キャストリアに転生したが原作を壊してしまった   作:霧ケ峰リョク

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本当なら黒曜の話は3話で終わらせようと思ってたの。
ただ長くなるのも嫌だから何とか3話で収めようと思ったんです。

普通に分けた方が良かったと後悔しました。
約一万は書き過ぎた。


私が認めた王様

「――――憑依弾か」

 

 目の前で様子が変わった仲間達を見て、リボーンは脳内を過ったある可能性を口にする。

 そして、その可能性は当たっていたらしく獄寺隼人――――六道骸はその言葉を聞いて「ほう」と感心しているかのようにリボーンに視線を向ける。

 

「流石はアルコバレーノ。博識ですね」

「憑依弾は禁弾の筈だぞ。何処で手に入れた?」

「手に入れたとは心外ですね。そもそもこれは僕の物ですよ」

 

 裏社会の事情に精通していない綱吉には理解できない内容の会話を二人は交わす。

 名前の時点でその効果もある程度察する事は出来る。なお、リボーンの反応から察するに、六道骸が使ったその憑依弾というのは想像以上に碌でも無い代物であるらしい。

 

「リボーン、どういうこと? その憑依弾って何なの?」

「憑依弾はエストラーネオファミリーが開発した特殊弾だ。その名の通り、被弾者は他人の身体を乗っ取る事が出来るとされている。相性、使用法、製造方法。全てにおいて人道に反していた為にマフィア界に禁弾として指定された危険なやつだ」

「…………マフィアに人道があるのか怪しいんだけど」

「そのマフィア界でさえ人道を理由に禁じてるぐらいやべぇ代物って事だ。憑依先の身体がどれだけダメージを負っても憑依した奴は痛みすら感じないんだからな」

「っ…………」

 

 確かに禁じられるに足る理由だ。

 リボーンの口から語られた憑依弾の情報に綱吉は思わず口を噤む。

 自身の精神を別の器に移す術がある事は知っているし、その応用発展系である第三法についてもアルトリアから教わっている。

 ただそれの実物を見たのは初めてだった。

 

「今じゃ製造方法はおろか、実物さえ存在しない筈の弾丸だった筈なんだがな。それに、複数人に憑依する事が出来るなんて聞いたこともねぇ」

 

 そう言って獄寺隼人に憑依した六道骸をリボーンは睨み付ける。

 

「お前、エストラーネオファミリーの残党か」

「――――クハハハ!!」

 

 リボーンからの指摘に骸は愉快そうに高笑いし、怒り狂ったかのような視線をリボーンに返す。

 今まで見せていた軽薄かつ底冷えするような冷酷さを感じさせるものではなく、ドス黒い憎悪と怒りが発露している。

 

「――――復讐」

 

 綱吉は六道骸の目的を、その胸の内に抱えていたものを今ここで理解する。

 死刑囚となりながらも脱獄し、態々こんな遠く離れた異国の地にまでやって来たのは全て復讐の為。

 

「復讐ですか。安易な発想ですね」

「でも、否定しないんだな」

「クフフ…………」

 

 ビアンキ、山本武の口から普段彼等がしない特徴的な笑い声を上げる。

 だがそれだけだった。それ以上答える事も、否定する事も無い。

 

「僕の目的は、この世界を純粋で美しい血の海へと変える事」

「世界大戦、なんてベタ過ぎますがね」

「ですがそれよりも先に優先すべき事がある」

「マフィアの殲滅、その為にボンゴレ10代目。きみの身体を頂きましょう!」

 

 そう言うと骸は乗っ取った仲間達の身体を使って綱吉に攻撃を仕掛ける。

 

「ツナ、恐らくだがあの剣で傷付ける事が憑依の条件だ。絶対に傷付くんじゃねぇぞ」

「分かったけど…………!」

 

 多対一の状況でその条件を達成するのはかなりの無理難題だ。

 そう思いながら綱吉は自身に向かって骸の三叉を振るう武の攻撃を刀で防ぐ。

 

