キャストリアに転生したが原作を壊してしまった   作:霧ケ峰リョク

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バイパー

「ツナ。暫く時間を稼いでください」

 

 アルトリアにそう言われ、突然現れた銀髪の男との交戦に入った綱吉は思う。

 

――――間違いなく自分より強い。

 

 リングから剣を出現させながら綱吉は青い死ぬ気の炎が灯った剣を左腕に括り付けた銀髪の声の五月蠅い男を評価する。

 鍛えたからこそ分かる男の立ち振る舞いに素の能力の高さ。

 剣士として何一つ勝っているところが無い。

 

「オラァッ!!」

「ぐっ!?」

 

 青い炎の刃と橙色の刃がぶつかり合い、火花を散らす事なく綱吉の身体が吹き飛ばされる。

 

「う゛お゛ぉい! こんなもんかぁ?」

 

 力負けした自分を見下ろしながら銀髪の男は大声を上げる。

 だが全てが勝っていながら、その瞳には油断の欠片も見られない。

 本当に厄介な相手だ。これを相手に時間稼ぎは流石にしんどい。剣を飛ばして戦うなんて真似をしたら容易く弾かれてしまい、武器を失った自分は容易く両断される事だろう。

 

「死ぬ気の炎も使える上に剣の腕は悪くねぇ。そこの門外顧問よりも強いな」

 

 銀髪の男は冷静に綱吉を見据えながら評価を下す。

 たった一回の鍔迫り合いで互いの力量を把握したというのだろうか。

 だがあり得ない話じゃないし、この男はそれを可能にする程の実力を持っている。

 比較対象にされた少年が悔しそうに顔を顰め、綱吉は冷や汗を流しながら銀髪の男を見据える。

 

「お前の剣術は才能じゃねぇ、長年の努力によって培われたものだ。それは認める――――だが! 剣筋が真っ直ぐ過ぎる! 王道過ぎて次何をするのかが読めちまうくらいになぁ!」

「…………」

「教科書通りの剣術じゃあオレには勝てねぇぞぉ!!」

 

 この男が言っている事は悔しいが全て事実だ。

 綱吉が男の物言いに悔し気に顔を顰めていると隼人が怒りの声を上げる。

 

「野郎! 10代目に舐めた口を利きやがって――――2倍ボム!」

 

 両手に持った8本のダイナマイトを隼人は男に向かって放り投げる。

 だが男は自身に向かって来るダイナマイトを見て、焦る様子も見せず淡々と左手の剣を振るう。

 

「う゛お゛ぉい、おせぇぞぉ!」

 

 剣に灯った青い炎が斬撃の軌跡と共に放出され、8本のダイナマイトを飲み込む。

 炎であるにも関わらず、水で濡れたかのように導火線についていた炎が消失し、全てのダイナマイトが両断される。

 

「なっ――――」

 

 眼前で起きた不可思議極まりない現象に隼人は困惑する。

 そして、その隙を見逃す程男は甘くなかった。

 

「寝てろぉ!」

「ぐはっ!?」

 

 隼人の腹部に男の蹴りが炸裂し、壁に叩き付けられ意識を失う。

 たった一発の蹴りで意識を失ってしまう程、隼人は弱くない。むしろその逆で一般人より強いくらいだ。にも関わらず一撃で意識を失ってしまったのはそれだけ男の力が強かったということ。

 

「獄寺君!!」

「うぉおおおおおお!!」

 

 意識を失った隼人に変わり、武が男に向かって刀に変形した山本のバットを振るう。

 武の身体能力は隼人より上だ。目の前の男にだって決して負けていない。

 にも関わらず渾身の力が込められた一撃はいとも容易く男の剣に受け止められてしまった。

 

「貴様。剣技を体得してないな」

「だったらなんだよ」

「軽いぞぉ!!」

 

 男がそう言い放つと同時に刃から小さな何かが射出される。

 間近に居た武がそれに気付くも対応する時間は無く、射出された小さな塊は爆発を引き起こす。

 

「ぐ、ぅ…………」

「っ、山本…………」

 

 爆風を直撃した事で武はそのままその場に倒れ込んでしまう。

 山本のバットも刀身が熱で焼き切れたかのように圧し折れている。

 

