キャストリアに転生したが原作を壊してしまった 作:霧ケ峰リョク
「――――この戦いは我等チェルベッロ機関が
綱吉とその守護者、XANXUSとその守護者、そしてその場に現れた門外顧問の沢田家光が取り仕切りながらも一触即発の状態になる中、突然現れた二人の少女がこの場を静止させた。
XANXUSが手から発する憤怒の炎という死ぬ気の炎の亜種を放とうとし、それよりも早く仕留めようと綱吉が固有結界を展開しようとした直後に現れた二人に両陣営呆気に取られる。
しかし、チェルベッロ機関少女達が9代目直属であるということにヴァリアーは納得し、綱吉達も不満はあれど承諾せざるを得なかった。
守護者を含めたヴァリアー全員と戦うよりは一対一の試合形式の方が都合が良い。
そう判断したが故の結果だった――――。
+++
「多分ですけどそれは
ツナから聞いた期間ギリギリの10日目に起こった出来事。
ヴァリアーとの後継者争いで全面戦争かと思ったら突然現れたチェルベッロ機関なる存在。
両陣営ともにチェルベッロ機関の手によってその場は収められたとの事だから、多分向こうにとっても都合が良かったのだろう。
あるいは最初から出て来るのを知っていたか。
「ツナの対策、より正確には固有結界の攻略にかけられる時間が増えるのは向こうにとってもリターンがあります。いえ、最良はツナと戦わずに他の六人で、最低でも四人勝ち越す事ですね」
私がヴァリアーの幹部ならそう考える。
リボーンから聞いたヴァリアーという暗殺組織なら無意味なリスクを背負う必要は無い。
ただそれは先に四勝した場合のみ。もしかしたらツナ側が先に四勝するかもしれないし、最終戦まで縺れ込む可能性だってある。
相手がプロの殺し屋だから、返り討ちにしたツナを舐めるなんてしない。
だけど他の六人相手になら勝てると舐め腐っている事はありえる。
こちら側としてはその油断をつきたいところだけど――――。
「…………多分、向こうは何かを企んでいる」
鉄球を弄びながら本当に分からないと言わんばかりに顔を顰めているツナの言葉を聞いて少しだけ不安になる。
舐め腐っているのなら油断を突けば良い、何かしらの策を弄しているのならその策を十分に生かせないように立ち回れば良い。
だけど、ツナの顔を見るにそういったものじゃないらしい。
「いや、アルトリアの考え通り何かしら悪意ある事は企んでるとは思う。ただそれが何なのかまでは分からない。ただ、オレに固有結界を使わせたいみたいなんだ」
「固有結界を…………」
ツナの固有結界を発動させるメリットは本当に無い。
外部からの破壊は不可能だし、以前襲撃に来た時のように穴を開けて脱出するなんて真似はもう通用しない。
固有結界展開中に維持するのも困難なダメージを受ければ綻びが出来るだろうから絶対に出来ないとは言わない。
けど私だったらツナの世界で戦うなんて自殺行為はしたいだなんて思わない。
「…………分からない事を考えていてもダメですね」
現状、XANXUSが何か色々と企んでいる事だけを注意しておくしかない。
そもそもこの試合形式のリング争奪戦において、私はサポートする事以外では関われない。
一応出来る事は全部やったし、後は本人の努力次第だけれど。
「そういえば今日はどのリングをかけて戦うんですか?」
「えっと、今日は晴れのリング…………お兄さんが出る筈だよ」
「…………笹川先輩ですか」
正直な話、私はあの人がそう嫌いではない。
嫌いかと言われれば嫌いだけど、彼のボクシングというスポーツに対する熱意は本物だ。
だからこそ、こんな争いに関わってほしくないと思う。彼の妹である笹川京子の事もあるし。
「そういやアルトリアはお兄さんにリング渡してたけど」
「ええ、渡しましたよ。ただ…………」
笹川先輩にリングを渡した時の事を思い返す。
『すまないがキャスター、オレはこの戦いでこのリングの機能というやつを使わん!』
『それは、どうしてですか?』
『この試合は晴れの守護者としての戦い。話を聞くに晴れの守護者は武器を使わず自らの肉体で逆境を打ち砕くと聞く』
