キャストリアに転生したが原作を壊してしまった   作:霧ケ峰リョク

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試練と憑依弾

「――――ふむ、成る程成る程」

 

 かつて黒曜ランドと呼ばれた施設があった廃墟の中、パイナップルを連想させるような髪型をした右目に六という漢数字が刻まれたオッドアイの少年が興味深そうに手の中にあるリングを眺めていた。

 瞳を連想させるような不吉なリング。それを封印するかのように鎖で巻いていた元の持ち主である少女。

 どちらも非常に興味深いモノだった。特に後者は裏社会で多種多様な人間を見てきた骸でさえ初めて見るタイプの人間だ。

 いや、そもそも人間なのかすら怪しい。人の姿形こそしているし、精神性も人間に近い。

 だが明らかに何かがずれている。そしてそのずれが何かは分からない。

 

――――もう一度会ってみれば分かるかもしれない。

 

 そう考えながらふと視線をこの部屋の出入口の方に向け、骸は思わず笑ってしまう。

 どうやら随分と考え込んでいたらしい。本当ならばここにのこのことやって来た標的に接触し、彼の傍に居るアルコバレーノが何をするのかを聞き出そうと思っていたのに。

 だがこれまでの戦闘の様子を見るに、あのアルコバレーノは特殊弾を撃つ等のサポート行為以外していない。

 恐らくそういう指令が下されているのだろう。

 

「本当にマフィアというものはくだらない。そうは思いませんか? ボンゴレ10代目」

「それには同意するけど、お前もマフィア関係者だろうが」

 

 部屋に入って来た標的である沢田綱吉は酷く苛立っていると言わんばかりに顔を顰めていた。

 その後ろには彼の仲間と思わしき者達が数人。その中にはアルコバレーノも居り、一番最初にここに攻め込んできた雲雀恭弥も居る。

 尤も、全員無事というわけではないし雲雀恭弥に至っては以前の戦闘で負った怪我がまだ残っている。

 唯一無事なのは直接戦闘に参加しないアルコバレーノだけだ。

 

「クフフ、心外ですね。僕をマフィアと一緒くたにするとは」

「似たようなものだろ。お前が何を考えているかは知らないけど、沢山の人を傷付けてるのは一緒だ」

「…………成程、手厳しいですね」

「思っても無い事を言うな」

 

 互いに軽口を叩き合いながらも決して友好的ではなく、むしろその逆で互いに殺意と怒りをぶつけあう。

 一触即発、今にも戦いに発展しそうだった。

 だが、それと同時にやるせないといった感情が隠れ見える。

 まるで自分には怒る資格が無いと言っているような、あのアルトリア・キャスターと同じ表情をしていた。その事実に骸は僅かばかりの違和感を抱きながらも自身の手駒と化した少年(フゥ太)を使って自らの目的を果たそうとする。

 すると沢田綱吉の前に一人の少年が出た。並盛中学校風紀委員長、雲雀恭弥である。

 

「沢田綱吉。ここまで連れて来たことは感謝するけど、あいつは僕が咬み殺す」

「おやおや、あれだけ痛めつけられてまだそこまで吠える事が出来るとは」

 

 満身創痍の身でありながら手負いの獣とは思えない程の殺意と怒りを此方にぶつけて来る雲雀恭弥の姿に苦笑する。

 本当に表社会の一般人として生きてきたのだろうか?

 下手なマフィアよりもよっぽど恐ろしい相手だ。真正面からの戦闘を避けて正解だったかもしれない。

 そう思ってしまう程の気迫だった。

 

「おい雲雀!! 10代目に助けられたっていうのに…………!」

「まあ待てよ。流石の雲雀でもその怪我じゃ立ってるのがやっとだろ?」

 

 獄寺隼人が怒り、山本武がそれを諫めながら此方に戦意を向ける雲雀恭弥を制止する。

 それでも雲雀恭弥が此方に向かってくるのを見て、顎に手を当てて考える。

 

「ちょっと手間ですね」

 

 手負いではあるもののあの三人、いや、此方に警戒してポイズンクッキングを用意している毒サソリのビアンキを含めたら四人。

 それらを無視して沢田綱吉と契約をするのは非常に困難だ。

 ならばどうするべきか――――そんなのは簡単な話だ。周りに邪魔なのが居るのならば、その邪魔者を排除していけば良い。

 

「クフフ」

 

 敵を前にして呑気に言い争っている愚かな連中を前に骸は思わず笑ってしまい、瞼を閉じてしまう。

 そして目を開いて挑発しようとして、自身の眼前に沢田綱吉が立っている事に気が付いた。

 

