キャストリアに転生したが原作を壊してしまった   作:霧ケ峰リョク

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お待たせしました。
丸々一ヶ月更新しなくてすみません。
体調はまあ、無事でしたが単に仕事が忙しく後回しにしてました。
ゆっくりと再開しますので気長にお待ち下さい。


未来超克篇
絶望の未来


 振るわれる黄金の剣を前に綱吉はエデンリングの剣を出現させ、その一撃を防御しようと身構える。

 が、しっかりと構えた筈の剣はいとも容易く下からかち上げられ、流れるような動作で黄金の剣が胸に刺し込まれた。

 

「えっ…………?」

 

 心臓を貫かれたと理解した瞬間、傷口から凄まじい痛みと共に喉の奥から鮮血が込み上げてくる。

 だがそれ以上に辛いのは頭の中に流れ込んでくる記憶だ。

 それはぼやけたノイズだらけの映像を見ているようだった。

 鮮明でもない、色褪せすぎて何が何だか理解できない。飛び飛びで何を意味しているのか把握できず、真に理解するにはもっと時間が必要だろう。

 それでもこの記憶は絶対に受け入れたくないものだと分かった。

 例え全然理解出来なくても、これを受け入れちゃダメだと綱吉の本能が告げていた。

 

「成る程、そこには無いか」

 

 鎧を纏った綱吉にそっくりな剣士は淡々と綱吉の身体から黄金の剣を引き抜く。

 剣を抜かれた事で傷口から血が溢れ、力無くその場にへたり込む。

 

「身体の内側を固有結界に変えているわけか。それなら外から斬ったところで心臓は斬れないな」

 

 冷酷に、無情に告げる眼前の脅威を前に綱吉は背筋が凍り付くのを実感する。

 不味いなんてものじゃない。もし、この敵の正体が自分の予想通りの存在ならば、次にしてくるだろう攻撃は絶対に受けてはダメだ。

 血が抜けた事で冷たくなっていく頭でそう考え、この状況を打開する策を必死に考える。

 だがそれよりも先に脅威は綱吉がしてほしくない事を理解し、剣の切っ先を綱吉に向ける。

 

「なら――――肉体と固有結界の繋がりを断てば良いだけだ」

「――――っ」

「これ以上長引かせて同期させたくないからな。安心しろ、命だけは奪わない」

 

 そう言うと敵は剣を振り上げる。

 口から血を吐き出しながらも綱吉は自分に向かって振り下ろされる刃を見つめる。

 迫り来る凶刃を防ぐ、事は出来ない。この剣の正体が予想の通りなら今の自分達ではまともに受ける事は不可能。

 かといって回避も出来ない。

 身体を貫かれたダメージもそうだが、流し込まれた記憶が処理できない。

 記憶を否定したいという本能とこの状況を何とかしたいという思いが不協和音を起こし、身体を上手く動かせない。

 このままではこの敵の言葉通り、肉体と固有結果の繋がりを断たれて心臓を斬られる。

 それが分かっているのに、今の綱吉には睨み付ける事だけしか出来ない。

 もし、この場にアルトリアが居なければその通りの未来になっていた事だろう。

 

きみをいだく希望の星(アラウンド・カリバーン)!!」

 

 刃が振るわれる寸前のところで周囲一帯に幻想的な百花繚乱の丘が広がる。

 アルトリアの心象風景、固有結界が展開された事で内部空間に居た敵対者以外の全員に対粛清防御が与えられ、綱吉は敵の攻撃を無効化する。

 

「対粛清防御か。だが咄嗟の発動、一回限りの防御でしかない」

「悪いがそれ以上はやらせねぇぞ」

 

 アルトリアの固有結界が消えると同時にリボーンの銃弾が敵に向かって放たれる。

 銃弾は敵の眉間に命中――――したように見えたが、いつの間にか剣で防がれていた。

 だが数秒にも満たない僅かな時間を稼ぐ事には成功し、アルトリアが綱吉の身体を抱えて後方に下がる。

 

「…………逃したか」

 

 綱吉を逃された事に敵は能面のような表情のまま綱吉を見つめている。

 その様子を見るに諦めてはいない様子で、手に持っている剣を力強く握り締めている。

 

「てめぇ、何者だ? うちの生徒と瓜二つな顔してやがるが」

「オレから答える事は無い、晴のアルコバレーノ。その質問の答えを知りたいのならそっちの二人に聞くと良い」

 

 敵はそう言うと視線を綱吉とアルトリアの二人に向ける。

 秘めたる思いすら表出させない無感情、超直感を持つ綱吉から見てもそう思ってしまう程に感情の無い敵を前に、アルトリアは悲しそうな顔をする。

 

「貴方は――――」

「悪いが、ここに居るオレに会話は無意味だ。そういうのがしたいのならオルタとして呼ばれてないオレに言ってくれ。まあ、絆されないようにオルタとして呼ばれたんだろうが」

 

