キャストリアに転生したが原作を壊してしまった   作:霧ケ峰リョク

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肉食動物は恐ろしいですけど草食動物だって怖いですよね。


雲は流れ消える

射殺す百頭(ナインライブス)・竜毒群生《スピノヒュドラ》」

 

 アルクスの髪が変形したスピノサウルスの群れの口から毒々しい虹色のドラゴンレーザーが放たれる。

 これに当たってはいけない、掠っても死ぬ。そう直感した風、恭弥、ディーノの三人は攻撃を回避し、アルクスに向かって突貫する。

 

「来るか! 今のあたしは待ってればすぐ死ぬ命だぞ!」

「きみの炎の特性を聞いて防御するって選択取るわけないでしょ」

 

 ヒュドラの猛毒を自ら取り込んだアルクスの命はそう長くない。

 天つ風の簒奪者(リンカーネイション・パンドーラ)によって一緒に取り込んだ桔梗とデイジーの雲と晴の死ぬ気の炎、そして彼等の修羅開匣の特性も相まって毒はアルクスの全身を犯していた。

 持って20秒。否、下手したらもっと早いだろう。

 それでも今の三人には時間切れを待つという選択は存在しなかった。

 

「っち、やっぱりダメか…………!」

 

 駆けながらも双尾のガリアンソードで迫り来る叩き落そうとするが、刃はドラゴンレーザーをすり抜ける。

 アルクスの有する虹の炎の特性、透過。予測はしていたがその特性を帯びた攻撃は防御も迎撃も不可能だった。シールドを張って防ぐ事も、レーザーを弾いて受け流す事も出来ず、数秒後には逃げ場の無い防御不能の即死攻撃が自分達を圧殺する。

 故に、今ここでアルクスを倒すしか自分達が生き残る術は無い。

 三人は自分達に向かって迫るドラゴンレーザーの群れを回避しながらアルクスの場所を目指す。

 

「この射殺す百頭(ナインライブス)・竜毒群生《スピノヒュドラ》は追尾する!!」

 

 しかし、アルクスの宣言とともに回避した筈のドラゴンレーザーは方向を転換して追尾する。

 逃げ場がどんどん無くなっていく。

 

「ロール!!」

「スクーデリア!!」

 

 恭弥とディーノの二人は形態変化を解除して動物(アニマル)の姿に戻す。

 ディーノはスクーデリアに騎乗、恭弥と風はロールが周囲に漂わせる針の生えた球体に飛び乗って跳躍する。

 

「その程度で逃げられたと――――」

「思ってないさ!!」

 

 空中へと逃げたディーノは鞭を恭弥の足に巻き付けてそのままアルクスに向かって投げ飛ばす。

 鞭を振るった際、先端の速度は音速を超える。その際に生じるのがパチンという音であり、それが衝撃波(ソニックブーム)だ。

 恭弥はその衝撃を雲の死ぬ気の炎で身を守り、音速を超えた速度でアルクスへと迫る。

 

「これで終わりだよ」

 

 雲の死ぬ気の炎を纏い、先端が鋭い棘に変化したトンファーで貫こうと腕を引く。

 矢は撃てない。ヒュドラの毒に侵されて死にかけている今のアルクスにはその体力は残っていない。

 そう確信したからこそ接近しての攻撃。

 だからこそ、地面から突如として生えたスピノサウルスに対応が遅れた。

 

「ぐっ…………ぐふっ!」

 

 腕を噛み付かれた恭弥は口から大量の血を吐き出し、動きが鈍くなる。

 

「あたしが奪ったのは雲のマーレリングの守護者の力だけじゃない…………晴のマーレリングの守護者の力もだ」

 

 晴のマーレリングの守護者であるデイジーの修羅開匣の元となったのはトカゲ。

 古代地球において最大最強の霊長として君臨した恐竜こそ使われていないものの、不死身の肉体(アンデッドボディ)とまで評される再生力の高い肉体と高純度の晴の炎に組み合う事で常軌を逸した再生力を誇る。

 晴の特性である活性は今、ヒュドラの猛毒によって意味をなさない。

 再生する速度よりも毒の効果を強めるだけなのだから。

 だからこそ、アルクスはその再生力と活性を雲の増殖に注ぎ込む事を優先した。

 

「最後の最後で油断したな…………肉食動物だろうが草食動物だろうが、死にかけの奴は怖いって事忘れんな」

「ええ、覚えておきましょう」

 

 目、鼻、口から大量の血を流すアルクスの前に呪解した風が現れる。

 既に拳を構えており、莫大な嵐の炎が収束している。

 

「爆龍拳」

 

 龍の形に変化した嵐の炎の拳がアルクスの身体を砕いた。

 

   +++

 

「――――ふぅ……………」

 

 事前にアルトリアから貰っていた血清を打ち、恭弥は横たわったまま息を吐く。

 

「どうだ、恭弥」

「楽にはなった。けど、これは助からないね」

 

 淡々と事実だけを語る恭弥の言葉にディーノは唇を噛む。

 分かっていた。分かり切っていた事だった。事前に説明を聞いて、ヒュドラの毒がどれだけ危険なものなのかも。だが、自分よりも若い子どもがこんな苦しんで死ぬという結末はあまりにも受け入れられなかった。

