キャストリアに転生したが原作を壊してしまった 作:霧ケ峰リョク
「厳密には英霊レベルの戦闘力を獲得して貰う、の方が正しいですね。どちらにしろ強くなるのは必要最低限なんですが」
正直なところ今の彼等でも多対一ならサーヴァントにだって勝つ事が出来る者も居る。
だけど求めているのは人外、化け物を倒す事が出来る英雄レベルの強者だ。
「これは具体的な方法が存在しないので一先ず身体や技を鍛えつつ死ぬ気の到達点に至るのを目的にして下さい。そしてそれを超える事も目標の一つです」
「待て。到達点は死ぬ気の境地だ。それを超える事なんて出来る筈が無い」
「それをやれっていってるんです。ツナやそこに居る初代は零地点を突破してマイナスの境地を編み出した者。既存の枠組みに囚われてちゃ絶対に勝てない」
多分だけど、ツナは到達点に至っているし既に超えている。
限界を超え、それでも足りなくてビーストへと成り果てたのだから。
いや、違う。到達点を超えてしまったからビーストになってしまったんだろう。
「まあ到達点を超えるのは無理難題でしょうから先ずは到達点に至るのを優先してくださいね」
正直到達点でも半年以内に会得出来るかは怪しいところだ。
それでもやらなきゃ土俵に上がれない。
「そしてそれと並行して私は貴方達が使う武器を、リングを可能な限り強化します。砕かれたボンゴレリングやマーレリング、そしてその他のリングをバージョンアップして対ビースト用に仕上げます」
「死ぬ気の到達点に武器は不要だ。いや、そもそも極端に上がった炎の出力に耐えられる武器が存在しない」
この中で唯一、死ぬ気の到達点へと至っているバミューダが説明する。
死ぬ気の到達点は死ぬ気の極致、これに至った者は莫大な力を使う事が出来る。
ただしその欠点として極端に上がった死ぬ気の炎に武装が耐えられなくなるのだ。それは死ぬ気の炎にあった武器でも例外は無い。
よって到達点に至った者の戦闘手段は徒手空拳に限られる。武器を使い捨てにするつもりなら使う事も出来るだろうが、到達点に至った時点でそんなものを使わなくても戦えるくらい強いのだ。
基礎のゴリ押し、レベルを上げて物理で殴るの極致でもある。
「それを私が造ると言ってるんです。到達点の炎にも負けず、突破する武器を」
残念な事に到達点に至ってもビーストを相手に勝つのは不可能だ。
そもそも人間が獣を打倒するには武器が必要不可欠なのだから。
「まあこれも一週間くらい時間が掛かるのでその間に修行していて下さい」
「それは分かったが良いのか? ボンゴレリングやマーレリングを壊すのがお前の使命なんだろう?」
リボーンの問いは至極当然なものだ。
壊すって言ってたのに直してより強化するっていうのもおかしな話だ。
「ツナが大空のボンゴレリングを持ってる時点で他のを壊しても意味が無いですから。それに、私が本当に破壊したいのは
まあ物理的に壊す事でも達成そものもは可能だけど。
「ならアルコバレーノは死なないのか?」
「いえ、死にます。そもそも装置の機能としてアルコバレーノがあるんです。なので呪いを解かない限りは機能を壊しても死にますね」
「そう上手い話はないって事か」
「とはいえ、呪いさえどうにか出来れば死なないで済みますので大人しくしてて下さい」
チェッカーフェイスが仕組んだ呪いは酷く複雑で完全に解除するにはかなり難しい。
でも完全に解けないわけではない。呪いの仕組み上、おしゃぶりが起点になっていなければならない。
「多分、仕組みとしては第三魔法に近いですね。ボンゴレリングが所有者の死後、魂を保管するのに対しアルコバレーノは肉体そのものをおしゃぶりに紐づけられている感じかな? いや、どっちかっていうとおしゃぶりが本体で動かしている身体は人形に近いのかも」
「…………あんだけ敵って言っておいて、しっかり助ける方法も模索してんだな」
「――――っ」
リボーンの言葉に思わず言葉が出てこなくなってしまう。
「分かりやすい演技するのは止めろ。お前はお前が思っている以上に優しく甘い奴だ。ダメツナと同じくらいにな」
「…………別にそんなんじゃない」
私は言うほど優しくはない。
ツナみたいに敵であっても情けをかけたり、大切な人達が大部分を占めているとはいえそのついでに世界中の人々を守るって気持ちを抱けない。