「ぐっ…………! この人数相手じゃ流石にきつい…………!」

「成る程、貴方の戦闘力は僕が憑依した者達よりも高いようですね。恐らく、素の僕よりも強いと見た」

「ですが――――」

 

 眼前で三叉を振るいながらもう片方の手で刀に変形した山本のバットを振るおうとする武に憑依した骸、そして綱吉の背後でトンファーを振るおうとする恭弥に憑依した骸の二人。

 この二人の攻撃を同時にいなす事が出来ず、殺傷性が高い武の刀による攻撃こそ刀で防ぐ事が出来たものの、恭弥のトンファーによる一撃を背部に受けてしまい綱吉は吹っ飛ばされてしまう。

 

「カハッ…………!」

「これで終わりではありませんよ」

 

 壁に叩き付けられた綱吉に憑依された恭弥がトンファーを振るいながら向かってくる。

 態勢を立て直すよりも先にトンファーが振るわれる――――事は無く、恭弥はその場に倒れ込んだ。

 

「まさかこれ程の深手で動いていたとは…………末恐ろしい男ですね」

「っ、雲雀さん」

 

 倒れたその場で立ち上がろうとするも出来ずに震えている恭弥の身体。

 そんな状態にも関わらず身体を無理矢理動かされた事実に綱吉は唇を噛み締める。

 

「…………本当に、痛みを感じないんだな」

「ええ。さっきアルコバレーノが言ったでしょう? 僕は痛みを感じない」

 

 骸の言葉に綱吉は激昂して感情のままに詰め寄ろうとする。

 だがすんでのところで堪え、仲間達に憑依した骸達を睨み付ける。

 

「おや? 怒らないんですか? 貴方の性格から考えれば怒りの言葉の一つでも吐くと思ってましたが」

「何を言っても無駄だからだよ。お前の復讐は逆襲じゃなくて報復で、行き場の無い憎悪をぶつけているだけだから。お前は自分が壊れても周りが壊れても止められない」

 

 以前アルトリアから教わった復讐者(アヴェンジャー)の定義。

 聞いた時は到底理解出来るものではなかったが目の前に現れた今、綱吉はようやく理解する。

 だからこそ何を言っても無意味だと判断した。

 ましてや、自分には六道骸の行いを糾弾する資格が無いのだから。

 だからこそ、力づくで止めるしかない。

 

「クハハッ! 言いますね。なら好きにさせていただきましょう」

 

 ビアンキの口でそう言い放つと、部屋の出入り口から二人が中に入って来る。

 一人は綱吉がさっき倒した城島犬で、もう一人がここに来る時に獄寺隼人と救出した雲雀恭弥が倒した柿本千種だった。

 二人とも右目が六道骸の物と同じになっており、仲間達と同様に憑依されている。

 

「仲間でも関係無い、か」

「当然です。それと一つ訂正しておきます。彼等は仲間ではない。僕自身だ!」

 

 骸がそう叫ぶと憑依された者達が綱吉に向かって突貫する。

 

「貴方の強さは生来のものではなく、努力によって培ってきたもの。日々の特訓を通して地に足を突いた、揺るぎない強さ」

 

 姿勢を崩し刀を杖代わりにして堪える綱吉の耳に武の声が響く。

 

「経験や身体の動かし方、駆け引きを含めた戦闘力において貴方はこの器、山本武を上回る。ですが才能や身体面ではこの肉体の方が勝る」

「くっ…………」

「身長差、筋肉量、体格。その全てにおいてきみは負けている。剣は素人のようですが幼少期から野球の為に努力を積み重ねてきたこの身体」

 

 武に憑依した骸の右眼の数字が六から二に変化する。

 

「そこに剣技が加わればどうなると思います?」

「まさか…………?」

「ええ、そのまさかです。僕は六つの世界を巡った事で六つの異能を持っている。一つはさっききみが解除してみせたマインドコントロール。二つ目が第二の能力(スキル)餓鬼道――――」

