キャストリアに転生したが原作を壊してしまった 作:霧ケ峰リョク
この作品は未来編までの予定となっております。
「アルトリア! 大丈夫――――って、どう見ても大丈夫じゃない!?」
遅れてやって来たツナが私の家の惨状を見て叫んだ。
確かに思わず叫んじゃうぐらいに私の家は悲惨な事になっている。怪我こそしていないがついさっきまで明らかに堅気じゃない人間に襲撃され、今まで住んでいた場所が無くなったのは痛い。
加えて咄嗟の出来事だったから人払いの結界を張るのが遅れてしまい、さっきの戦闘を一般人に見られてしまった。
記憶処理は済ませたけど、この一連の騒動のせいでもうここで暮らす事は出来ないだろう。
まあこの騒動が無かったとしても破壊された家を直すお金なんかもう無いのだけれど。
「見ての通り、あんまり大丈夫じゃないですね。ちょっとした戦闘もありましたし」
「…………ゴメン」
「ツナが謝る理由は無いですよ。襲われた理由は何となく察してますが、襲って来た方が悪いですから――――いえ、それも正しくないですね」
六道骸がランチアを使ってまで襲撃しに来たのだって、多分だけれど
どっちかは分からないが多分あっち側の介入だろう。こっち側って事も考えられないわけじゃないけど一応は仕事もしているし、サボってない筈だからそうとしか考えられない。
「彼にその自覚は無かったけど…………後押しを受けているのは何となく分かる。でなければ、私に襲撃を仕掛けたりなんてしてこない。きっと、私の事を見過ごせなくなってきたんでしょうね」
ツナの為に作ったプレゼントを手の中で弄びながら呟く。
今まで見逃されてきたのは私が積極的に関わってこなかったからだ。アレはまだツナ自身の力だから許されていたけど、
恐らくさっきのあれは忠告。これ以上関わるのは止めろっていう脅し。
「
「アルトリア…………」
「本当、止めてよね。どっちを選んでも地獄しかない選択を突き付けるの」
私の使命に逆らえば此方の抑止力に殺され、使命に従って生きればあちらの抑止力に殺される。
いや、それも違うか。どっちの道を選ぼうが私は死ぬ。
どう足掻いても変えられない。絶対的な現実だ。
「…………ごめんなさい。ちょっと弱音を吐きました。やっぱり家を壊されたのはきつかったみたいです」
「当然だよ。アルトリアの、亡くなった両親が残したものなんだから」
「そうですね。私には勿体ない人でした」
海辺で流されていた私を見つけて拾い、自分の子どもとして育ててくれた。
嘘を吐いた時だって何度もある。けれど、彼等が言った「愛している」という言葉に嘘は無かった。彼等は私の事を本当の自分の子どもと思ってくれていた。
こんな人間でさえない私の事を、子どもと思ってくれていたんだ。
「ツナ。私は貴方に全てを話していません」
「うん、知ってる」
「大事な事も、私の目的も、使命も、それをした結果何が起こるのかも」
「そうだね…………オレも、話された事だけしか知らないから。その話された事だけでも耳を疑う内容だったし、かなりヤバかったけど」
「本当なら貴方に全てを話さなければいけないんですけどね」
ツナに話した事はこれから訪れる危機と最終的な結果、それに対抗する為に必要な事だけだ。それ以外にも話してる事はあるが、重要なのはこの三つぐらい。私の正体が何なのかすらも中途半端にしか話してないし、本当の役割とか話さなくちゃいけない事も黙ったままでいる。
それは彼に対して不義理になる。にも関わらず私はツナに話せないままで居る。
「――――大丈夫」
にも関わらずツナは卑怯な私に対し優しく言った。
「言いたくないような事なら言わなくても良いよ。オレはアルトリアの味方だから。それがあの日、一緒に楽園に行って色々知って、きみに告白するまでずっと悩んで出した結論だ」
「…………本当に私は幸せ者ですね」
そう呟きつつツナにプレゼントとして作ったリングを渡す。
「これは…………?」
「私からのプレゼントです。これから先の貴方の役に立つ筈です。使い方は――――」