依怙贔屓だってするしここに居る全員よりも本当はツナの味方になってあげたい。
でも――――。
「誰だって皆、心の底では救われたいって願いがあったから。私は、それから目を背けたくなかっただけなんだ」
「あっ…………」
私の言葉にユニが反応した。
一瞬、多分、妖精眼を持つ私だからこそ彼女の心に気付けたのか彼女は私から目をそらした。
分かっている。彼女が自分を犠牲にしてこの時代の悲劇を無かったことにしようとしてた事も。
そして、本当は死にたくない事も。
「だから今のツナは止めなくちゃいけない。ツナは、救われたいなんて欠片も思ってないから」
ミルフィオーレファミリーの人間を殺したのだって取り返しがつくからじゃない、引き返せなくなるからだ。
苛立ちと白蘭に対する怒りの八つ当たりも多分に含まれていただろうし、白蘭だけは純粋な怒りで排除しようとしたんだろうけど他は違う。
人を殺してしまった以上、目的を達成しなければただの人殺しになってしまうから。
後戻り出来ない状況に追い込まれれば、それ以外に道は無いと言い聞かせる事が出来るから。
「ツナの奴、最初から意見を変えるつもりなんか無かったんです。多分、殴って這いつくばらせて無理矢理言う事を聞かせようとしても絶対、自分の目的を達成しようとします。だから、彼が諦めるよう手段を奪います」
「どうするんだ?」
「ツナの目的を達成するには第三魔法が必要不可欠。だから、それを使えないようにすれば良いんですよ。だからオルタが現れたわけです。違いますか?」
「違わない。正解だ」
この時代のツナが自分自身でそれをやらなかったのは、本来なら10年前の時点でオルタに襲撃されて第三魔法が使えなくなったからだ。
そしてツナとオルタの会話から察するに第三魔法はツナの心臓が鍵になっている。
「ツナは本来、第三ではなく第五の魔法使い。ボンゴレリングの適合者であるという事を利用して第三魔法を強引に習得しているに過ぎません。だから、彼の霊基にダメージを与えて第三魔法を切除すれば私達の勝利になります」
「でもそれってオルタ君だから出来た事なんじゃないかな?」
白蘭の言葉に同意するように周囲の人達も頷く。
「その通りです。本来ならオルタをツナの所まで連れて行けばそれで終わりなんです。ただツナは三体のアルターエゴ、ツナの人格を切り分けて生み出したハイサーヴァントに守られてるからオルタは近付けない――――ここまで言えば分かりますね」
オルタの代わりにツナから第三魔法を取り上げる。
それがここに居る全員がやらなくちゃいけないことだ。
「到達点、リングのアップデート。そして霊基を切り裂く奥義を会得する。これが冠位家庭教師戦線です」
「成る程、お前の言いたいことは分かった。だが、その奥義をどうやって会得するかだ」
「さっき、グランドサーヴァントはこの世界に呼び出さないと言いましたが、
グランドサーヴァントならぬグランドシャドウサーヴァントと言ったところだ。
まあ人格が無いだけでその力は間違いなく冠位のそれだから下手すると死んじゃうけど。
でもグランドサーヴァントを家庭教師にしなければツナには届かない。
「以前、山本は英霊の過去の記録を見て奥義を体得した。今度はそれを全員に、記録ではなく本人を相手に戦って習得して下さい」
「分かった。だが到達点はその境地に入る事も難しいものだぞ? そうすぐに会得する事が出来るか分からねぇ」
「それでもやるしかないんです。呼び出すのに一ヶ月掛かってしまうので、その間にどれだけ強くなれるかが鍵になりますね。最低限、自我の無いグランドサーヴァントを相手に死なない程度の実力は身に付けて下さいね」
「そうか。なら早速修行を開始するぞ。今回は敵も味方も関係ねぇぞ」
リボーンの言葉に戦える人達はほぼ全員この場から離れていく。
何人かは不満だったみたいだが現状、他にやる事が無いし実力を上げる事が最優先なのは全員一緒だったから。
そして、戦えない人達がこの場に残り、私を見ていた。
「…………私の眼は嘘が見抜けます。見抜けるだけです。だから、ちゃんと話してくれなきゃ答えられないですよ」
「分かりました。ならアルトリアさん、少し話し合いませんか?」
この場に残った者を代表してユニが前に出る。
その眼は何か迷いがあるように見えた。