キャストリアに転生したが原作を壊してしまった   作:霧ケ峰リョク

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これでようやく雨戦終了。


雨上がり空澄み渡る

「――――見事」

 

 山本の攻撃を受けて水面に倒れたスクアーロの映像を見て、思わず口に出す。

 画面に映るその技は間違いなくそれだ。尤も、他の使い手と違って日に数回しか使えない負担の大きい技みたいだが。

 それでもこの場に居る全員には衝撃が強かったみたいだが。

 

「なぁ、マーモン…………今、剣が六本無かったか?」

「…………ありえない」

 

 向こう側の観客席で戦いを見ていたベルフェゴールとマーモンも驚きのあまり目を見開いている。

 特にマーモンは鎖で封印しているみたいだがアルコバレーノだ。

 だからこそこの技のありえなさに信じられないのだろう。

 

「おいアルトリア。山本が今出した技は何だ?」

 

 リボーンとコロネロも私の方を詰め寄るように視線を向けている。

 まあ、うん。色々と問い質したい気持ちは分かる。

 正直私も山本が使えるようになるとは思えなかったわけだし。

 

「――――対人魔剣。己の技術のみで神話、伝承の聖剣魔剣神剣の域に届いた剣技の極致」

 

 何て説明しようか迷っているとツナが代わりに答えた。

 同じ映像を見た事があるからこそ、今の山本がどのくらい強いのか理解している。

 

「技によって違いはあるけど、山本のあれは…………その中でも常軌を逸している。別の世界から剣を呼び出している」

「別の世界?」

「並行世界からです」

「ありえねぇな…………並行世界から持って来るなんざ、不可能だ」

 

 ツナの説明を聞いてリボーンは信じられないと言わんばかりに否定する。

 だけどアルコバレーノであるからこそ理解している。今の技が本当に並行世界から呼び出している事を。

 

「多重次元屈折現象。並行世界へと干渉する、魔法の領域にある技だからこそです」

「魔術じゃねぇんだな」

「…………察しが良いんですね。まあ今は説明は省きますが」

 

 今の私の言葉だけで魔術と魔法の違いを察したのか。

 あるいはアルコバレーノだからこそ気付けたのかもしれない。

 

「地に増え、都市を作り、海を渡り、空を裂いた。何の為に、とは思いますが結果として人の世界は広がった――――ですが同時に認識が狭まった」

 

 常識という檻に自らを閉じ込めて自身の可能性を狭める。

 それは裏社会でも同じだろう。超人染みた能力を持っている人間も多いだろうが、それでも英雄には届かない。

 どれだけ優れた能力を持っていても成功率が下がると挑む事をしない暗殺者と失敗する確率がどれだけ高くても挑戦し続ける者。

 多分、それが只人と英雄の違いなのだろう。

 

「剣聖は刀なんか無くたって次元を断つ事が出来る。私は、過去の剣聖の技を山本に見せました。ずるいとは思いますけどね」

 

 裏社会で剣帝と評される程剣を極めたと勘違いし、檻に入ったのに気づいていなかったスクアーロ。

 私が見せた事で世界の広さを知り、自身もそこに届こうと努力を積み重ねて檻から出た山本。

 どちらが勝つかなんて最初から分かり切っていた事だった。

 流派を超えるとか、一度見た技は見切れるとか関係無い。

 そもそもそんなところで立ち止まっている時点で勝負にすらならない。

 

「超常の域にまで技を極めた剣士が、剣聖が居ない平和な時代に産まれた事。それが貴方の敗因であり、貴方にとって最大の不幸」

『――――違う』

 

 私の言葉を画面の中のスクアーロが否定し、立ち上がる。

 

「おや、まだ意識があったんですね」

『おかげさまでなぁ…………そこのガキが峰打ちなんてふざけた真似しやがったからな』

「敗者である貴方が文句を言う資格はありませんよ。むしろ五体満足で居る事に感謝すべきです」

『…………その、通りだな』

 

 魔術師である私、楽園の妖精である私には剣士であるスクアーロの気持ちは分からない。

 ただ彼の顔を見るに怒りは感じていながらもどこか清々しさが見て取れる。

 

「それで、何が違うんですか?」

『…………お前が言った事だ。剣聖が居ない平和な時代? 居るだろ、オレの目の前にな』

 