 

 骸がそう告げた瞬間、何時の間にか綱吉の眼前に立っていた。

 

「この能力は他者の技を略奪して奪う能力」

「っ、速――――」

「山本武の肉体(ハード)にかつてイタリアで名を馳せた剣士の剣技が加わればどうなると思いますか?」

 

 その言葉と共に振るわれる一閃はさっきぶつかり合った時よりも遥かに鋭く、それでいて殺傷力を秘めている。

 死ぬ。これを受ければ死ぬ。

 刀で受け止める――――不可能。山本の力で放たれたこの攻撃は自分では防げない。

 回避に専念する――――こっちも同じく不可能。ただ避けるだけでは間に合わない。

 真正面から受け止めれば刀ごと圧し折られて身体が両断されるであろう一撃。

 綱吉は攻撃を刀で受け止めて滑らせる事で受け流して回避し、武から死ぬ気で距離を取る。

 

「っ、お前…………オレを乗っ取るんじゃなかったのかよ…………!」

「ええ。そのつもりですよ。そして、当然のように貴方は避けた」

「避けなきゃ死ぬからな!!」

「ですが次はどうです?」

 

 武の回避した先にあったものはダイナマイト、針、毒蛇の群れ。

 それはたった一瞬だけしか視認する事が出来ず、何事も無かったかのように消失する。同時に足下がボコっという音と共に泡立ち、湧き上がった巨大な火柱に飲み込まれる。

 

「第一の能力地獄道は幻覚の能力」

「第三の能力畜生道は有害な動物を召喚する能力」

「さあ、どうします?」

 

 次々と襲い来る脅威に脳のキャパシティが超えそうになりながらも綱吉は直感に身を任せその場で跳躍する。

 あまりのリアリティに熱さを感じそうになりながらも所詮は幻覚、分かっているのなら大した問題じゃない。

 それよりも問題はダイナマイトや針、毒蛇の方だ。

 早く対処しなければ仲間達にも危害が及ぶ。が、幻覚のせいで何処にあるのかが分からない。

 幻覚の使い方としてはこっちの方が何倍も厄介だ。

 そう思いながらも綱吉は己の勘頼りに刃を振るい、何かを斬った手応えを感じ取る。

 

「まさか全ての攻撃を防ぐとは」

「しかし第四の能力修羅道は格闘能力! 純粋な身体能力の強化! そう容易く防げるとは思わない事ですね!」

 

 着地直後に襲い掛かるビアンキと犬の二人。

 修羅道によって強化されている上に動物の能力を宿す事が出来る犬にポイズンクッキングを使うビアンキ。どちらも非常に厄介だ。ここまで多いと対処のしようが無い。加えて味方の身体だから攻撃もしづらい。

 死ぬ気になればこの状況を打破出来るかもしれないが、その死ぬ気弾も底をついている。この状況を打破出来る技はあるがそれもここまで立て続けに攻撃されれば出す事も出来ない。

 

「本当に最悪だなっ!」

 

 犬の攻撃を避けて顎に蹴りを叩き込み、自身の刀を絡め取ろうとするビアンキを払い除け距離を取る。

 

「餓鬼道!」

 

 刀を構えた武が再度接近する。

 恐らくさっきの一撃をまた放つのだろう。

 そう判断した綱吉はさっきの攻撃を防いだ時と同じように刀で受け流そうとして、自身の持つ刀の刀身がビアンキのポイズンクッキングに変化している事に気が付いた。

 

「ポイズンクッキング、千紫毒万紅…………!?」

 

 ビアンキのポイズンクッキングの中でも最大最強の奥義である千紫毒万紅。

 その効果はビアンキが触れた物を全てポイズンクッキングに変えるというもの。

 

「刀に触れた時に発動した…………!?」

「その通り。そして、その刀ではこの攻撃を防げない!!」

 