「悪いけど、お前のような相手に何かさせるつもりは無い」

 

 沢田綱吉はそう言うと手に持っていたバットを思いっきり振るう。

 途中でバットが変形し、一本の日本刀が姿を現す。自身に目掛けて振るわれるその攻撃を避ける事が出来ず、骸の胴体に刀の峰が直撃する。

 

「ぐはっ!?」

 

 油断しているところに強烈な一撃を受け、骸の身体は宙を舞い壁に叩き付けられる事となった。

 

   +++

 

 剣を持った沢田綱吉は性格が変わる。

 普段の争いを嫌いマフィアのボスにはとても向いていない性格から、敵対した相手を全力で叩き潰す事も厭わない容赦のない性格へと変化する。

 勿論、根本的なところは変わっていない。性格が変わろうとも命を奪ったりしない。

 ただ変わるのは手段と方法。普段の彼ならば暴力に訴えられれば情けなく悲鳴を上げたり弱音を吐いたりするが、剣を持った綱吉は相手の無力化を最優先する。

 要するに叩きのめしてから話を聞くというやつである。

 そして、六道骸という死刑囚を相手にその選択をした事は正しかった。

 

「終わり」

 

 壁に叩き付けられて消沈した六道骸を見下ろしながら綱吉は淡々と呟く。

 勝負すら始まっていない。相手に何もさせず戦闘を終了させるのは理想的な行動だった。

 かなり甘い生徒が容赦なく行動できたのは、アルトリアに襲撃を仕掛けた事とさっき出会ったランチアに対する所業で内心かなり怒り狂っていたからだろう。

 

「ねぇ、沢田綱吉。僕がやるって言ったんだけど」

「すみませんが、あいつは今の雲雀さんだときついと思ったんで。それに、あいつに何かさせたら不味いって思ったんで」

 

 怒っている恭弥に対し淡々と説明しながら綱吉は陰に隠れていたフゥ太の方に歩む。

 フゥ太の様子は明らかに普通ではなく、虚ろな表情をしていてその手に持っていた三又の剣、もしくは槍の先端のような物を振るって攻撃を仕掛けてくる。

 もし油断していたならば喰らっていただろうが、今の綱吉に油断は無い。

 フゥ太の振るった武器を取り上げて適当なところに投げ捨て、フゥ太を力強く抱き締める。

 

「お前は悪くないんだぞ。だから、早く帰って来い。母さんも心配してるぞ」

「っ、ツナ…………兄…………」

 

 綱吉の言葉を受け、フゥ太は正気を取り戻しそのまま意識を手放す。

 ランチアが施されたものと同じマインドコントロールを解除したのだろう。

 ボンゴレの血縁にのみ発現する超直感が答えを導き出した。この戦いは生徒(沢田綱吉)を間違いなく成長させた。それは間違いない。

 ただ、懸念点があるとするならばレオンが未だ羽化しない事だろう。

 形状記憶カメレオンであるレオンは生徒に試練が近付くと繭に変化する。それがまだ羽化しないということは、まだ試練が終わっていないという事。

 

「ツナ、油断すんじゃねーぞ」

「油断はしてないつもりだけど――――」

 

 リボーンの忠告に綱吉は答えようとして、何かに気が付いたのか六道骸が倒れていた方向に視線を向ける。

 釣られてリボーンも視線を向ける。そこにはさっきまで倒れていた筈の六道骸の姿は無かった。

 

「ごめん。倒せてなかった」

「クフフ…………中々やりますね」

 

 倒した筈の敵を倒せていなかった、その事実に戦闘態勢に入る綱吉達の耳に骸の声が響く。

 声の出所は不明。周囲を見渡しても姿は見えない。

 

「このリングが無ければ今の一撃で負けていたかもしれませんね…………次は此方の番ですよ」

「――――ッ!」

 

 骸がそう言った瞬間、綱吉は咄嗟に刀を振るう。

 前には何も無い、筈にも関わらず金属同士がぶつかり合う音が鳴った。

 

「どうやら気付いているみたいですね。ですが、お仲間は別みたいですよ」

 

 その言葉と共に仲間達の身体に浅い傷が走る。

 傷を負っていないのはこの場では意識を手放したフゥ太、攻撃を防いだ綱吉、そして避けたリボーンのみ。

 

「さて、これで形勢逆転ですね」

 

 骸の言葉が聞こえた瞬間、仲間達の気配が変わる。

 いつもの彼等彼女等から六道骸が纏うものと同じものに。

 

「では貴方の身体も頂くとしましょうか」

 

 そう言い放つ仲間達の右眼が六道骸のものと同じになっていた。

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