キャストリアに転生したが原作を壊してしまった   作:霧ケ峰リョク

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書いていて辛いよォ…………
誰だよこんな展開にしたの


アルターエゴ

「――――くそっ」

 

 ミルフィオーレファミリーがボンゴレファミリーのボス、沢田綱吉の暗殺を仕掛けて返り討ちにあった翌日。

 γは傷付いた身体で一人、酒を呷っていた。

 ジッリョネロファミリーの至宝であるマーレリングが(リアル)6弔花とかいう謎の集団の手に渡っていた事。

 ミルフィオーレファミリーの主戦力が壊滅した際に、ブラックスペルのボスであるユニが攫われた事。

 そして何も出来なかった自分に対する怒りがγの心を支配していた。

 

「お前がγか」

 

 自身に対する怒りでやけ酒に走っているγの耳に何者かの声が響く。

 声がした方向に視線を向け、目を見開く。

 何故ならそこに居たのはミルフィオーレファミリーを返り討ちにし、ブラックスペルのボスのユニを攫った張本人。ボンゴレ10代目、沢田綱吉その人だった。

 

「てめぇ…………!」

 

 γにとってこの世で一、二を争う怨敵の来襲にリングの炎を灯して応戦しようとする。

 雷のマーレリングではないもののγが持つ雷のリングは精製度Aランクの特別な石を使って作られたリング。

 敵しか居ないあの場で大立ち回りわ通り越して蹂躙した相手でも、命を捨てればもしかしたら届くかもしれない。仮に届かなかったとしても、やるしかない。

 この化け物に一矢報いる事が出来るのならば――――、

 

『――――γ?』

 

 自身の名を呼ぶその声を聞いた瞬間、γの死ぬ気の炎は揺らいでしまった。

 

   +++

 

『ボンゴレリングを原型に戻したというのか…………?』

「リングを従えれば別に難しい話じゃないからな。大空のボンゴレリングだけを戻すっていう方法は出来なかったけど」

 

 ツナは原型へと姿を変えた大空のボンゴレリングから私達、大空以外の属性のボンゴレリングに視線を向ける。

 山本や獄寺の持っている嵐、雨のボンゴレリングが銀色の分割できる構造からそれぞれの属性にあった色の石に姿を変えている。加えて感じる力も圧力も前のリングとは比較にならない程強力なものになっていた。

 

「分割出来る構造を保つ為に死ぬ気の炎の最大出力をアルコバレーノのおしゃぶりやマーレリングより抑える必要があったみたいだけど、ここまで違うのか。最初からこのリングだったなら白蘭相手にここまでいいようにされる事は…………いや、どっちにしろ壊してたか」

 

 大空のボンゴレリングを見ながら自嘲するようにツナは笑う。

 そして、彼のリングに死ぬ気の炎が灯った。

 ゴウという表現以外考えられない程の圧力が私達に襲い掛かる。

 いや、襲うという表現すら正しくない。原型のボンゴレリングで死ぬ気の炎を灯した。それだけの行為に過ぎない。ただそれだけで今までのリングの炎を遥かに上回る力を発揮した。

 

「これが、原型(アーキタイプ)のボンゴレリング…………!」

 

 本当にハーフボンゴレリングへと分割出来る前の代物とは別格としか言いようが無い。

 

「一先ずはこれで良いか…………それにしても」

 

 そう言ってツナは七つの頭を持つ獣を見やる。

 

「ビーストの力が流れ込んだ影響か。お前も随分と変な姿になったな、ナッツ」

「ぐるる…………」

「XANXUSもそうだったけどこれじゃあ天空ライオン(レオネ・ディ・チェーリ)って呼べないな。黙示録の獣(アポカリッセ・ベスティア)、じゃあそのまんま過ぎるか」

 

 ツナがボンゴレ(ボックス)と呼んだ匣兵器から出現した獣をナッツと呼び、名を呼ばれた獣は恐ろしい見た目に反し大人しそうにツナにすり寄った。

 どこか不満そうにツナを見るナッツ。それに対しツナは顔を顰める。

 

「お前がオレに賛同しないのは分かってる。でも、これ以外方法が無いんだよ」

「…………GAO」

「嫌だからって何もしなかったらそれこそ本末転倒だろ。分かったら大人しく従え。それとも嫌だからって協力しないで、そのままORTの手による滅びを受け入れるか?」

 

 ツナの言葉にナッツは目を綴り、黙って首を垂れる。

 そして獣の姿が変わったかと思うと、次の瞬間にはマントになっていた。

 

「全く、我ながら未練がましいな」

 

 獣が変貌したマントを羽織り、背中から生えている翼と同化する。

 黒く禍々しい翼は竜か、あるいは悪魔か荒ぶる神のものか。

 

