キャストリアに転生したが原作を壊してしまった   作:霧ケ峰リョク

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すみません、六月入ってから体調を崩してここまで長引いちゃいました。
咳のし過ぎで腹筋が筋肉痛になったのは初めてでした。


生物としての限界

「何故、お前がここに居る!?」

「居ても不思議ではないさ、リボーン君。この星の危機が訪れたと言うのならそれを看過するわけにはいかないからね」

 

 殺意、そして怒りを隠さずに問い詰めるリボーンにチェッカーフェイスは飄々とした態度で振る舞う。

 アルコバレーノの成り損ないであり、雨のアルコバレーノ候補であったラル・ミルチも驚愕に満ちた表情をしている。唯一アルコバレーノの中で面識が無かったユニもチェッカーフェイスの登場に困惑を隠せなかった。

 今まで素性が不明で、何処に居るのかすらもつかめなかった男がこの場に姿を現した。

 その理由を察せない程、リボーン達は鈍感ではなかった。

 

「今更、何をしに来た」

 

 ツナもリボーン達とは別の、それでも歓迎していないと言わんばかりに顔を顰めながら問いを投げる。

 

「言った筈だ。きみのプランは私には到底受け入れられるものではない」

「受け入れられないのなら何か代案でもあるのか?」

 

 一触即発とはこの事を指すのだろう。

 互いに睨み合っているだけで火花が散っている気がする。と、いうよりも本当に火花が散っていた。

 殺意に死ぬ気の炎を込め、ただ睨むだけで攻撃として成立している。

 それを可能にするのが、二人の莫大な出力だ。

 

「もう一度聞く――――今更何をしに来た?」

 

 怒気を漲らせながら、ツナは淡々と呟く。

 身体から放出される死ぬ気の炎は最早人類の規格ではありえない程の出力だ。

 だが、それを見てチェッカーフェイスは笑う。

 

「素晴らしい炎だ。(トゥリニセッテ)の補正から外れた進化であったとしても喜ぶべきだろう。だが――――」

 

 そう言うとチェッカーフェイスは死ぬ気の炎を放った。

 呼吸でもするかのように放ったその炎はビースト幼体と化した今のツナでさえ、及ばない程の炎だ。

 

「きみの炎のざっと三倍といったところか。私にとっては呼吸をするのと変わらないがね」

「炎の大きさだけで勝負が決まるわけじゃない」

「その通り。純度が高ければ炎の持つ特性を引き出したり威力を上げることが出来るからね。だがそれもある一定のラインまでだ。エネルギーの総量が炎の純度で覆せない程差があるのならそれすらも通じない」

 

 付け加えるのであるなら、気配(セーニョ)のヘルリングを持っているチェッカーフェイスは高純度の死ぬ気の炎を扱える。

 今ツナが上げた死ぬ気の炎の優劣もチェッカーフェイスには当て嵌まらない。

 

「まあ、悲観する事は無い。到達点へと至ったバミューダ君でさえ、私の数十分の一の出力だ。それを考えればきみは人間という生物の枠を超えているんだ。正直な事を言うと私でも今のきみを相手にするのは命懸けになるだろうね」

「なら命を賭して戦ってみるか?」

 

 ツナを中心に空間が歪み、変質し始める。

 固有結界――――いや、これはユニが言っていた浸食固有結界!

 

「全員死ぬ気の炎を展開して身を守れ!!」

 

 使用していた時間は十秒程度でその全貌は明らかになっていない。

 それでもこの時代最強のマフィアであるミルフィオーレファミリーの本部を一瞬で壊滅させる事が出来るんだ。

 能力の詳細は分からないけど、凡その予想はつく。

 

「安心してくれたまえ、星の嬰児よ」

 

 ツナの奥の手に対し警戒しているとチェッカーフェイスは私に対し優しく言葉を掛けた。

 

「…………安心できる状況じゃないのは分かってると思ってるんだけど」

「確かに、私でも彼のアレを使われれば勝ち目は無いさ。だが、私も一人で来たわけじゃないんだよ」

「どういうことですか?」

「彼という脅威を前に、心情やプライドを捨てなければ勝てないと皆が判断したからね」

 

