キャストリアに転生したが原作を壊してしまった   作:霧ケ峰リョク

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FGOの後編が早まったので初投稿です。
そろそろ未来編の起承転結の起が終わります。
後タイトル回収もやっときました。

そして改めて書きます。
多分ここから先の展開は賛否両論になると思います。
えっ、シモン皆殺しにしたのにこれ以上があるのかって?

まあうん、そうだね。


キャストリアに転生したが原作を壊してしまった

 いつかはこうなるって事は頭の中で理解していた気がする。

 断言出来ないのは私がそこから目を逸らしていただけ。多分、貴方なら私が居なくなっても大丈夫だと思っていた。それが間違っているとは思えないし、きっと貴方なら乗り越えられるだろう。

 でも、それは私が居なくなった後の話。

 優し過ぎて甘過ぎる彼が、私を含めた大切な人達の未来が悲惨な事になると知って何も手を打たないわけが無かった。

 別に不思議な事じゃないし未来の事を考えるとそれも良い方向に作用すると考えていた。

 

――――だからこそ抑止の守護者である彼が現れた瞬間、私が楽観的に考え過ぎていた事を思い知らされた。

 

 貴方がどれだけこの世界に対し怒っていたのかを、私は分かっていなかった。

 だからこうなってしまったんだろう。

 

「本当、地獄への道は善意で舗装されてるなんてよく言うよ。諺通りの意味では無いけれど、その通りじゃないか」

 

 目を見開いて顔を顰める。

 私の目にはいつもと変わらない花畑と青い空が映っていた。

 ここの景色は変わらない。アルトリア・キャスター、FGOという作品の知識を持った人間の記憶をインストールされたキャストリアの心象風景と同じものだった。

 

   +++

 

「理由を話す気は無いがお前ら邪魔。沢田綱吉に関わらないっていうのなら見逃す――――」

 

 両隣の復讐者(ヴィンディチェ)に対し一方的な要求を告げる綱吉そっくりの男、オルタだったがその要求が復讐者達に受け入れられる事は無く攻撃姿勢に入る。

 当然といえば当然の話、仲間を一方的に殺しておいてあまつさえ仕事の邪魔をするどころか関わるなと言われて怒らないわけがない。

 しかし、二人の復讐者がオルタに攻撃しようとした瞬間には胴体が消し飛んでいた。

 

「――――残り少ない命なんだから態々減らす必要無いだろう」

 

 床に転がった復讐者の頭部を踏み砕きながらオルタは綱吉を睨み付け、背後から現れた復讐者の顔面に裏拳を叩き込む。

 オルタの腕が顔にめり込んだ次の瞬間、頭部は跡形も無く消し飛ぶ。

 

「さて、そこで大人しく待ってろ。復讐なんて何の意味も無い、何も果たせない愚か者どもを片付けたら相手をしてやる」

 

 感情の欠片も感じさせないような声で振り向き、オルタは突然出現した復讐者達の殺戮を開始した。

 

「…………何、あれ?」

 

 復讐者達が一人一人一撃で、何人かは纏めて殺されていく様子を見て白蘭は呆気に取られる。

 それは綱吉を除いたこの場で生き残っている全ての人間が同じだった。

 復讐者はマフィア界の掟の番人。その実力は厄介なんて一言で片付けられる話ではなく、白蘭でさえあまり関わりたく無い連中だ。

 事実復讐者一人一人が人外の領域に居る実力者だ。

 あんな風に無双ゲーに出てくる雑魚のように蹂躙されるような存在では断じて無い。

 そもそもあの黒い炎は何だ?