「でも、これで終わりだ」

 

 ツナが夜の炎を纏わせた剣を何も無い虚空に向かって振るうと、私達はいつの間にかシモンファミリーの聖地に立っていた。

 私達だけじゃない。あの場に居なかった京子やハル、ランボにイーピンもだ。

 

「なっ、京子…………!?」

「お兄ちゃん?」

 

 夜の炎とビーストのクラススキルである単独顕現、その二つを併せての転移。

 それによって地の利を失ったどころか、守らないといけない人(足手纏い)が増えた私達に対しツナは一方的に優勢だった。

 

「つ、ツナさん! 無事だったん――――」

 

 そして、ハルがツナの姿を見て一瞬嬉しそうに声を出すも、ツナが纏う雰囲気に威圧され言葉を失う。

 ランボやイーピンの二人も幼児ながら今のツナはいつもとは違うと察知し怯えている。

 特にランボに至っては

 

「沢田! 京子は関係無い!!」

「言った筈だ。全員だと」

 

 刀身に高純度の大空の炎を惑わせながら、ツナはゆっくりと歩み寄る。

 

「10代目! これしか本当に道は無いんですか!!? 貴方だって迷って――――」

「無い」

 

 獄寺の悲痛の籠った叫びを聞いてもなお、ツナは眉一つ変える事なく一蹴する。

 それでも、皆の言葉が届いたのか。ツナは私達に譲歩を見せた。

 

「もし、オレの意見を変えたいのならオレを倒して、屈服させて、頭を踏み付けて、無理矢理言う事を聞かせろ。今のオレにすら勝てないっていうのなら――――お前達に選択の資格は無い」

 

 それは譲歩に見せかけた無理難題。

 幼体でありながらもビーストに成り果てた今のツナを相手に勝利しろという試練を私達に突き付けてきた。

 ビーストの意味を知っている私や、今のツナの奥の手を知っているユニ、そして事情を知らないまでも今のツナの実力を正しく理解したリボーンはそれがどれだけ難しい事なのかを分かっているからこそ思わず息を飲む。

 同時に彼の言う通り、今のツナを倒さなければ話にすらならない事も事実だ。

 彼と話し合う為には、彼を倒さなければいけない。

 

「…………分かりました。10代目! 貴方が道を間違えたのなら、それを止めるのが右腕の…………いや、オレ達の仕事です!!」

「そういうわけだツナ。こっちも加減はしねぇぞ」

 

 ツナと戦う事を決意した二人は武器を携え、死ぬ気の炎を武器に灯す。

 獄寺に関してはダイナマイトではなく、全く見覚えの無い銀色の髑髏の意匠が施された武器を左腕に装着していた。

 恐らく匣兵器なのだろう。なんて言うか男の子らしい。

 とはいえ、正直に今のツナと戦っても勝ち目は皆無。まともに戦えば皆が殺され、私とユニは確保される。かといって戦わないという選択肢はツナに無抵抗で殺される事になる為、それこそ論外だ。

 

「…………全員、無理してツナを倒そうとはせず、時間を稼いで下さい。今のツナにこちらからの攻撃がまともに通るとは思えない」

「でも、それだと」

「何も無策ってわけじゃないですよクローム。時間を稼ぐ事が出来れば、勝ち筋がやって来ます」

 

 今のツナを倒せるだけの火力を、有効的な攻撃をする為の手段を私達は持っていない。

 と、いうかこの世界で今のツナを相手に戦う事が出来る存在は二人だけだ。

 一人はチェッカーフェイス。私が製造された全ての原因にして現在も生き残っている古代人最後の生き残り。

 もう一人が――――。

 

「オルタが来るのを待っているのか」

「――――っ」

 

 私の思考を読み取ったツナは淡々と呟く。

 

「確かにアルトリアが考えている通り、今のオレを倒す事が出来る存在はこの星で二人だけ。一人がチェッカーフェイス。現在も生き残っている古代人、末裔で混血のユニと違って純潔かつ当人だ。そしてもう一人がオルタ…………ありえたかもしれない未来において聖剣の担い手となったオレの別側面(オルタナティブ)にして冠位(グランドセイバー)

 

 オルタ、未来のサワダツナヨシの事を語る時に忌々しげと言わんばかりに顔を歪める。

 

「あいつの存在はオレという存在を倒す事に特化している。真正面からやりあえば今のオレでも危ないし、そもそも正面から戦ったりしないから非常に厄介だ――――そんな関わりたくない奴が居るのに無策で出て来ると思うか? 対策してるに決まってるだろ」

 

 尤も、出来る限りやりたくない方法だったが。

 そう吐き捨てながらツナは私達を見据える。

 

「それじゃあ、抗え」

 