 そう言うと敵、オルタはゆっくりと歩みを進める。

 話し合いは無意味、和解は不可能、目的を達成するか退去する以外の方法でこの敵の行動は止まらない。

 かといって現段階では倒す事は出来ない。

 

「…………逃げるよ」

 

 即座に判断した綱吉は皆に聞こえる程度の小さな声音で呟き、死ぬ気の炎を発生させる。

 攻撃の為ではなく、この場から逃げ出す為の異能の燃料として。

 意図を察したのかアルトリアは綱吉の前に立ち防御を固める。

 リボーンは何か言いたげな表情をしていたが、状況的にも今は逃げるしかないと判断したのか綱吉の考えに同意する。

 

「お前の考えている事は手に取るように分かる。それをさせると思うか?」

 

 当然、綱吉の事をこの世の誰よりも理解しているオルタが黙ってそれを待つことは無い。

 歩みを進める速度を速め、黄金に輝く剣を振るう。

 向かって来る敵に対しリボーンが銃弾を放つが、オルタはそれを簡単に捌きどんどんと近付いていく。

 

「そんな事は分かってるよ。だから足止めしてもらう。幸い、戦う理由は出来たみたいだからな」

 

 剣がもう少しで届く、その距離まで近づいた瞬間にⅠ世(プリーモ)がオルタに向かって殴りかかった。

 予想外の攻撃を受けたせいか、それともⅠ世の攻撃が重たかったからかオルタは後方に下がる。

 

「身体が無いから無視しても問題無いかと思ったんだけど」

「オレにとってもこれは予想外だったよ…………でも、利用できるなら何でも利用する」

 

 XANXUSとの決戦の際にボンゴレリングが『  』に触れた影響により、中に存在する歴代ボスの魂が表出されるようになった。

 そのせいか、ボンゴレリングの継承者である綱吉の固有結界にも干渉が可能になった。

 

「タイムサーヴァント・Verボンゴレ」

 

 綱吉がその異能の名を告げると同時にボンゴレリングに宿った歴代のボスが現界する。

 魂だけではない、仮初とはいえ肉体を持った存在として。

 

「…………対粛清防御も纏っているな。成る程、ボンゴレリングの中に居る連中も対象に入るのか」

 

 生存している9代目のティモッテオ、所有者である10代目の沢田綱吉を除いた8人のボス達。

 歴代ボス達が眼前の脅威に対する敵意を向ける中、Ⅰ世は困惑に満ちた表情をしながらオルタに話し掛けた。

 

「何故だ、何故…………シモンの子らを」

「さっきも言ったが会話は無意味――――いや、良いか。アルトリアの補助がある状態でお前等全員の相手をしてたらどう足掻いても逃げられる。しょうがない、最低限は達した事だし今回は見逃そう」

 

 オルタは気怠そうに黄金の剣を特異な鞘にしまい、剣を消失させる。

 緊迫した状況が終了し、オルタは呆れた表情をした。

 

「それで、さっきの質問の答えだが仕事としか言いようが無い。世界の為にこの子ども達は死んでもらった方が良かったんだよ」

「ふざけるなっ!!」

「ふざけてなんかいない。ここにあるオレの仕事は花や木を正しく成長させるために剪定するのと一緒だ。哀れとは思うが、この子達は悪でしかない」

「それが、シモンの子らを殺した理由なのか?」

「そうだよ。ボンゴレⅠ世、お前の優しさは美徳かもしれないが世界の為にならないんだよ。ボンゴレⅠ世。お前はボンゴレリングを手にした時に自警団で収まるべきではなかった。王として君臨し、歴史に名を残すべきだった」

 

 憐れむように、そして突き放すようにオルタは告げる。

 その言葉を聞いてⅠ世は言葉を失った。黙り込むしかなかった。

 

「さて、と…………沢田綱吉。一応これが最初で最後の警告だ――――オレが現れた理由が分かってるのなら諦めろ。諦めない限りオレはお前を狙うぞ」

「…………諦めたら、そうなるって事だろ? それを知って諦めるわけないだろ。むしろより強くなった」

 

 目の前の存在を容認出来ない綱吉は敵意を剥き出しにする。

 

「お前を踏み越えて望みを叶える。オレは、お前にはならない」

「ならオレはお前の願いを斬り捨てる」

 

 不倶戴天の天敵と認識し合った綱吉とオルタの衝突は終了し、綱吉達の姿はこの世界から消失した。

 

   +++

 

「…………行ったか」

 

 姿が消えた沢田綱吉達が居た場所を見て、オルタは思案する。

 どのような方法でこの場から逃げたのか。沢田綱吉の能力を誰よりも把握している以上、それについては凡その見当がついている。

 予想外なのはこの場に誰も現れなかった事だが。

 

「まあ、どうでも良いか」

 

 虱潰しに探せばいつかは見つかる。

 そう判断したオルタはこの場を後にしようとし、ふと何かを思い出したかのようにある場所に視線を向ける。

 

