キャストリアに転生したが原作を壊してしまった 作:霧ケ峰リョク
「――――これが日本に居るボス候補、沢田綱吉の戦闘能力だよ」
イタリアにある古城、ボンゴレファミリー最強の暗殺部隊ヴァリアーのアジト。
城内にある幹部達が集う広間にて、顔面が包帯でぐるぐる巻きになったマーモンが上映された映像の解説を行っていた。
たった今映し出されたのはマーモンと同じ幹部であり、現在同じように包帯でぐるぐる巻きにされた状態で苦い顔をして映像を眺めていたスクアーロと日本に居る沢田綱吉との戦闘映像だった。
それを見てティアラを被った金髪の少年、ベルフェゴールは口を開く。
「いや、最初はさ。スクアーロとマーモンがこんなズタボロになって帰って来たから皮肉の一つでも言ってやろうかと思ってたんだよ」
「おいっ!」
「言ったろ? 思ってたって。多分それはオレだけじゃないと思うぜ」
怒りを見せるスクアーロに対し、ベルフェゴールは飄々としながら周囲に視線を向ける。
強面の男、レヴィ・ア・タンは顔を顰めながら映像の方を難しい表情をして睨み付けている。
ボス至上主義である彼の事だ。この映像の沢田綱吉を始末しようと考えているのだろう。そしてこの映像を見る前までは自分と同じようにスクアーロに小言でも言うつもりだったのかもしれない。
だが、流石にこれを見て考えは変わった。
「これは無理だろ。少なくとも、この固有結界ってやつを使ってる間は誰も沢田を殺せない」
「貴様! ボスがこの小僧に劣っていると言うのか!?」
「
「そうねぇ」
レヴィの怒声も気にせず、ベルフェゴールは淡々と自分の結論を告げる。
そしてそれに同意するようにモヒカンのオカマ、ルッスーリアも自分の意見を出す。
「身体の動きとかを見るに多分時間を操ってるんじゃないかしら。分身も過去の自分を呼び出しているとか」
「だよなぁ。そうとしか考えられねぇ」
「私達の1秒が彼の場合は最低でも2秒以上なんだもの。分身は確かに脅威だけど、それ以上に厄介なのは彼だけ自由に時間を使える事よ。彼だけ考える時間も余裕もあるっていうのはズルいとしか言いようが無いわ」
ルッスーリアの言う通りだ。
自分達の予想通り、この固有結界の弱点があったとしてもその弱点をつくことすらままならない。
と、いうかその弱点でさえ彼の匙加減一つで無くすことだって可能だろう。
「それで、レヴィなら彼を相手にする場合どうするの?」
話を振られたレヴィは少し考えた後、自身の意見を話し始める。
「…………現時点での話をするが発動させない、もしくは発動後に襲撃を仕掛ける他無い」
「まあそうするしかないわな」
「ああ。だが沢田綱吉の実力は低くない。うちの部隊でも複数人で仕掛けなければ勝てん」
勝利するだけならヴァリアーの現在の戦力でも不可能ではない。
だがそれは少なくない犠牲が出る事前提だ。確実に仕留めるには幹部が何人か死ぬのを前提にしなければいけない。尤も、この固有結界というやつが待機している者も全員巻き込む事が出来るのなら負けるのはこっちになるが。
本当に割に合わない相手だ。
「事前情報があってもこれだ。スクアーロが撮って来なければ僕等は何も出来ずに封殺されていたかもね」
「…………っち」
ハーフボンゴレリングの奪取はカモフラージュに過ぎない。
あの門外顧問が持っていたのは間違いなく偽物だったのだから。
スクアーロとマーモンが日本へ行ったのは全て、沢田綱吉の戦闘映像を直接撮って来るためだったのだから。
「それじゃあボス。予定通り10日後に日本へ行くという事で良いよね?」
ヴァリアーの幹部達全員の視線が一人に向けられる。
視線を向けられた顔に傷のある鋭い目付きの男は映像に映っている沢田綱吉を殺意を込めて睨み付けていた。
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「や、やっと完成したぁ…………」
沢田家にいる私は自身に用意された部屋で一息ついていた。
徹夜明けという事もあり、窓から入って来る朝の陽ざしが眩し過ぎてきつい。
それでも一仕事終えたという達成感が私の全身を満たしていた。
流石にリング8つ、ツナのリングのアップデートも含めたら9つの製造と改修は疲れる。
