キャストリアに転生したが原作を壊してしまった   作:霧ケ峰リョク

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今年最後の更新です。
書いてる最中にボックスガチャが来たりレイドが来たりしましたが何とか完走出来ました。
さて、本編ですがORTはどちらかというと裏ボス(絶対に戦わなくてはいけない)枠なのでラスボス戦開幕です。
無理ゲー? 頑張ればいけるって。

ちなみにFGOで言うなら何の対策も無しにビーストに挑むような難易度でございます。


ADVENT BEAST

 未来の事を知れば優位に立ち回れる、なんて言えるのは未来を知らない人だけだ。

 大抵の場合未来の事を知る事なんか出来ないのが当たり前だし、楽観的に考える人間の方が多い。だけど、実際こうして未来の記憶を知ると本当に碌な事にならないってよく分かる。

 大切な人が死ぬ、沢山の人が死ぬ、大勢の人が殺される。

 そしてそれは自分一人では、人間一人の力ではどう足掻いても変える事が出来ない絶望的な未来だった。

 

『ごめんね王様…………一人にしちゃって』

 

 最後まで自分に気を使いながら命を落とした子供の記憶を見た時、綱吉は絶望して投げやりになった。

 自分ではどう足掻いても世界を救えない、沢山の犠牲を出す。

 その事実を知って絶望に打ちひしがれ、一時はアルトリアから身を引く事も考えた程だ。

 自分のようなダメツナより、もっと相応しい人間が居るのだと思うようにして――――。

 

「いっぺん死ね」

 

 そんな時だった。羽の無い天使の手によって投げやりになっていた自分が殺されたのは。

 

   +++

 

「――――成程、な。つまりお前は最初からオレ達の、この世界の敵だったわけか」

「っ、おじ様…………!」

「そうですね。今の世に生きる人の世界の敵という意味で言うのなら、それが一番正しい表現になります」

 

 リボーンの剣呑とした言葉にユニは詰め寄るが私は頷く。

 どんな言い訳をしたところで私が皆の敵であるのは事実だ。

 

(トゥリニセッテ)が無くなればどうなるのかは分かってる。でも、それをやるのが私の使命でもあります」

「…………その結果、沢山の人が犠牲になるとしてもですか?」

「やります」

「この時代で、白蘭のせいで犠牲になった人の犠牲を無かった事に出来たとしても?」

「やります。というか絶対にそんな真似はさせませんよ」

 

 ユニの問い掛けに私ははっきりと拒絶の意を示す。

 彼女がやろうとしている事は自己犠牲で、多くの人を救う事が出来るかもしれない。

 だがそれはやってはいけない絶対の禁忌でもある。ORTの到来が早まる事もそうだし、無かった事にすると言う事はその人達の努力を否定する事でもある。悲劇なんか味わわない方が良いのもそうだけど、辛い事があったからこそ人の成長に繋がるのだから。

 当人が聞けばふざけるなとしか言いようの無い話だが。

 

「お、おいおい。ちょっと落ち着けよ」

 

 互いに剣呑とした空気が広がる中、山本が静止に入る。

 

「悪いけどさ、そのトゥリニセッテってのが壊れるとどうして沢山の人が死ぬんだ?」

 

 事情を知る者同士で話し合っていたせいで、知らない人達は頭を悩ませていた。

 

「そうですね。簡単に説明しますとこの石が地球でこのハンカチが私達が今居る世界になります」

 

 例えとして取り出した石をハンカチで包む。

 そして懐から取り出した針でハンカチを縫い止めた。

 

「今、ハンカチを縫い止めたのがボンゴレリング、マーレリング、アルコバレーノのおしゃぶりからなる7³です。こうして今の世界は成り立っているんです」

「って、事はその7³が無くなると…………」

「当然こうなります」

 

 縫い止めていた針を外し、ハンカチを石から離す。

 

「私達が今暮らしている世界は星のテクスチャで、そのテクスチャを縫い付けているものがなくなれば当然無くなります。その後に正しい歴史のテクスチャが貼られる事になるでしょう」

「そうなった場合、オレ達はどうなるんだ?」

「…………この世界は7³があったからこそ成り立った異聞。7³が破壊されればこの石が出来てから今に至るまでの歴史が最初から存在しなかったものとして無かった事にされ、消滅します。死ぬ、と大差は無いですね」

「てめ――――っ!!」

 

 一連の説明を聞いて我慢出来なくなったのか、獄寺は私の胸ぐらを掴む。

 

