キャストリアに転生したが原作を壊してしまった   作:霧ケ峰リョク

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たった一分の総力戦

「今から私が今のツナに有効な攻撃を使います! 確実に当てる為に、最大の威力を発揮できるように時間を稼いでください! 一分、一分で良いから!!」

 

 その言葉を聞いてこの場に居る全員が戦意を漲らせる。

 対するツナもアルビオンの頭部を除いた六つの頭部から咆哮を放つ。

 ただ叫ぶだけでも鼓膜を破壊しかねない。結界で守っている京子ちゃん達は大丈夫だ。ただ私達はあまり大丈夫じゃない、死ぬ気の炎や魔術を使って防いでるけど耳が劈くような声量だ。

 こんな大声で叫ばれたら他の音なんて聞こえない――――攻撃が来ても気付けないだろう。

 

「ぐぁ――――」

「げご――――」

 

 森の方の地面から突如として火柱が発生し、男のものと思われる断末魔の悲鳴が聞こえた。

 今のでどれだけの人が命を落としたのか、それすら分からない。声だって聞こえたのは二人だけ、多分最低二人が死んだとしか言えない。

 ただ死んだのはミルフィオーレファミリーの人間だというのは分かった。

 

「さっきの鬱陶しい結界は使わせない」

 

 竜体と化したツナが本体であるアルビオンの竜体を震わせ、死ぬ気の炎の衝撃波を放つ。

 凄まじい破壊力を秘めたそれは地面を波打ち、液状化した地面からミルククラウンが発生する。

 周囲の木々を薙ぎ倒し、ツナを中心に島が破壊されていく。

 乱暴で乱雑で無差別でただ力を振り回しているだけなのに、シモンファミリーの聖地が原型を留めず更地に変えられていく。

 

「くそっ! 化け物め!!」

「何よあれ! 桔梗の修羅解匣以上に人間としての原型を留めてないじゃない!」

 

 隠れていたんだろうマーレリングを推定白蘭の守護者達が(フレイム)シューズから炎を噴射して現れる。

 マーレリングの守護者だけじゃない。それ以外にも何人、何十人も同じような格好をした連中が姿を現している辺り、今のツナを打倒する為に色々と作戦を組んだのだろう。

 予想外だったのはここまで人間を辞めていた事だろう。

 でも、全くの無意味じゃない。

 

「今のツナはダメージを受けて酷く弱ってます! 今ならネガ・ヒストリーの影響を無視する事が出来ます!」

「ねがなんとかなんて言われても分かんないわよ! もっと分かりやすく説明できないのあんた!!」

「人類が作った全ての物の干渉を無効化出来る、要するに絶対無敵のバリアです! 唯一の例外が7³(トゥリニセッテ)やヘルリング、そして私が作ったエデンリングの死ぬ気の炎を帯びた武器だけです」

「ふっっっっっざけんじゃないわよ!! 見た目も化け物なのに持ってる力も怪物じゃない!!」

 

 雨のマーレリングを着けた水色の髪の少女の叫びに共感する。

 確かに今のツナは言った通り怪物だ。だけどビーストなんてこんなものだ。私達から見れば反則であったとしてもビーストからしたら当たり前の事。

 むしろ今の状態のように倒せるようになってるだけでも十分だ。

 それにチェッカーフェイスとの戦いのせいで炎の出力もガタ落ちしてるし、攻撃力も落ちている。

 今この機会を逃さなければ私達は未来を勝ち取る事も出来ない。

 

「でも良い事を聞いたよ。今なら僕ら以外の攻撃も通じる。それなら、数の暴力で叩く事にするよ」

 

 白蘭がそう呟くと空を見上げる。

 私達も釣られて視線を上に向けると上空に巨大な装置のようなものがあった。

 

「あれ、何ですか?」

「僕達ミルフィオーレファミリーが開発した転移装置さ。夜の炎と違って使用するのに莫大な量の死ぬ気の炎が必要だけど、その分大規模な転移が可能なのさ。そして、その転移に使う死ぬ気の炎は、きみのを使わせてもらうよ」

 

 死ぬ気の炎を動力源とするミルフィオーレファミリーが開発した転移装置はツナの炎を吸収する。

 出力が落ちたとしても今のツナの死ぬ気の炎は莫大だ。

 転移装置の仕組みがどうなってるかは分からないけど問題なく起動出来る筈だ。

 