 あんなもの見た事が無い。復讐者と戦った事が無いのもあるが本当に分からない。見る限り復讐者が現れているから、転移の性質を持っているように見える。

 

「綱吉君、一体何が起こって――――」

 

 白蘭は何気無しに綱吉に問う。

 答えてくれれば良し、そうでなかったら諦めるという思いで投げた問いは帰ってくる事は無かった。

 

――――まあ、それもそうか。

 

 質問は既に言った、これ以上聞く理由も無いだろう。

 白蘭は一人納得して死を受け入れ、それでも死なない事に疑問を抱き綱吉の方を向く。

 今現在、白蘭自身の命を奪おうと怒り狂っていた綱吉の姿は無く、焦った様子で距離を取ろうとする綱吉の姿があった。

 

「へっ?」

 

 殺すのに1秒も掛からない、時間を操る事が出来る彼ならいくらでも時間がある筈なのに、その時間すらも惜しいと言わんばかりに逃げようとしていた。

 その姿を見て白蘭は思わず呆気に取られる。

 しかし、何故そんなに慌てふためいているのか、その理由はすぐに理解出来た。

 

「待ってろって言っただろ」

 

 オルタが復讐者をあしらいながら綱吉に向けて剣を振るう。

 距離は離れている、当然のように届かない。にもか関わらず、振るった刃の射線上にあったものが最初から斬られていたと言わんばかりに両断された。

 床、瓦礫、綱吉を捕えようと向かった復讐者、その全てを斬り裂きながら逃げようとしている綱吉の右足を捉える。

 直前に斬撃が停止したようにも見えたがパリンと何かが割れる音と同時に綱吉の右足が宙を舞い、片足を失った綱吉がド派手に転ぶ。

 

「っ、停止を突破した…………!?」

「同じ時間操作持ちならその不可侵は通じない。まあ、それ以外にも破り方はあるがな」

「くそっ…………」

 

 時間を巻き戻して足をくっつける綱吉にオルタは淡々と告げ、視線を黒い炎に向ける。

 

「いい加減しつこい」

 

 そう言うとオルタは今にも消えてしまいそうな拳大くらいの大きさの黒い炎に手を突っ込み、そこから何かを引き摺り出す。

 その何かは復讐者と同じような包帯に黒いコートと帽子を被り、透明なおしゃぶりを付けた赤ん坊(アルコバレーノ)だった。

 

「なっ、この僕が引き摺り出されただと…………!?」

「透明なおしゃぶりの、アルコバレーノ…………?」

 

 強引にこの場に引き摺り出された事に透明なおしゃぶりをつけた赤ん坊は驚愕し、それを見たユニも人形のような眼に熱が灯る。

 

「バミューダ!!」

 

 透明な赤ん坊を見て一人の復讐者は持っていた衣服を脱ぎ捨て、到底生きているとは言えないゾンビのような身体を晒しながらオルタに襲い掛かる。

 最低限の動き、黒い炎を利用した転移(ショートワープ)

 肉体の一部のみを転移し、最小限の動きと目にも止まらぬ速さで敵の命を奪う。

 明らかに今までの復讐者とは比べものにならない、全ての並行世界を見てきた白蘭をして敵わないと断言出来る強さ。

 それでもオルタには遠く及ばず、転移して攻撃をしてくる手や足に合わせて攻撃を叩き込んで一方的に破壊。

 

「悪くは無かったけど何処から攻撃が来るのか分かってれば対処出来るし、何より素でそれを防ぐ事が出来る防御力があればそこまで脅威じゃない」

「ば、馬鹿な…………!」

 

 四肢を失い重力に従って倒れるだけとなった胴体に向けて、オルタは容赦なく刃を振るう。

 

「イェーガー君!!」

 

 透明なおしゃぶりの赤ん坊が言った、イェーガーという名前の復讐者の胴体は袈裟斬りにされ真っ二つに別れる。

 そして崩れ落ちるイェーガーの首をオルタは容赦無く切り落とした。

 

「さて、これで…………」

 

 オルタは掴んでいる透明なおしゃぶりの赤ん坊ごと左腕を壁にめり込ませる。

 

「か、ぁ…………」

「邪魔者は居なくなった」

 

 身動き一つ取れなくなったアルコバレーノを見てオルタは綱吉を見る。

 足をくっつけた綱吉は転がっていた復讐者の腕を口に咥えながら質問を投げる。

 

「殺さないのか?」

「殺しても構わないけど殺さないで済むならそれで良い」

 

 オルタが蹂躙した復讐者達の中にはまだ息がある者も居る。

 しかし、この有り様では再起は不可能だろう。

 

