キャストリアに転生したが原作を壊してしまった 作:霧ケ峰リョク
最後にヴァリアー編のエピローグをやって未来編に行きたいと思います。
「
「Xストリーム!!」
街の上空にて戦闘を継続する二人の戦いは、常人では点を捉えるどころか線すらも捉えられない程の高速で行われていた。
片方の銃を推進力とし、もう片方の銃で狙い撃つXANXUSに対し、綱吉は新たに生えた羽を器用に動かしながら放たれた炎弾よりも早く移動する。
悪竜現象が進行した事で両翼を使えるようになった影響か、綱吉の推進力は今のXANXUSをも凌駕している。しかし、それはあくまで時限式の身体へのダメージを無視した死ぬ気の戦法。
強引に引き上げられた速度は身体を軋ませ、身を守る為に死ぬ気の炎を使い、その炎に耐え切れず自壊する。突貫工事で回路を作ったとはいえ、所詮はその場しのぎに過ぎず回路から溢れてくる始末。
血の涙が勝手に溢れ、身体に走っている亀裂は確実に広がっていく。
残された時間はそう多くない。
「
綱吉は更に出力を上げ、さっきよりも威力の上がった炎王鉄槌を繰り出す。
Xストリームで発生した竜巻の中に閉じ込められたXANXUSは回避できず、その後ろにあったビルを両断する。
しかし、直撃した筈のXANXUSには大したダメージは入っていなかった。
「甲虫の外骨格に…………脂肪と繊維で防いだのか」
地面に落下する両断されたビルの上に乗るXANXUS、その傷口を見て綱吉は察する。
攻撃が当たる直前に体表の上に繊維を絡めた脂肪を、その上に甲虫の外骨格を形成し鎧のようにして防いだ。
思っていた以上に応用力が高い能力だ。
能力の発動条件を察するに多分虫も食べたのだろうか。
「いや、関係無い事は考えるな」
固有結界の使い手として、正直気になるが今はそんな余裕は無い。
追撃を仕掛ける為に翼から炎を噴射して落下するビルに向かう――――が、その途中で小さい玉のようなものが複数浮かんでいるのに気が付く。
近付いてようやく視認できるほどの小さな憤怒の炎の玉で、それに気付いた瞬間には衝撃となって全身に襲い掛かった。
「くっ…………ぁああああああああああ!!」
綱吉は絶叫を上げながら小型憤怒の炎の群れを強引に突破する。
さっきまでならば兎も角、悪竜現象が進行している今の肉体ならば物凄く痛いだけで突破は可能だ。
「はぁ…………はぁ…………! くそっ、まだまだ遠いな…………っ!」
全身が傷だらけになりながらも落下するビルに到達した綱吉が目にしたモノは、甲虫の外骨格のような鎧を身に纏ったXANXUSとその周囲に居る二体の人型の巨大なキメラだった。
固有結界内でも猛獣を操っていたから、可能か不可能かで言えば可能なのだろう。加えて憤怒の炎も使用出来る。
「タイムサーヴァント、そして
出し惜しみしていられる状況ではない、そう判断した綱吉は二人の分身を呼び出して一気に加速する。
二体の分身は出現した使い魔達を相手取り、本体はXANXUSに向かって斬りかかる。
「どうした、五分で片付けるんじゃなかったのか!?」
「五分じゃなくなりそうだ!」
銃を撃ちながら近接戦闘をするXANXUSの攻撃を回避し右腕に刃を振るう。
固有結界外で出せる最大倍率の四重加速、残された戦闘継続可能時間を湯水の如く消費しながらもXANXUSの右腕を斬り落とす事に成功する。
「ぐっ…………!」
「まだだっ!!」
右腕を失ったXANXUSに追撃を仕掛けようと綱吉は剣を振るう。
しかし、剣はXANXUSを斬る事無く、綱吉の腕からすっぽ抜けてしまった。
「しまっ…………」
「身体にもガタが来てるみてぇだな…………!」
斬られた箇所を再生し腕を生やしたXANXUSはそのまま綱吉の腹部を掴み、憤怒の炎を零距離で放つ。
さっきの小さな憤怒の炎の群れとは違い、最大出力で放たれたそれは綱吉の身体に深いダメージを刻み付ける。
悪竜現象が進行してなければ致命傷となるダメージを受け、口から大量の血を吐き出しながらも綱吉は宙を舞っている剣の柄を蹴りXANXUSの胴体を貫く。
「っ、カスがッ…………!」
胴体に剣が刺さったXANXUSは掴んでいた綱吉をぶん投げる。
投げられた拍子に鉄筋のコンクリートとぶつかり、血を撒き散らしながらも炎を放出し宙に浮く。
XANXUSも突き刺さった剣を引き抜いて銃で破壊した後、もう一丁の銃を回収し落下するビルから飛び上がる。
崩壊するビルを尻目にしつつ、互いの状況を確認し思わず笑みを溢す。
エデンリングの剣は破壊されてしまった。自動修復機能がある為、再生はするだろうがこの戦闘、残された時間の中で再使用する事は出来ない。
武器も失い、戦闘時間も残り1分。
一方のXANXUSは綱吉の流した血を口に取り込んでいた。
「これが竜種の力か…………とてもじゃねぇが一朝一夕では使いこなせねぇな」
竜種の力は長年悪竜現象を進行させていた綱吉でも使いこなす事は出来ていない。
いくら修復できるとはいえ肉体に刻まれたダメージはXANXUSにとっても無視できないその状態で、使う事は不可能だった。
それでも一部とはいえ炉心を取り込んだ事には変わりなく、XANXUSの消耗した筈の炎が回復していく。
「ははっ」
互いに満身創痍、身体に刻まれた傷は活動に支障が出る程だというにも関わらず身体から溢れて来る炎を滾らせる。
蓄積したダメージの事を考えるとXANXUSもこれ以上の戦闘継続は困難。
残された時間の事もあり、恐らくこれが最後の攻撃になる。
そう考えた二人は互いに手と銃を前に向ける。
「死ねっ!!