 映像の中のスクアーロは山本を睨み付けるように見ている。

 敵意は感じない。スクアーロ自身も敗北を認めている。しかし、だからといってこのまま素直に投了するつもりは無いのだろう。

 剣士として、もう一度あの技を見たいと思ったからなのだろう。

 

『まだ見ぬ地平があった。理解すら出来ない境地があった。なら、剣士として挑まないわけにはいかねぇだろ』

『…………分かった』

 

 スクアーロの言葉を受けて山本は再び剣を構える。

 これ以上口を挟むのは野暮だと言うモノ。

 ならこの勝負を最後まで見届けるのが私達観客の役目だ。

 

   +++

 

 剣を振るう。頂点に登り詰め、剣を極める為に。

 山本武との斬り合いの最中、スクアーロは初心を思い返していた。

 子どもの頃に剣を取り、剣帝を下し、頂点まで登り詰めた。

 そう、思い込んでいた。

 その結果がこれなのだとしたら本当にお笑い草だ。

 

「――――ふぅ!」

 

 死ぬ気の炎が灯った剣と時雨金時、互いの刃が鍔ぜり合う。

 さっきの常軌を逸した剣技、アルトリア・キャスター曰く対人魔剣という技を峰打ちとはいえまともに受けたスクアーロの調子(コンディション)は最悪だ。ヴァリアー・クオリティと評される身体能力も発揮できない。

 武もさっきの魔技を使った反動か、動きが本当に少しだけぎこちないが今のスクアーロ程ではない。

 だが時雨蒼燕流の型の一つ一つ、どれもこれも技のキレが上がっている。

 そしてそれはスクアーロも同じであり、体力が減っていくのと反比例するように技だけが上達していった。

 

「皮肉な話だな…………」

 

 ヴァリアー・クオリティと評される身体能力を失った代わりに、残った剣術だけが冴えわたっていく。

 今までの自分は力任せに振るっていたのではないかと思ってしまう程、静かで鋭い剣筋だった。

 それ程までに魅せられた。

 

「秘式極の型――――」

 

 打ち合いの中、武はさっきの技の構えを取る。

 何故野球のバッターのように構えるのか理解に苦しむが、何となく察する。

 この技は、対人魔剣というのは流派ではなく、人間が到達する集大成なのだろう。

 だからこその秘式、極の型。一人の人間が編み出した解答の一つ。

 

「蒼燕突破ッ!!」

 

 二振りの刃から放たれる六つの斬撃。

 さっきは防御に使った三つの刃は今度は攻撃に転用し、合計六つの斬撃となって襲い来る。

 その全てが峰打ちだという事に苛立ちはする。が、ここまでやられれば怒りよりも清々しさすら感じてしまう。

 新たな地平、新たな世界。そのどちらもまだ見ぬ領域であり、自分にとって新たな目標となった。

 

「お前の勝ちだ、ガキ」

 

 身体に走る六つの衝撃を受け、スクアーロの意識は今度こそ闇に沈んだ。

 

   +++

 

 山本が倒れたスクアーロの首からボンゴレリングを奪い取り、同時にチェルベッロ機関が勝利を告げる。

 

「これで山は越えましたね」

 

 山本が勝った事で此方の敗北は無くなったと見るべきだろう。

 雲の守護者である雲雀さんは今の山本となんら遜色は無い。霧に関しては不安要素はあるけど、多分大丈夫だろう。

 正直大空戦まではちょっと様子を見に行きたく無い。

 霧は女の子の方は凄く良い子なんだけどなぁ、もう一人がちょっと問題児過ぎる。

 

「それじゃ、早く帰りますか」

 

 疲弊し切った山本を連れて試合会場を後にする。

 この後、色々なごたごたはあったものの私の予想通りに霧、雲の守護者戦は此方側の勝利で終わる。

 霧の守護者の片割れが六道骸だった事でツナ達が騒然とした事や、ヴァリアー側の雲の守護者の中にボンゴレ9世が入っていたりとかちょっと予想外な事もあったが。

 だがそれでも時間は進みやって来た大空戦。

 その試合は皆にとって、いや、私にとっても予想外の戦いとなる事をこの時の私は知らなかった。




霧、雲は特に描写が変わらないので大空戦に行きます。
ようやくやってきたインフレです。
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