「慈悲――――なわけ無いよな」

「当然だろ。近い内に死ぬ連中だ。今ここで死のうが何も変わらない」

 

 その言葉には欠片程の慈悲も無い。

 本当に興味が無い、向かってくるから払った羽虫程度の扱いだ。

 容赦ない。自分が言うべき台詞ではないし心の中で思っているだけだが、オルタと呼ばれている存在は本当に容赦がない。当人が言っている通り慈悲等欠片も無い。攻撃して結果的に死ななかっただけで、死んでても構わないと思っている。

 ここまで無感情だと蹂躙された方はたまったものじゃないだろう。

 羽虫扱いされた復讐者に同情しながらも白蘭はオルタの発言に眉を顰める。

 

「近い内に死ぬ…………どういうことだ?」

 

 オルタの発言から察するに、彼が皆殺しにするという事ではなさそうだ。

 だがあれ程の強さを持ち謎の黒い炎も使える以上、そう簡単に死ぬとは思えない。

 

「誰かが殺すって事かな? それとも別の何かか…………」

 

 一人思考する白蘭だったがこんな短時間で解答を導き出せる事は出来ない。

 並行世界の知識を読み込めばまた話は違ってくるのだろうが、今の自分では短時間では不可能。

 そう判断した白蘭は事の結末がどうなるのかを見届ける事にした。

 

「さて、夢を終わらせる覚悟は出来たか?」

 

 邪魔者を全て排除し終えた事を確認し、オルタは黄金の剣の切っ先を綱吉に向ける。

 遠く離れた距離でも身の危険を感じる程の剣気を前に綱吉はその場にへたり込み、それでも負けじとオルタを睨み付けていた。

 何故かは分からないが、斬り飛ばされた復讐者の腕を口に咥えて。

 

「…………ところで、何でそれを咥えてるんだ? 腐肉のカニバリズムにでも目覚めたのか?」

 

 変な物でも見るような目付きをしたオルタの問い。

 その問いに綱吉は「まさか」と呟きながらいつの間にか咥えていた復讐者の腕を吐き捨てる。

 

「ただ便利そうだったから、貰っただけだよ」

 

 笑みを浮かべながらそう呟いた瞬間、綱吉の身体が地面に沈む。

 綱吉の身体の真下には復讐者が使っていたものと同じ、黒い炎で出来た穴があった。

 

   +++

 

「お前には使えなくてオレには使える技だ。まあ、ちょっと自己改造もしてたけど」

 

 零地点突破・改で復讐者の腕に残っていた黒い死ぬ気の炎、夜の炎を吸収する。

 身体の中に入ったその炎を自分の身体でも生産出来るように自己改造する。

 突発的なものだったしまだ不安定であまり使えない。が、そこは出力でカバーすれば良い。

 

「っ、お前!!」

 

 この場から逃げ出そうとしている事に気付き、オルタは初めて感情を見せる。

 異霊(オルタ)として呼ばれたからそういうのは無いように振る舞っているが、根っこのところは変わっていない。

 心を殺して無理矢理機械のように振る舞っているだけに過ぎない。

 

「じゃあねオルタ。もう会う事は無いよ」

 

 そう言わんばかりに綱吉は笑みを浮かべ、オルタに向かって舌を出す。

 

「待て大馬鹿野郎!! 逃すわけないだろ!!」

 

 年相応の子どものように馬鹿にしながらこの場から逃げ出そうとするのを見て、オルタは攻撃しようと駆け出す。

 当然それをさせる気が無い綱吉は夜の炎が灯った右手を前に突き出し炎を放出。

 放出された炎から六つの、巨大な赤い竜の頭部が出現した。

 

「アルビオンじゃない!? お前、アルビオン以外に何を取り込んだ!?」

「言うわけがないだろっ!」

 

 背中から竜の羽が突き破り、以前生えた時よりも大きい角が生える。

 内側から突き破ろうとしてくるのを何とか堪え、口から血を吐き出しながらも敵意を剥き出しにして綱吉はオルタを追い払おうと現れた六つの竜の頭部で迎撃する。

 死ぬ気の炎の息吹(ドラゴンブレス)、噛みつき、突進。

 頭部だけとはいえ当たれば大ダメージは避けられないそれを容易く回避し、オルタは剣で斬りかかる。

 黄金の刃は鱗をいとも容易く両断するが、それを見てオルタは舌打ちをする。

 