「今ここに居るミルフィオーレの人間は(リアル)6弔花以外にはAランク級が百人しか居ないけど、新しい本部には一人につき五千人の部下と残りのAランク級が待機してるんだ。それだけの人数が居れば今のきみ相手でも対抗出来る――――」

 

 白蘭の言葉が最後まで紡がれる事は無く、上空を浮遊していた転移装置は轟音と共に爆発した。

 原型が欠片も分からなくなる程木っ端微塵になった転移装置に白蘭は、ミルフィオーレファミリーの人間は唖然とする。

 期待していた分損をした気分だ――――等と宣うつもりは無い。

 さっきの高度な七属性の結界に亀裂が入って自壊した時点で察しはついていた。

 全てが偶然ということだってあるかもしれない。けど、時間が無い状況で明確に邪魔な組織があるなら、裏切者やスパイを仕込ませて肝心な時に爆発させた方が都合が良い。

 入江正一という前例が居る以上、ありえない話じゃない――――!

 

「残念だったな、折角の転移装置が壊れて」

「――――白拍手!」

 

 六つある頭部の一つが巨大な火球を放ち、それを白蘭は両手で叩き潰す。

 白拍手、そういう名前の防御技なのだろう。

 見た目の呆気なさと名前の単純さに騙されそうになるけどかなり防御力が高い。ただ反動も強いのか、もしくはツナの攻撃力が高過ぎるせいか、たった一発防いだだけで白蘭の手は血だらけになっていた。

 

「白拍手はどんな攻撃でも防ぐ事が出来る無敵の防御技、の筈なんだけどなぁ」

「身体が塵も残らない攻撃を防いで血だらけで済んでいるんだ。十分だろ。じゃあ、後百発防いでみるか」

「っ、白拍手!」

 

 降り注ぐ火球の数々、それを白蘭は何度も白拍手をして防ぐ。

 両手を叩く度に血が飛び散る。あの様子では私の奥の手が発動するまで時間を稼ぐ事なんか出来ない。

 持って10秒、残り時間は後45秒。早いようで長く、私達の命は吹けば飛ぶようなものだ。

 

「バミューダ。少し話があります」

「何だい?」

 

 白蘭が必死で食い止めている中、私はバミューダと話をする。

 告げた言葉は少ないものの私の意図を察したのか、バミューダは頷いて距離を取った。

 

「開匣――――!!」

 

 明確な死が迫っている白蘭を助け出す為にミルフィオーレファミリーの人間達が匣兵器を解放。

 雨属性の炎を纏った巨象(マンモス)が、雲属性の炎を纏ったヴェロキラプトルの大群が、雷属性の炎を纏ったブラキオザウルスが、嵐属性の炎を纏ったアロサウルスが、霧属性の炎を纏ったメガネウラが、晴属性の炎を纏ったパキケファロサウルスがその巨体を生かしてツナに攻撃する。

 竜体になっているツナよりは一回り程小さいがそれでも巨体である事には変わらない。

 続けざまに仕掛けられた攻撃にツナは態勢を崩し、そのまま吹っ飛ばされた。

 

「今だ!!」

「うぉおおおおおおおお!! ミルフィオーレ舐めんじゃねぇ!!」

 

 吹っ飛んだツナに向かって真6弔花と呼ばれた五人以外のミルフィオーレファミリーの兵士達が匣兵器を使い攻撃を仕掛けていく。

 匣アニマルや武器を持った彼等の攻撃はツナの竜体に当たり、爆発を引き起こす。一つ一つの攻撃は死ぬ気の炎と鱗に阻まれてダメージを与える事は出来てない。

 けど、全く聴いていないわけじゃない。

 

「これでもくらいやがれぇ!!」

 

 兵士の一人が雨属性の匣を開匣し、出現した巨大なシロナガスクジラがツナを飲み込んだ。

 今のツナよりも遥かに大きい雨シロナガスクジラはそのまま空中を浮遊し、遠くへ行こうとする。

 しかしそれも長くは続かず、巨大な身体が泡立つかのようにボコボコと膨れ上がり爆散した。

 

「――――この程度か」

 