 再び斬撃が振るわれ、刀と刀が交差する。

 ポイズンクッキングと化して強度が落ちた刀で骸の攻撃を受け流す事は敵わず、刀身が真っ二つにへし折れる。

 それでも綱吉は後方に跳躍する事で骸の攻撃を薄皮一枚で抑える。

 しかし――――、

 

「これでチェックメイトです」

 

 自身の周りを舞っているダイナマイトを見て、綱吉は自分が詰んだ事を理解する。

 反撃に移る事はおろか、回避する事も不可能。

 肝心の刀もアルトリアから貰ったプレゼントも使用不可。

 

「…………くそ」

 

 自身の失策を手遅れになった今ようやく理解し、綱吉は起爆したダイナマイトの爆風を全身で浴びる事になった。

 

   +++

 

「っ、あ…………ぐぅ」

 

 全身に走る激痛と熱さから自然と呻き声が出てしまう。

 どうやら意識を一瞬失ってしまったらしい。五体満足無事とは到底言えないが、それでもこの程度で済んだ。まだ骸に憑依されていない。

 その事実に安堵しながらも、事態は何一つ良くなっていない事に歯噛みする。

 

「おや、まだ意識があったとは」

「…………お陰様でね」

 

 痛みで軋む身体を庇いながら立ち上がる。

 

「ツナ。大丈夫か?」

「見て分かるだろ…………全身すげー痛いよ」

 

 恐らく質問の意味は違うのだろうが、今の自分にそんな余裕は無い。

 爆風によるダメージと熱波による火傷は身体を苛んでいる。加えて、から元気を振り絞ろうにも目の前のこの現状はあまりにもキツすぎる。

 刀を持っていた時にあった自信も、冷静な思考も無い。

 痛くて怖くて逃げ出したい。そんな気持ちが今の自分を支配しようとしている。

 強い自分からただのダメツナに戻ろうとしている。

 その事実に綱吉は震えながらも、ある決意を固めようとする。

 

「…………やるしか、ないか」

 

 多分、あの力と貰ったプレゼントを使えばこの状況をひっくり返す事が出来る。

 ただ一つ問題があるとしたら、必殺過ぎるのだ。発動すれば間違いなく勝つ事は出来る。ただこの状況で仲間を殺さないで勝つ自信が無い。かといって殺さないように加減すれば間違いなく自分は負ける。

 だから発動を躊躇していたし、使わないで勝ちたかった。

 発動すれば最後、勝つか負けるかの二択しか残されていないのだから。

 だが六道骸、この男に勝つにはそれではダメだった。

 

「本当にダメツナだよオレは…………」

 

 そう言って綱吉は両手を前に突き出す。

 皆の事は大切だ。それは嘘では無い。だがいつかはやらなければいけない。

 それがたまたま今日だっただけ。アルトリアの味方で居続けると決意したその時から覚悟はして来た。

 

「皆、ごめん」

「――――っ!?」

 

 何かが起こる、そう理解したのか皆に憑依した骸達は距離を取ろうとする。

 関係無い。これは対象を選ぶ事が出来る。

 そしてこの距離なら全員閉じ込める事が出来る。

 

「大地の時間、巡る天空。我等は――――」

 

 だが、そこから先を呟く事は出来なかった。

 脳裏を過るのは仲間達と過ごした日々の思い出。

 

『10代目! 今日はイタリアから沢山のボムを仕入れたんですよ! これで10代目を敵から守る事が出来ます!』

『オレとお前、補習だってよ。一緒に頑張ろうぜ、ツナ!』

『ねぇ、沢田綱吉。また風紀を乱したね? かみ殺す』

『ツナ。乙女にとって料理とは愛なのよ』

 

 舌が震え、身体が震え、視線が震え、何も出来なくなっていく。

 皆を殺すと決意を固めた筈だった。固めた気になっていただけだった。

 

「オレには、出来ない…………」

 