 チェッカーフェイスがそう言った瞬間、ツナの背後に一人の男が現れる。

 一糸纏わぬ姿をし、右手に雷のマーレリングを装着した人間と言うには人間味が無さすぎる半透明の巨人だった。

 突然現れたその巨人はツナに向かって触手のような物を飛ばし、ツナから死ぬ気の炎を略奪する。

 

「っ、くそ…………!」

 

 浸食固有結界の展開には莫大な死ぬ気の炎を必要とするのか、巨人に炎を奪われたせいで空間の歪みが消滅する。

 ツナはすぐさまその巨人を倒そうとするも物理的に存在しないのか、攻撃は当たる事無くすり抜けた。

 

「メテオシャワーアクセルが消えたのはこいつの仕業か…………死ぬ気の炎を吸収するって言うのなら」

 

 半透明の巨人の能力を理解したのか、ツナは零地点突破・改を使おうと構える。

 だけどその構えは巨人と同じように現れた黒い死ぬ気の炎を灯した男がツナの腕を掴んで構えを強制的に解かせた。

 

「させないよ、沢田綱吉――――!」

「っ、バミューダ…………!」

 

 ツナは驚愕した様子で黒い死ぬ気の炎を灯した男の名を言う。

 

復讐者(ヴィンディチェ)のお前がチェッカーフェイスと協力するなんて、それにその姿…………」

「嫌でもそうせざるをえなかっただけだよ。それに、彼と手を組んだのは僕達だけじゃない」

「そういう事だよ♪」

 

 黒い死ぬ気の炎を灯した男に同調するように、黒い炎の渦から羽の生えた白い男が姿を現す。

 その姿を見て、ラル・ミルチは激昂しながらその男の名を叫んだ。

 

「白蘭っ!」

「正チャンは…………意識を失ってるみたいだね。少し話がしたかったんだけど仕方ないか」

 

 怒りと殺意を向けられながらも白い男、白蘭はどこ吹く風と言わんばかりに気絶している入江正一を見て残念そうな笑みを浮かべる。

 だがそれも一瞬の事ですぐに視線をツナに向ける。

 

「やあ、綱吉クン」

「白蘭…………まさか、お前等が手を組むとはな」

「僕としては別に協力するつもりはなかったんだけどね」

「だとしてもここに居る以上、手を組んだんだろ? オレへのリベンジのつもりか?」

 

 ヘラヘラと笑う白蘭に対し、ツナは怒りを通り越して呆れてすらいるようにも見える。

 それを見て白蘭は首を横に振る。

 

「まさか、あの時僕はきみに完膚なきまでに敗北した。今こうして生きていられるのも邪魔が入っただけで、本当ならあの時死んでたんだ。今更きみに復讐をとかふざけた事をする気は無いよ」

「言葉と態度があってないんだよ」

「ハハハ、まあそうなんだけどね。正直僕は綱吉クンに惨殺されても仕方ない事をしてたからね。でも、今回はきみを止めに来ただけさ」

 

 白蘭が告げた瞬間、ツナとチェッカーフェイス二人を取り囲むように結界が張られる。

 大空の七属性で構成された巨大な結界、その内側に張られているチェッカーフェイスが作り出した霧属性の結界。

 二重の結界に包まれて見えなくなっていく中、ツナは観念したかのように顔を下げる。そして結界が閉じる直前、ツナの口元が弧を描いているのを私は見逃さなかった。

 

   +++

 

「きみの侵食固有結界は普通の固有結界と違い、世界を侵食するものだ。ならば結界できみを囲えば対策は出来ると考えた。時間稼ぎにしかならないが、結界の中であるのなら外部に漏れ出すのを抑える事が出来るからね」

「…………」

「結界の中で侵食固有結界を発動して、私の結界を侵食したとしても外部にはミルフィオーレの子達が張った結界がある。きみを倒せるだけの時間は稼げる筈さ。尤も、GHOSTがきみの炎を吸収している間は侵食固有結界の発動は困難だ。そして、それを見逃す程私も悠長じゃ無い」

