを忘れられない。
この両親にこの子供ありとでもいうような整った顔立ちと存在感。
御粧ししていたこともあったのでしょうけど、私はあの2人から目が離せなくなった。
その存在感は2歳の誕生日から始めたという子役の仕事でも発揮され、瞬く間に名を轟かせて有名になっていった。
ただあの頃の蛍…2人の母親はフランスをホームに活動していたし、結城くん…2人の父親はアメリカで頻繁に仕事をしていた。
そのため日本ではあまり名前を聞かないけれどこれからどんどん有名になっていくことでしょう。
一部の生徒に肩入れするのは立場的に行けないことでしょうけど…あの子たちにはこれから先この学園で切磋琢磨し、ひとまわりも、ふたまわりも成長して言ってもらいたいわ。
だってあの子たちはあの美月をも超えるアイドルかもしれないのだから。
しばらくすると学園長室のドアがコンコンと叩かれた。
「どうぞ」
いつものように迎え入れると、先程まで考えていた顔が入室した。
「お久しぶりです、ヒメさん。結城イブです」
「お久しぶりです、と言っても10年以上前なので覚えてくださっているか…。改めて、結城ノエルです」
あの頃よりもさらに洗練された美しくも目を奪われるオーラを放つ2人に一瞬あっけに取られた。
オーラを見ただけで実力の高さが伺える。
ここまでとは思ってなかった。
これは1年生だけでなく上級生や美月にもいい影響を与えてくれそう。
「久しぶりね2人とも。あの時あんなに小さかったあなた達がこんなに大きくなったのね…」
2人が苦笑いするのを見て、つい親気分になっていたのに気づく。
個人的にアメリカの雑誌を取り寄せたりはしていたけど最近は見ていなかったわね。
なんて考えてから学園長として2人に接することを意識する。
「改めて学園長の光石織姫です。2人ともまずは、お仕事お疲れ様。」
「「ありがとうございます」」
私が学園長として振舞ったからか、2人はさっきまでの知り合いの大人と話しているような雰囲気がなくなり、アイドルの雰囲気になった。
「2人とも今日からこの学園でより高みをめざして日々努力してもらうために、これを進呈するわ。事前に選んでもらったアイカツカード3枚よ。」
イブのカードは裏葉柳色に藤色のポイントが入っているダークグリーンステージのブラウス、スカート、シューズ。
ノエルのカードは白に近い水色に紅緋色のポイントが入っているライトブルーステージのブラウス、スカート、シューズ。
「そしてこれは、生徒の証。学生証とアイカツフォンよ。これまでと違ってアイカツシステムを使う時はこの学生証を起動キーとして使って貰うわ。
アイカツフォンにはカードをデジタル保存することが出来るわ。」
一通りの説明を終えてほっと息を吐く。
疑問はないかを聞くと控えめにノエルが手を挙げた。
「先程、今日からと仰っていましたが、午後には授業や予定が入っているのでしょうか?
時間があるのであれば、一度寮の部屋を確認したいのですが」
「伝え忘れていたわね。授業は明後日から参加してもらうわ。明日は先に連絡した通りお披露目ステージがある。今日はその最終調整と学園生活に慣れる時間にしてくれて構わないわよ。」
質問にも答え終わって伝えるべきは全て伝えた。
この子達にアイドルの何たるかを話したところで理解しているだろうし、多くは語らない。
「じゃあ、あなた達の担任を紹介するわ。入学式では発表しなかったから知らないでしょう?」
私は内線の電源を入れて別府先生を呼ぶ。
すぐに学園長室のドアが開かれた。
sideイブ
バンッ!と大きな音をたてて学園長室に入ってきたのはジョニー別府先生。
マスカレード、神崎美月と言ったトップアイドルたちの振り付けを担当したすごい人。
「I’m、ジョニー!ギャラクシー1のティーチャーだ!ハニーたちは俺の生徒だ!分からないことがあったらなんでも聞いてくれ!2人ともよろしくな!」
テンション高いな、この人。
出された手を握り返しながらそんなことを思った。
ノエルも大人しいだけでテンションの高い人は苦手じゃないし、この人が先生でよかったかも。
ジョニー先生への挨拶を済ませ、織姫学園長に教えられた寮の部屋へ向かう。
あ、織姫学園長って言うのはさすがに学園内でヒメさんって呼ぶわけにいかないのでノエルと相談して決めた呼び方。
寮の部屋は数ヶ月前に送られていた私たちの荷物とベッドがダンボールに入ってビニールカバーがかかったまま放置されていた。
「ノエル、午前中に荷解き終わらせて午後は明日の確認しよ!」
「そうね、お昼まで時間もあるし荷解きしちゃいましょうか」
そうして2人でどんどん荷解きをしていく。
私たちの荷物は決して多い訳ではなく、特にぬいぐるみやポスター、雑誌なども持ち込んでいないので思いのほか早くに片付いた。
「イブ、こっちは終わったわよ」
「私も終わったし、ちょっと早いから学園内の散策してから食堂でランチにしようか?」
「そうしましょうか」
そして、レッスン室に始まり教室、体育館、グラウンド、広場、スタジオ、ステージ、楽屋などを見て周り最後に食堂にたどり着く。
そのままお昼を食べて、先程学園長にお願いして取ってもらったレッスン室でダンスや歌を確認していく。
昔からノエルの右側で踊るのは好きだった。
一卵性双生児じゃないから見た目は似てないけどそれでも双子だからか、心が通じ合う。
もちろん、ノエルと勝負するのも楽しい。
あれは毎回優劣つけがたいステージになるからハラハラする。
それでも、ノエルと一緒に踊るこの瞬間はヤミツキになる。
私は絶対音感と瞬間完全音記憶がある。
だから歌や声の演技が得意。
ノエルには動模倣の才能とズレを捕える動体視力がある。
だからダンスやウォーキングが得意。
お互い得意なことは正反対。
でも、だからこそ私とノエルは支え合って、時にぶつかって研鑽を積んできた。
私はお父さんに、ノエルはお母さんについて行って仕事することも多くて離れている時間もあった。
7歳の時は1年間、電話はしていても、顔を合わせることが出来なかった。
それでも私はノエルを1番信頼しているし、ノエルも私を1番信頼しているのがわかる。
だから私たちはお互いの存在を近くで感じられる2人でのステージが大好きなんだ。
「ノエル、明日もよろしくね」
「改めて何?まあ、よろしくね、イブ」