 四散したシロナガスクジラの血と肉の雨を浴びながら、ツナは吐き捨てる。

 

「悪くは無い、悪くは無かったよ。ただこの程度じゃあ時間稼ぎにしかならない」

 

 そう呟くと同時にツナの身体についている鱗に死ぬ気の炎が灯り、放たれる。

 ただそれだけでブラキオザウルスの胴体が吹っ飛んだ。

 大空七属性の中で最も防御力に秀でた雷属性の匣アニマルが、それも古代の存在である恐竜の匣兵器がたった一発の攻撃で原型を留めないぐらいに破壊された。

 

「この程度で驚くなよ。お前達が乗り越えなくちゃいけないのはこの程度の攻撃じゃ傷一つつかない怪物なんだ。オレ程度で怯むな」

 

 ツナがそう言った瞬間、あの巨体が一瞬で消えた。

 そして、ミルフィオーレファミリーの兵士達が宙を舞った。

 呼び出された匣アニマルや武器も木っ端微塵に砕け散り、兵士達も殆ど死んだ。

 生きているのも居るけどもう戦線復帰は不可能だ。

 と、いうか分かってたけど人の姿の時よりもずっと速い――――!

 

「じゃあ、オレも死ぬ気でお前達を倒すよ」

 

 翼を羽ばたかせるツナを見て、戦闘は次のフェーズに進んだことを理解する。

 残り時間30秒。あまりにも長かった。

 

   +++

 

 最初から全力で戦えば勝負は一瞬でついていた、なんてのはただの負け惜しみだ。

 自爆寸前のチェッカーフェイスなんていう爆弾を取り込んで自滅仕掛けているし、そもそもアルターエゴを三体も産み出すという無茶をし続けている。正直もっと弱体化していてもおかしくはない。この程度で済んで良かった。

 とはいえ、余裕が無いのもまた事実。

 アルトリアの奥の手、宿願接ぐ希望の剣(ホープウィル・キャメロット)のチャージが完了するまで残り30秒。

 竜体になった事で的が大きくなった為、回避は難しい。

 それでも速度そのものは落ちてないから攻撃を撃たれても回避する事は容易だ。

 しかし、超直感が警鐘を鳴らしている。アルトリアの奥の手を撃たせてはいけない。

 回避ではなくそもそも発動させちゃダメという結論を出している時点で、アルトリアは自身に特攻が乗る攻撃を確実に当てる方法があるということ。

 故に結論は一つ――――30秒を前に全員倒す。

 

「DRAGO BURNER」

 

 六つの首それぞれからX BURNERを放つ。

 現時点で出せる最大出力、威力だけならこの場に居る全員を三回殺してもなお有り余る破壊力。

 既に対粛清防御を剝がされえている今の皆には防ぐ事は出来ない――――その筈だった。

 

「渦転斬!!」

クラゲ・バリア(バルエーラ・メドゥーサ)!」

SISTEMA(スィステーマ) C・A・I!!」

 

 鎮静の特性を持つ武とブルーベルの二人が先に防御し、続けて隼人の匣兵器のシールドが展開される。

 二つの雨属性のシールドは一瞬だけ綱吉の攻撃を受け止めた後、そのまま貫かれる。しかし、鎮静の特性によって威力が大幅に減衰した攻撃は隼人の展開したシールドに防がれ、退避する時間を稼がれた後に破壊した。

 残り時間20秒。猶予は残されていない。

 逃げ延びた三人を倒すべく再び剛の炎を放とうとする。

 

「させませんよ!」

 

 追撃を仕掛けようとした綱吉の前に夥しい程のスピノサウルスの首と雲ハリネズミの球針態が殺到する。

 恐竜スピノサウルスの噛み付きと増殖したハリネズミが綱吉の態勢を崩し、死ぬ気の炎のブレスを上空へと無駄打ちさせられる。

 

「沢田綱吉。調子に乗り過ぎたね」

 

 そして、恭弥の雲ハリネズミが手錠に変化して綱吉の身体を拘束した。

 ただ拘束しただけじゃない。手錠の内側に何やら植物のようなものが侵入していて、それが綱吉の身体の自由を奪いつつ手錠そのものの強度を高めている。

 

「っ、ボンゴレ匣…………!」

 

 使い熟せるわけが無いと高を括って渡した匣兵器。

 それを10年前から来たばかりの恭弥が使い熟している理由。

 10年後の世界という環境と時間を操作する事が出来る綱吉の特性が重なった事による共鳴ともいうべき現象。普段ならばそういった事象が発生する事は無い。だが今の綱吉は時間の操作を行う事が出来ない。

 よって、10年前の世界からやって来た人間は急速にレベルアップする。

 この時代の自分の力を先取りする形で――――!!

