キャストリアに転生したが原作を壊してしまった 作:霧ケ峰リョク
多分後二話くらいかかります。
これでもまだインフレの途中です。
固有結界持ち同士が互いに展開し、二つの世界が拮抗した場合の戦闘方法。
一つは自分の世界に引き籠って戦う事。態々相手の世界に入って不利なルールを押し付けられるよりはずっと楽に戦う事が出来る。
もう一つが時間切れを待ち、素の状態に戻ってから戦う事だ。
此方も現実的な手段と言えばその通りだろう。しかし、遠距離への攻撃手段を持っている上に事前に貯蓄していた炎で固有結界を展開しているXANXUS相手にその二つはあまり得策ではなかった。
従って残された三つ目の方法を綱吉は取らざるをえなかった。
相手の世界に踏み込んで打ち負かすという選択を――――。
「はっ! むざむざと殺されに来たか!」
自身の世界に突貫してきた綱吉に二丁の拳銃を向け、XANXUSは嘲笑う。
当然、態々殺されに侵入したわけではない。勝つ為に侵入したのだ。
「
綱吉は自身の時間を2倍にして加速し、炎の弾丸を回避する。
固有結界の外で使うのは久々だが問題は無い。流石に無制限と言うわけではないが、これなら大丈夫だ。
そう思いながら向かって来る炎弾の弾幕を全て回避し、XANXUSに向けて刃を振るう。
「成る程、外でも使えるが中ほどイカれているわけじゃないか」
振り抜いた一閃を回避しXANXUSは距離を取ろうと銃弾を放とうとする。
XANXUSの飛行は拳銃の弾丸による反動を利用したもので、トリガーを引かなければいけない。
今までは純粋に推進力で負けていた為、間に合わなかった。
しかし二倍速で行動出来る今ならば初速の時点で叩き落とせる。
「
現時点で出せる最大威力の大技、炎王鉄槌で勝負を決めようと綱吉は剣を振るおうとする。
「――――忘れたのか? 今のオレは超直感を使えるんだぞ?」
XANXUSに攻撃しようとした瞬間、猛烈に嫌な予感が背筋を走る。
同時に黒い草原から黒い毛に赤い瞳、そしてXANXUSを連想させるような憤怒の形相をした猛獣の群れが姿を現した。
「っ、面倒な…………!」
対応できないタイミングでの奇襲に綱吉はしかめっ面になる。
超直感の便利さや有能さは何となく理解していたが、こうして敵に使われると真の意味で理解する。
本当に糞面倒臭い、厄介極まりない能力だ。
「らぁ!!」
剣の炎を噴射して強引に回転し、身を守る為に周囲の獣を両断する。
強引に隙を作らされ、XANXUSは綱吉の攻撃を受ける事無く空へと退避する。
「くそ…………っ!」
空へと逃がした事に悪態をつきながら、綱吉はXANXUSの固有結界の能力を把握する。
突然現れたこの獣達。恐らくXANXUSの固有結界の能力、その副産物なのだろう。
取り込んだ因子を自分の改造に使わず貯蓄し、使い魔のように呼び出して使役する。そして、この獣達を倒したところで無意味だろう。
炎王鉄槌で両断した獣達の傷がくっつき、再び自分に襲撃を仕掛けて来るのを見て綱吉は叫ぶ。
「オレが言うのもなんだが…………本っ当に厄介な能力だな!!」
「てめぇのに比べればまだマシだろ」
綱吉の頭上を浮遊しているXANXUSが呟くと同時に足の裏から一体の巨象が出現する。
重力に従って落下する巨象の体躯に周囲を取り囲む再生した猛獣の群れ。
「潰れて死ね」
このままではXANXUSの言葉の通り見るも無残な姿になる。
イクスグローブやエデンリングの炎の推進力による移動は不可能。初速の時点で周囲の獣達に潰される。
「これはあまり使いたくなかったんだがな…………」
流石に出し惜しみしていられる状況ではない。
そう判断した綱吉は自身の足下から炎を放出する。
「タイムサーヴァント!」
放出された炎からもう一人の綱吉が、過去の自分自身が出現する。
現れたもう一人の綱吉は周囲をチラリと一瞥し溜め息を吐く。
「オレにこんな事を言うのもどうかと思うんだが、こんな状況で呼び出すくらいならもっと前に呼び出しても良かったんじゃないか?」
「あまり使いたくない理由も分かるだろ。そんな事より突破するぞ」
自分自身と軽口を叩き合いながら炎を刃に込め振るう。
炎王鉄槌程の威力は無い。炎をチャージする時間も無ければ解放する時間も無い。だが二人で放てば多少はマシな威力が出せる。
綱吉の考えの通り、周囲を取り囲む猛獣の群れの壁に一点だけ穴を開ける事に成功する。
「行くぞ!」
分身の綱吉に伝えると出来た穴から二人同時に脱出する。
