キャストリアに転生したが原作を壊してしまった 作:霧ケ峰リョク
その答えがこれです。
――――それは神、あるいは悪魔の手だった。
白蘭の悪辣な手腕が子供騙しに思えるくらいに酷く悍ましく、それでいて抗いがたいものだった。
分かっている、この手を取ってはいけない。
この手を取る意味を理解しているのか。これを手に取れば自分は姫を、仲間を裏切る事になる。
幻騎士を罵る資格なんて無くなる。否、全人類の敵になるのだ。
だから手を振りほどけ。今すぐ突っぱねろ。自分は彼女を守るのだと誓ったんだ――――。
『γ、ダメよ。絶対に…………』
だというのにγは手を振りほどけなかった。
ああ、なんて残酷な話だ。こんなものを差し出されてしまえばもう、世界の敵になるしかないじゃないか。
「ボンゴレ…………あんた、悪い奴だな。白蘭なんか鼻で笑い飛ばせちまうくらいの、大悪党だ」
γは双眸から涙を流しながら目の前に立っている沢田綱吉を罵る。
罵る事しか出来なかった。彼がやっているのは酷く最低な取引だから。
だが綱吉はその罵りを受けても毅然とした態度を貫いていた。
「そう、だね。オレは悪党だ。自分の愛しているものの為と言いながら今の世界を、そこで暮らしている人達を壊そうとしているんだから」
「望んでないって分かってるのにやるってのか? それがどんな意味なのか分かっているのか?」
「勿論分かってる。でも、仕方ないかなって思うんだよ。愛してしまったから、皆に何かをしてあげたいって思ってしまったから。例えそれが皆が望んでいない事だとしても、皆にどんな形でも生きていてほしいから。その結果、世界を滅ぼす事になったとしても、世界を敵に回すことになったとしてもオレはやるよ。それが愛してるってことだろ」
歪んでいる。とても歪んでいる。だが今のγにはそれがとても羨ましく思えた。
必ず守ると誓いながら何も守れなかった自分とは違う。彼は世界を敵に回してでもその煮えたぎるような愛を貫くつもりだった。
覚悟も決意も誓いも、全てにおいて完敗だった。
「悪いなボス。オレはあんたの命に背くぜ」
『γ…………』
「今度こそあんたを守って見せる。例え、世界の全てを敵に回したとしても」
綱吉から受け取った光の玉を力強く握りしめ、強く決意する。
間違っていたものだとしても、この奇跡を今度こそ守り抜くために。
それが自分の覚悟を、誇りを自ら踏み躙る行いであるとしても。
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アルトリアの手によって六つある歪みの一つに入ったのはリボーン、獄寺隼人、太猿、野猿、幻騎士、白蘭、ザクロ、そしてユニの8人だった。
歪みの中に入った8人は数秒ほど宙に浮くような奇妙な感覚に襲われながら、ゆっくりと地面に足をつける。
「ここは…………ジッリョネロファミリーの屋敷か?」
降り立った太猿はこの空間にある構造物を見て、かつて自分達が暮らしていた屋敷を思い出す。
そのものではないのだろう。が、あまりにもそっくりだった。
不気味に感じる、というわけではない。むしろジッリョネロファミリー出身者は妙な懐かしさすら感じた。そしてそれが意味するのはこの世界、この空間、この構造物。全てにおいて見覚えのあるそれはここのゲートキーパーが自分達の関係者であるという事実を示していた。
「――――来ちまったのか」
聞き覚えのある声を聴いてユニは一瞬身体を震わせる。
分かっていた。ここのゲートキーパーが誰なのかは予知で知っていたから。
「何を、何やってんだよγ兄貴!!」
「見れば分かるだろ。世界の敵さ」
野猿の悲痛な叫びにγは淡々と応える。
その表情はどこかやつれている様にも見えた。
「やぁγクン。久しぶりだね」
「…………白蘭か。お前は念入りにぶち殺せとボンゴレが言ってたぜ」
ニコニコといつもの様子で話しかける白蘭にγは興味無さげに呟く。
白蘭が率いるジェッソファミリーとユニが率いるジッリョネロファミリーが合併してからも敵意を隠そうともしなかった男とは思えない態度だった。
「それに、お前も久しぶりだな幻騎士。どうだ、笑えよ。このオレの無様さを」
「…………γ、一体何があったんだ?」
あまりの変わりようにミルフィオーレファミリー誕生の一件以来不仲になっていた幻騎士でさえ言葉を失っていた。
そんな中、ユニはγに尋ねる。
「γ、裏切った理由は…………お母さんですね」
「悪いな姫。弁解のしようがねえな」
ユニの言葉を受けてγは視線をある方向に向ける。
そこには光る小さい玉が宙に浮かんでいた。
