キャストリアに転生したが原作を壊してしまった 作:霧ケ峰リョク
取り敢えず四月中完結を目指したいけど、多分無理だよなぁ…………。
とはいえそれでも完結目指して頑張ります。
「――――うん、うちの負け」
スパナが呟いたその言葉により、全てのモスカが活動を停止する。
それぞれ武器に死ぬ気の炎を灯していた戦っていた、この場でゲートキーパーと戦っていた者達は呆気に取られた表情を浮かべる。
「…………良いのかい? 僕達の勝ちで」
そんな中、スパナと友人関係だった入江正一がこの場に居る者達を代表して問いを投げた。
沢田綱吉を守護するゲートキーパーの一人として、戦力を保有した状態にも関わらず勝負を自ら放棄するのは裏切りにも等しい行為だ。
いくら沢田綱吉がマフィアらしからぬ男とはいえ、裏切るような真似を許すとは思えない。
「うん。良いよ」
にも関わらずスパナはあっさりと肯定した。
「ボンゴレからも言われてるからね。無理して戦う必要は無いって」
「それはどういう」
「ORTとの戦いを想定してるうちとしては、ここで戦力を失うわけにはいかないから。まあ、他はどう考えてるのか知らないけど」
淡々と語るスパナの言葉に正一は毒気を抜かれるような気持ちになる。
「全てが上手くいくなんていうのはありえない。そもそも、ボンゴレがこんな無茶をしてるのだって上手くいってないからだ。だから、うちはうちの出来る事をしようと思ってる」
「なら僕達を手伝ってくれたりは」
「ごめん。それは出来ない。例え正一の頼みだったとしても」
冷たいわけではない、ただ事実だけを語る。
「ボンゴレの策が上手くいかなくても、ボンゴレが強くなる事はORTとの戦いにおいて有利に働く。それに上手くいくのならそれが一番だ」
「それは…………」
「うちもボンゴレが全面的に正しいとは思わない。でも今のそっち側よりは正しいと思ってる。仮にボンゴレに勝てたとして、戦力をすり減らした状態でどうやって次に備える? いや、そもそもどうやってボンゴレに言う事を聞かせる?」
スパナの疑問に正一は、この場に居るヴァリアーの皆が口を閉ざす。
「それなりの時間を一緒に過ごして来たけど、あれはかなりの我儘だ。自分のやりたくない事は絶対にやらない。だから殴って張り倒しても言う事を聞くなんて事は絶対にしない」
「だろうね。彼の事を知ってると本当にそう思うよ」
沢田綱吉という人間は非凡で平凡な人間だ。
どれだけ異常な状況に置かれようと常識を失わず、揺らぐことが無い確固たる芯を持っている。
だからこそ自分が正しい、それしかないと判断したら本当に止まることが無い。加えて今の状況なら猶更止まる事は出来ない。
「でも、だからって一人で勝手に決める事は無いと思うんだ」
敵対した事があるヴァリアーや六道骸一派なら話さないのも分かる。
ミルフィオーレファミリーは現在進行形でバチバチにやりあってたから相談するなんてもっての外だ。ミルフィオーレファミリーにスパイとして潜入していた入江正一に明かさなくても理解は出来る。
それでも、守護者や親しい人達全員に黙って一人で勝手に全てを終わらせようとするのはダメだろう。
「世界を滅ぼそうとする化け物なんかじゃなく沢田綱吉という一人の人間の友人として、彼を止めなくちゃいけないんだよ」
「…………まあ、ボンゴレが10年前から他の人に相談していればまだ話は違ったのかもしれない。でも、今となっては全てが手遅れだ」
「かもしれない。いや、スパナの言う通りだ。多分、結末はどう足掻いても変えられない。僕等は知るのが、あまりにも遅すぎた。でも…………」
正一は瞼を閉じてここに来る前の出来事を思い返す。
綱吉やアルトリアの言った通り、彗星のようなものが地球に近付いてきている。
その彗星が当たることは無いと言われているが、裏では世界各国がその彗星の衝突に備えているのが実情だ。しかし、その彗星がぶつかったとしても大きな災害が起こる程度の被害で済むとされている。