 何の覚悟も出来ていなかった、その事実に絶望して綱吉はその場で地に倒れるように跪く。

 情けない、見苦しい。あれ程カッコつけたにも関わらず、肝心な時に何も出来なくなる。

 

「やっぱり、オレはダメツナだ…………!」

 

 突き付けられた現実に打ちひしがれ、綱吉は何も出来なくなった。

 

「…………どうやらこれ以上は無いみたいですね」

「貴方は危険だ。何かする前に契約を済ませておくとしましょう」

 

 仲間達に憑依した骸が契約の為の武器を持って歩み寄って来る。

 瞬間、綱吉の顎に強烈な蹴りが叩き込まれた。

 

「へぶっ!?」

「このダメツナが」

 

 蹴りを叩き込んだのはリボーンで、呆れ半分怒り半分といった顔をして自身の胸ぐらを掴む。

 

「お前はどうしたいんだ?」

 

 リボーンは真っ直ぐ綱吉の目を見据えながら言い放つ。

 

「ど、どうって?」

「言葉通りの意味だ。お前はどうしたいんだ?」

「み、皆を殺そうとして…………でも、出来なくて…………」

「そうじゃねぇ。オレはお前が何を思い、どうしたいのかを聞いてるんだ」

 

 明らかに怒っている様子のリボーンの言葉に綱吉は言葉を失う。

 そして、少しずつ言葉を紡いでいく。

 

「…………骸が許せないって、思った。でも、オレには怒る資格が無いから」

「何で無いんだ?」

「だって、オレ…………自分の為に皆を殺そうとして」

「そうだな。さっきまでのお前は最低な奴だった。ボス失格、どうしようもない奴だった」

 

 怒り混じりの言葉に綱吉は目を逸らす。

 痛かった。蹴られた痛みよりも、その瞳で見られる事の方がずっと痛かった。

 

「だが、お前はしなかった。出来なかっただけかもしれないがしなかった」

「う、うん」

「ならお前に怒る資格が無いわけないだろ。もっと正直になれ。変なところで諦めんじゃねえ。お前が本当は何を思ってんのか、本当はどうしたいのか、全部ぶちまけろ」

 

 その言葉を受けて綱吉はゆっくりと言葉を零していく。

 

「皆を殺したくなんてない。一緒に帰りたい」

「そうか」

「皆で野球大会を応援しに行きたい。花火大会だって、海だって、夏祭りだって、雪合戦だって…………もう一度やりたい」

「そうだな」

「皆と一緒に居たい…………アルトリアと笑いながら過ごせる日がずっと続いてほしい」

 

 次から次へと口から出て来るのは自分の本音。

 覚悟を決めたとカッコつけて目を逸らし続けて来た、沢田綱吉の本音だった。

 

「もう一度聞く。お前はどうしたい?」

「――――皆を助けて、骸に勝ちたい。自分も他人も巻き込んで燃え尽きるだけの奴なんかに負けたくない…………こいつにだけは、勝ちたいんだ!」

 

 綱吉のその言葉を聞いてリボーンは笑みを浮かべる。

 そして繭になったレオンが突如として光り輝いた。

 

「なっ、これは…………っ!?」

「レオンは生徒が危機に陥った時繭になる。そして、孵った時にはその生徒専用のアイテムを吐き出す。ディーノの時は鞭とエンツィオだったな」

「っ、させるか!」

 

 新たに発生した不確定要素を排除すべく骸はレオンに攻撃を仕掛けようとする。

 しかし距離を取っていたせいで遠く、レオンはその口からある物を綱吉に向かって吐き出した。

 

「け、毛糸の手袋?」

 

 吐き出されたそれは毛糸の手袋だった。

 数字で27と書かれており、血行が良くなりそうな感じがした。

 

「こ、これでどうやって戦えって…………って中に何か入ってる?」

 

 レオンが吐き出した手袋の中に入っていた物を手のひらの上に落とす。

 中に入っていた物、それは一発の銃弾だった。

 

「ツナ、それを寄越せ」

「特殊弾!? させるか!!」

 

