キャストリアに転生したが原作を壊してしまった   作:霧ケ峰リョク

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決死

 それは一ヶ月が経った頃の出来事。

 

「アルコバレーノのおしゃぶりの強化、ですか」

「ああ、出来るか?」

 

 リボーンの相談を聞いて頭を悩ませる。

 出来る出来ないで言えば出来る。が、アルコバレーノのおしゃぶりはボンゴレリング

やマーレリング、現在のボンゴレギアとマーレギアとは異なっている。

 と、いうのもおしゃぶりはアルコバレーノの身体や魂と密接に繋がっているからであり、厳密に言えばおしゃぶりの方が本体でもある。例え殺されてもおしゃぶりが無事なら大空のアルコバレーノが命の炎を注ぎ込む事で復活可能なのもそれが理由だ。

 だからこのまま強化する為におしゃぶりを改造しようとしたら、間違いなく今のアルコバレーノ達を全員殺さなければならない。

 それはユニも例外ではない。

 

「呪いが解けていない今は無理ですね。やれなくはないですが」

「そうか」

「…………そう言えばアルコバレーノの権利って今どうなってるんですか? チェッカーフェイスってもう死んでますよね?」

 

 呪いを掛けた張本人が死んだ今、アルコバレーノは存在していられない筈だ。

 死後に呪いが強まるという事はあるけど、チェッカーフェイスのそれは彼が生きている間だけ。

 と、なると自然とおしゃぶりはチェッカーフェイスの手から離れてる事になる。

 彼を喰らって取り込んだツナが持っているのならこの話はそれまでになってしまうけど、そうでないなら――――。

 

   +++

 

 ビーストリング――――それは獣の眷属になるという契約の象徴。

 生成度EXランクのそのリングはこの地球上にある全てのリングよりも破格の性能をしており、各々の所有者に併せた武装を纏う事が可能。また、到達点に至った者でも破壊出来ずに武器として使用する事が出来る。

 ただし、その代償としてビーストの眷属として生殺与奪の権利を握られる事となる。

 裏切り等もっての外、一度人類史に背いた以上、彼等彼女等は人類の敵である。

 それを理解してもなお、γは契約を拒めなかった。

 

「白蘭様っ!? 貴様、γ!!」

 

 幻騎士は幻剣(スペットロ・スパダ)霧の2番(ネッビア・ヌーメロ・ドゥエ)を装着し、γに斬り掛かる。

 

骨残像(オッサ・インプレッショーネ)のヘルリングをバージョンアップさせたみたいだがマーレリングは着けてないのか? ボンゴレリングが修復されたならマーレリングも修復された筈だが」

「っ、黙れぇ!!」

「…………成る程、選ばれなかったのか」

 

 足から生えた刃で斬りつけるも、γの雷のシールドを突破出来ずに防がれる。

 それどころか逆に幻騎士の身体をズタズタに引き裂く。

 

「霧の炎は硬度が一番低く、雷の炎は単純に一番硬い。加えてこの出力差だ。お前一人じゃオレには勝てねぇよ」

「ぐっ、くぅ…………」

「ならオレ達ならどうだ! 嵐+雨、赤炎の雨(フレイムレイン)!」

 

 雷の炎によるダメージで膝をつく幻騎士の背後から隼人が姿を現し、左腕に付けた髑髏型の火炎放射器から嵐の炎の砲撃が放つ。

 迫る砲撃をよく見ると雨の炎が薄くコーティングされており、その砲撃の効果によって雷のシールドが貫かれ始めた。

 

「成る程、雨の鎮静で弱めてから嵐の分解で攻撃を通すか。よく出来た攻撃だ」

「それだけじゃねぇ!! 烈火マグマ(マグマ・インフィアンマート)!!」

 

 いつの間にか恐竜のような姿に変化したザクロの手から莫大な嵐の炎弾が放たれる。

 隼人の攻撃と合わさって威力が強まった事で、その攻撃はγの身体に届いた。

 

「やるな。流石はこの時代でボンゴレ10代目の右腕として恐れられただけはある。ビーストリングなんてものを持ってなければ、お前一人に負けてただろうさ」

 

 決して軽くはないダメージを与えた。にも関わらず、ビーストリングに灯った雷の炎は更に強まる。

 

「ダメージを受けてんのに何で炎圧が上がるんだよ…………!」

 

