キャストリアに転生したが原作を壊してしまった   作:霧ケ峰リョク

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本当は幻騎士戦を終わらせたかったんですが、残念ながら次回になります。
ちなみに今回の話、当初は歴代ボンゴレとの話し合いがあったんですがあまりにも微妙だったので没にして書き直してます。


メメントモリ

『――――緊急事態発生、緊急事態発生! 戦闘可能な者はただちにパフィオペディラムの最上階に直行せよ!!』

 

 ミルフィオーレファミリーの本部である高層建築(タワー)パフィオペディラム。

 元ジェッソファミリーに(ホワイト)スペルのボス、そしてミルフィオーレファミリーの実質的な頂点である白蘭の親衛隊の名が付けられたビル全体にサイレンと共に非常事態を告げるアナウンスが流れた。

 食事を摂っていたり、仲間と談笑していたり、Wスペルと元ジッリョネロファミリーである(ブラック)スペルがいがみあう中、流された突然のメッセージに誰もが一瞬呆気に取られる。

 そして流れたアナウンスを脳が理解して行動に移す前に、耳を劈くような轟音と共に建物全体が激しく揺れた。

 地震ではない。大地が揺れたのではなく建物の上層の方から凄まじい衝撃が走ったのだ。

 その証拠に窓の外では上から瓦礫が降ってくるのが見える。

 事態を把握したミルフィオーレファミリーの構成員はWスペルBスペル関係無く、異常事態が発生したであろう最上階へと向かうのだった。

 

「…………ったく、騒々しいな」

 

 その道中、他の者同様にアナウンスを聞いていた金髪オールバックの男が気怠そうに吐き捨てる。

 彼の名はγ。ミルフィオーレファミリーのBスペル、ボンゴレリングやアルコバレーノのおしゃぶりと同等の精製度を誇る雷のマーレリングの守護者、6弔花の一人でもある。

 

「停戦での協議にも関わらず殺そうとしたんだ。そりゃこうなるに決まってるだろ」

 

 Bスペルとの中でもWスペルとはかなり険悪な関係とはいえ6弔花であるγにも今回の件については教えられていた。

 だからこそ、こうなってもおかしくはない。むしろ普通に考えたらこうなるだろう。

 戦えない人間ならまだしも、相手は名高きボンゴレ10代目。

 温厚で慈悲深く、裏社会を代表する格式あるマフィアのボスとは思えない程甘い。

 そんな相手だから問答無用で殺せる等、絶対にありえない笑い飛ばせるような話だ。

 

「出来れば白蘭の奴も仕留めてくれるとありがたいんだが」

 

 嫌っているを通り越して嫌悪、憎悪している事実上の上司の死を望みながらもそれは不可能であると結論付ける。

 あの悪魔は自分の想像を遥かに上回る悪辣さを持っている。

 甘過ぎるボンゴレ10代目では白蘭を倒す事など出来ないだろう。

 そう思いながらγは仕事の為にアナウンスで流れた場所へと向かう。

 乗り気では無かったとしても、自分のボスの為に一応は白蘭に従わないといけないから。

 

「本当、やる気が湧いてこねぇな」

 

 γは欠伸をかきながらゆっくりと歩みを進めた。

 そして、それが間違いであったと思い知らされる事となる。

 

   +++

 

 魔術を習うということはいつか人を殺すということ。

 厳密に言えば魔力が無いので魔術は使えないのでこれには当てはまらない。が、固有結界という異能に指をかけた時から覚悟はしていた。

 常人から外れ過ぎた特異な才はただあるだけで厄介事を招き、自分や人を傷付ける。

 加えて未来の記憶を受け取った時からいつかはこうなる事も覚悟していた。

 

「ぁあああああああああ――――!!」

「いた、い…………ぁ」

 

 身体の大部分を失って身体の機能を果たさなくなったもの、血塗れになり断末魔の叫びを上げているもの、数秒後の死をただ待つだけになったもの。

 それでも、この惨状を作り上げたのが自分だという事実に綱吉は最悪な気分になった。

 こいつらは敵だ。自分を殺そうとした、盛大にやらかしやがった白蘭の仲間で、手足のようなもの。そう言い聞かせながらも不快感でどうにかなってしまいそうだった。

 Ⅰ世が止めるように語り掛けて来ているのが分かる。

 歴代ボスの中には「甘過ぎる!」とⅠ世に言う者も居るし、Ⅰ世の考えに同調する者も居る。綱吉自身人間としてはⅠ世の考えに寄っている、というか子孫なだけあってそっくりだ。

 きっと、それが許される時代だったならば考えの通りに生きていただろう。

 だが現実は逆でそれが許されないのが今の世界だ。

 大切なモノを守る為には手を血で染め上げるしかなく、誰からも賛同を得られなかったとしてもやり遂げるしかない。

 皆を守る為にはそうするしか無いのだから。

 その為に――――。

 

「お前は、邪魔だっ!!」

 