「心臓から遠いコイツらを斬ってもダメか!」

 

 それでも全く無意味というわけではない。

 同質の存在故に防御は意味を成さず無抵抗でダメージを受けている状況だ。

 そしてその事をオルタも理解している。

 

「痩せ我慢なだけで本当は痛みに耐えるので必死なんだろ? それくらい分かるんだよ!」

「くっそ…………!」

 

 攻撃する六つの竜の首を器用に回避し、オルタは最短距離で綱吉に向かって突撃する。

 この速さでは自分が逃げるのが先か、それともオルタが自分の身体を貫くのが先か。

 内心恐怖で泣き出してしまいそうになるのを堪えながら右手のイクスグローブから炎を出して少しでも時間を時間を稼ごうとする。

 その瞬間だった――――オルタの前に壊れかけのモスカが飛んできたのは。

 

「っ、ロボット!?」

 

 オルタの前ではモスカ等、万全の状態で不意を打っても僅かな時間を稼ぐ事くらいしかできないだろう。

 今の綱吉にとっては、その僅かな時間でさえ十分だった。

 

「今度こそ、本当にさよならだ。もう会う事は無い」

 

 夜の炎で作った穴に落ち、この場から逃げ出す。

 そしてオルタが侵入して来ないようにゲートを閉じる――――寸前で二人程侵入者が入って来る。

 向こう側から金髪オールバックの男が「姫っ!?」と叫んでいたから、恐らくブラックスペルのボスであるユニだ。

 もう一人は自分をモスカで助けてくれた金髪のメカニック風の男だ。

 何故自分を助けてくれたのか、敵ではなかったのか。色々と気になるが助けてくれた上に敵意が無いのなら態々戦う必要は無い。

 

「…………久しぶりにここに来たな」

 

 安堵の息を漏らしながら立ち上がる。

 後ろの方でゲートに飛び込んできた侵入者二人はここの景色を見て「ここは…………?」や「凄く興味深い…………」と驚愕している。が、それも無理も無いだろう。

 何せここは前人未踏――――綱吉以外誰も辿り着いた事の無い領域、星の内海にある楽園なのだから。

 

「…………ツナ」

 

 幻想的な花畑が広がるこの世界で聞き覚えのある声がする。

 声がした方向を向くと、そこには悲しそうな顔をしたアルトリアが居た。

 

「ごめんアルトリア。色々ドタバタしてて…………それにここに全く関係の無い人を連れて来ちゃって…………」

「そんな事はどうでも良いんです。ツナ、嘘をついたりはぐらかさずに答えて下さい」

 

 アルトリアは綱吉の角を見つめながら呟く。

 

「妖精眼があるんだからそんな事…………いや、結構してたね。強がりだったり、かっこつけたり…………うん。我ながら目を背けたくなっちゃうくらい残念だったな」

「そんな事はありませんよ。そういった事も嘘としてこの眼は見ちゃいますけど、貴方が私の事を好いて、愛してくれていると言った言葉に嘘は無かったから」

「そうだよ。オレにとってきみは大切な人だから。まあ、今は沢山大切な人が出来ちゃったけど」

 

 互いに他愛の無い事を話しながらも悲しいという気持ちでいっぱいになる。

 超直感を通して伝わる感情に嘘はない。妖精眼を通して見える彼女の世界も、きっと嘘は無いと告げている。

 しかし、それでもこうなるのは必定だったのかもしれない。

 嘘をついたり隠したりしなくても、互いに愛し合い慈しんでいるからこそぶつかり合う事もあるのだ。

 

「ツナ、貴方はビーストになったんですね」

「そうだよ。オレは、ビーストになった」




恋愛描写って甘酸っぱいのも好きなんですがどろどろとしたものや傷つけ合ってぶつかり合うのも好きなんです。
むしろそういうのが本当の恋愛だと思います(あくまで個人的な趣味嗜好)。
なんで徹底的にぶつかり合います。

次回『人類悪』
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