「お前も何時まで見ている?」

「――――バレていましたか」

「気付かない程このオレは鈍感じゃない」

 

 オルタの視線の先に霧が現れ、一人の男を形作る。

 かなり特徴的な髪型をした、如何にも貴族風の雰囲気を漂わせている男だった。

 

「それで、何の用だ?」

「一つ疑問がありましてね。何故私を見逃したんですか?」

 

 男は警戒しながらオルタに問い掛ける。

 とある事情でシモンファミリーの守護者の身体に憑依していた男は、オルタの実力をその目で見ていた。

 シモンファミリーはボンゴレファミリーより遥か格下の下級マフィアだ。

 しかし、その実力は断じて侮っていない。

 過酷な環境を生き抜く為に、ボンゴレへの憎悪を力に変えるよう自らがそう差し向けた。恐らく今の10代目ファミリーの守護者と同等程度の実力はある。

 それをオルタはたった一人で蹂躙したのだ。

 勝負にすらなっていなかった。それこそかつての初代ボンゴレとシモン、否、全盛期のボンゴレの総戦力を以てしてもこの男は倒せない。

 にも関わらずオルタは自分を見逃した。

 

「オレの仕事はあくまで世界の害になりそうな存在を掃除する事、害にならない奴は別に倒さなくて良い」

「成る程、つまり私は害では無いということですね」

「本来のオレならお前を見過ごさないだろうけどな。だが、在り方が歪んでいるのなら許容しよう」

「見逃されたということですか。まあ良いでしょう。それで、二つ目の質問なんですが」

「疑問は一つじゃなかったのか?」

「良いじゃないですか。そう時間は取らせませんよ――――何故沢田綱吉を殺さなかったのですか?」

 

 その質問を聞いてオルタは眉を顰める。

 

「貴方の実力ならば、いいえ…………命を奪うつもりで戦っていたならばまた話は違った筈です。何故ですか?」

「…………あいつには生きていてもらわないと困るんだよ。考えは非常に厄介だし人類にとっての癌でしかないが、かといってあいつが居なければ人類史にとっても大問題だ」

 

 溜め息混じりにそう吐き捨てる。

 

「本当、我ながらどうしようもないと言うべきか…………変なところで諦めが悪いと言うべきか。今を生きている人間だからそれもしょうがないのかもしれないが、こうしてあんな様を見せられるといくらオルタとはいえ羞恥心が」

「おかしな事を言いますね。まるで貴方と沢田綱吉が同一人物のような口振りですが」

「同じ時間軸に同一の存在は共存出来ない。それが世界のルールだ。まあ、出来ないわけではないがリスクの方が大きい。普通ならそんな選択肢は取らない」

 

 男の言葉を戯言と切り捨て、オルタは歩き始める。

 

「そういうわけだ。沢田綱吉を殺すのは止めろ。もしこの忠告を無視して殺すつもりなら、今度はお前が敵になるだけだ。その事を肝に命じておけ」

 

 そして少し歩いた瞬間にはこの世界から消えていた。

 痕跡一つ残さず消失したオルタの姿を見て、男は愉快そうに笑みを浮かべる。

 

「ヌフフ…………想定とは異なりますが、まあこれはこれで悪くは無い」

 

 問題があるとするなら身体の方だがそれについては候補が居る。尤も、現状では手に入れられない為、それまでの間は別の器が必要になるが。

 

「シモンリングを独占出来たのは僥倖でしたね」

 

 そう言って男は手に持っていた箱を見つめる。

 箱の中にはテープのようなものが巻かれて封印されている七つの指輪があった。

 

「昔、初代シモンの連中が聖地と呼んでいるこの地に封印した大地の七属性のリング。地の底に封印されていたせいで取り出す方法が無かったわけですが、あの男が暴れてくれたおかげで手に入れられましたよ」

 

 自身の理想にとって邪魔なシモンも死に絶え、シモンリングも独占出来た。

 正に運命が自分の望みを叶えろと言っているようなものだ。

 沢田綱吉の排除が出来ないのは残念だが、殺さなければ良いのならやりようはある。

 

「さあ、私の理想のボンゴレを築き上げるとしましょう――――!」

 

   +++

 

 オルタに襲撃された綱吉が取った方法、それは別の時間軸へと逃げる事だった。

 10年バズーカという見本を何度も見ていたおかげか、ぶっつけ本番ながらも何とか成功したかに見えた。

 だが、すぐに何かがおかしい事に気が付く。

 同一時間軸に同じ人間は共存出来ない。それは世界のルールだ。

 だから綱吉も10年後の自分にメッセージを送り、同意を受け取った事で入れ替わった筈だった。

 しかし、10年後の綱吉は入れ替わる事なく別の空間に消失した。

 その事実に綱吉は対応しようとするが時既に遅く、未来の自分が居た場所へと着地した。

 

――――そして自身に向けられる沢山の銃口を見た。

 

「はっ?」

 

 驚愕する間も無く、大勢の男達は手に持った銃から弾丸を撃ち放った。

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