「…………」

「仮に発動出来たとしても私の結界を強制的に破棄するだけだ。きみの奥はまさしく神業だが、君自身の凄まじいまでの技量が必要不可欠。乱暴に結界を破壊されればいくらきみでも再展開は難しい筈だ」

 

 チェッカーフェイスが話しを終えると、その姿が増え始める。

 霧属性最高峰の気配のヘルリング。そのリングの力を引き出した奥義のようなものだ。

 気配を操れるということは擬似的に人間を作り出せる事でもある。

 その力によってチェッカーフェイスは沢山の己の分身を作り出した。

 極まった実力者であるなら分身そのものを作る事はそう難しい事ではない。しかし、これだけの人数の分身を作るには気配のヘルリングとチェッカーフェイスの莫大な死ぬ気の炎が無ければ不可能だった。

 

「降参する事を勧めよう」

 

 ヘルリングをはめた右手を前に突き出し、高密度に圧縮した炎を綱吉に向けながらチェッカーフェイスは最後の通告をする。

 GHOSTを倒す為には死ぬ気の炎を吸収する死ぬ気の零地点突破・改を使わなければいけない。しかし、それを使えばチェッカーフェイスの攻撃が襲い掛かる。

 死ぬ気の炎を吸収する零地点突破・改であったとしてもこれだけ莫大な死ぬ気の炎を叩き込まれれば吸収しきれずにパンクする。かといって吸収するのを止めて防御するには量が多過ぎる。

 GHOSTが死ぬ気の炎を吸収しているとはいえ、まともに受ければただでは済まないだろう。

 状況は綱吉にとって不利な物だった。

 にも関わらず、それを聞いた綱吉は――――。

 

「質問に答えろ。今更何をしに来た?」

 

 先程と変わらず、同じ質問を投げ付けた。

 半透明の巨人、白蘭が並行世界から招いたもう一人の自分、雷の(リアル)6弔花であるGHOSTに莫大な炎を奪われながらもその瞳から戦意は潰えていない。

 それどころか敵意を滾らさつつ、死ぬ気の炎の放出を止めていない。

 侵食固有結界の発動は出来ないが、戦闘そのものは継続可能なのが末恐ろしく思える。

 

「ああ、そういえば話して無かったね。良いだろう。話してあげよう。きみがいう宇宙からの来訪者、ORTを打倒する為にバミューダ君や白蘭君の力を借りるんだよ」

「だからあいつ等と手を組んだのか?」

「この星に危機が訪れているのはわかっていたからね。話を戻すがバミューダ君の夜の炎のワープゲートを通過する際に死ぬ気の炎を増幅させて加速させる性質があってね。それを利用してORTを倒す」

「…………バミューダが展開した夜の炎のゲートで加速させた、死ぬ気の炎の砲撃を放つつもりか?」

「ああ、その通りだ。ミルフィオーレの科学技術を結集させ、より攻撃力を上げた兵器として作り上げる事も可能だろう」

 

 チェッカーフェイスが語った作戦は、ORTの事を知っている綱吉から見ても通じるに値すると判断出来るものだった。

 綱吉自身、夜の炎を手に入れた身であるが故にこの炎の性質は知っている。

 チェッカーフェイスが語ったように毎日死ぬ気の炎を注がれて、それをゲートで加速し続ければORTを打倒する事だって決して不可能ではない。

 

「その顔を見るに、我々の考えはORTにも通じるみたいだね」

「通じるし当たれば倒す事だって出来るとは思う。少なくとも威力だけならな」

「出来ればきみにも協力してもらいたいものだがね」

「それよりも、その後はどうするんだ? ORTを倒してもこの星の寿命は解決する事は無い。今のまま(トゥリニセッテ)のシステムを維持し続けるつもりか?」

「無論、そのままというわけにはいかないさ。変えなければいけないところがあるというのなら変えざるをえないからね」

 

 そう言うとチェッカーフェイスは綱吉に人差し指を向ける。

 

「きみには新たな形のアルコバレーノになってもらう。人間から竜へと変異したきみならば、アルコバレーノのおしゃぶりと深く結びつく事が出来るだろう」

「…………ああ、お前の考えは分かった。確かにお前の言う通り、今のオレなら一人で現アルコバレーノ達よりも多くの死ぬ気の炎を提供出来る。それならこの星の余命問題も先延ばしに出来るだろうな」