 その言葉と共にツナは翼を羽ばたかせ、その場から消え去っていた。

 同時に私達の背後からツナの死ぬ気の炎を感じ、私とリボーンは振り向きざまに攻撃を繰り出す。

 死ぬ気の炎が込められた特殊弾に私の魔力弾。

 半ば反射的に放ったそれはツナに直撃。しかし、その身体に傷を付けることすら出来なかった。

 

「無駄だ」

 

 私達の攻撃を意に介さず、そのまま刃を振るう。

 莫大な量の死ぬ気の炎を纏ったそれは荒れ狂う災害にも等しく、ただ振るうだけで周囲を破壊する。

 寸前のところで私達を守るように雲雀のハリネズミが出した針がついた紫の雲が盾のように展開されたけど、そんなの関係無いと言わんばかりに壊される。

 

「っ、渦転斬! 獄寺!」

「ナイスだ野球バカ! 後はこれに炎を叩き込め!」

「分かった! 繁吹き雨!」

「『SISTEMA C.A.I.』!」

 

 雲の匣兵器が身を守っている内に山本が匣を開匣し、中から飛び出した水のバリアとそれを利用した繁吹き雨。それに加えて獄寺が所持していた嵐と雨の炎を纏う骨のようなバリアのおかげで何とか防ぎ切る事が出来た。

 獄寺が持っている雨属性の匣兵器に、この中で一番強い雨の波動を持つ山本に開匣させ、二つの高純度の炎によってそれぞれの性能が発揮されたからこそのこの結果だ。

 もし獄寺だけの防御だったら防ぐ事は出来なかっただろう。

 

「いい加減にしろ沢田! 極限(マキシマム)イングラム!!」

「調子に乗り過ぎだよ」

 

 笹川先輩が三人に分身しているかのように見える程、洗練されたステップから特大威力の拳が放たれる。

 それに合わせるように攻撃を仕掛けるのはエデンリングを武器に変化させた雲雀。

 雲属性の、雲雀恭弥が有するエデンリングが変化する武器は双剣。彼の得物である仕込みトンファーと合体する事で性能を強化する特注品。

 トンファーに装着された紫の刃に雲属性の死ぬ気の炎を灯し、雲雀は回転して刃を振るった。

 三発の拳撃に竜巻のように振るわれる刃。二属性の聖剣の連撃を前にツナの身体は耐え切れず吹っ飛んだ。

 

「このまま行くぞ雲雀!!」

「僕に命令しないでよ」

 

 吹っ飛ばされたツナに追撃を仕掛けようと10年後の二人は突貫する。

 10年後の二人の戦闘力は今の私達では到底及ばない程に強かった。

 だからこそ理解出来る。今の二人でもツナには遠く及ばないという事を。

 

「エデンリング、楽園の妖精によって造られた聖剣。それはオレのネガ・ヒストリーの対象外だ。アルコバレーノのリボーンや楽園の妖精のアルトリアも同じ…………だけど」

 

 ツナは羽を展開してその場に静止し、迫る二人を迎え撃つ。

 

「攻撃が通じるかどうかは別の話だ。タイムジェイル」

 

 剣を手放した後、両手から大空の炎で構成された二つの球体を放ち、笹川先輩と雲雀さんを包み込む。

 避けられないと悟った二人は取り込まれる前に匣を私達に向かって投げ捨てる。

 

「チェンジ」

 

 そして10年後の二人はこの世界から消失し、代わりに10年前の二人が姿を現した。

 

「むっ、ここは何処だ?」

「…………いきなり何?」

 

 10年前の、私達の時代の二人は突然呼び出された事に困惑する。

 

「いきなりで悪いけど、大人しくしてろ」

 

 ツナはそう言うと両手から死ぬ気の炎を放出し、二人を吹っ飛ばして地面に叩き付ける。

 二人とも寸前で死ぬ気の炎を纏った事で防御は出来ていたが、10年後の彼等に比べれば劣っている。今の攻撃を完全に防ぐ事は出来ず、暫くは動けないだろうダメージを負っていた。

 

「お兄ちゃんっ!」

「っ、ダメ!!」

 

 傷付いた笹川先輩を見て飛び出そうとする京子を抑えて結界を張る。

 その結界は京子やハル、ランボにイーピンといった戦えない人を守る為のもの――――ではない。好き勝手動かれてこっちの不利にならないようにする為のものだ。

 今のツナを相手に壊れない結界は作れないし意味が無い。

 対粛清防御なら守る事は出来るけど、あれはそんな長時間守っていられない。

 

「は、はひっ!? 見えない壁みたいなのがあります!」

「私の結界! なんでこんなのが使えるかとかの説明は今は無理!!」

 

