キャストリアに転生したが原作を壊してしまった 作:霧ケ峰リョク
――――とっとと片付ける、とは言ったがそう上手くはいかないか。
XANXUSと数回の衝突で相手の力量を察した綱吉は苦い顔をしながら情報を整理する。
接近戦はかなりのもの、暗殺組織ヴァリアーのボスなだけあって他の守護者と同等かそれ以上の身体能力だ。加えて身長と体重も綱吉より上で、接近戦では勝てるもののリーチの差では不利だと告げていた。
そしてXANXUSの放つ光球状の炎。観戦席から聞こえてきたリボーンの説明によると憤怒の炎と呼ばれている死ぬ気の炎の亜種、ボンゴレ2代目が使っていたものと同じらしい。
「どうした? すぐに片付けるんじゃなかったのか?」
「煩い」
此方の胸中を見透かしているかのような発言に綱吉は苛立ちを隠さずに文句を吐き捨てる。
デスヒーターで苦しんでいる皆を助ける為には先ずはXANXUSを倒さなければならない。が、そのXANXUSを倒すにも時間が掛かる。かといって倒さずに救出に入る事をXANXUSが許しはしないだろう。
固有結界を使って速攻で倒す――――というのも多分不可能。
本当にやり辛い相手だ。しかも相手はまだ武器を使っていないという。
「お前のそのグローブ。ボンゴレⅠ世と同じものだ」
どうやってXANXUSとの戦闘を有利に進めていくか考えていると、XANXUSは何を思ったのか喋り始める。
「知っているか? ボンゴレⅠ世が日本に隠居した理由を」
「知るわけないだろ。心の底から興味無いし」
「ふん、生意気な奴だ。が、まあ良い。教えてやる。ボンゴレⅠ世はボンゴレⅡ世と争うのを恐れて逃げ出したのさ。最強と謳われている初代の炎が二代目の憤怒の炎に焼かれるのを恐れてな」
「確かに破壊力だけはお前の方が上だな」
破壊力こそ優れているが総合力では此方の方が上。
それは紛れも無い事実だ。
「だが、それだけだ」
憤怒の炎と真正面とぶつかりあった場合、一点に集中すれば突破は簡単だ。
きっと初代と二代目が戦ったとしてもXANXUSの言った通りの結果にはならないし、多分同じ方法で突破出来る。
尤も、XANXUSならば憤怒の炎の弱点を補う方法を用意しているだろうが。
「まあ良い。挑発に乗ってやる――――ただし、オレは初代とは違う」
エデンリングを剣に変え、右手に携える。
「時間も無いんだ。ちまちま様子見してやる理由も無い。お前もとっとと武器を使え」
「はっ、カス如きに武器を取るだと?」
「カスと思っていないのはお前だろ。それともこのまま何もせず倒されるか?」
「…………っち」
XANXUSは不愉快そうに舌打ちをし、懐から二丁の拳銃を取り出す。
それを見て観客席の方から『2代目の炎に7代目の銃。相性最悪だな』とリボーンの声がした。
どうやら7代目は拳銃を武器にしていたらしい。そしてその理由も何となく察せられる。
「てめぇが望んだ事だ。後悔するなよ」
「悪いけど後悔する程の事じゃない」
綱吉は剣を、XANXUSは二丁の拳銃を構え、戦闘を再開する。
先に攻撃を仕掛けたのはXANXUSの方で、右手の拳銃から炎のレーザーとしか言い表せないような弾丸が放たれる。憤怒の炎とリングの死ぬ気の炎、双方の炎を死ぬ気弾のような特殊弾に込め、指向性を持たせて一気に解放したものなのだろう。
「本当に厄介だ」
自身に向かって迫り来るそれを剣を使って逸らし距離を詰める。
「でも、対処できないわけじゃない」
憤怒の炎よりも威力が上がっているかわりに攻撃範囲は面ではなく点になっている。
当たれば無傷とはいかないし攻撃速度も上がっているから脅威な事には変わりないが、そんなものはいつもの事だ。
「今度はこちらの番だ!」
イクスグローブ、そして両手で持っているエデンリングの剣から炎を放出してXANXUSに接近する。
強化調整された綱吉のエデンリングはイクスグローブと同じ機能を持っている。
綱吉の手から離れて自動で宙を舞うのは勿論の事、手に持っている状態でもイクスグローブの炎の噴射を邪魔する事は無い。それどころか出力はイクスグローブよりも少し上だ。
新調された大空のエデンリングは、綱吉の能力を最大限まで引き出せるものとなった。
「くらえっ!!」
刀身を激しく燃え上がっている剣を上段に構え振り下ろそうとする。