そう、その彗星のような飛来物が生命の天敵のような宇宙生物でさえなければ。
恐らく、この星に生きる生き物の大半は近い内に死ぬ事になる。
だからこそ――――。
「明日死ぬと分かってるのなら、好きにやったって構わないだろう?」
やりたい放題やって死のうとしている友達と喧嘩する最後の機会なのだから。
+++
――――アルクスにとって、沢田綱吉は生みの親であり倒すべき悪でしかなかった。
慈悲深くはある。優しくもある。普通に生きていれば何処にでも居るような一般人として埋もれ、その異常性が明るみに出る事は無かっただろう。
だがそうはならなかった。
慈悲深く優しいまま、以前と変わらない精神のまま沢田綱吉は沢山の命を奪う怪物になった。普通に生きる事が出来ないのに、世界を滅茶苦茶に出来る力を持っているのに、それでも前となんら変わらないままの精神のままだ。
そういう意味では、沢田綱吉は最初から普通では無い存在だったのだろう。
ただ普通に生きる事が許されなくて、埋もれることが許されなかっただけの話である。
同情する気持ちが無いわけでは無い。が、それとこれとは別だ。
それがアルクスというアルターエゴ。
ヘラクレス、セクメト、バッハと死ぬ気モードの時の綱吉を抽出して誕生したエゴである。
「
虹色の炎で形作られた九つのドラゴンレーザーが地面に生えたスピノサウルスの頭部を射抜く。
ただ射抜くだけじゃない。貫いた先から次の頭部へと攻撃が続いていく。
それによって無数にあったスピノサウルスの頭部が破壊され、薙ぎ払われていく。
否、それだけでは終わらない。
「っく、かすっただけでもダメですか…………!」
攻撃が当たったスピノサウルスの頭部から何かが競りあがってくるのを感じ、桔梗は繋がっている髪を自切する。
ヒュドラの毒矢。不死すら殺す神話の猛毒。
ヘラクレスの要素が入っているアルクスの矢にはヒュドラの毒が込められている。
超人でも即死、超人を超えた英傑であっても耐え難い激痛と苦しみに自ら命を落とす事を選択する程の猛毒だ。
血清があっても死は免れないその毒は桔梗の戦闘力を封じ込めていた。
それだけではない。髪を自切することで毒が回るのを防いでいるみたいだがそれでも完全に防ぐことは出来ていない。
ヒュドラの猛毒は確実に、着実に桔梗の身体を蝕んでいる。
加えて――――、
「がぁ…………は…………ぐぅううう…………」
「
「あ、あんなの当たったら死んじまうぞ!! オレでも無理だ!!」
晴のマーレリングの守護者であるデイジーは既に当たってしまっており戦闘不能。
同じ不死身の肉体を持つスカルも相性の悪さから完全に戦意喪失している。
よって、残る敵は三人。
雲のボンゴレリングの守護者、雲雀恭弥。
嵐のアルコバレーノの
そしてキャバッローネファミリーのボスである跳ね馬ディーノだ。
「はぁっ!!」
ディーノが振るうのは昔から愛用している鞭、エデンリングが変化した鞭剣、そして匣兵器である
大空の死ぬ気の炎を纏い、特性の調和によって比類なき切れ味を有するガリアンソードはまるで生き物の如くアルクスに迫る。
リボーンによって鍛えられた鞭さばき、そしてそれをサポートするスクーデリアの意思によって攻撃の軌道はヘラクレスの要素を有するアルクスを以てしても回避は不可能。
「
アルクスは自身の技、ヘラクレスの奥義を使用。
弓を振るってディーノの攻撃一つ一つを受け流し、最小限のダメージに抑える。
「マジか。今のを防がれるとは思わなかったぜ」
「っく…………しゃらくせぇ!!」
防ぐ事は出来ていない、そう言わんばかりに力任せに地面を蹴り砕く。
足場を砕いて自身を取り囲む敵の態勢を崩して、アルクスは反撃に入る――――。
「させないよ」
距離を取って矢を撃とうとするアルクスの左腕を恭弥が何時の間にか持っていた手錠がかけられ、思いっきり引っ張られる。
「ぐっ…………!」
持っていた矢を落とし、左腕にかけられていた手錠が増えてアルクスの全身を拘束。