「剣士なのに爆弾を使うのか…………」

「はっ、使えるもんは使った方が良いに決まってるだろ!!」

 

 銀髪の男の言葉に顔を顰めながらも冷静に戦略を考える。

 刀身の大きさから考えるに爆弾はそう何回も使えない。沢山仕込めば仕込む程、剣の構造が歪んで打ち合いに耐えうる耐久性が失われていく。

 それでも目の前のこの男ならば問題無く扱う事が出来るのだろうが。

 だがそれ以上に気になる事がある。

 

「何で死ぬ気の炎を使える?」

 

 死ぬ気の炎はボンゴレファミリーが有する異能、死ぬ気弾を脳天に撃たれる事で使える人間由来のエネルギーだ。固有結界の練習の度に使っていた綱吉も、そのエネルギーの正式名称を知ったのはリボーンがやって来てからだ。

 だからこそ、目の前の男がこのエネルギーを使えている事に驚いていた。

 アルトリアの手によって身体を色々と弄られている自分や死ぬ気弾を撃たれていると思わしき背後の少年が使う事が出来るのは分かる。

 しかし目の前の男は死ぬ気弾を撃たれているようには思えない――――否、死ぬ気の炎を使う事が出来る方法は他にもある。

 そしてそれは今の自分や前に戦った六道骸が使っている方法と同じ。

 

「…………リングを使っているのか?」

「ほぉ、良く分かったな。その通りだぜ」

 

 綱吉の言葉に男は右手を見せびらかす。

 中指には変わった紋章のような形状をした、VARIAと言う文字が彫られた赤と銀色のリングが嵌められている。そのリングには青色の死ぬ気の炎が灯っており、彼の持つ剣に灯った炎はそのリングの炎と同じものだ。

 そう考えていると男は綱吉の顔を見て何かに気付いたかのような表情をする。

 

「ん、ああ。そういう事か。お前が噂に聞いた日本の…………そうか、お前と接触する為か?」

 

 少しの間考えた後、得心がいった凄惨な顔付きになる。

 

「貴様等何を企んでるんだぁ! 死んでも吐いてもらうぞぉ!!」

 

 剣に灯った死ぬ気の炎が煌々と燃え上がり、男は自分に向かって斬りかかろうとする。

 これ以上の時間稼ぎは難しい。早く早く早く、まだなのか?

 

 それと同時に聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「――――ツナ! 全員避難が終わりました!! 周囲に居るのは私達だけです!」

「っ、ありがとうアルトリア!! これで使える!!」

 

 今日ここに遊びに来ていた友人達や意識を失った二人も何時の間にか居なくなっている。

 自分の時間稼ぎが終了した事に綱吉は安堵の息を漏らし、死ぬ気の炎を激しく燃え上がらせる。

 

時を巡る星天(ステラ・テンプス)死想顕現(メメントモリ)!!」

 

 瞬間、世界が侵食される。

 魔術理論・世界卵によって内と外を、自分と世界を入れ替える大禁呪の行使によって自身の心象風景が世界を支配した。

 

「なんだぁ? これは…………幻覚――――がっ!?」

「幻覚じゃない!」

「な、何だこりゃあ!?」

 

 時を巡る星天・死想顕現の特性は時間操作。

 その効果によって出現した過去の自分達の攻撃を受けて銀髪の男は驚愕に満ちた表情をする。

 

「悪いけど説明している時間は無い…………これで一気に片を付ける!」

 

   +++

 

「す、凄い…………」

 

 固有結界を展開した事で形勢が逆転したツナの戦い、いや、蹂躙を見てブーメランを持った男の子は呆気に取られている。

 ツナが戦っている相手がボロ雑巾にされているからか、あるいはツナの固有結界に驚愕しているのか、あるいはその両方か。

 もしかしたら今のツナが勝てる相手じゃないと思っていたのかもしれない。

 だけど、それは違うと断言出来る。

 

「そうです。凄いんですよツナは」

 

 足手纏いさえ居なければツナは強い。

 誰だってその通りかもしれないが、固有結界、時を巡る星天・死想顕現を展開している時はより顕著だ。今だって私達が居るから全力を出せてないだけで、本気を出せば過去の自分だけじゃなく攻撃のみを持ってくる事だって出来る。

