キャストリアに転生したが原作を壊してしまった 作:霧ケ峰リョク
星の内海、あるいは
そこに私が設置した円卓、それに私とツナは向かい合うように着席する。
「あの、貴方がアルトリアさんですね」
互いに向かい合い何を話そうか思案する前に一人の少女が私に話し掛けて来る。
楽園への侵入者――――というよりはツナに巻き込まれて入って来てしまっただけの客人、大空のアルコバレーノ。
後もう一人は興味深そうに円卓を見ていたり、この世界を見ていたりする金髪のメカニックらしき男も居るが今は気にしないでおこう。流石に優先順位があるし。
「はい。私がアルトリア・キャスターです。大空のアルコバレーノ」
「私はユニと言います…………貴女と、話して見たいと思っていました」
深刻そうな顔をして呟く少女の顔を見て目を細める。
私はきみと話したいとは思わない、なんて個人的な考えを優先する状況でも無いしそもそも私も話さなくちゃいけないとも思っている。例え、いずれ殺し合う事になると分かっていても戦う理由を知らないままにするのは不義理になってしまうから。
親の罪を、いや、先祖の罪が子孫にも引き継がれるという事はあってはならないから。
「私も、ううん…………正直話したいとは思わないけど、話さなくちゃいけないって思っていた。でも、それはまた別の機会にしてほしい」
霊基に刻み込まれた使命と衝動を堪えて、私はツナの方に視線を戻す。
「今はツナと話さなくちゃいけないから」
向かい合って分かる、今のツナはビーストの霊基だ。
アルビオン以外にも何かを取り込んでいる。それも一体だけじゃないし、一体だけでもとんでもなく破格だ。
「成る程、魂を他の世界に飛ばして逃げてたのか」
ツナはユニを見て何かしらの結論を口にする。
私はここに来る前の彼女を見ていないから何とも言えないが、何かあったんだろうか。
いや、今はそれはどうでも良いか。
「取り敢えず招かれざる客人にはご退室願いたいんだけど…………」
そう言ってツナは困ったようにユニと金髪の青年に視線を向ける。
が、金髪の青年は若干興奮気味にツナに話し掛ける。
「ボンゴレ、ここは何処? 機械の数値を見るに固有結界に近いようだが」
「え、っと…………話すとちょっと難しくなるんだけど、ってかそもそもきみ一応オレと敵対しているよね? 白蘭やきみ達の組織を壊滅一歩手前まで追い込んだけど思うところとか無いの?」
「無い。うちはスパナ。正直今のうちはあんたに興味深々だ。あの炎、反動が強すぎて吹っ飛んでたけど凄かった」
「はぁ、どうも…………」
「出来ればミルフィオーレ辞めてあんたにつきたいと思っている。あんたの炎、制御できるようになればもっと凄いものが見れる。だからうちが完成させたい」
「わぁ、保身とかじゃなく本心から言ってるよこの人。ブラックスペルのボスが目の前に居るのに」
スパナと名乗った青年の言葉を受けてツナは苦笑いする。
素に戻ってる辺り本当に困っているのだろう。
「と、いうわけでうちミルフィオーレ辞めるから」
「あ、はい。どうぞ」
「本当にぐだぐだな空気になってますね…………」
目の前で繰り広げられる元上司と部下の退職のやり取りを見て何とも言えない気持ちになる。
出来ればこのぐだぐだな空気のまま時が動かないでほしいのだけど、そうも上手くはいかないらしい。
ツナはわざとらしく咳ばらいをしてこっちを見やる。
「スパナがオレにつくかは取り敢えず今は置いておくとして…………少し話そうかアルトリア――――って、言ってもアルトリアならもう大方の見当はついているんだろうね」
多分、これから話す事を聞けばそんな寝言は言えなくなるし。
小さな声で呟きながら私を見つめるツナを見て、私も覚悟を決める。
「ツナ、私のプランはダメなんですね」
「良いも悪いも無いよ。アルトリアだって、それしかないから仕方なく選んでいるだけだし」
「それは…………」
違う、と口にしたかった。
けれどそれ以外にも方法があって、自分のプランよりも良ければきっと納得する。
だからこれを否定する事は出来ない。
同時に私の至らなさと無力さからくる罪悪感で押し潰されそうになるが。
「私の、せい…………なんですね」
ツナを人類悪に変性させてしまったのは私だ。
「それは違う」
自己嫌悪と後悔に潰れそうになっている私の目を見て、ツナは力強く否定する。