 

「くっ、この程度で…………!」

 

 力任せに全身を拘束する手錠と植物を強引に引き千切る。

 いかに原型のボンゴレリングの炎を受けたボンゴレ匣であろうと、今の綱吉には時間稼ぎにもならない。

 稼げたとしても1秒が限界だ。だがここに居る者はその1秒があれば動く事が出来る者ばかりだ。

 

「哀しき者よ」

 

 そして、目の前に現れたトリカブトが修羅開匣した。

 トリカブトの修羅開匣を直接目で見てしまった綱吉は超直感すら封じる幻覚に囚われる。

 視界が滅茶苦茶になり天地がどっちにあるのかすら分からなくなる。

 

「その程度の幻覚が今更効くか!!」

 

 綱吉は死ぬ気の炎をマイナスのエネルギーに変換し、冷気として全身から放出。

 死ぬ気の炎とは正反対、真逆のエネルギーによって修羅開匣していたトリカブトの炎が対消滅し幻覚が強制的に解除させられる。

 修羅開匣は全身を匣兵器にするもの。それによって全身から死ぬ気の炎を出しているに等しい状態である。そのような状態で炎が対消滅すれば当然のように身動きが取れなくなり命の危機に見舞わられる。

 その隙を綱吉が見失う事は無く、トリカブトを頭部ごと本体の仮面を破壊した。

 

「残り、15秒…………!」

 

 状況は良くない、追い詰められている。

 分かっていた事ではあった。時間が無いから無茶な改造をして、人手が足りないからといって自分の感情や記憶を削ぎ落して三体のアルターエゴを産み出した。

 身体はボロボロで今にも爆発しそうだ。そんな状態でマイナスエネルギーの放出なんて真似をしたせいで負担が掛かり過ぎた。

 もう冷気の放出や吸収も出来ない。

 

「ようやく焦りを見せたな、沢田綱吉!!」

「…………っ、バミューダ」

 

 身体を拘束していた植物と手錠を破壊した綱吉が次に見たものは、複数の夜の炎のゲートを潜って加速しているバミューダの姿だった。

 ゲートを潜る度に加速している光景を見て、それがバミューダの奥義であると理解する。

 あれを食らったら不味い、そう判断した綱吉は速度がこれ以上上がる前に潰そうとする。

 その瞬間、世界が変わった。

 破壊され尽くした大地は南国にあるようなビーチに、荒れ狂う空は穏やかな太陽が昇る青空に。

 空想と現実を、内と外を入れ替える大禁呪。

 

「固有結界、混沌揺蕩う水平線(ケイオス・ホライゾン)

「白蘭…………ッ!」

 

 以前の戦闘では一方的に打ち破った白蘭の固有結界が展開される。

 能力は不明、この時代の自分も分からなかった。だがボンゴレリングの継承者である世界の法則を超越する能力を持っているのなら、マーレリングの適合者である白蘭もまた世界の法則を超越する能力を持っている筈。

 そしてその予測が合っていると言わんばかりに空間が歪み始めた。

 

「今だ! 綱吉クンにありったけの攻撃を!!」

「てめぇに言われるまでもねぇ!」

 

 白蘭の指示にある者は従い、ある者は反発しながらも自分に出来る最大威力の攻撃を放つ。

 マーレリングの守護者は修羅開匣した状態になり、柘榴は両手に集めた嵐の炎を放ち、ブルーベルは巨大なアンモナイトに雨の炎を纏わせて叩き付け、デイジーは全身に灯った晴れの炎で身体を再生させながら自壊前提の特攻をし、桔梗は複数のスピノサウルスの口から雲の炎を連射する。