「てめぇ!! 10代目に、あの人に沢山の人を殺せなんて、そんな事を頼んでいやがったのか!!」

「おい獄寺――――」

「そうですよ。それが私の、楽園の妖精の指命(製造理由)です」

「――――っ」

「それにORTに殺されて星ごと滅びるか、僅かでも生き残るかのどちらかしか選べなかったんですよ。他にどうしろって言うんですか」

 

 私の言葉に何も言えなくなったのか、それとも怒りが頂点に達していても冷静だったのか、獄寺は私の胸ぐらから手を離し歯を食いしばる。

 

「でも今のアルトリアの言った事が本当ならツナも消滅しないか?」

「ツナの心臓にはアルビオンの欠片が移植されているので大丈夫です。境界竜アルビオンはその性質上、この世界が消滅しようとも消える事はありません」

「――――成る程な。お前の考えていた事は大体読めてきたぞ。7³を破壊した後、ツナが固有結界を使って自分以外の人間を消滅から守るつもりだったのか」

「大体その通りです。っていうか、そもそもORTを倒す為に聖剣を造るっていうのに、その使い手が居ないと何の意味も無いですから」

 

 聖剣を作成した後、アルビオンの性質を得たツナが固有結界を使って残す人間を選び、彼等を束ねて王になって貰う。

 それが当初の予定だった。

 

「流石に全人類は救えませんが、ある程度の人間は消滅するのを防ぐ事は出来ます」

「それを全人類には出来ないのか?」

「無理です。素材も足りないですしそもそも移植に耐えられる人間がそうは居ません。その上固有結界を展開出来る人間も限られています」

 

 現時点でそれが可能なのはツナとXANXUSの二人だけ。

 ツナは私が直接心臓に移植し、XANXUSは自身の能力で悪竜現象を引き起こしたツナの因子を取り込み自らのものにしている。

 加えてツナは聖剣を使い熟せるように特殊な調整を施しているし、内面も聖剣を扱うに相応しいものだ。

 私個人の贔屓目を無しにしても彼ならば世界を救えた――――その筈だった。

 

「まあ…………そのツナが私のプランを拒否したわけですけどね」

 

 ツナは明らかに私のプランとは別の方法で人類救済を成そうとしている。

 ただ全てがツナの思い通りにいってるかといえばそういうわけではない。10年後の未来がとんでもない事になっている事、そしてORTの到来が早まった事、グランドクラスが派遣された事。私に隠れて自分のプランを作っていたツナも予定外の出来事に狂わされた筈だ。

 でなければあんな風に怒ってないし、そもそもとして狂わされてなければ今頃詰みに入ってる筈だ。

 

「それはオレ達にとって都合の良い事にはならないよな」

「ええ、まあはい。ビースト、人類悪は人類が倒すべき悪。と言っても分からないとは思うので分かりやすく説明しますと人間が獣の身体能力に届かないようにそもそものスペックが違います」

「そう言われると大した事ないように思えるな」

「超人を基準に考えないで下さいよ。兎も角、ビーストは基本人類が勝てる存在じゃありません。知性を持ってるのなら強制的にテクノブレイクしてくる奴とか居ますし、そいつは羽化前にツナと私で倒しましたけど」

「…………字面からしてひでーな」

「境遇を考えれば当然なんですが、まあ……………はい。救世主になり得る素質を持った奴がこの世に人とは我一人と断じて全人類を使って自慰に耽って殺そうとした奴ですよ。あの時はまだビーストになってなかったしツナが討滅しましたけど、そのツナがビーストになったんだから本当に手に負えないんですよ」

 

 両手を上げて投げやり気味に答える。

 例えがアレすぎるので何とも言えない顔になってたりしているが、これが前例なのはどうしようもない事実だ。

 

「あ、アルトリアさんの懸念は分かりましたが多分その心配は無いと思います」

 

 殺生院の説明を聞いてユニは顔を赤くしながらもそう呟く。

 

「私には未来を見る力があります。その力で見た未来は今となんら変わらない世界でした。だから大丈夫――――」

「いや、恐らくその未来はツナの目的が完遂しちまってる」

 

 ユニの説明を最後まで聞く事なくリボーンは断言する。

 

「分かるんですか?」

「あいつが何をしようとしているのかまでは分からねぇ。けどな、甘いあいつが殺すっていう選択を簡単に選んだのには理由がある。それに、オレはそれを踏み倒す方法を知っている」

「まあ…………知ってますからね」

「ツナが有している第三魔法、魂の物質化。永久機関と不老不死の実現ってお前は言っていた。この物質化っていうのは、人間の姿をしていなくても出来るんじゃないか?」

「流石リボーンですね。普通なら不老不死や永久機関の方に注目するのに…………その問いに対する解答は『可能』です。人間一人を丸ごとデータ化したAI(人工知能)も第三魔法の分類に入ります」

