キャストリアに転生したが原作を壊してしまった   作:霧ケ峰リョク

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思ったよりも早く書けたので今年はこの話で最後となります。
ヴァリアー編からはインフレが加速していきます。


新たなる騒乱

 子どもの頃の話だが、幼い時というのは根拠の無い全能感に満ちている。

 ランボやイーピン、というかランボを見ればその事が良く分かるように自分もまたそんな全能感を持っていた。

 正確には自信を手に入れて全能感が遅れてやって来たといった方が正しい。

 昔から誰かに下に見られたり、嘲笑わられたりすることは良くあった。だから自分に自信が無くて根拠の無い全能感(そんなもの)を抱く事も無かった。

 だけど自分にしか使えない特別な力を手に入れて遅れてやって来たそれに身を任せた。

 彼女の言葉が嘘だとは思っていない。それでも彼女の使命を自分なら解決出来るとも思っていた。

 新しく手に入れた力を持った自分(大馬鹿野郎)なら何とかなると何の説得力も無い自信を以て。

 

――――そして知った。この世にはどうしようも無い絶望があるということを。

 

   +++

 

「いやー、アルトリアちゃんが一緒に暮らすようになって色々と助かるわ」

「いえ、こちらこそ本当にすみません。家に住まわせてもらっておいてこの程度の事しか出来ないのに」

「良いのよ。家が事故で壊れちゃったんだもの。それにアルトリアちゃんの事は自分の娘のようにも思っているんだから」

 

 買い物帰りの最中、私は奈々さんとビアンキと共に両手に荷物を持って会話をしながら歩いていた。

 奈々さんは普段と変わらない優し気な笑みを浮かべながら楽し気に話す。

 無理も無い話だ。海外に出張に行っていたツナのお父さん、沢田家光さんが帰って来るのだから。

 

「確か二年ぶりでしたっけ?」

「そうなのよ。電話で話したり手紙で連絡を取ってたりはしてたんだけどね」

「まあ忙しいみたいですからね」

 

 こっちもある程度の事情を把握しているし、奈々さんも納得しているから何も言えない。

 勿論、私個人としては色々と言いたい事がある。だけど家光さんの事情を鑑みるとどうしようもなかったとしか言いようが無い。

 私は彼がどうして門外顧問なんて立ち位置に着いたのかは知らない。

 だけどそうせざるをえなかったとしか思えなかった。

 多分、それは家光さんだけじゃない。家光さんの先祖もそうだったんだろう。

 初代ボスの血統という正統性をボンゴレファミリーが、この世にへばりついている亡霊が見逃すとは思えない。

 まぁ、これは私の妄想に過ぎないけど、多分そうなんだろう。

 

「にしても本当に熱々ね」

「もう、ビアンキちゃんってばー」

「思わず妬けちゃうくらいだわ。ねぇ、アルトリアもそう思わない?」

 

 じっとこちらを見て来るビアンキさんを見て思わずたじろぐ。

 

「ま、まぁ確かに思いますが」

「私もリボーンとママンに負けないくらいの愛を育みたいわ」

「やだもう! ビアンキちゃんったら!」

 

 ビアンキの強い宣言に奈々さんは照れている。

 貴女とリボーンの愛も決して劣っていないとは思う。ただ方向性が若干一方的だし、リボーンも口にしないだけでポイズンクッキングに結構困ってるし。

 そう考えてるとビアンキがこっちに視線を向けながら口を開く。

 

「アルトリアもツナの事を愛してるんだからママンに負けないように頑張りなさい」

「え、えっと…………流石に奈々さんやビアンキのように強くは出れないかなぁ」

 

 この二人のように年がら年中イチャイチャしようとは思わない、というか羞恥心でこっちが死ぬ。

 でも――――、

 

「…………私が死んだら、一生残る傷になって引き摺ってほしい」

 

 小さく、本当に小さい声量で呟いた無意識のその言葉。

 奈々さんはビアンキのさっきの言葉で心ここにあらずだったから聞こえていなかった。

 だが裏社会の殺し屋(ヒットマン)であるビアンキの耳にはしっかり届いていたらしく、こっちを見る目が少し変わっていた。

 

「そ、そう…………貴女の愛、かなり重いわね」

 

 引かれていた。ドン引きである。

 ポイズンクッキングなんて暗黒物質(ダークマター)に並ぶメシマズを超えた殺人料理を作る愛の重い女に私はドン引かれていた。

 妖精眼で見ても嘘を一つもついていない、彼女の心からの本音だった。

 

   +++

 

「――――なんて事があったんですよ。酷くないですか?」

「あはは…………まあ、ビアンキに言われるのは心外だよね」

 