 距離が離れているにも関わらず感電しそうになる中、隼人はシールドで身を守りながら疑問を口にする。

 幾つかの例外はあるし、そもそも死ぬ気の炎は覚悟によってその強弱が決定する。しかし、それはあくまで精神が肉体を超越するような場合に限る。

 

「てかそもそもあれだけ炎を放出して何で平然としてんだ!!」

「…………エネルギー源が違うのか?」

 

 隼人の疑問にリボーンが合わせるように呟く。

 その呟きを聞いてγは思わず笑ってしまう。

 

「流石に気付かれるか。そうだ。オレはリングをはめているだけさ。その炎を灯して燃え上がらせるだけのエネルギーを、沢田の坊主が送ってるのさ」

 

 無尽蔵にエネルギーを使えるのなら人数に差があろうとも関係無い。

 どれだけ無駄遣いしてもガス欠せず、使えば減るという質量保存の法則というものが無い。

 故に考えなしに大技を放つ事が出来る。加えて使えるエネルギーの質も最上だ。

 

「第三魔法の永久機関か」

「そうだ。まあここまで出来るならオレはいらねぇんじゃねぇかと思っちまうがな、どうやらそれは出来ないらしい」

 

 いずれにせよ、γにとってそれは都合が良かった。

 今の精神状態でまともな覚悟を抱けるかは分からないし、心の何処かでブレーキをかけてしまい手加減してしまうかもしれない。なら呪いにも近しい誓約で強引に身体を動かしてもらえば良いのだ。

 

「つーわけだ。そろそろ眠っててもらうぜ。沢田の坊主の願いが達成されるなら殺さなくても良いらしいしからな」

 

 γはそう言ってキューを構えて玉を弾く。

 

「ショットプラズマ!」

「…………不味いね、γクンのこの攻撃は」

 

 弾かれた玉が空中で待機している別の玉に当たり、九つの玉がスパークし始める。

 そして――――、

 

「エレクトリック・タワー!」

 

 九つの玉に蓄積されていた雷の死ぬ気の炎が互いに繋がり合い結界を形成し放電、広範囲を攻撃する。

 

「ぐっ、ぁぁああああああああああああああ!!」

恐竜の皮膚(ダイナソースキン)が全く通じねぇ…………!!」

 

 隼人とザクロの防御を貫いて鋭い刃と化した雷の炎が襲い、その身体をズタズタに引き裂く。

 

「温存、はこの状況じゃ出来ねぇな。呪解! 形態変化(カンビオフォルマ)!」

「綱吉君を驚かせたかったんだけど、この状況じゃあ無理だね! 修羅開匣!!」

 

 傷付き行動が不能になった二人を尻目にリボーンと白蘭はそれぞれ行動に出る。

 リボーンの首につけていたおしゃぶりが外れ、赤子の身体から大人の身体へと変化。そしておしゃぶりからカメレオンのような動物が出現し、晴の炎へと変化してリボーンの所持していた銃と合体。

 緑色の装飾が施された近未来的な拳銃へと姿を変えた。

 白蘭の方はマーレリングが光り輝いたかと思った瞬間には死ぬ気の炎が全身を包み込み異形の姿へと変わる。

 人と龍を混ぜ合わせたかのような、鱗がびっしりと生えた龍人になっていた。

 γの攻撃によって失われた左腕も再生している。

 

「アルコバレーノの呪いが解けたのか? いや、呪いをかけた張本人のチェッカーフェイスがくたばってるのに死んでないって事はアルコバレーノの権利が他の誰かに移譲されてるってわけか」

「カオスブラスト!」

「ドラゴンブレス!!」

 

 γがリボーンの姿を見て驚愕している間にリボーンと白蘭の攻撃がする。

 複数に枝分かれして正確無比に急所を狙う銃弾、そして龍の頭部へと変化した右手から放たれる死ぬ気の炎の砲撃が殺到する。

 しかし、それらの攻撃を以てしてもγの防御を破る事は出来なかった。

 

「ビーストリングを持っていなかったら今ので死んでたぜ」

 

 無尽蔵の死ぬ気の炎、尽きる事のない無限のエネルギーはγに圧倒的な力を齎している。

 使っている人間がγである以上、出力の上限はある。しかし、デメリットと呼べるのはそれだけなのだ。

 攻撃の為に炎を使って防御が疎かになる事はない。

 常に最高のパフォーマンスを最大限の力で発揮出来るのだ。

 正確無比に弱所を突くリボーンや知識で対策する白蘭とは相性が悪い、否、誰が戦っても結果は変わらない。

 