 こと一対一の戦闘においてツナは本当に強い。私も対策しなければ普通に負けてしまうくらいには強過ぎる。それだけツナの固有結界が破格の性能をしているからなんだが。

 まあ、正直相手も強いとは思う。けど私のツナの方が強いのです。

 治癒を少年に施しながら強く断言する。

 

「…………あのスクアーロが手も足も出ないなんてな」

 

 何時の間にか居たディーノさんとその部下がツナの蹂躙を見て呟く。

 多分、固有結界展開時に近くに居たからそのまま巻き込まれてしまったんだろう。

 そしてあの男の名前はスクアーロと言うのか。

 

「知り合いなんですか?」

「ああ、昔同じ学校に通っていてな…………」

 

 過去の事を思い返しているのか、それともボロ雑巾になっているスクアーロを見て何とも言えない気持ちになったのかは分からないが微妙な顔をしている。

 心中察する気持ちはある。が、何の関係も無い私達からしたら彼はただの敵でしかない。

 だからディーノさんが何を思おうとも私達には全く関係ない。

 それに、そろそろ決着もつく。

 

「がはぁ…………っ!」

「勝敗は決した」

 

 過去の自分を消して一人になった綱吉が剣を倒れたスクアーロに突き付ける。

 沢山のツナに攻撃されたスクアーロの身体は私達、正確にはこの少年を襲撃した時に見せた威勢は見る影も無い。

 

「う、噂以上の化け物だな…………事前情報があってもこれか」

「お前が何者なのか、一切合切吐いてもらうぞ」

「はっ! オレの口から態々言わなくても後ろのガキが全部吐いてくれるぜ! 任務は失敗しちまったが、この状況じゃしょうがねぇな」

「…………この状況で逃げられるとでも思っているのか?」

 

 スクアーロがこれから何をしようとしているのか察したツナは剣を持つ手の力を強める。

 それを見てスクアーロは笑みを浮かべる。

 

「ああ、オレは一人で来ちゃいねぇんだよ…………マーモン!!」

 

 瀕死の状態でありながらこっちの鼓膜を破壊せんばかりにスクアーロは大声で誰かの名前を呼ぶ。

 

「――――会いたくない奴と顔を会わせる上にこんなふざけた結界から脱出させるんだ。高くつくよスクアーロ」

 

 瞬間、ツナの固有結界に穴が開いた。

 その穴はスクアーロの足下に発生し、重力に従ってスクアーロの身体は落下を始める。

 固有結界の主であるツナと魔術の知識がある私だけが理解する。

 あの突然出来た穴は外部から何者かが固有結界に干渉し、強引にこじ開けたものだ。

 

「っ、逃がすか!!」

 

 敵の思い通りにさせない為にツナはスクアーロに向かって剣を振るう。

 だがスクアーロはその攻撃を左手の剣で防ぐ。

 まだ動けるだけの力を残していたのか。いや、そもそも固有結界に出来た穴を見るにツナと戦闘する事も想定していたらしい。

 

「くそっ」

 

 敵が逃げ出した事で固有結界を展開する理由を失ったツナは結界を解除する。

 ツナの心象風景が投影された世界からさっきの街に戻り、そして逃げ出したスクアーロと外部から穴を開けたであろう下手人に視線を向ける。

 そして呆気に取られたと言わんばかりに目を見開いた。

 

「っ、どういう事だ?」

 

 リボーンもその下手人に驚きを見せている。

 それもその筈、スクアーロを助け出した下手人は胸に藍色のおしゃぶりを付けた赤ん坊だったのだから。

 

「何でお前がここに居るんだ。バイパー」

「仕事以外に何の理由があるんだよ。リボーン」

 

 リボーンの質問に対し、天使の輪を思わせるように頭上で輪を作って浮いている赤ん坊、バイパーは顔を顰めながらそう吐き捨てた。

 




現時点のツナはタイマンでならヴァリアー全員に、もしくは全員固有結界に引き込めば勝利できます。
なんでヴァリアー側が警戒するのは当然の事。
成功率が90%下回ったら任務を中止する暗殺者集団がこんないかれた性能持ち相手に何の対策もしないわけがないよね。
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