手錠の内側から生えた刃がアルクスの身体を貫いた。
「がぁあああああ――――!!」
「やはり、思っていた通りですね」
激痛に叫ぶアルクスの前に降り立った風は死ぬ気の炎を収束させた拳で殴り貫いた。
穿った拳はアルクスを拘束していた手錠ごと貫き、アルクスを壁に叩きつける。
「貴女方アルターエゴは強力な存在だ。基礎的なスペックは我らが束になっても敵わない。ですが、圧倒的なまでに戦闘経験が欠けている」
アルクス、ノックス、マーネはつい最近沢田綱吉の手によって製造されたハイサーヴァントである。
構成要素はいずれも神霊や英霊といった強大な存在で、完全武装した軍人はおろか素手であらゆる脅威を跳ね除ける超人であっても届きえないだろう。
しかし、産まれたのがつい最近である為、経験というものが不足していた。
「降参しなさい。貴方では私達には勝てません」
「はぁ…………誰が、するかよ」
「…………貴女は、貴女達アルターエゴは産みの親である沢田綱吉を嫌っていると聞きます。何故、彼に従うのですか?」
「別に…………あいつに従ってるつもりはねぇよ」
口から血反吐を吐き出しながらアルクスは呟く。
切り分けられた感情から産み出されたものとはいえ、既にアルクスは沢田綱吉とは違うものだ。
自身の心に従って倒すという事を選択する事だって出来た。そしてその自由を沢田綱吉は許していた。にも関わらず、今も沢田綱吉に従っている理由は何故なのだろうか?
「あたしは…………何であいつに従ってるんだろうな?」
その理由をアルクスは分からない。他のアルターエゴも分かっていない。
だが、なんとなく予想は出来た。
沢田綱吉と違う存在といえど、この心は沢田綱吉の感情が分けられている。
ORTに対する脅威も、ORTが齎す絶望も、ORTによって奪われるも恐怖も、全てがアルターエゴの中に刻み込まれている。
そして、沢田綱吉が大切に思っている者がORTによって喰われて何も残らなくなるという恐れも。
ORTが全部壊してしまうのなら、どんな形であっても自分が守るんだという覚悟も。
「わっかんねぇよ。でも、わかんなくても、やらなくちゃいけないって思ったんだ」
間違っているのは分かっている。
それでもそっちの方が未来に繋がるのなら、あんな独りぼっちで後悔し続ける王様が居ない世界よりはずっとマシだと思うから。
「…………だから、やる。ここからが全力だ」
アルクスは死ぬ気の炎を全身から放出する。
沢田綱吉によって産み出された第10の属性、虹の炎は虹色に輝く死ぬ気の炎である。
アルコバレーノと関係がありそうな死ぬ気の炎だが実際のところ全く関係ない。
しかし、ある意味では大空のアルコバレーノの特性と似通っているとも言えるだろう。
何故ならその特性は――――。
+++
「っ、消えた?」
目の前から突如として消え去ったアルクスに風は目を疑う。
気配が完全に消えた。死ぬ気の炎でさえも。
幻覚で身を隠したわけではない。夜の炎で転移したわけでもない。
本当にこの世界から消えたとしか思えなかった。
「がっ」
「ぎゃっ」
背後から聞こえた桔梗とデイジーの声に風は視線を戦線から離脱した者達が居る場所に向ける。
視線の先ではアルクスが桔梗とデイジーの首を掴んで持ち上げていた。
「第10の炎、虹の炎の特性は透過。虹のようにこの世界から居なくなるのがあたしの炎の特性だ」
「何をして――――」
「はっきり言ってあまり強い炎じゃない。透過中は攻撃だって出来ないからな。でもそれは自分の身を守る事に使った場合だけ。自分の安全とか考えなければそれなりに強い攻撃にはなるんだぜ」
風の言葉を遮りながら自分の炎の特性をアルクスは語る。
そして桔梗とデイジーを離して捨てて、自身に鏃を突き刺した。
「
瞬間、アルクスの髪の毛が伸びて先端から大量のスピノサウルスの頭部が出現。
牙の先端から毒々しい液体を出しながら、アルクスは激痛に顔を歪ませながら呟いた。