 

 ツナが魔法を、不老不死と永久機関を手に入れている事を聞いて驚いている初耳の人達を無視してリボーンは「成る程な」と一人納得する。

 

「今のあいつにとって、殺人は取り返しがつく事になっちまったのか」

 

 殺すという事は取り返しがつかないものだ。

 失ったものは二度と戻らない。だけど今のツナにとっては違う。

 (ハード)である身体を破壊しても中身()が失われないなら何の問題も無い、無くなってしまった。

 

「で、ですがそれで沢田さんが目的を達成していると決まったわけじゃ」

「あるんですよ。一つだけではないですし他にも方法があるけれど、貴女が見た未来とツナが描いた結末が矛盾せずに成立する方法が」

 

 ただ今の私達ではツナが何をしようとしているのか、その予測しか出来ない。その予測も多分真に迫ってはいるが、それだけだ。断言出来るわけじゃ無い。

 私の予想している事よりもマシだったのなら杞憂で済むが、ツナがその程度で納得するとは思えない。ああなったツナは余程の事がない限り意見を変えないのだ。

 多分、私が考えている方法が、今のツナが背負っている理かそうであるならこれしかない。

 

「Ⅰ世。私の考えはあってますか?」

 

 だからこそ、この場で唯一解答を知っているボンゴレⅠ世に視線を向ける。

 

『――――ああ、楽園の子の考えている事で合っている』

 

 そして私の考えている事が正解であると告げられた。

 

「やっばり、そうなんだ…………いやー、きっついなぁ」

 

 出来るならこの予想は外れていてほしかった。

 私も人の事言えないけど、それでもツナが苦しみ続けるような事はしてほしくない。

 

「話してくれるか、ツナが何をやろうとしているのかを」

「…………分かりました。ツナは自分を――――」

 

 その瞬間、画面に映っていた入江正一が突然「うわっ!?」と叫んで画面が暗転する。

 説明をしようとした瞬間邪魔が入った事に一瞬呆気に取られるも、入江正一の身に起こったアクシデントに皆が驚く。

 彼はミルフィオーレファミリーに潜り込んだボンゴレ側のスパイだ。

 その為、この場には居らずミルフィオーレファミリーのメローネ基地から通信で参加していた。尤もボスである白蘭がツナに倒されて色々と混乱しているから通信出来ただけで、見つかったら殺されてもおかしかはない。

 だが、何故かは分からないが彼にとっても予想外な出来事が起きたのだと直感が告げていた。

 

「久しぶりだね――――皆」

 

 そしてその直感が正解だとでも告げるかのように、入江正一を抱えたツナが黒い炎と共に現れた。

 復讐者(ヴィンディチェ)の持つ第8の属性、夜の炎を使った転移(ワープ)。その能力によってツナは恐ろしい程にあっさりと、まるで自宅に帰って来た子どものような声で呟いた。

 

「じゅう――――」

 

 ツナの姿を見て駆け寄ろうとする獄寺。

 だけどツナの纏う雰囲気が常のそれとは違う事に気付き、足を止めてしまう。

 ビーストの冠を示す角、戦闘機を思わせるようなアルビオンの機械的な翼、そして全身から溢れる圧力。

 最早人の領域から外れてしまった獣がそこに居た。

 

「手荒な真似をしてごめんね正一くん。まあ、ボンゴレ(ボックス)を貰うついでに敵地であるメローネ基地から連れ出したから良しって事で」

 

 そう呟きながらツナは入江正一を丁寧に下ろす。

 どうやら意識を失っているらしい。

 

「さて、と…………ここには用事があって来ただけだから長居はするつもりないんだけど…………」

 

 ツナは一人一人、私達を見渡しながら肩を竦める。

 

「それじゃあ納得しないよね」

「何でなんすか…………10代目!!」

 

 獄寺の悲痛に満ちた叫びを前にツナは目を瞑り、それでも笑っていた。

 偽悪的に振る舞おうと、世界を滅ぼす魔王として振る舞おうとしているようにも見える。

 

「その様子だとアルトリアから色々と聞いているみたいだね。もしくはⅠ世が話したか…………いずれにせよ色々と聞いたんだよね? なら今更聞く事は何も――――」

「何でオレ達に一緒に戦ってくれって言ってくれないんすか!!」

 

 だけど、獄寺が言ったその叫びに演技が剥がされ、呆気に取られた顔をした。

 本当に予想外と言わんばかりに驚いていた。心を理解する超直感を、相手を本当の意味で理解出来る能力を持っているにも関わらず、驚愕していた。

 