 友人達と街に繰り出している最中、買い物帰りの時の記憶を思い返しながら一緒に休憩していたツナに愚痴を吐き出す。

 ランボの愚行、子どもでもちょっとどうかと思うような暴走に疲弊していたツナにこんな事を話すのはどうかと思うが、話さずにはいられなかった。

 私の愛が重いなんて分かっている。でもビアンキに重いと言われるのは違う気がするんだ。

 

「それで、ビアンキにはそう言ったみたいだけどもしオレが先に死んだら」

「聞きたいですか?」

「いや、良い…………なんか、予想出来る」

「私もあまり口にはしたくないですから」

 

 ツナなら言わなくても分かると思うが、先にツナが死んだら間違いなくやらかすと思う。

 冬の女王となるか、それとも暴走するかは分からない。でも使命は途中で放り出すと思う。

 と、いうかツナ以外に使われたくないのが本音だ。許容できてもツナの子孫とかだけだ。

 

「それで、身体の調子はどうですか?」

「多分大丈夫だと思う。リボーンに知られてから固有結界の詳細を知る為に色々と使ってるけど」

「使わないと上達しないから仕方ないとはいえ、リボーンもよくやりますね」

 

 ただツナの固有結界は人類初の異界法則。

 いかにリボーンが家庭教師として優れていても自分の分野ではないものを教える事はかなり難しい筈だ。私に魔術や固有結界について聞きにきたりもしているが、リボーンの想定した返答をしていない為、かなり苦戦しているみたいだし。

 まあ、ツナの固有結界は人類初のものだ。先人が築き上げたノウハウがあるボンゴレの力とは異なり、私のアドバイスがあったとはいえ零から編み出したものだ。既存の技術と組み合わせて応用とかは可能だけど、それはツナ自身が一から開拓していかないといけない前人未踏の領域。

 自分にしか使えない力の事で他者がとやかく言って良くなるわけではない。

 本当、固有結界持ちに教える事がこんなに大変だとは思わなかった。

 

「ツナ。私がやった事とはいえ、無茶はしないで下さいね」

「分かってるよ。でも、多分大丈夫だと思うけど…………あれから二年以上も経ってるんだし」

「固有結界はリスクが多い力ですから。身体への負担も大きいですし、何があってもおかしくないから」

 

 人間の固有結界は素養が無ければ使えないが、素養があっても無制限に使えるわけじゃない。

 発動する事は出来ても使い熟すには長い年月が要るし、身の丈に合わない力の行使は反動という目に見える形でやって来る。

 身体の失調だったり体色の変化だったり、ツナの場合は――――。

 

「まあ固有結界は最後の手段。どうしようもない時になった際の切札ですから。今のツナならそういった状況に追い込まれる事は」

 

 無いとは思う、と最後まで続ける前に爆音が響き渡った。

 街中で突如として発生したそれに人々は悲鳴を上げて逃げる中、私は爆音が鳴った方向に視線を向ける。

 同時に爆発した場所から一人の少年が吹っ飛んできた。

 

「へ、ぶっ!?」

 

 飛来してきた少年をツナは身体で受け止めそのまま転ぶ。

 怪我は目に見える範囲では無い。受け身もしっかりとれている。私がツナにかけていた暗示も何時の間にか解けているみたいだけれど、それは暗示が必要無くなってきたという意味だから問題無し。

 ただ問題なのはツナが受け止めた吹っ飛んできた少年の方だ。

 酷くボロボロで傷付いている。手に持っているのは刃が付いたブーメランだ。

 だけどそれ以上に目に付くのは額に灯った青色の死ぬ気の炎だ。

 

「う、うぅ…………いてて」

「す、すみません…………っ、貴方は!?」

 

 謝罪しながらも少年はツナの顔を見て驚いている。

 間違いなくボンゴレの関係者なのは言うまでも無い。

 だけど問題なのはそこじゃない。彼がどうして怪我をしているのか、そして何でこんな街中で爆発騒ぎが起きたのか。

 

「う゛お゛ぉい! こんなもんかぁ!!?」

 

 思考に耽ろうとした瞬間、耳に響いたのはとんでもない声量の怒声。

 いや、怒ってはいないのかもしれない。しれないけど、そう思ってしまう程の声だった。

 それなりの距離が空いている筈なのに耳元で叫ばれているかのような声に顔を顰めながらも視線を爆発した場所に向ける。そこに居たのは何処かの組織に所属している事を示しているかのような黒い制服を身に纏った銀色の長い髪の男だった。

 男は左腕に装着した青い炎を纏わせた剣を振るい、少年に向けて突き付ける。

 

「とっとと持ってるモノを出せ! じゃねぇと三枚に下ろしちまうぞォ!!」

 

 武器を構えて宣言するその男の到来は新たなる騒乱の始まりを告げていた。

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