『まぁ、それはそうなんですが』
『後は単純にオレは剣が使えん! 素人のオレが使っても間違いなく使い熟せん!!』
記憶の中にある笹川先輩とのやり取りはスポーツマンとしての矜持を感じた。
だからこそ、断言は出来ないけどツナに告げる。
「多分、今回の試合は勝てません」
+++
深夜の並盛中学校にて行われる晴れの守護者戦。
校舎脇にて繰り広げられる激闘は誰が見ても明確なまでに分かる程、ヴァリアー側の守護者である左膝に鋼鉄を仕込んだ格闘家、ルッスーリアが終始優勢だった。
戦闘フィールドの環境は全てがルッスーリアにとって都合が良く、そして笹川了平が圧倒的に不利だった。太陽の如き灼熱のフィールドによって体力と水分、そして視界を奪われ相手は視力を奪われずに一方的に攻撃されていた。
それでも了平はこの状況を打開しようとフィールドのギミックを破壊し、一方的に打ちのめされる状況から脱した。
――――だが、それでも遅かった。
「はぁ…………はぁ…………」
「良いわぁ! どんどん理想に仕上がっていくわ!!」
晴れの炎による強化を受けた一流の暗殺者の攻撃は確かなダメージを了平の身体に刻み付けた。
如何に鍛え上げていたとしても劣悪な環境の中、防御もまともに出来ない状態でそのダメージはあまりにも致命的過ぎた。
「お兄ちゃん!」
傷だらけの兄を心配する笹川京子の悲痛な声が響く。
その後ろにはこの戦闘を見て明らかに普通ではない顔でこの光景を見ていた。
何故ここに笹川京子を連れて来たのか、綱吉は自身の父親である沢田家光に悪態を吐きたくなるのを我慢する。
父親の狙い、何を考えているのかは分かっている。
笹川了平の戦う理由。それは妹である笹川京子の存在が大きい。
「でも、だからって…………」
覚悟は人を強くする。死ぬ気の炎もそれと同様だ。
だがこの光景を一般人である彼女に見せるのはあまりにも酷過ぎる。
こうなってしまっては反則負けになってしまうが、割って入ってでも止めた方が良い。
そう考えた綱吉が覚悟を決めてフィールドに飛び込もうとしたその時だった。
「――――安心しろ。京子、オレは負けん」
自身の妹に対し優しく告げる了平の言葉に綱吉の身体の動きは止まった。
この覚悟を踏み躙る事は許されない。そう言わんばかりの覚悟がそこにはあった。
「すまない師匠。京子を頼む」
「ああ。お前も気張れよ、コラ!」
コロネロの手によってこの場に入り込んでしまった二人の少女が連れられて出て行く。
それを見て了平は自身の指に着けたリングに死ぬ気の炎を灯した。
「…………聞いておいて、良かったな」
了平は傷だらけの状態でありながらリングに灯った黄色の死ぬ気の炎を見つめる。
思い出すのはアルトリア・キャスターからリングを貰った際の説明だった。
+++
「説明は最後まで聞きなさい。貴方が剣を使えないのは分かってます」
アルトリアは困ったように顔を顰めながらも了平に渡したリングの説明をする。
「本当なら拳に纏うグローブになるようにしたかったんですけど残念な事に私は剣しか作れません。そういう体質なんで…………正確には聖剣なんですけどね」
「随分と変わった体質だな、コラ」
「そういう体質なんだから仕方ないでしょう。私も苦労してるんですよ。チョコを作る時とか」
師匠であるコロネロの発言にアルトリアは溜め息を吐く。
「バレンタインの時に剣の形をしたチョコレートが配られたが、まさかキャスターのだったとは」
「…………話を戻しますが、私は剣しか作る事が出来ません。とはいえ、形状はある程度変えられるんです」
そう言うと渡されたリングから二つの武器が現れる。
「これは…………ナックルダスターか?」
「はい。日本だと鉄貫ともよばれているやつです。これは刃状になっている懐剣というやつですが」
コロネロの発言にアルトリアは頷く。
「確かにこれならオレでも使えるが…………」
「分かっています。なんで先輩のリングが一番苦労しました」
アルトリアはリングから出現した二つの武器に指をさす。