「キャスターから聞きました。10代目がORTとかいう宇宙人と戦うって事を」

「…………信じたんだ」

「真面目な時なんだ。信じるに決まってるだろ」

 

 獄寺の次は山本が前に出てツナに言い放つ。

 心なしか少し怒っているようにも見える。

 

「なあツナ。獄寺も言ってたけどよ、オレ達に黙って一人で何とかしようなんて水臭いじゃねぇか。話してくれなきゃわかんねぇだろ。オレ達はそんなに頼りなかったか?」

「…………アルトリアやⅠ世からどこまで聞いたのかは知らないけど、オレはORTと戦うつもりは無い」

 

 山本の諭すような言葉をツナは否定。

 ORTと戦わないと聞いた瞬間、今度はリボーンがツナに問い掛ける。

 

「戦わないのか?」

「戦ってもメリットが無いし、致命的なペナルティだけが押し付けられるんだよあのクソ蜘蛛は…………」

「だから、自分を犠牲にしようとしてるんですか?」

 

 そう言ってツナは私を見つめる。

 私の発言に、犠牲になるという言葉を聞いて全員が目を見開いて私を見る。

 

「そうだよ。でもアルトリアには言われたくないな」

 

 ツナは若干怒ったように言い放つ。

 

「聖剣を作成するには楽園の妖精の全て、記憶や人格、身体を含めた文字通り全てが必要になる。産まれてから現在に至るまで蓄積した思い出を材料とし、自らを星の内海にある宙の炉にくべてようやく完成する。材料となったきみは、完全に消滅してしまう」

「…………そういう事か。だからあの時、死ぬって言っていたのか」

 

 聖剣の作成方法を聞いてリボーンは納得したようにボルサリーノを深く被る。

 

「…………その様子だと全てを話してないみたいだね。大方、自分を敵視されるような事ばっかり言ったんだろ。きみに罪は無いし、罪があるのは間違いを犯し続けて来た今までの人間だ」

「だからって自分が犠牲になる必要は無いじゃないですか! 消滅を前提として作られた私と違い、ツナは――――」

「話はもう終わり。とっとと本題に移るか」

 

 そう言ってツナは私の言葉を拒絶して翼をはためかせ、溢れんばかりの死ぬ気の炎を放出する。

 

「――――我は七つの人類悪が一つ『犠牲』の理を持つ獣。オールトの雲より飛来する怪物に滅ぼされるよりも先に人類を滅ぼす者」

 

 現れる紋章はビーストⅠの座を示し、世界の時間が狂い始める。

 遅く、速く、止まり、停滞し、巻き戻る。

 時空間が歪んだ世界で、ツナは獣は真紅に染まった双眸で私達を射抜く。

 

「これは慈悲である。これは情けである。ボンゴレリング、大空のアルコバレーノ、そして楽園の妖精を此方に引き渡せ」

 

 背筋が凍て付く程の威圧感を此方に向けるツナを前に、リボーンは私達を守る様にして立つ。

 

「悪いな。生徒でも今のお前の頼みは聞けねぇな」

「…………今まで一度も聞いた事が無かったように思えるけど、皆もリボーンと同じ意見か」

 

 恐るべき獣としての振舞いから素に戻ったツナは私達を見渡しながら息を吐く。

 

「じゃあ仕方ないか――――遅いか早いかの違いだ、全員殺してやる」

 

 エデンリングを剣に変え、ツナは私達に向かって刃を構える。

 

「他に方法は無いんですか!? 沢田さん!」

「無い」

 

 ユニの静止も意に介さず、ツナは私達に殺意を向ける。

 私を含めた皆がその事実を受け入れる事が出来ず戸惑う中、早く復帰した10年後の笹川了平と雲雀恭弥が構えた。

 

「調子に乗り過ぎだよ。沢田綱吉」

「お前が間違った道に進むというのなら、オレ達が止めるまでだ!!」

 

 10年という月日があったせいか、それとも大人だからかは分からない。

 だけど、今の私達と違って迷う事なく戦意を高める。

 そして二人はこの時代の兵器である匣にエデンリングの炎を注ぎ込む。

 先に攻撃を仕掛けたのは雲雀さんで、匣から出た雲属性の炎が灯ったハリネズミが回転しながらツナに飛来。

 弾丸の如く放たれたハリネズミを前にツナは武器を持ってない方の手で受け止めた。

 

「炎の出力や大きさで破壊出来ない、となると純度か?」

 