一瞬遅れて空から象が落ち、取り囲んでいた獣達が衝撃によって潰され、綱吉達の身体にも衝撃が走る。
後少し、脱出するのが遅れていたら間違いなく潰されていた。
保険があるから戦闘そのものは続行可能だろうが、それは出来る限り使いたくない手だ。
象によって潰された獣達が再生するのを見ながら、綱吉は分身共々空中に浮遊しているXANXUSを睨み付ける。
「炎の総量が半分になったか。その分身、固有結界の外だとそんな気軽に使えないわけか」
「くそっ」
「それに呼び出した分身にダメージを与えると本体もダメージを受けるみたいだな。過去を攻撃したら現在にも反映されるというわけか」
冷静に此方の状況を分析するXANXUSを見て舌打ちする。
想像よりも大分、いや、遥かに厄介な能力だ。
加えて厄介な超直感もあわさってより厄介極まりないものになっている。
相手の固有結界の中に踏み込んで、その上で打ち負かすという選択はあまり良いものではなかったらしい。かといって今更自分の世界に戻ろうとしてもXANXUSは止めてくる。
ならどうすべきか――――そんな事は決まっている。
「こっちはXANXUSを抑える! そっちは展開の為に使った弾丸を、固有結界の起点の破壊を!!」
「分かった!」
呼び出した分身が地上を移動し、本体の綱吉がXANXUSに斬りかかる。
「てめぇの狙いは分かっている。オレの固有結界の起点になっている弾丸を壊し、オレの固有結界を解除する事だ――――だが、させると思うか?」
綱吉の狙いを察知したXANXUSは炎王鉄槌の状態のまま斬りかかって来る綱吉の攻撃をいなし、分身の方に二つの銃口を向ける。
「分身を維持したままにしたのは失策だったな。炎の消耗が多過ぎて焦りが見えるぞ」
XANXUSは炎の弾丸を放つ為に引き金を引く。
それを止めようと綱吉は手を伸ばすが時既に遅く、XANXUSは分身に向かって連射した。
「
放たれた複数の炎玉が一つとなり、超極太のレーザーへと変化し分身の綱吉へと降り注ぐ。
攻撃範囲、威力、そして速度の三つがあわさった大技は回避する間すら与えずこの世から消し去った。
「過去のお前が死ぬ程のダメージを受けたら、
爆炎を上げる着弾場所を見下ろしながら本体の方に視線を向ける。
とはいえ、結果は既に分かっている。分身とダメージを共有するのなら、分身が倒された時点で本体も死ぬ。それは超直感が告げている。
故にXANXUSは勝利を確信し、地に落下する綱吉の姿を瞳に収めようとする。
しかしXANXUSの瞳に映ったのは分身を生み出した時よりも、戦闘開始時よりも遥かに激しく死ぬ気の炎を燃え上がらせた綱吉の姿だった。
「何ッ!?」
「どうやら…………上手くいったみたいだな」
振り下ろされた刃を両手の拳銃で防ぐ。
しかし先程よりも能力値が上昇しているのか、重く感じXANXUSは押されてしまう。
「沢田綱吉…………お前何をした?」
「それを言うと思っているのか? そんな事より固有結界の方を気にしたらどうだ?」
ダメージを受けるどころか更にパワーアップしているという不可解な現象に困惑するXANXUSをよそに、綱吉は挑発するような素振りを見せる。
そして、綱吉がそう告げた瞬間からピシピシと亀裂が走る音がした。
音の出所はこの世界全体からであり、XANXUSの固有結界全体に罅が走っていた。
「さあ、仕切り直しだ」
綱吉が言い放つと同時にXANXUSの固有結界が崩壊。
再び綱吉の固有結界が場を支配した。
+++
ツナは天才だ。
これを本人の前で言ったら否定するが、間違いなく天才と呼ばれる人間だ。
才能の無い人間が固有結界を使えるわけが無いし、固有結界を使えるように色々と調整したのはある。だけど元々使えるだけの素養はあったし封印なんかされてなければ調整だって必要なかった。
固有結界の一部を最初に引き摺り出したのだって、私のを見て自分で使えるようにしたのだから本当に凄まじい。
「正確には色々と理由があるんですが魔術は古い方が強いという法則があります。人類史において初めて固有結界を使ったツナは、この世界で最も固有結界に精通している人間です」
格としてはかの魔術王のそれと同格だろう。
それだけの力をツナは持っている。
「XANXUSの会得する速さは確かに恐ろしいものです。けど、ツナは前人未踏の領域に踏み込んで手に入れた。手本があったXANXUSでは絶対に乗り越えられない壁がある」
映像に映っている、砕け散ったXANXUSの固有結界を見て力強く断言する。
ツナはXANXUSの固有結界の外部から自身の固有結界で干渉し、破壊したんだ。