「カスが――――高速移動と飛行はてめぇの専売特許じゃねぇ!」
XANXUSは綱吉が剣を振り下ろすよりも前に真下に二丁の拳銃を向ける。
引き金を引き炎のレーザーを放ちそれを推進力とする事で上空へ逃げようとするXANXUSを見て、綱吉は冷静に死ぬ気の炎を剣に叩き込む。
瞬間、刀身を覆っていた炎が膨れ上がり巨大な刃となる。
「飛ぶ前に叩き落とせば問題無い!!」
「何ッ!?」
綱吉の意図を察したXANXUSはすぐさま両手の拳銃を盾にしようと前に突き出す。
しかしそれよりも綱吉の行動の方が早く、巨大な炎の刃が振り下ろされた。
「
XANXUSの身体を綱吉の炎王鉄槌が捉え、隣のビルへと叩き付ける。
巨大化した死ぬ気の炎の刃はいとも容易くビルを両断し、砂煙を上げながら轟音と共に斜めにズレ落ちていく。砂煙の中からカチリという非常に小さな音が鳴ると同時に炎のレーザーが綱吉目掛けて放たれた。
反応に遅れた綱吉は回避しようとするも間に合わず、剣を盾にして防御しようとする。
しかし、真正面から防ぐにはこの炎は貫通力があり過ぎた為、押されて吹き飛ばされてしまう。
「今ので倒れてくれれば良かったんだが、上手くいかないか」
「…………カスが」
倒壊したビルからXANXUSが姿を現す。
服に埃こそついているが目に見えて目立った傷は無い。
拳銃を使って空を飛ぶ。
綱吉も同様に空へと飛び立ち、戦闘は空中戦へと移り変わる。
――――カチリ、と音を立てて綱吉の頭上に浮いている廻時剣の針が回転した。
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「――――戦況は互角と見て良さそうだな」
配信されている綱吉とXANXUSの激闘の映像を、同盟ファミリーの一つであるエヴォカトーレファミリーの人間は驚いた表情で見ていた。
当初はXANXUSの方が遥かに優勢だと、エヴォカトーレファミリーの次期ボスの少年とボス補佐の少女は思っていた。
9代目の息子として若い頃から名を馳せたXANXUSと今まで無名だった少年では少年に到底勝ち目は無い。
しかし結果は予想外にも互角であり、互いに優れているところもあれば劣っているところもある。
「沢田綱吉…………あれ程の使い手が今まで無名だったとはとても信じられない」
「彼一人で六道骸一味を倒したという噂も、間違ってはいないのか」
付け焼き刃とは思えない体捌きに剣術。
その二つを以て空中から狙撃するXANXUSに攻撃を仕掛けているその姿は勇猛果敢の一言しかない。
今は亡くなっている他三人の後継者よりも間違いなく優れている。
ただ一つ、気になることがあるとするならば――――。
「何故亡霊達は彼を恐れてるんだろう?」
降霊術を主に使うエヴォカトーレファミリーはその性質上、霊魂について詳しく当然霊を見る事が出来る。
ボンゴレファミリーという伝統と歴史あるマフィアは恨まれる事も多く、その後継者ともなれば沢山の怨霊に怨念を向けられている事も多い。
――――しかし、沢田綱吉は違った。
ボンゴレⅠ世の子孫である沢田綱吉は明確に距離を置かれる程、霊から恐れられていた。
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「いやー、思っていた以上に強いな」
炎の刃を飛ばす綱吉と憤怒の炎の弾丸を乱射するXANXUSの空中戦。
シモンファミリーのアジトでそれを7人の少年少女が眺めていた。
「…………アルコバレーノが鍛えただけじゃないわね。もっと前から鍛え上げている。それもただ鍛えているわけじゃない」
「何かしらの目的があって鍛えている。僕達みたいに」
シモンファミリーはボンゴレⅠ世に裏切られた過去があり、その為にボンゴレファミリーを壊滅させる為に鍛え上げていた。
だからこそ沢田綱吉の異質さに気付いた。
「沢田綱吉はリボーンが来るまでボンゴレファミリーと接点が無かった。父親は門外顧問だったし幼少期には9代目にも会っているけどな」
「…………やはり、アルトリア・キャスターか」
アルトリア・キャスター。魔術師を称する謎の少女。
「何の目的があって沢田綱吉に近付いたんだろうな? ボンゴレファミリーの血統である事を知ってて近付いたのか?」