 リボーンがその弾丸を綱吉の手から引ったくり、その意図を察した骸がさせまいとリボーンに攻撃を仕掛ける。

 だが骸の攻撃は当たる事無く、リボーンは新たに出現したその弾丸を拳銃に込めた。

 

「見た事のねぇ弾だが、ぶっつけで試すしかねぇな」

 

 流れるような動作でリボーンは銃口を綱吉の眉間に向け、引き金を引いた。

 銃声が鳴ると同時に綱吉の眉間に衝撃が走る。

 瞬間、綱吉の脳内にある光景が映り込む。それは黒川花が自身に対して小言を言うというものだった。

 綱吉は何となく自分が撃たれた新しい特殊弾の効果を察する。

 特殊弾――――仮に名付けて小言弾の効果は恐らくリアルタイムで呟かれた小言を被弾者に聞こえるようにするというもの。

 何て意味の無い効果だ。自分専用のアイテムが小言を聞かせるだけだなんて。

 そう思ってしまう綱吉の脳裏に次々と小言が流れ始める。

 しかし、それはただの小言だけではなく、自分を心配する人達のものへと変わり始めた。

 

――――ああ、成る程。そういうことか。

 

 綱吉は小言弾の本当の効果を理解する。

 素直じゃないと自嘲すれば良いのか、それとも捻くれていると笑えば良いのか反応に困る。

 そして、脳内に現れたアルトリアを見て綱吉は困ったように笑う。

 

「やっぱり、きみは分かるか」

「そうですね」

 

 アルトリアも同じように困ったように笑っている。

 恐らくこうなるとは思わなかったのだろう。彼女が特別な存在だからこうなったのかは分からないが。

 

「アルトリア、ごめん。やっぱり、オレ覚悟が出来てなかった」

 

 綱吉はアルトリアに謝罪する。

 

「謝る必要は無いですよ。無理して覚悟を決める必要なんかない事ですし」

「でも――――」

「誰だってハッピーが一番です。これしか無いと思い込んで自分で選択肢を狭めていたら碌な結果になりません」

「うん、本当にその通りだ」

 

 綱吉はアルトリアの言葉を受け反省する。

 

「だから、ツナはツナのやりたいようにやれば良いんです。それがきっと一番の正解だから」

「…………リボーンにも同じ事を言われたよ」

「やっぱり家庭教師ですね。よく見てます。ならもっと背を押してあげます」

 

 アルトリアはそう言うと優し気に笑う。

 

「もっともっと欲張りになって下さい。貴方は私が認めた担い手で、王様なんですから」

 

 そう告げられると同時にアルトリアの姿が消える。

 脳内に響いていた小言もいつの間にか聞こえなくなっている。代わりに感じるのは死ぬ気弾を撃たれた時のような力。

 ただ一つ、死ぬ気弾は荒々しい力だったがこの小言弾はその逆。

 静かな闘志が全身に行き渡り、それに呼応するかのように両手に付けていた手袋はゴツい金属質のグローブに変化している。

 何故か手袋の下に付けていた筈のリングがグローブの上にあるという不可思議な事も起こっているが、このグローブ――――(イクス)グローブはそういうものだと思う事にする。

 

(ハイパー)死ぬ気モード。それが今のお前の状態だ」

「超、死ぬ気?」

「死ぬ気モードの上位版といったところだ。その状態の特性は理解出来るか?」

「――――ああ」

 

 額に灯っていた死ぬ気の炎を両手のグローブに移し構える。

 

「クフフ、焼き鏝ですか」

「確かに雰囲気は変わったようですが…………変わっただけではこの状況を変える事は出来――――」

 

 骸が話している最中、綱吉は犬の前に移動しその腹部に掌底を叩き込んだ。

 死ぬ気の炎が灯った一撃は巨体となった犬の腹に深く沈み、その身体を壁に叩き付けた。

 

「なっ――――」

「次」

 