 ましてや、その子どもが自分と長い付き合いのある友人のような関係なら猶更だ。

 

「ツナは…………ツナは、こんな事がやりたかったのか!?」

 

 ディーノはこの場に居ない弟分への怒りから思わず叫ぶ。

 

「うるさいよ」

「っ、お前なぁ…………! 自分が死ぬってのに何でいつもの調子なんだよ!」

 

 恭弥は今にも死んでしまいそうな程に弱っているのに関係ないと言わんばかりにいつもの態度を崩さない。

 

「あの小動物が何を考えてるかなんて、そんな事考えるだけ無駄だよ。勝手に不幸だ不運だと自分を追い込んで、そんな普通じゃない状態で出した答えがまともなわけないよ」

「か、かなり辛辣だな…………」

「別に、ただ事実を言っただけだよ」

 

 吐き捨てるように言うと、溜め息を吐く。

 

「本当は僕が直接言ってやりたかったけど、貴方が沢田綱吉に言って。僕達をなめるなって」

「っ、ああ! 分かった。必ず、ツナに伝えてやる…………!」

「ならさっさと行って。自分の死ぬ姿なんて他の誰にも見せたくないからね」

 

 追い払うようにディーノに行くよう促すと、彼等はこの空間から退去する。

 (フォン)もディーノも、そして彼の戦う姿を後ろから見守っていたロマーリオやスカルも。

 残っているのは既に命を失ったデイジーと桔梗、アルクス。

 そして死にかけている恭弥ともう一人――――。

 恭弥は身体に残された最後の力を振り絞って体勢を変えて睨みつける。

 

「それで、いつまでそこで隠れているつもりなんだい――――沢田綱吉」

「…………何時から、気付いてました?」

「最初からだよ」

 

 恐る恐る瓦礫の影から姿を現した綱吉に恭弥は呟く。

 そして、改めて綱吉の姿を確認する。

 見覚えのある並中の制服を身に羽織っており、以前戦った際に生えていた二本の角、そして半透明の身体とアンバランスだった。

 

「そのふざけた姿はなんだい? 僕をおちょくってんの?」

「えぇ、雲雀さんだから並中の制服にしたんだけど…………」

「その角と半透明なのが気に入らない」

「いや、だって雲雀さん。オレが出てったら攻撃してくるじゃないですか。っていうか、ここに居るオレってアルクスが倒されたから解放された人格に過ぎなくて――――」

「殺す」

「かみ殺すでもない!?」

 

 殺気を剥き出しにする恭弥に綱吉は怯え始める。

 あの時見せた圧倒的な力はまるで感じない。

 

「…………それで、何の用?」

「いえ、ディーノさんに何て言ったのかなーって」

「本人から直接聞きなよ」

「うぅ、やっぱりそうですよね…………ディーノさん、凄く怒ってたよなぁ…………」

 

 溜め息を吐きながらどよんとしたネガティブな空気を綱吉は背負う。

 いつもと変わらない、沢田綱吉だった。

 

「…………雲雀さん。オレの計画ってそんなにダメですか?」

「僕を並盛から引き離そうとする時点で論外だよ」

「な、なんという地元愛…………!」

「そもそも戦いたくないから逃げるって考えが嫌だから」

「それは…………」

「きみは勝てたんでしょ? なら何でそんな負け犬思考なの?」

「…………勝つ事は出来ても、先に繋がらながったから」

「要は気に入らない勝ち方をした、ね。なら次こそ気に入る勝ち方をすれば良いのに」

「簡単に言ってくれますね」

 

 半透明の綱吉は恭弥の隣に座り、空を見上げる。

 遥か地下深くであるここに空というものは存在しない。しかし、頭上には空のようなものがあった。

 

「残念ですけど、オレが勝ちます。皆に勝ち目なんか――――」

「ボンゴレリングの守護者が全員死ななければ、きみは倒せないから?」

 

 恭弥の質問を聞いた瞬間、綱吉の瞳は大きく見開かれる。

 

「その反応、図星のようだね」

「な、何でそれを…………」

「なんとなくだよ」

 

 言葉では説明出来ない奇妙な違和感、それが今の綱吉の反応で何とか言葉に出来るようになった。

 綱吉はビーストとなった際、大空のボンゴレリングを取り込んだ。

 即ち、綱吉自身がボンゴレリングでもあるということでもある。

 そうなれば必然的に残った6つのボンゴレリングも無関係ということにはならないだろう。

 原型のボンゴレリングに戻った際、他の6つのボンゴレリングも原型に変化したのだ。ならビーストに取り込まれたボンゴレリングが、同じようにビーストの性質を持つのも不自然ではない。

 何より――――。

 

「きみが負けず嫌いなのは分かってる。だから絶対に勝てないよう、こっちが諦めるよう意地の悪い対策をしてるって思ってたさ」

「なら諦めたりは」

「するわけないだろう。群れないって矜持を曲げたんだ。だから、最後には僕達が勝つ」

「…………それでも、オレが勝ちます」

 

 綱吉は立ち上がり背を向け、そのまま消え去った。

 

「…………保険、上手く発動してくれれば良いんだけど」

 

 その言葉を最後恭弥は瞼を閉じ、動き出す事は無かった。

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