 胸の奥から込み上げる果てしない怒りを抑える事もせず、綱吉は力強く前に踏み出す。

 

「あはは、随分と怒り狂ってるね」

 

 対する白蘭は荒れ狂う綱吉を見て笑う。が、実際のところあまり笑えないのが本音だ。

 白蘭は全ての並行世界の自分と記憶と情報を共有する能力を持っている。

 その能力を使ってこの世界を除いた全ての世界を支配した。

 故に白蘭は沢田綱吉の情報も持っている。

 何をやってもダメダメ、というのは基本的に全ての並行世界において変わらない。勉強もダメ運動もダメ何もかもがダメ。本来ならばマフィアのボスどころか、寄せ集めの偽善よりも個人の執着の方が強いこの世界で生きる人間としても失格だ。

 が、同時に謎が多い存在である。

 何故なら、沢田綱吉は高校卒業と同時に行方不明になるからだ。

 それはどの並行世界でも関係無く、その全てで彼女のアルトリア・キャスターとともに消息が分からなくなっている。唯一マフィアのボスを継いだこの世界でだけ、行方不明になっていない。

 

「ダメダメだったのは本性を隠してただけだったんだね」

 

 あるいはそちらも本当の姿ではあったのかもしれないが、いずれにせよ沢田綱吉は普通ではない。

 最初こそ行方不明になっていたのはボンゴレに敵対的な組織に始末されたと思っていたが、これを見るにそれは無いだろう。

 事前の情報、並行世界の自分の記憶や知識は最早無意味な物となった。

 しかし白蘭は笑う。

 その笑みは普段浮かべているものとは違い、本心からの笑みだった。

 

「本当に興味が湧いてきたよ。きみと、きみの彼女のアルトリアちゃんにね」

「今すぐ死ねっ!!」

 

 白蘭の言葉の意図を超直感で理解した瞬間、綱吉の怒りは頂点に達する。

 両目が金色に変化し、肉体からは莫大な死ぬ気の炎が溢れる。

 恐ろしい程澄み切ったオレンジ色の炎には不純物等欠片も見られず、空間を圧倒する圧倒的熱量はただそこに居るだけで身を焦がす。

 

「な、なんて死ぬ気の炎だ…………!」

 

 質、純度、量、出力、そして大きさ。全てにおいて怪物としか形容できない綱吉の死ぬ気の炎にミルフィオーレファミリーの戦闘員は蛇に睨まれた蛙の如く圧倒される。

 中には戦意喪失してその場にへたり込んでいる者も居る程だ。

 

「落ち着け! 如何にボンゴレ10代目といえど所詮は子ども! 匣兵器も持っていない!」

 

 それでも、臆する者が居れば立ち向かう者も居た。

 

「匣兵器の事を知らない奴はまだこの時代の戦いに適応出来てはいない! それにあれだけ炎を無駄使いしてるのだ! すぐにガス欠――――」

「悪いけどもう同期は終わってる」

 

 声を張り上げ仲間達を鼓舞する男の背後に移動し、綱吉は淡々と告げる。

 同時に声を張り上げていた男の鼻から上がずれ落ち、床に転がった。

 倒れ行く男を見て戦闘員達は武器を構えて綱吉に攻撃しようとして、自身の身体が斜めにずれ落ちている事に気付いた。

 

「使われると厄介な兵器、使わせるわけないだろ」

 

 仮に使われていたとしても相手より四倍の速さで行動出来る以上、まず負けないだろうが。

 そう考えながら戦闘員を始末した綱吉は白蘭の方に視線を向ける。

 綱吉が視線を向けると白蘭を守るように変な眉の男、この時代最強の戦士と呼ばれている幻騎士が前に立つ。

 

「退け、そいつ殺せない」

「この俺がそうさせると思ったか? ボンゴレ10代目」

 

 互いに敵意と殺意を飛ばしながら向き合う綱吉と幻騎士の二人。

 白蘭に対し半ば不意打ち気味に放った攻撃、それには触れた対象の肉体の動く時間を停滞させる効果がある。

 とはいえ、そこまで時間は稼げない。咄嗟の攻撃だった事に加えて白蘭の死ぬ気の炎で抵抗されている。

 停止時間は三分――――既に一分四十秒が経過している。

 残り時間一分二十秒でこの二人を片付けなければならない。

 

「面倒だな…………」

 

 こうして考える時間も勿体無いと思えてしまうくらいに面倒臭かった。

 オルタに刻まれたダメージによって固有結界の展開はもう少し時間がかかる。

 ならどうするべきか――――。

 

「普通に剣で打ち勝つか」

 

 相手は仮にもこの時代最強の剣士。

 立ち振る舞いからして常軌を逸しているのは分かる。

 だが、何故かは分からないが不思議と負ける気がしなかった。

 炎皇鉄槌を発動させながら綱吉は幻騎士に向かって突貫する。

 ボンゴレⅩ世とこの時代最強の剣士、二人の剣士の戦いの火蓋が切られた。

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