「これはオレが選んだ選択だ。誰かに言われてとか影響を受けてとかじゃない。一から百まで自分で決めた答えだ。でなきゃ、人類悪になんかならないよ」
私を気遣うように言い放つツナの言葉には嘘が何一つ見えない。
だから多分、そういう事なのだろう。
「それに今の世界に思うところが色々とあったからね。ツケは払わなくちゃいけないものだし、この際良い機会だと思うよ。色々と間違いを積み重ねてきたんだから、その報いは背負わなくちゃ。皆が犠牲になる事なんて無いんだ」
ツナはそう言うと椅子から立ち上がり、真紅に染まった黒い相貌でこちらを見る。
人間とは思えないような変貌にユニ、スパナの両名はギョッとした顔をしてツナを見て、私は悲しい気持ちになりながらツナに問い掛ける。
「ツナ、貴方の目的は何ですか?」
「この星の全ての生命を皆殺しにして、この世界を終わらせる」
強い決意と覚悟を持って放たれたその言葉に私は何も言えなくなる。
言い方とか色々あるだろ、ここには大空のアルコバレーノも居るんだよ。そう言いたくなるけど実際のところ皆殺しにするという過程は変わらない。ツナが世界中の全ての生命を殺すという言葉に嘘偽りは無く、彼は本当に全てを殺そうとしている。
問題はその後だ。ビーストが人類を滅ぼすのは結果論であり、本当の目的の過程でしかない。
「…………沢田綱吉さん。何を、言ってるんですか?」
「冗談を言っているように見えるかもしれないけど、全部本当の事を言っているよ。今代の大空のアルコバレーノ、ユニ」
ユニの言葉にツナはいつものように答える。
「それとも理由を言った方が良い? ダメツナってだけで意味も無く蔑まれて下に見下される。それだって理由としては悪く無いと思うけどありきたりかとは思うんだよね。あ、でもアルトリアが居るからこれ嘘だとバレるか。じゃあやっぱり言わない」
やっぱり本当の事は言わないつもりか。
とはいえ必要な材料は揃っているし、ツナが何をしようとしているのかは凡その見当はつく。
そしてツナの思惑通りに事が運んだ場合どうなるのかも。
「そういうわけだからアルトリアやユニには全てが終わるまで大人しくしていてほしいんだけど…………」
「それを聞いて私が黙っているとでも――――」
「思わない。だからこうする」
ツナが指を鳴らすと同時に私とユニを囲むようにして結界が現れる。
死ぬ気の炎の真逆、零地点突破によるマイナスのエネルギーで構成された外殻の無い結界。
教えた私が言うのも何だけど本当に天才だ。今その才能が私に牙を向いてさえいなければ本当に嬉しかったのに――――!!
「一旦逃げます!! ここで私達がツナに封印されたらもう何も出来ない!!」
「は、はい…………!」
結界が完全に私達を拘束する前にユニの腕を掴んで脱出する。
幸いな事にここは私のホームグラウンドであり、時間を操るツナが居るから可能な一手。
オルタが現れる等の要因が無ければしなかった準備、こうなるかもしれないという当たってほしくないと
「レイシフトか…………流石にそこでそれをされるとどうしようもないな。しょうがない、この場は見逃す。でも――――」
この場からレイシフトで逃げ出そうとする私達を見てツナは諦めた様子を見せる。
そして私達がレイシフトを応用した転移で脱出する寸前、去る私達に向けてツナは高らかに宣言した。
「ORTはオレのプランでどうにかする。この世界の未来は、アルトリアの未来はオレが決める…………!」
その言葉を最後に私とユニ、そしてボンゴレリングから出てきた九つの光は楽園から地上へと転移する。
見慣れた場所、というわけではない。が、何処か見覚えのある景色だ。
いくら住み慣れた並盛と言えど10年もの時が経てば変わってしまうか。
「はぁあああ…………」
その場にしゃがみ込んで盛大に息を吐く。
辛い、鬱になる、ネガティブになる、自己嫌悪する。
皆になんて言えば良いのだろうか、そもそもそんな資格が私にあるのか。
自問自答しながらも前を向く。落ち込んで後悔している暇はもう、私には用意されてないから。
「あの、アルトリアさん…………」
「ごめんもう大丈夫。本当は結構心に来てるけど、今は後回しにする」
立ち上がり私を心配そうに見ているユニにそう告げる。