 一瞬で移動した事に驚く骸に対し、綱吉は冷静に千種の頭部に蹴りを叩き込む。

 壁にめり込んだ犬、頭部を蹴られた千種が地面にゆっくりと倒れていく中、綱吉は憑依された三人に視線を向ける。

 

「皆、少しだけ我慢してて。すぐに終わるから」

 

 そう言うと綱吉は両手の炎を噴射して高速で移動し、三人の背部に回る。

 背後に回った。その事実に気付きながらも対応する事が出来なかった骸は首筋に手刀を落とされ身体の機能を麻痺させる。

 

「ぐっ、くそ…………」

「…………ゴメン」

 

 行動不能になった三人が倒れる前に受け止め、リボーンの傍で寝かせる。

 

「ありがとうリボーン。お前のおかげで皆を助けられた」

「感謝の言葉はまだ早いぞ」

「ああ、分かっている」

 

 リボーンの言葉にそう答え、綱吉は視線をある方向に向ける。

 

「骸。気付いているぞ」

「――――クフフ。そのまま油断してくれても良かったのですがね」

 

 視線の先に居たのは他者の身体への憑依を止め、自らの身体に戻った六道骸だった。

 その手には憑依の条件を満たす為の三叉が先端に取り付けられた長い棒を持っている。

 恐らく、あの槍が本来の骸の武器なのだろう。槍としても使う事が出来、あの武器の弱点でもあったリーチも補っている。

 

「とはいえ、嬉しい誤算ですね。そこまでの強さがあれば態々策を弄せずとも、直接攻め込んでマフィア間の抗争を起こす事が出来る」

「オレの身体を乗っ取れると思っているのか?」

「思っていますとも。僕の勝利条件はこの槍できみを傷付ける。それだけなのだから」

 

 骸はそう言うと自らの右目に指を突き入れる。

 ぐりぐりと裏返すように右目を指で動かし、手を離すと五という字が刻まれていた。

 

「人間道。僕のもつ能力の中で最も危険で醜い力。この能力を使っている間は全身から闘気が溢れる」

「死ぬ気の炎は闘気とは違う」

「見れば分かります。だから、こうするんです!」

 

 全身から溢れた漆黒の闘気、骸はそれを一点に凝縮させ自身が着けている瞳を連想させるような不気味なリングに叩き込む。

 するとリングからドス黒い藍色の炎が溢れ、骸の全身を覆う。

 色こそ違えど、それは間違いなく死ぬ気の炎だった。

 

「ヘルリング。裏社会に存在する六つの呪われたリング。このリングを使えば装着者の闘気を、波動を死ぬ気の炎に変える」

 

 全身に纏った死ぬ気の炎を見て骸は満足そうに笑う。

 

「これできみの優位性は失われた。いいえ、僕の方が優位と見て良さそうですね」

「それはどうかな?」

 

 余裕そうに笑みを深める骸に対し、綱吉は自らの右手を前に出す。

 すると右手の中指にはめていたリングから死ぬ気の炎が溢れ、一本の剣が出現した。

 

「オレもリングを持っている。これで条件は同じだ」

 

 リングから現れた剣の持ち手を掴み、構えながら宣言する。

 

「クフフ、相変わらず減らず口が止まりませんね」

 

 骸もまた槍を構え、刃先に炎を灯す。

 互いの得物に炎が灯り、二人は向かい合う。

 

「良いでしょう。なら、後悔するといい。大人しく僕に憑依されなかった事を!」

「お前こそ後悔しろ! オレの仲間に手を出した事を!!」

 

 綱吉と骸、二人の武器がぶつかり合う。

 黒曜中の襲撃事件から始まったこの事件の最終決戦が今、火蓋を切った。




この作品で書きづらいのが主人公視点、次点でツナ視点。
理由? この二人の心情書き過ぎるとこの先の展開までばらしちゃうからです。

やっぱ何も知らない主人公の方が書きやすいわ(悟り)
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