私の説明を聞いてツナは難しい顔をした後、リングを自身の中指にはめる。
「ありがとう。上手く使いこなしてみせる」
「それとアレもこれからはどしどし使って下さい。多分、これから先はその余裕も無くなるかと」
「分かった」
言葉の意図を察したツナは決意を固めた顔を浮かべる。
これで大丈夫、とは口が裂けても言えない。何が起こるのか分からないのが世界だし、使い所を間違えればピンチになる事だってある。
加えて、あれを使っている所をリボーン達に見られれば間違いなく追及が来る。
言い訳とかも通じないだろうし、説明が本当に面倒くさい。
ただでさえ私の素性を訝しんでいるみたいだし、何て説明したら良いのやら。
まあ、それは今は置いといて良いだろう。それ以上に問題なのは――――、
「それはそれとして、これから何処で暮らしたら良いんですかね?」
六道骸によって破壊された私の家に視線を向ける。
家族との思い出が物理的に砕かれたのもそうだけど、それ以上にこれからの生活をどう送れば良いものか。
「それならオレの家に来る? 居候とか沢山居るしまだ暮らせるとは思うけど」
「お言葉に甘えさせていただきます。流石に家無しはきついので」
正直この申し出はかなりありがたい。
リボーンとも一緒に暮らさないといけないのははっきり言ってかなりきつい。が、いずれ私の素性を明かさなければいけないから良い機会だと思う事にした。
何時までも隠し通せる事じゃないから。
一つ問題があるとするならば、私は今回の騒動に関わる事は出来ない事だろうか。
目に見える形で妨害をしてきた以上、これ以上の手助けは危険だ。
何とか出来る、戦う力を持っているのに肝心な時に介入できないのは辛い。
「頑張ってね。今回私はこれ以上の手助けは出来ないから」
「うん。頑張る」
ツナが無事に帰って来ることを願う事しか、今の私には出来なかった。
+++
アルトリアから貰ったプレゼントを見て、綱吉はふと過去を思い返す。
それは彼女に出会ってから暫く経った日の出来事。空を見上げていた彼女が告げた何気無い言葉。
「この星の外にも生き物は居るんですよ」
宇宙人の存在、実在するかどうかすら怪しいそれの実在を彼女は当たり前のように告げた。
子どもながらに宇宙人を信じているというよりはその存在を知っているかのようにも見えた。
「まあ宇宙人というには物騒なのが多いんですけどね。捕食遊星ヴェルバーとかオリュンポス十二機神とか彗星の単独種とか膨張する太陽とか正真正銘の怪物とか宇宙ゴキブリとか」
「な、なんか物騒なのが多いね」
「基本的に物騒なのが多いんですよ。人間の価値観や感情では通じないのばっかりですし、善意で碌でも無い事を引き起こしたりするのも居ますし、中には悪意しか持っていないのも居ますし」
そう呟くアルトリアの顔は何処か遠い目をしていた。
今ならば理解出来るそれらの言葉の意味も当時の綱吉には理解できず、ただそんなのも居るんだ程度にしか思わなかった。
「――――後二十年、それまでの間に造らなくちゃ」
そして彼女が抱えているものの大きさを理解した時に、綱吉はアルトリアの味方で居続ける事を決意した。
「どうしたんだツナ?」
「…………ううん、何でも無いよ」
山本武から声を掛けられた事によって綱吉は我に返り、リングから視線を外して前を見据える。
目の前にあるのはかつて黒曜ランドと呼ばれた複合娯楽施設。
現在はマフィアから追放された犯罪者達の根城であり、敵の拠点でもある。
アルトリアに襲撃を仕掛け、沢山の生徒に危害を加えた敵が居る場所だ。
その事実に綱吉は怒りを抱く。たとえその資格が無かったとしても、抱かずにはいられなかった。
「それじゃあ突入するぞ」
リボーンの言葉と共に綱吉は黒曜ランドに足を踏み入れる。
もう二度と引き下がる事は出来ない道へと歩み出した瞬間だった。
次回は飛んで六道骸戦です。
主人公が関わらないからね、ある程度は巻いていきます。