 ボンゴレリングの守護者はこの時代の時間軸と同期した事でボンゴレ匣を使えるようになり、エデンリングの武器とともに最大の攻撃を放った。

 隼人はアーチェリーに変化したフレイムアローに双剣となったエデンリングを装着し、五属性の矢を撃つ。

 武は投擲した三本の小刀に二本の刀を使って放った六体の雨の炎の燕を纏わせる。

 ランボはシールドに変化したボンゴレ匣の雷の炎で、クロームは魔レンズへと変化したボンゴレ匣の機能を行使して有幻覚となった火柱で、了平はエデンリングを装着した状態でボンゴレ匣の肉体活性で強化された拳で、恭弥は雲ハリネズミで攻撃した。

 リボーンは自身の必殺技である晴れの銃弾を、ラルは霧の炎が込められた炎弾で追撃し、最後に白蘭は空間の歪みから取り出した巨大な塊に死ぬ気の炎を纏わせてツナにぶつけた。

 一つ一つの攻撃は大したことは無い。纏まっても大したことは無い。

 鱗は貫けず、薄皮一つまともに断てない。

 

――――それなのに、不思議と痛かった。

 

「終わりだ! 沢田綱吉――――!」

 

 光の速度まで加速したバミューダは皆の攻撃を受け続けている綱吉の頭上に出現したゲートから攻撃しようとする直前、綱吉は自身の力を解き放った。

 

「――――未だ知らぬ、星の終末(サタンハート・アルビオン)

 

 竜体と化した綱吉の身体から物質化した死ぬ気の炎を全方位に放ち、それと真正面からぶつかり合ったバミューダの右腕と左足が消し飛んだ。

 その衝撃によって空間は歪み、世界が崩壊する。

 サーヴァントの宝具として分類するのならば対界宝具に分類するこの技により皆の攻撃はかき消され、それを上回る暴威によって打ちのめされる。

 展開されていた固有結界が砕け、皆が絶叫を上げながら元の世界へと投げ出された。

 

「ぐぁ、うぅ…………」

「くそっ、リングが…………」

 

 今の攻撃によって霧を除いたマーレリング、ボンゴレリングともに全て破損して地面に転がっていた。

 綱吉が獲得していた雷のマーレリングも綱吉の手から離れて壊れている。

 結果だけでいうなら戦闘要員の無力化に成功したと言っても過言じゃない。

 

「あっ」

 

 パキン、何かが割れる音がした。

 よく見れば身体の至るところに亀裂が発生し、そこから死ぬ気の炎が溢れている。

 

「もう、こっちも限界か」

 

 身体に無茶をさせ過ぎたせいで今にも崩壊しそうだった。

 だがもう邪魔する敵も居ない。残り時間5秒、勝敗は決した。

 

「これで、終わりだ…………!」

「ああ、お前の敗北でなっ!!」

 

 威力を高めているアルトリアに向かって手を伸ばそうとした瞬間、鎧を身に着けた巨大な骸骨姿の剣士が真横から綱吉を襲撃した。

 

「なっ、お前は…………幻騎士か!」

「どうだ沢田綱吉!! オレは捨てたぞ!! 下らん甘さも、誇りも!!」

 

 どす黒い霧の炎を纏ったその敵、幻騎士は巨大な化け物の姿を晒しながら複数の斬撃を発生させる剣で攻撃する。

 その手には霧のマーレリングと残像骨(オッサ・インプレッショーネ)のヘルリングを身に着けていた。

 

「お前がトリカブトを殺してくれたおかげで、オレが白蘭様の真6弔花に――――」

「邪魔だ!!」

「ぐはぁっ!!?」

 

 歪んだ優越感のまま剣を振るう幻騎士に尻尾を振り回す事で対処し、綱吉はアルトリアに視線を向ける。

 残された時間は――――もう無い。

 

「聖剣抜刀、ツナ…………これで終わりです、宿願接ぐ希望の剣(ホープウィル・キャメロット)!!」

 

 最大までチャージして放たれた凄まじい程の魔力が込められた複数の槍が放たれる。

 ホープウィル・キャメロット。対神に特化したこの魔術は神霊や天使を取り込んだ今の綱吉に対し特攻ともいえる効果を発揮する。

 この場に居る者の中で、二体のアルターエゴに抑え込まれているグランドセイバーと同様に自分に有効な攻撃だった。

 故に当たるわけにはいかない。

 綱吉は身体を翻してアルトリアの攻撃を強引に回避する。

 勝った――――そう思う綱吉の思いとは裏腹にアルトリアの攻撃は夜の炎のゲートに吸い込まれた。

 