「あるいは沢田綱吉でなければダメだったのか」
沢田綱吉の居る並盛町には多種多様な人間が居る。
雨の守護者である山本武、雲の守護者である雲雀恭弥。自力でデスヒーターを解毒した彼等の方がより優れている。
にも関わらず沢田綱吉を選んだのには理由がある筈。
ボンゴレⅠ世の血統であるから選んだのか、あるいは沢田綱吉だったから選んだのか。
「多分、これは無視してはいけない問題だ」
沢田綱吉とアルトリア・キャスター。
この二人の出会いはきっと、いや、間違いなく致命的なものだ。
「そもそもこうして後継者争いを見せるなんていうのがおかしいんだ」
メリットはある。次期ボスとしてその実力を同盟、傘下のファミリーに知らしめる事でスムーズにボスの座を手に入れる事が出来る。
しかし、それ以上にデメリットの方が目立つ。
後継者争いという恥部を知られる事はあまり良くは思われない。今回のように互いの実力が拮抗しているのなら話は違うのかもしれないが。
何より、ボスや守護者の実力や能力が知られるのは不味い筈だ。
にも関わらずこんな事をするなんていうのは余程慢心していない限りありえない。
「嫌な予感がする…………」
シモンファミリーのボスである赤い髪の少年は妙な寒気に肩を震わせた。
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「状況は互角と見て良さそうだな」
XANXUSの弾によって解放されたヴァリアー側の守護者、そして自力で解毒して行動し始めた綱吉側の守護者。
其々のフィールドで混戦している状況を見て、コロネロはそう告げた。
「だな。今の状況はボンゴレ坊主にとってそう悪いものじゃねぇ」
コロネロの言葉に同意するようにシャマルも映像の中の綱吉を見る。
仲間達を助け出す余裕が無かった綱吉にとって、仲間達を助ける必要が無くなったのはプラスに繋がる。
戦闘を見ても焦りが消えて少しだけだが余裕も出来ている。
「このままいけば沢田殿が勝ちます!」
ここ数日間の修行で相手をしていたバジルは力強く断言する。
修行で体得した初代以外は体得出来なかったという零地点突破、そしてその発展技をまだ見せていない。
それらを使えばこの拮抗した状況も打破出来る。
ポジティブな意見を口にする三人に対し、リボーンは難しそうな顔をする。
「どうだろうな。XANXUSもまだ本気を見せてはいない。今は互いに相手の出方を伺っているようだしな」
綱吉の能力、出来る事を把握しているがXANXUSはまだ全てを開示していないし出し切っていない。
思った以上に戦えているのは事実だが、それでも不安要素が多いのも事実だ。
「でも、守護者が解放された事で状況が変わったみたいですね」
綱吉側の懸念点はデスヒーターによって死の淵を彷徨っている守護者達だった。
だがそれも勝手に動いて解毒し、他の仲間達の救助に入ろうとしている。
連戦になる事も考えて使う事が出来なかった手札も、使う事が出来るようになった。
たとえ対策されていると分かっていても、綱吉の切札はそれでも強力なものだから。
『
+++
「時を巡る星天・死想顕現」
拮抗した状況を打破する為に使った奥の手、固有結界。
XANXUSを巻き込んで空中に展開された異界法則は綱吉の心象風景を世界に浸食させる。
戦闘フィールドが街中から綱吉にとって最も有利で戦える
過去の自分を呼び出し、時間を加速させて数の暴力で叩き潰そうとする。
しかし、それよりも先にXANXUSが動く。
「てめぇの最も厄介な技、それの対策をしてねぇと思ったか?」
懐から取り出した大きめの銃弾のようなものをXANXUSは右手の銃の銃口に付け、それを地面に向かって撃つ。
放たれたそれは綱吉の心象風景の地面に着弾し、そこから全く別の世界が発生した。
「…………やっぱり使えるか」
固有結界の対策方法。
世界そのものを破壊する何かを使用し固有結界を壊す以外にはもう一つある。
それは――――自分も固有結界を使うというもの。
「広がれ――――
綱吉の世界にXANXUSUの世界が展開される。
どす黒い赤で満たされた草原、その中央に存在する鮮血のように真っ赤な葉が生い茂った月のように輝く巨大な樹木が聳え立つ。
時を巡る星天・死想顕現と我が為の系統樹。二つの固有結界が世界に顕現した。