ツナがビーストになって私と敵対宣言したけどやる事は変わらない。
「取り敢えず今はこの時代のボンゴレファミリーのアジトを目指そう」
ユニを連れて私は並盛町を歩き始める。
私の、アルトリア・キャスターの、楽園の妖精の製造目的。
星の聖剣を製造し、その聖剣を担い手に使って貰って現在時間で半年後に宙から飛来するORTを打倒する事。
それがこの私の存在理由そのものだ。
だけど担い手であるツナはそれを拒否し、ビーストになって自分だけの力でORTをどうにかしようとしている。
多分、その方法でも解決する事は不可能ではない。
が、もし私の予測が正しければその方法はツナが一番辛い目にあう。
――――それは嫌だ。
今更他の担い手を見つけるなんて真似は出来ないししたくない、そもそも不可能だし。
だって、ツナは私の大切な人なんだから。
私が居なくなった後も生きていてほしくて、私の事なんか忘れて幸せになってほしい。
今この瞬間にだけ許された夢なんかの為に全てを投げ出さないで、将来を見て自分の幸せを掴んでほしい。
「ごめんね、ツナ。私、酷い事をする」
これから私がしなくちゃいけない事。
ビーストになってしまったツナを調伏し、聖剣を使ってORTを倒してもらう。
その為には私一人では到底不可能。ツナを倒す為には仲間が必要不可欠。
だから私はツナの友達とツナを戦わせるように仕向けさせないといけない。
それが出来るかどうかはおいといて、真実や全ての内情を話さないでそんな事が出来るのか不安に思いながら一緒についてくる九つの光に目を向ける。
その光の内の一つが私に「他にも方法がある」と言っているような気がした。
「大丈夫ですよアルトリアさん」
色々と後ろ暗い事を考えているとユニが話し掛けて来た。
「知っているとは思いますが私は未来を視る事が出来ます。朧気にしか見えませんが未来は大丈夫です」
「…………そっか」
私を励ますユニの言葉を聞いて安心する――――なんて事は出来ない。
だって、ツナの場合は皆殺しにした後の方が重要なのだから。
以上で未来編プロローグ終了。
いやー、ようやく今作品のラスボスの名前が出せました。
まあ色々と伏線作ってたので察してた方はいたとは思いますが。
ちなみに初代含めた歴代ボンゴレはORTの事を知りません。
なんかやべー奴が宇宙から来るけど仲間が居るんだし協力すれば大丈夫的な考えです。
当然現実を知っている二人は戯言としか思ってません。
「――――で、一連の話を聞いてまだオレに就くの?」
「うん」
二人が去った楽園にて綱吉はスパナと話し合っていた。
スパナから貰った飴を手で弄びながら「困った」と言わんばかりに綱吉は溜め息をつく。
「分かってるの? オレに殺されるんだよスパナは…………普通そんな奴についていこうって思わないだろ」
「確かにうちはまだ死にたくはない。でも、ボンゴレがそんな事をするとは思わない。だから何か理由があるんだと思う」
ある意味純粋な眼差しを向けて来るスパナを前に綱吉は二度目の溜め息をつく。
「しょうがない。じゃあ話せるところだけ話すけど――――」
そして綱吉は語り始める。
これから世界がどうなるのか、アルトリアの目的が成されればどうなるのか、そして自分の最終目的を。
「――――と、いうわけ」
「…………それ、さっきの彼女も人類の敵と大差無いんじゃないの?」
「違う。彼女は人の味方だ。ただ全ての人の味方にはなれないってだけの話。それで、スパナは本当にオレの味方になるっていうの?」
綱吉は口に飴を含みながらスパナに語り掛ける。
「うん。ボンゴレの方が良い未来だから」
「そっか…………なら協力お願いするよ。オレも供物を捧げてくれた人を無碍にしたりしたくないから」
そう言うと綱吉は共犯者となったスパナから目を背け準備を始める。
「何するの?」
「オルタ対策。あいつはオレに対し強いからね。ゲーム用語でメタってるって言うんだっけ? そのせいでオレがどれだけ強くなってもあいつには弱いんだよ」
本当に困った、そう言わんばかりに笑いながら魔法陣を描き終える。
「だからオレ以外に倒してもらうんだよ。これはその存在を作る為に必要なものなんだ。確かアルトリアはなんて言ってたっけ?」
数秒考えた後、綱吉の脳裏にその名前が浮上し口に出す。
「思い出した――――アルターエゴだ!」