「悪いけど、手足が無くなったくらいで戦えなくなったわけじゃないんだよ」

 

 そう呟くバミューダの言葉を聞き、綱吉はある事に気付く。

 バミューダが使った夜の炎のゲートがまだ消えずに残っていた事に。

 ゲートに吸い込まれたホープウィル・キャメロットは加速する。その速度は今の自分では回避出来ない程に上がっていく。それでもダメージを負っているせいか、夜の炎のゲートを長時間維持する事は出来ず綱吉の視界から消える形でゲートは消失した。

 

「くそっ!!」

 

 ゲートを見失った以上、動き回らなければ回避出来ない。

 そう判断した綱吉が空へと逃れようとしたところで、10年後の六道骸の姿を見た。

 憐憫が籠った視線と目が合い、何故ここに居るのかという思いが胸中を支配する。

 そして気付く。骸が幻覚を使っている事を。

 綱吉の目の前に夜の炎のゲートが現れる。が、それが幻覚であると超直感が告げていた。

 超直感によってそれが罠であると理解していても判断が遅れてしまい、ゲートから出て来た複数の槍が綱吉の身体を貫いた。

 

   +++

 

 巨大な魔法陣とも、光輝く虹の花とも言える爆発が広がった。

 ホープウィル・キャメロット。対神に特化したこの攻撃は今のツナにとって有効な攻撃。

 それを夜の炎を使って加速させ、骸が上に幻覚を重ねた事で油断してしまったツナに直撃させることに成功した。

 もう戦える人は居ない。私も、この攻撃のせいで身体がボロボロだ。

 

――――だから頼む、これで終わってほしい。

 

 光が次第に消失していき、爆心地にて仰向けになって倒れているツナの姿を見る。

 竜の身体から人の身体に戻っていて、全身に亀裂が走っていて罅だらけだ。

 力無く倒れているその姿に力は無く、意識を失っているようにも見える。

 

「お父様!?」

「嘘だろ、あいつ負けたのか!?」

 

 オルタを抑え込んでいた二人のアルターエゴが驚愕の声を上げる。

 そして、明確に出来たその隙をオルタが見逃す事は無く、倒れているツナに一直線に向かって走り出した。

 彼と目的が一致しているわけではないから止めなくちゃいけない。でも、今の私達にはどうする事も出来ずオルタの刃は振るわれた。

 だがその刃がツナを傷付ける事は無かった。

 新たに現れた巨大な本を持った少女がオルタの攻撃を受け止めたからだ。

 

「…………悪いけど、これは回収する」

 

 新たに現れた、三体目のアルターエゴと思わしき少女はオルタの斬撃を弾いてツナを連れて逃げ出す。それに乗じて他の二人も少女の下に移動してオルタを迎撃して距離を取る。

 やはりと言うべきか、全身が死ぬ気の炎で覆われていて女の子であるという事しか分からない。

 本を持った少女はオルタとの間に距離が出来た瞬間、夜の炎のゲートを作り出してこの場から消え去ろうとする。

 その直前、動けなくなったツナが口を開いた。

 

「…………認めるよ。今回はオレの負けだ。だから選択の機会をやる」

 

 ツナは酷く悔しそうに、認めたくないと言わんばかりに自身の負けを認める。

 だけどその瞳の戦意は全く消えていなかった。

 

「半年、ORTが来るまでの時間…………オレのプランを受け入れるか、オレと戦って負けるかのどちらかを選べ」

「…………一緒に戦うって選択肢は無いんですね」

「無い。今のオレ相手にここまでズタボロにされているんだから。勝つことが出来てもこんな有り様じゃ話しにならない」

 

 本当にその通りだ。私達はズタボロになっているツナに防戦一方だったんだから。

 それでも、私はツナのプランを受け入れられない。そんな私の意図を察したのか、ツナは苦笑して呟いた。

 

「もし、他の選択がしたいのなら次にオレと戦う時までにもっと強くなきゃダメだ」

 

 ツナはそう言うと三人のアルターエゴに連れられ、夜の炎のゲートの中へと消えて行った。




次回から修行篇開幕。
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