 ガリガリガリと何かが削れるような音を立てながら突き進むハリネズミの弾丸。

 まともに受ければ踏ん張りなんか効かずにそのまま壁に叩きつけられるであろう威力を有するそれを平然とした顔で受け止めるツナは、そのまま破壊しようと炎を込めている。

 ただこの匣兵器が炎の威力では破壊出来ない事に気付くとすぐさま純度の方を上げようとし始めた。

 ボンゴレリングにエデンリング。この二つの精製度が高いリングを持つツナにとって、死ぬ気の炎の純度を高める事は意識すればさほど難しい事じゃ無い。

 炎の純度が上がった事でハリネズミに亀裂が入る。

 だがそれよりも先にハリネズミから出た紫色の針が付いた雲のようなものがツナの身動きを封じた。

 

「気付いたみたいだけどもう遅い。雲ハリネズミ(ポルコスピーノ・ヌーヴァラ)は相手の炎を吸収し、増殖する性質がある」

 

 これこそがこの時代、匣兵器を使った戦い。

 匣兵器の出現は死ぬ気の炎を使った戦闘を大きく変化させた。

 中には相手の炎を利用し自身を強化する性質のある匣や相手の炎を自動追尾する匣等もあり、生物を模した意志ある兵器。

 技術のブレイクスルーやシンギュラリティを超えたとかでは説明がつかない超兵器だ。

 と、いうよりもこれは――――。

 

「この程度で我を封じたつもりか?」

 

 匣兵器についての考察に入ろうとした頭を強制的に目の前で繰り広げられている応酬に戻す。

 出力や威力では壊れない雲雀さんの匣兵器、雲ハリネズミが出した自身を拘束する棘を破壊する為にツナは全身から高純度の炎を放出する。

 息をするように身体から溢れる莫大な死ぬ気の炎の全てが透き通り綺麗な、それでいて恐ろしい程にまで透明な炎。

 それは雲雀さんの雲ハリネズミを容易く破壊する。

 だが周囲に浮かぶ全ての棘を破壊する前に笹川先輩が動いた。

 

「我流!!」

 

 笹川先輩が出したのは晴の炎が灯ったカンガルーで、お腹の袋の中から炎を纏った何かが射出される。

 放たれた二つの炎はツナに攻撃する為に駆け出した笹川先輩に当たり、両手両足に死ぬ気の炎の噴射口が着いた装備が装着される。

 

「沢田っ!! オレがお前の目を覚まさせてやる!!」

 

 力強い言葉と共に笹川先輩はエデンリングを武器に変え、晴グローブの上に変形したエデンリングを装備。

 死ぬ気の炎による加速とエデンリングによる身体能力の向上。

 そして10年もの歳月を鍛え、成長した体躯から繰り出された拳がツナに当たった。

 しかし――――。

 

「悪いけど、とっくに覚めてる」

「なっ…………!?」

 

 笹川先輩の放った強烈な一撃はツナに傷一つ付けられず、それどころか攻撃した笹川先輩の方がダメージを受けていた。

 

「お前達は勝てない。どんな手を使ってでもな」

 

 そう言ってツナは笹川先輩を羽を羽ばたかせる事で吹き飛ばし、私達に向かって6つの匣を放り投げる。

 

「ボンゴレ匣はお前達に渡してやろう。それを使って戦うが良い。どんな手を使ってこようが、それを真正面から摘み取ってやる」

 

 ツナが手を掲げるとボンゴレリングの形状が変化する。

 分割出来る構造から分割出来ない、煌びやかなもので圧倒的な力を感じさせる原型に。

 

「さあ、終幕の時間だ」

 

 原型へと戻ったボンゴレリングの炎をオレンジ色のボンゴレ匣と呼ばれた匣に注入し、中から一体の動物が出現。

 王冠のような装飾と機械的なパーツを装着した七つの頭部を持ち、立て髪が死ぬ気の炎で出来た巨大で異形なライオンの雄叫びが木霊する。

 そして、戦闘という名の蹂躙が始まりを告げた。




ネガ・ヒストリー 
ランク:EX 保有者:『犠牲』の獣
人類の積み重ねを否定し、全てをキャンセルするスキル。
時間を、縦の時系列を司る者がビーストになった事で獲得した一部の例外を除いて無効化する不可侵のバリアを有する。

これ以外にもあと二つネガスキルを持っています。
ちなみに補足ですがナッツが何であんな事になってるのかについてですが、ビーストモードツナ君の死ぬ気の炎が注がれて変質してるからです。
XANXUSの匣兵器が憤怒の炎が込められてライガーに変質したようにビーストの霊基が混入した事で魔神柱やラフムのようになりました。
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