普通のリングならそこまでかからないのかもしれないが私の場合、剣になってしまうという厄介な特性がある。だから普段はリングの状態で必要に応じて剣になるという特性にしてデメリットを限りなく少なくしている。
それに加えて、今回のリングは素材に使用者に合わせたものを使っている。
このリングなら問題無く使う事が出来るだろう。
「今回作ったリングはヴァリアーの連中が使ってたのと同格。これでリングでの差は無くなりました」
後はどこまでも実力、炎の出力と純度を上げる事が出来るかだ。
こればっかりは当人の覚悟次第。生半可な覚悟じゃリングは炎を灯さないし、仮に灯せたとしても使いこなせるかは分からない。
「私に出来るのはここまで」
使用者の髪の毛や血液といったものに加えて私が確保した貴重な石をふんだんに使った特製のリング。
名を付けるのならエデンリング。
楽園の妖精の手によって作られた特別なリングの名前としては少し安直すぎるか。
「後はこれを渡しに行くだけなんですけど…………」
正直な話、数人の守護者とは顔を会わせない方が良いと思っている。
霧には根掘り葉掘り色々と聞かれそうだし、雷は論外。雲の人は多分接触してもそう変わらない。
と、なると嵐も雨も今は会わない方が良いのかもしれない。
今回は自分の実力不足を、それ以前に何が足りていないのかを思い知らされているから私が何か言ったところで余計な事にしかならない。
「…………いや、単に私が顔を合わせたくないだけか」
どれだけ取り繕っても結局はそれが本音だ。
皆嫌いだ。それが私の本音。でも、私が作った物で戦わなければいけない以上説明をしなければいけない義務もまた存在する。
そう考えていると扉を誰かがノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
ノックに対し返事を返すと誰かが部屋に入って来る。
部屋の中に入って来たのはツナのお父さん、守護者について私に教えてくれた、沢田家光その人だった。
家光さんは机の上にある完成品の9つのリングを見る。
「ありがとうな。アルトリアちゃん」
「ツナの為ですから」
「それにしては二つ程数が多くないか?」
「今回の修行で使う必要がありそうな気がしましたので。ツナと雲雀さんが」
「…………本当にすまないな」
謝罪の言葉を口にしながら家光さんは何とも言えない表情をする。
彼の言葉に嘘が無い事は分かっている。家光さんがツナを愛している事も、出来る事ならマフィアに関わらず平和に生きて欲しかった事も。
ただ血の因果は二人を逃す事なく、こんなことになってしまったが。
まあ、私には責める資格が無い。ツナの才能をこじ開け、引き出し、固有結界を完成させた張本人だから。
家光さんも私に色々と言いたい事があるのかもしれない。ボンゴレファミリーに属する人間として聞きたい事が山程あるのだろう。
だけど、ここに居るのはツナのお父さんとツナの幼馴染で彼女だ。
昔から知っている顔馴染みで、知らない人同士じゃない。
「ツナは家光さんの事、気付いてましたよ」
「そうか。ツナは勘が昔から鋭かったからな」
「それが血の影響か私のせいかは知りませんが、ツナに会って伝えてあげて下さい。分かっていても教えてくれなきゃ伝わらない事だってあるんですから」
「…………そうだな」
ツナも家光さんの事を悪くは思っていない。
理由がある事も知っている。だけど教えてくれない父親に対しもどかしい気持ちを抱いている。
反抗期というわけではないが、今まで居なかった分、色々と伝えたい事だって山程ある。
それは怒りかやるせなさか、それとも自分の不甲斐無さか。
「さて、と…………このリングを渡しに行きたいんですけど、全員の居場所は分かります?」
「ああ。だが良いのか? 徹夜明けなんだろう?」
「この程度なら問題無く動けますよ。それに、私も目を逸らすわけにはいかないから」
苦手だから、嫌いだからで終わらせてはいけない。
これは私がやらなくちゃいけない事だから。
「そうか――――なら一緒に渡しに行こう。最初は何処が良い?」
「ありがとうございます。取り敢えず苦手なのは先にして…………霧から行きましょう」
家光さんに案内されながら私はエデンリングを渡しに行く。
そうして月日が流れ、ヴァリアーが襲撃に来る事になる。