キャストリアに転生したが原作を壊してしまった   作:霧ケ峰リョク

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3月序盤の地獄を潜り抜けたらものもらいになっちゃいました。
皆も疲労をためて体調を崩さないようにね。


大混戦

「生きてますか?」

「…………まだ、ぎりぎり生きてるさ。まぁ、もうすぐ死ぬのには変わりないが」

「そう、ですね」

 

 ユニの眼下には身体の大部分を失ったγが倒れていた。

 これで何で生きているのか分からないくらいに、生命維持に必要なものが消滅している。もっと簡単に言うのなら胸から下が無くなっている。

 傷口から血が溢れるということもない、もう死んだも同然だ。

 この戦いは終了した。しかし、ユニの気が晴れることは無かった。

 単純な結果として、3人の死者が出た。

 太猿、野猿、ザクロの3人である。それ以外の人達は何とか生き残っているがダメージはかなり大きい。修羅開匣によって傷を治すことが出来る白蘭やザクロに庇われていた隼人はまだ戦闘が可能だ。しかし幻騎士とリボーンは戦闘に支障が出るレベルのダメージが刻まれていた。

 この場で無傷なのは自分だけ、その事実にユニは手に持っていたロンゴミニアドを強く握りしめる。

 多いか少ないかで言うのなら、単純な事実だけで見るのなら少ない方なのだろう。

 無尽蔵のエネルギーを使う事が出来る人類の敵を3人という少数の犠牲だけで倒す事が出来た。

 美談ではあるのかもしれない。だが当事者からしたら全てが地獄でしかない。

 死んだ3人の内、2人はユニが殺したも同然なのだから。ましてや家族のように思っていた大切な仲間で、戦っていた相手もユニやお母さんであるアリアが好きな人だったのだから。

 

「言い残したい事はありますか?」

「…………ねぇな。今更何を言ったところで、オレがやった事は消えねぇ」

「なら言い方を変えます。言い訳して下さい。何で裏切ったのか、納得するしない以前にちゃんと聞いておきたいんです」

「…………そう、か」

 

 γは力なく息を吸い込んで吐き出す。

 

「姫の事は大切に思っている。それは今でも変わらない。あの時、ミルフィオーレファミリーが結成する前に話した言葉は忘れない。オレも、姫の事を愛していた。けど――――」

 

 罪悪感と後悔に満ちた表情に変わる。

 

「ボスともう一度会った時、どうしても拒絶する事が出来なかったんだ…………!」

 

 大切な人との死別は誰もが経験する当たり前の痛みである。

 時間の経過だけが癒す事が出来るものの、それでも立ち直れない人だって居る。

 γは立ち直れる人間だった。もっと時間が経っていれば綱吉に協力する事も無かっただろう。だがその傷が癒える前、もしくは新たに傷が刻まれた状態で死んだ筈のアリアと再会してしまったのなら――――。

 

「悪い、姫…………オレは、ボスを選んじまった…………!」

「そう、ですか。ふられちゃいましたね」

 

 初恋は実らない、そんなジンクスがあるのをユニは思い出す。

 悔しい、という思いが無い訳では無い。それでも、γが母親と再会出来た事は素直に嬉しかった。

 もし、この怒りを向ける相手が居るとするならただ一人しか居ない。

 

「γ、お母さんは何と?」

「すっげぇ怒ってた。当然だ。オレがやってる事を考えればな」

「でも、嬉しかったんですよね」

「――――ああ。畜生、白蘭といい沢田の坊主と言い、奇跡を語る奴には碌なのが居ない。これじゃあ幻騎士の事を笑えねぇな」

 

 そう言って自嘲した後、γは息を吐く。

 

「沢田の坊主のところに行くにはビーストリングが6つ必要だ。このリングが結界を開ける為の鍵の役割をしている」

「6つ…………それは大空以外の属性を現してるんですか?」

「いや、雷と嵐と霧だけだ。他の3つは大空の7属性でも、大地の7属性でもない。ノックスが使ってる炎は復讐者(ヴィンディチェ)が使っている夜の炎と同じ色をしてたが、残りの2つは本当に分からない。色も白と虹色だったしな」

「ボンゴレⅠ世から聞いた大地の7属性とも違う、新たな属性の炎」

 

 バミューダは死ぬ気の到達点に至る事で第8の属性である夜の炎を生み出した。

 なら理論上は新しい属性の炎を作る事が出来るという事だ。

 