 驚くハルに軽く説明しながらも視線をツナから外さない。

 今のツナを相手にまともな攻撃は通らない。ネガ・ヒストリーというスキルがどんな効果は分からないが、彼の言葉を信じるのなら恐らく人類が開発した武具の否定に近い能力の筈。

 エデンリング、楽園の妖精が製造した聖剣やアルコバレーノであるリボーンの攻撃は通ったからそれで正解かは分からないけど、恐らくそれで合っている筈。にも関わらず勝負の土俵にすら上がれていないのは単純に私達のスペックが届いていないからだ。

 加えて、ツナはまだ本気じゃない。両手のイクスグローブも、習得している剣技や奥義も、固有結界も、ユニが言っていた侵食固有結界も使っていない。

 使っているのは小手先の小技ばかりだ。

 

X BLAZER(イクス・ブレイザー)

 

 だけどそれも終わり、私達を仕留める為に莫大な炎を使った攻撃を使用し始める。

 ボンゴレリングの紋章を宿したイクスグローブ、そしてエデンリングが姿を変えた聖剣。その双方を用いて放たれる大技。

 剣を持っていない左手から放出する炎で身体を支え、剣を持った右手に高純度の炎を纏わせながら振るう。

 瞬間、刀身から凄まじい破壊力を持った炎の斬撃が放たれた。

 

「ッ、間に合え――――!!」

 

 ツナからの攻撃を防ぐ為にきみをいだく希望の星(アラウンド・カリバーン)を限定開放する。

 炎の斬撃は大地を、岩山を、海を切り裂き大地に大きな傷跡を刻み付けた。

 対粛清防御を張っていなけれ今頃肉片一つさえ残らなかっただろう。あくまで生命エネルギーである筈の死ぬ気の炎が残留し続けている上に世界を燃やしている。

 その結果、テクスチャが剥がれて白紙化が起こっている。

 

「嘘でしょ?」

 

 今のツナはビーストではあるけどまだ幼体の筈だ。

 成体なら出来るだろうけどここまで出来るとは思えない。

 ボンゴレリングの適合者だから? それともグランドクラスのビースト、グランドビーストだというのか?

 いや、流石にそんなのはありえない――――。

 

「今のを防いだか、じゃあ次だ」

 

 思考する間も無くツナは次の攻撃の準備に入る。

 空から降り注ぐ高純度の圧縮された無数の炎塊、そしてさっきと同じように激しく燃え上がる。

 

「無理。これは防げない」

 

 きみをいだく希望の星は連続発動できない。仮に発動できたとしても防ぐ事が不可能な量の弾幕をダメ押しで叩き込まれて無効化されるだけ。

 この中で一番強いリボーンもこれをどうにかする方法は無い。彼の戦闘スタイルは最小限の動きで回避し相手の急所を撃ち抜くというもの。今のツナの鱗を貫く事は出来ず、無差別に即死級の攻撃を叩き込んでくる今のツナは天敵といっても過言じゃない。

 詰み。明確な死のイメージが脳裏に過った瞬間、それは現れた。

 

「――――っ」

 

 私達にとどめを刺そうとするツナの背後にオルタが姿を現し、剣でツナを背後から貫こうとしていた。

 どうやら私達はオルタが来るまでの時間稼ぎをどうにかやり遂げたらしい。

 思わずその場にへたり込みそうになるのを何とか堪え、オルタの奇襲が成功する事を祈る。

 だけどその祈りは裏切られ、オルタの攻撃はツナの背中から姿を現した薄い炎に覆われた二人の少女によって防がれた。

 

「なっ!!?」

「オレの天敵が居ると分かってるのに何も対策してないわけないだろ。舐めんな」

 

 突然現れた二人の少女、日輪のような槍と黄金の鎧を装備した少女と巨大な弓を装備した少女はオルタに攻撃を加え続けてツナから引きはがす。

 太陽のような業火と竜を連想させる弓矢、そして二人の少女からはツナの気配と濃い神性の気配。

 間違いない。あの二人の少女は――――、

 

「アルターエゴ…………!? ツナ、貴方まさか自分の人格を分割して」

「別に難しいものじゃなかったよ。女の子になったのは予想外だったけど…………ビーストの性質がそうさせたのかは分からないけど、どうでも良いか」

 

 世界のテクスチャを容易く引きはがし、神霊相当の存在を受肉させたうえで生み出す。

 最早本物の“神”としか言いようが無い。

 ビーストになっていた事や神性を取り込んでいるのは予想できたけどまさかここまで至っているとは思わなかった。

 でも――――、

 

「神様になったんですね、ツナ」

 

 私のもう一つの宝具、それをツナに当てる事が出来たなら勝ち目が見えて来る。

 

「漸く勝機が見えた」

 

 それがどれだけ辛い事なのかもよく分かっている。

 でも、私は貴方に生きていてほしいんだ。

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