「その場合、きみには今のアルコバレーノ以上の呪いを受ける事になる。尤も、きみのプラン通りの末路に比べれば遥かにマシな筈だ」

「まあ、そうだな」

 

 チェッカーフェイスが語るプラン通りアルコバレーノのおしゃぶりに死ぬ気の炎を供給する装置になったとしても、自我が消滅する事はない。

 当然、アルコバレーノ達以上の負荷を一身に受ける事になるがそっちの方がまだ有情だ。

 以前のようにはいかないがそれでも大切な人達と一緒に居れるのだから――――。

 

「本当に魅力的な提案だよ…………覚悟を決める前だったなら、揺らいでいたかもな」

「…………ダメなのかい?」

「ああ。お前達のプランよりも、オレのプランの方を優先する」

「そうか。残念だ」

 

 話し合いは決裂した、こうなってしまっては戦うしか道は無い。

 その事を残念に思いながらもチェッカーフェイスは攻撃態勢に入る。

 命までは奪わない、等と宣うつもりはない。沢田綱吉はチェッカーフェイスの手に余る怪物だ。殺すつもりで攻撃しなければ勝てないし、そもそも殺したところで死ぬのかも怪しい。

 チェッカーフェイスは全力で攻撃しようとして――――その場に片膝をついた。

 

「な、に…………?」

「一つ、疑問に思っていたんだ。今の人類よりも遥かに強大な炎を生み出す種族のお前達が、何故滅んだのかを」

 

 チェッカーフェイスが生み出した分身が、幻覚が、結界が消失していく中、綱吉は淡々と呟く。

 

「ユニは混血だからカウントしないにせよ、10人以上も居た筈のお前達が何故お前一人を残して命を落としたのか。何故お前一人だけが生き残っているのか」

 

 互いに放出していた死ぬ気の炎が微かに揺らめく中、綱吉は片膝をついたチェッカーフェイスを見下ろす。

 

「そもそもの話、(トゥリニセッテ)を今の人類に負担してもらうって話もおかしなところがある。たった一人で到達点に至った人間が出せる死ぬ気の炎の数十倍もの炎を出せるお前達の種族が、人数が減ったからって何で賄えないんだ? 普通に考えれば賄えて当然だし、余裕もある筈だ」

「それは…………」

「そこで考えたんだ。一つは単純な死ぬ気の炎の属性の有無で、お前達の種族も今の人類同様持ってない属性があるから賄えないって事。それも理由の一つには入ると思う。なら霧属性だけでも灯し続けられる筈だ。にも関わらずお前はしなかった。いや、出来なかった」

 

 最早燻っているとしか言いようの無い死ぬ気の炎を灯しながら、綱吉は歩き始める。

 

「死ぬ気の炎は生命エネルギー。いくら大量の死ぬ気の炎を出せても出し続ける事は命に関わるんだろ。まあ、これも予想でしか無いけど…………それでもお前以外が死んだ事の説明はつく」

「…………違う、と言ったら?」

「死の要因には絡んでいる筈だ。じゃなきゃアルコバレーノのおしゃぶりを、マーレリングを、ボンゴレリングを作らなきゃいけない理由が無い」

「だとしても、それは私には当て嵌まらない…………!」

「そうだな。でも、死ぬ気の炎を出せないのなら同じようなものだ」

 

 剣の切っ尖で地面を削りながらゆっくりと近づいて来る綱吉の姿に、死神の姿が重なった。

 その背後に、自分を残して死んでいった仲間達の姿を幻視する。

 まるで自分がこれから死ぬと言われているかのようだ。

 

「長々と話をしたが、お前達の種族は莫大な死ぬ気の炎を操れるだけで普通に死ぬ、生き物でしかないんだ。それが分かればやりようは色々とある。まあ、ここまで上手くハマるとは思わなかったがな」

「一体、どんな手を…………使ったのかね?」

 

 チェッカーフェイスの疑問に綱吉は笑みを浮かべながら告げる。

 

「どんな強い生き物であろうと関係無く倒す事が出来る武器――――毒だ」

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