「オレが言えるのはそこまで…………これ以上は、もう無理みたいだ」

「γ…………」

「あっちでボスが待っている。話したい事があるなら話して来な」

 

 最後にそう呟くとγの身体は動かなくなった。

 自然と涙が溢れて嫌な気持ちになっていく。身体が、喉が、口が震えて声が出そうになる。

 それでも、ユニは堪えて母親の下へと向かう。

 

「…………お母さん」

『ユニ…………こんな形で再会することになるなんて、正直思いたくなかったわ』

「そう、ですね」

 

 本当に何て酷い話だろうか。

 自分の意思とは裏腹に流れ出した涙を拭いながら、ユニはアリアの言葉に頷いた。

 人間だった頃の姿は無い。光り輝く玉がそこにあるだけ。声しか聞こえない。それでもそこには確かに死んだ筈の、もう二度と会う事が出来ない母親が居た。

 もう二度と聞ける筈が無い声を聞きながら、ユニは涙を拭う。

 

「ごめんなさい。本当は再会を喜びたいところですけど…………」

『分かってる。沢田綱吉君についてよね。私も彼を止めたいと思ってる』

「はい。でも、今のままだと彼の下に辿り着く前に戦力を失ってしまう」

 

 γと戦っただけで此方側の戦力がかなり削られた。

 恐らくこれも狙いの一つなのだろう。単身で自分達の総力を上回れるだけの力を有しておきながら此方の戦力を確実に削って来る。辿り着いた時に待ってるのは万全の状態の綱吉と損耗し切った自分達という火を見るよりも明らかな結果だけだ。

 かといって現状に手を拱いていると時間切れで綱吉の目的が達成される。

 ならばどうするべきか。

 

「ゲートキーパーは全員、沢田さんから死ぬ気の炎を供給して貰っている。なら、その繋がりを断たれれば、ゲートキーパーの力は一気に弱体化する。でも、それをするには――――」

『分かってる。大空のアルコバレーノの奥義が必要な事もね。だから、私はここに居るって事も』

「お母さん…………」

『良いのよ。それよりもごめんなさい。貴女には辛い選択ばっかりさせてしまって』

「いいえ。私は、お母さんの子どもに産まれて幸せでした」

 

 そう言ってユニは大空のアルコバレーノのおしゃぶりを差し出す。

 涙はもう見せない。そう強く決意してユニは笑みを浮かべる。

 母親から教わった、皆を幸せにする為の笑顔を。

 

   +++

 

「――――どうやらそちらの陣営が力の供給を止める事に成功したみたいですね。人の事は言えませんが、大空のアルコバレーノを蘇らせてそのままにしておくべきでは無かったですね」

「…………(デイモン)

 

 ボンゴレⅠ世は異空間で佇むD・スペードを見て言葉を出せずに居た。

 既に肉体を失った彼がどうして再び肉体を得ているのか。恐らく自分と同じく第三魔法によって受肉したのだろう。

 しかし、その異形としか言えない姿は予想すらしていなかった。

 大地以外の覚醒したシモンリング全てを指にはめ、幻覚で作ったのだろう大空を除いたボンゴレギアを装着し武装を展開している。そして右手の中指にある禍々しいビーストリングが全ての武装を侵食して悍ましい姿に変えていた。

 メタリックな装甲の下に血管のようなものが浮き出て脈打っているその姿は不気味としか言いようがない。

 

「そこまで堕ちたとはな」

「ええ。この身は、魂は既に化外へと堕ち果てました。それは否定しない…………ですが彼はそれに見合うだけのものを私に授けてくれました…………!」

 

 狂気に満ちたDが叫ぶ。

 

「彼女の、エレナの魂…………! 私は彼に忠誠を捧げましょう!! それに彼は約束してくれました…………! 新たな星になった際、ボンゴレを統一国家にすると…………! とはいえ、彼は天体の卵になる以上、王になれないのは勿体無い話ではありますが」

「…………お前は、それで良いのか?」

「良いか悪いかで言うのなら悪いでしょうね。彼が自己犠牲なんかせずにちゃんとやれば、また話は違ったでしょうに…………ああ、その場合でもジョット、貴方の理想通りになる事はありませんが」

 

 敵意を隠さずに話すDに対し、ジョットは拳に炎を灯す。

 両者の決意を激しく燃え上がり衝突する。

 

「悪いと思っているのなら止めるべきだ!」

「悪い事だからといって止まらなくちゃいけない理由は無い!!」




初恋は実らない。
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