「オレに勝ちたかったらそこの嵐の守護者のように複数の炎による連携か、オレの出力を上回る威力の攻撃を叩き込まなくちゃな」

 

 そう言ってγは死ぬ気の炎を広範囲に放出。

 残った二人に大量の雷の炎を浴びせて勝負を終わらせた。

 

「ぐぁ…………」

「これは、無理…………」

 

 最強の殺し屋であるリボーンも、この時代の覇者である白蘭も、現在の自分の雇い主である少年の右腕であるボンゴレの嵐も、その上で覆いかぶさってマーレリングの真の嵐の守護者も地に倒れ伏す。

 

「…………お前を倒しても、全然気が晴れねぇな」

 

 龍人の姿も維持出来ずに倒れる白蘭を見下ろしながらγは何とも言えないような表情で歯噛みする。

 こんな下駄を履かせてもらった状態で勝負をつけても今更だ。

 

「…………後は戦えない姫だけか」

 

 既に勝負は決した。

 もうこれ以上戦う理由は見いだせない。精々白蘭を殺すくらいだろう。

 そう思いながらγは視線をユニの方に向け、驚愕して目を見開いた。

 

「っ、それは…………聖槍か!?」

「…………知ってたんですね」

 

 視線の先に居るユニは光り輝く馬上槍、聖槍ロンゴミニアドを構えている。

 既に死ぬ気の炎は極限まで収束しており、後は放つだけの状態だった。

 

「あんの楽園の妖精! 何つーもんを姫に持たせてやがる!!」

「違います。私は私の意思でこれを持ちました。その結果、どうなったとしても…………!」

「っ、それなら今のオレの防御を貫けるだろうぜ。だが、それを当てられるかどうかはまた別の話だ!!」

 

 ロンゴミニアドの威力は話しを聞いただけでしかないが凄まじいものだという。

 だがそれはまともに当てられた場合の話だ。

 直撃すれば間違いなく致命傷になるが僅かにでも軌道を逸らす事が出来たなら雷の炎のシールドで防ぐ事が出来る。それでもダメージは免れないが戦闘不能になるわけではない。

 それにそれだけの破壊力のある攻撃を無暗やたらに撃てば今戦闘不能で倒れている者も巻き込むことになる。

 

「――――当てられるさ。オレ達が兄貴を押さえとけばな!」

 

 攻撃ではなく防御と回避に力を割こうとしたγの耳に太猿の声がした瞬間、太猿と野猿の二人がγの身体を掴んで抑え込んだ。

 

「なっ、お前等…………何故!?」

「γ兄貴…………ビーストリングだか知らねぇが、力に振り回され過ぎだぜ。さっきのアルコバレーノが撃ったのは攻撃じゃねぇ、オレ達に撃ち込む為の特殊弾だ!!」

「だとしても姫が撃てるわけが」

「撃てるさ! この半年間で、姫だってしたくもない覚悟を決めたんだ!! 覚悟が出来ていないのはγ兄貴だけだ!」

「――――ッ」

 

 野猿の言葉でγは目を見開く。

 視線の先に居るユニは辛そうに目を細めながらも、覚悟を決めていた。

 

「っ、まだだ…………コルル、ビシェット!! オレを守れ――――」

「させるかよ…………嵐+晴、赤炎の晴(フレイムシャイン)!」

 

 ザクロの身体の下で倒れていた隼人が不規則な軌道で加速する弾丸を撃ち、γを守る為のシールドになろうと戻ろうとしていた九つの玉を狙撃する。

 

「なっ、お前…………まだ」

「ザクロの野郎が庇ってくれたんでな…………まだ動けるぜ!」

「今だ!! オレ達ごとやってくれぇ!! 姫ぇ!!」

 

 最低限の防御しか出来ず身動きも取れないγに向かってユニは聖槍を振るう。

 

最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)!!」

「…………これも、運命か」

 

 自らに迫る光の柱とも言うべき攻撃を前に瞳を閉じて受け入れる。

 全身に襲い掛かる衝撃を前にγは意識を保っていられずに身を投げ出す。

 パキン、とビーストリングが砕け散る音が響いた。




γが裏切るのとユニと戦わせるのは大分前から決まってました。
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