「先輩に渡したそのリングの能力。それは――――」
+++
「本当に、キャスターには感謝以外の言葉が無い!」
バチンという音と共にリングから現れた二つの懐剣の刃が折りたたまれる。
懐剣からナックルダスターに変化したそれは莫大な晴れの炎を纏い、傷だらけだった了平の身体を包み込む。
「んまぁ! 傷が回復してるわ!? そういうことも出来るの!?」
晴属性の死ぬ気の炎の特性、活性による自己治癒力の強化。
それによって傷が治っていく了平の姿を見てルッスーリアは驚愕の声を上げる。
「悪いが、これで決着をつける…………!」
了平は死ぬ気の炎を右の拳に集めて構える。
傷の修復や今までの疲労も相まって残された死ぬ気の炎もそう余裕は無い。
その事を理解しているが故に了平は自身が打てる最高の攻撃を繰り出そうとする。
「成る程ね。でもその勝負、態々乗ってあげる必要は無いのよ?」
一方のルッスーリアは攻撃態勢を取っている了平に対し冷ややかな視線を送る。
見るからにヤバいと分かっているのなら態々危険なところに飛び込む必要は無い。
そう言わんばかりの顔をしているルッスーリアに了平は笑う。
「さっき言っていたな。拳圧で照明を割ったと」
「ええ。でもさっきのあれは貴方の汗が蒸発した事で出来た塩を飛ばしたもの。到底拳圧で割ったなんて――――」
「今度は違うぞ!
拳を振りぬく事で晴れの炎の砲撃が拳から放たれる。
「っ、
遠距離から放たれた一撃を相殺しようとルッスーリアは
込められている死ぬ気の炎は凡そ同等。ならば一点に集中した自身の太陽膝が勝利する。
そう確信していたルッスーリアの膝に凄まじい衝撃が襲い掛かった。
「なっ、なんですってぇ!?」
左膝に走る衝撃にルッスーリアは驚愕の声を上げる。
まるで直接拳をぶつけられているかのような感触、そしてそれ以上にこちらが力負けしそうな程の圧力。
「ま、まさか本当に拳圧を飛ばしているの…………!?」
「…………キャスターが作ったこのリングには二つの能力がある」
空中で動きを止められたルッスーリアの下に了平が接近する。
「一つが傷の治癒、そしてもう一つが身体能力の活性。その二つを同時に行う事でオレの身体能力を強化するというもの」
「なっ、ま、待って…………!」
これから行われる事を理解したルッスーリアは静止させようと声を出そうとする。
しかし既に了平の右拳には残された死ぬ気の炎が灯っていた。
それはたった今見せたものに比べれば劣るものの、まともに防御する事が出来ないルッスーリアには致命的なダメージを与えるのに十分だった。
「極限太陽!!」
了平はルッスーリアの顎に向かって拳を叩き込む。
だが、それと同時にルッスーリアが了平の首から下げていたリングを掴む。
このまま敗北すればどんな酷い目にあうか、ヴァリアーに所属しているからこそその事をよく理解していたルッスーリアが今自分に出来る最善の手段。
この試合の勝者は二つのリングを揃える事。
「なっ、しまった――――!」
遅れて気付いた了平が拳を止めようとするも遅く、渾身の一撃がルッスーリアの顎を振りぬく。
その勢いによってハーフボンゴレリングが了平の首から離れ、ルッスーリアの身体ごとステージの天井を破壊し突き破った。
身動き一つ取れなくなったルッスーリアの身体を確認したチェルベッロ機関の少女が告げる。
「晴れの守護者戦、勝者ルッスーリア!」
勝負に勝ったのは笹川了平、試合に勝ったのはルッスーリア。
それが晴れの守護者戦の結末だった。
今回ヴァリアー編で書きたい話の順番は大空、雷、雨、霧、嵐、晴、雲となっております。
と、いうか一番重要なのが雷です。
何で書きたいかと聞かれれば、未来編で必要な話をやりたいからというのが第一です。
まあ雷戦はそこまで長くしません。というかランボが痛めつけられるから、ねぇ…………。
ただ、雨戦に関しては割と筆が乗りそうなので長くなりそう。
時雨蒼燕流ってつばめとかかわりがあるよね、ところで燕返しって技があるんだけど…………。