「ボンゴレが言ったんだ。ボスの魂を渡すから協力してほしいってな」
「…………第三魔法か」
「詳しい事は分からねぇけどな。直接冥界に行って来て取って来たんだとよ。本当、人間じゃねぇよ。本物の神か悪魔の所業だ」
アルトリアから聞いた話ではあるが、死者の蘇生には魂の物質化が絡んでいるらしい。
ならばこういった方法で言うことを聞かせるのはありえない話ではないのだろう。
常識外れを通り越して人間業じゃない。人間の領域を踏み外している、人が手を出してはいけない所業だ。
「まあ白蘭よりはマシか。姫に劇薬を盛ったお前よりは沢田の坊主の方がずっとマシか。協力しなくても魂を渡してくれたらしいしな」
「だとしても最低な方法じゃねぇか。そんな方法を教えたつもりはねぇぞ」
「教わるとかそんなもんじゃねぇだろ。手土産に人の魂を死後の世界から取って来るなんて人類史始まってからあいつぐらいしかできねぇだろ。その人類史ももう終わるらしいけどな」
「確かにな」
それだけは同意する、とリボーンは頷く。
これなら裏切るしかない、裏切っても仕方ない。
死んだ人間との、死に別れた最愛の人ともう一度出会うなんて事をされたら世界だって敵に回すだろう。
「そういうわけだから悪いな。オレは世界の敵、お前らの敵だ。全力で倒させて貰うぞ」
「…………分かった、兄貴の目を覚させてやる!!」
逡巡の葛藤の後、飛び出した太猿が鎌を振り上げた。
「おい待て! いきなり飛び出すんじゃねぇ!!」
「っ、オイラも行くよ! 太猿兄貴!!」
「バカ! 少しは冷静になれ!!」
隼人は一人先走った太猿を止めようとするも一緒になって攻撃に加わる野猿に気を取られ、二人の行動を許してしまう。
「行くぜ!! 兄貴ぃ!!」
この戦いの為に新たに新造された嵐属性のリング。
太猿、野猿専用に造られたそのリングは二人が愛用していた
匣兵器時代とは比較にならない程の威力を込めたそれは以前のγでも防ぐ事すら難しい一撃だ。
しかし、否、当然のようにγは雷の炎のシールドを展開して二人の攻撃を防ぐ。その手にはめられていたリングは雷のマーレリングの偽物ではなく、禍々しさを感じさせるような悍ましい緑色のリングだった。
「まだだ! この程度じゃ終わらねぇ!!」
攻撃を防がれた太猿はリングから
匣兵器の頃からあった、相手の死ぬ気の炎を喰らい追尾する機能はリングと統合された事で強化されている。自身には絶対に当たらないという機能もだ。この武器ならγの死ぬ気の炎がどれ程脅威でも関係無い。その炎を吸収して攻撃する事が可能なのだ。
そう考えていた太猿に雷の死ぬ気の炎が襲い掛かった。
「がっ――――」
「悪いな。その武器の事は知っている。対処の仕方もな。だが、今回はごり押しさせてもらうぜ」
全方位に雷の炎を放つ。ただそれだけの行いで太猿は感電する。
大空七属性の中で唯一、電気に近い性質を有している雷の炎は太猿の行動の機会を奪い去る。
「太猿兄貴――――」
「野猿。敵を前に油断しちゃダメだろ」
兄がやられた事に気を取られた野猿の身体にγが振るった雷の炎を纏わせたキューがめり込んだ。
口から血を吐き出し、雷の炎によって全身がズタズタに切り刻まれる。
「
「やろっ、これでも喰らえ!!」
「っ、はぁっ!!」
隼人、ザクロ、幻騎士の攻撃がγに襲い掛かる。
しかし、3人の攻撃はγの周囲に展開される雷のシールドに防がれ、傷一つすらつかなかった。
「一応強化されたボンゴレリングとマーレリング、ヘルリングによる攻撃なんだけどな」
「ビーストリングつってな。その生成度はボンゴレリングやマーレリングを上回る代物だ。まあ無条件で使える代物じゃねぇし、リスクは凄まじいけどな」
γがそう説明するとリングから二体の黒い毛並みの狐が姿を現す。
普通の狐ではない。雷属性の死ぬ気の炎が灯っており全身に装甲のようなものがついている。そして何よりその尻尾は九本だった。
「コルル、ビジェット。
二体の
凄まじい炎を纏う鋭いキューを持ち、装甲の付いたビリヤード玉へと変化した武器を宙に浮かせながらγは言い放つ。
「悪いが加減は出来ねぇぞ」
γがそう言った瞬間、白蘭の左腕が宙に舞った。
「なっ!?」
「威力、速度が上昇した分制御が難しいな。だが、次は外さない」
地に倒れ伏した太猿と野猿を無視して、γは一歩前に踏み出す。
「大人しくしてるなら楽に殺してやるよ」
自分が一番好きな匣兵器は黒手裏剣だったりします。
序盤で出て来たけど結構強力な性能してますよね。
あれツナが相手じゃなかったら普通に勝ってたと思う。