二丁拳銃から放たれたのは今まで放たれたものとは比較にならない程の巨大な炎塊だった。
炎の大きさだけではなく純度も威力も熱量も、その全てが必殺と呼べるものだ。
対する綱吉は前に突き出した両手から炉心から溢れた炎を放出する。
「ホロウハート・アルビオン!!」
境界竜アルビオンの力を引き出し、それを炎の放出という形で相手にぶつける。
本来のホロウハート・アルビオンとは比較する事すら烏滸がましいものだが、今の綱吉が行える最大威力の技だった。
放たれた二つの炎は衝突し、周囲にあった大気を巻き込んで収束。数秒拮抗した後、大爆発を引き起こす。
「ぬぐぉ!!?」
爆発の衝撃でXANXUSの身体は空中に居た事もあり踏ん張りが利かずに吹っ飛ばされる。
綱吉も同様に吹っ飛ばされそうになるが、翼から炎を噴射し何とか堪える。
そしてもう一度手を前に突き出し、今度は冷気を纏う。
この勝負の勝敗。それはどれだけ竜種の力に慣れていたかの差だろう。
アルトリアと出会ってから移植し、暴走して自分の身体を壊しながらも数年の時を経ている綱吉とついさっき取り込んだばかりのXANXUS。
それ以外の差は殆ど無く、どちらが敗北してもおかしくない戦いだった。
「――――次は負けねぇ」
「次も勝つ」
自身の敗北を理解したXANXUSに向かって、再チャージしたホロウハート・アルビオンを速射した。
死ぬ気の炎では無く、真逆の境地である零地点突破・
凍てつく冷気はXANXUSを、その周囲にある建物ごと凍結させ、巨大な氷塊を作り上げた。
同時に大空のハーフボンゴレリングが宙を舞う。
「っ、もう限界…………」
大空のハーフボンゴレリングをキャッチした瞬間、綱吉は死ぬ気を解き、翼を使ってゆっくりと降下する。
炎そのものはまだ残っている。と、いうよりも溢れている。
しかし、器である肝心の身体がこれ以上動かない。
左目は全く見えず、身体の動きは鈍いを通り越して鈍重だ。身体の至るところから激痛が走り今にも意識を失ってしまいそうだ。
「我ながら随分と無茶をしたなぁ…………」
それでも勝ちは勝ちだとボンゴレリングを一つに戻す。
今の自分は戦闘はおろか、その手伝いも出来ないくらい弱っている。
今合流しても足手纏いどころか弱点になりかねない。ならば戦いが終わるまで隠れていよう。
そう考えたその時だった。
――――パキッ、と音が鳴ったのは。
音が鳴った方向に視線を向け、黒い小さな球体としか言えないような穴が空間に出来たと理解した瞬間、その穴の下に向かって突き進んだ。
何故その穴が開いたのかは分からない。自分とXANXUSの全力の衝突で開いたのか、それとも固有結界のぶつかり合いで空間が歪んでいたのか。今は調べる時間も無ければそれを考察する時間も無い。
ただ今は、その穴が閉じる前に到達しなければいけなかった。
その穴が『 』に繋がる穴であると本能が告げていたから。
「っ、届け!」
小さかった穴が更に小さくなる中、綱吉は手を伸ばす。
上げる事が出来なかった左腕ではなくまだ動かせる右腕を、ボンゴレリングを持った右腕を。
穴が消える直前に右手で触れ、世界が光に包まれる。
そして綱吉は理解する――――やらかしてしまった、と。
+++
「――――勝者、沢田綱吉とその守護者達!」
チェルベッロ機関の少女が勝利を告げ、長かったリング争奪戦が終了する。
終わる前に色々とごたごたはあったものの助っ人として現れたランチアによって片付けられ、誰一人欠ける事なく戦いは終わった。
その事実に仲間達は笑みを浮かべる。中には浮かべなかった者も居るが勝利の余韻に浸ってはいた。
――――ただ一人、沢田綱吉を除いて。
綱吉は顔を真っ青にしながら右腕の中のリングを見つめる。
かなり予定外ではあったが目的そのものは達成した。が、それと引き換えにかなり厄介な事になってしまった。
「…………どーしよっかコレ」
意識を失うその時まで、綱吉は血を失った事とやらかした事の二重の意味で顔を真っ青にしながら用済みとなったブツを、厄介極まりない代物になってしまったボンゴレリングを見ていた。
争奪戦は終わり、幕が閉じる。
次の物語へ行く前のカーテンコールは盛大に行われるだろう。