「それだけじゃねぇ。分身を狙わせて零地点突破・改を決めたのも上手いな」
「手札が多いという事は選べる選択も多くなるという事ですからね。敢えて弱点を晒す事で強力な攻撃を誘ったツナの作戦勝ちです」
リボーンがツナに教えた零地点突破の弱点。受け身にならないと使えないというもの。
かといって相手の攻撃をただ受けようとしても何かあると判断して攻撃しなくなってしまう。
だからこそ、分身の弱点を開示した上に一方は攻撃を仕掛けて相手に思考をさせないようにした。
仮に意図に気がついて攻撃しなくても、そのまま攻撃に入った本体が斬れば良いだけだし。
私がXANXASの立場でもあんな風に戦われたら同じ事をした筈だ。
その結果がこれだ。ツナが発展進化させた零地点突破・改でXANXUSの炎を吸収し、パワーアップする事に成功した。
タイムサーヴァントが本体と同期しているという弱点は零地点突破・改にとって都合が良く、分身が炎を喰らってから解除し消えたように誤認させる。
そして倒したと思ったら何故かパワーアップしたツナに重い一撃を食らわされて、挙句の果てに固有結界も破壊される。
うん。私でもこんな事されたら嫌過ぎる。クソゲーにも程がある。
「そして、固有結界を破壊した事でツナのテリトリーになった以上、ツナの異界法則がXANXUSを襲う」
「だがXANXUSも黙ってそれを受け入れるわけがない」
再度大勢のタイムサーヴァントを出し、ツナは炎王鉄槌を発動する。
それに対しXANXUSは再度固有結界を展開する為に、さっきの特殊弾を銃に装填した。
「だけど、もうその手は通じない」
+++
固有結界の範囲が狭くなっている。
新たに展開した自身の固有結界の広さを見て、XANXUSは訝しむ。
ついさっきまではXANXUS側が4割程で綱吉側が6割ぐらいの範囲を占めていた。
別にそれは不思議な事ではない。自分の固有結界は会得してまだそれ程の時を経ていない。対する沢田綱吉は自分よりも遥かに固有結界に対して含蓄がある。
だが二度目の発動となった今回は自分のテリトリーが三割と減っている。しかも、展開直後だというのに外殻に罅が入っている。
「悪いがさっきのようにはいかないぞ」
綱吉の言葉と共に展開されている固有結界が崩壊する。
「お前のそれはもう慣れた」
「クソがっ…………!」
自分の固有結界はもう時間稼ぎにしか使えない、その事実にXANXUSは歯噛みする。
残された弾数は三発。その三発を全て使い切る前に沢田綱吉を倒す、もしくは綱吉の固有結界を破壊する。
「舐めてんじゃねぇぞ!!
XANXUSは怒りに染まり、固有結界を再び展開し攻撃を再開。
怒りの暴発に酷似しながらもそれより速い極太レーザーを前に、綱吉は炎王鉄槌の状態のまま切り払った。
「何ッ!?」
「言った筈だぞ。もう慣れたって!」
さっきまで対応出来なかった筈の超圧縮した憤怒の炎の特殊弾を剣で弾いた事実にXANXUSは驚愕する。
それと同時に再度展開した固有結界が崩壊し始めているのを理解する。
このままでは勝ち目は無い。そう判断したXANXUSは賭けに出る事にした。
固有結界に使う弾丸を綱吉に向けて撃つという選択を。
そして、その選択が今の綱吉にとって有効な手である事を超直感が告げていた。
「っ、それは不味いな…………!」
炎の鉄槌を弾いた事で防御姿勢を取るのが遅れている綱吉に向かって特殊弾を撃ち放つ。
銃口から放たれた銃弾は綱吉の右肩に命中し、内側から爆発するかのように破裂した。
右腕と胴体が破裂した綱吉はそのまま力無く倒れる――――前に頭の上に浮かんでいた時計の針からカチリと音が鳴る。
瞬間、致命傷を負った筈の綱吉の身体が元に戻った。まるで時を巻き戻すかのように。
「っ、くそっ!!」
目に見えて炎が小さくなった綱吉は舌打ちをしながらも左腕を前に出す。
すると死ぬ気の炎ではなく何故か冷気が放たれ、XANXUSの身体を凍結させた。
「ぐっ、まさかこれは…………!?」
「くそっ…………やり直しだ」
以前にも同じ技を受けた事があるXANXUSは綱吉がこの技を使えた事に驚き、綱吉は受けたダメージが想像以上に大きかった事に苦悶の表情を浮かべる。
同時に綱吉の固有結界の方にも亀裂が走り、ガラガラと音を立てて二つの世界が崩壊し、二人は現実世界へと回帰する。
氷によって身体の自由を奪われたXANXUSの懐から固有結界が埋め込まれた最後の特殊弾が落ち、カランと音を立ててビルの屋上に転がった。