キャストリアに転生したが原作を壊してしまった   作:霧ケ峰リョク

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遅れてすまんな。
ティアキンやら仕事やら忙しくて書けなかったんじゃ。
じゃあ、夜勤前に寝ますね。


家庭教師と出会う楽園の妖精

 あの傍迷惑な決闘騒動からそれなりの時間が流れた。

 ツナが剣道部の部長を倒したからとかいう理由でバレーボールの試合に出されたり、急にやって来た銀髪の転入生に絡まれたと思ったら舎弟になっていたり、クラスの人気者山本武が自殺騒動を引き起こしたりと色々あった。

 あまりにも濃密過ぎる毎日に根津銅八郎が学歴詐称で解任された事なんかすっかり忘れられてるくらいだ。

 

「本当にここ最近は色々ありましたね」

「そ、そうだよね…………」

 

 久々にツナの家に行く事になった私は、ツナと一緒に帰路についていた。

 中学に上がってからこうして一緒に帰る事も少なくなっていたから少しだけ懐かしい気分に駆られる。

 

「そういえばツナの家に久しぶりに行くわけですけど、何かありましたか?」

「え、いや、その…………うん」

 

 私からの問い掛けに対しツナは一人で百面相を始め、最終的には観念したかのように大人しくなる。

 彼は私には嘘が通じないという妖精眼の特性をある程度知っている。

 だから何とか誤魔化そうとしていたのだろうが、それが出来ないと知っているが故の反応だ。

 まあ、何となく話したくない理由は察するが。

 

「えっと、実はさ。母さんが勝手に家庭教師を雇ってさ」

「奈々さんがですか。まあツナはあまり勉強が得意じゃないですからね」

「その通りだけど…………ただその家庭教師が本当に滅茶苦茶な奴でさ。毎日毎日酷い目にあわされてるんだよ」

 

 ゲンナリとした顔でそう呟くツナの言葉を聞いて、少しだけ同情してしまう。

 私との遊び、という名の矯正は少しずつだったが件の家庭教師はかなり過激な人のようだ。

 

「流石に今日は大人しくしててって言ったから大丈夫な筈――――」

「そんな過激な家庭教師が私が来たからといって大人しくする筈が無いと思いますが」

「だよね…………」

 

 私の指摘に更に落ち込むツナ。

 まあ折角二人で遊ぶというのにそんな破天荒な人に絡まれるのは誰だって嫌だし私だって嫌だが。

 

「まあ世の中には夢の中にまで入り込んで教育するグランドロクでなしとかも居ますし、まだマシだと前向きに考えましょう」

「そんな前向きにネガティブな考えやだー!」

 

 頭を抱えて叫ぶツナの言葉に私も心の底から同意しつつ、目的地であるツナの家を視界内に捉える。

 そして玄関前までやって来て、ツナが扉を開けようとしたその時だった。

 扉の向こう側から何かが飛び出して来て、ツナの顔面にクリーンヒットしたのは。

 

「へぶっ!?」

 

 予期せぬ衝撃を顔面で受け止めて、ツナの身体は後方に吹っ飛ばされる。

 私はツナに出会った最初の時からゆっくりと時間を掛けて剣術や身体の動かし方等を遊びと称して身体に叩き込んできた。普段は自信が無くダメツナだと思い込んでいるから発揮できないだけで、暗示をかければ時と場合にもよるが本来のスペックを十分に発揮出来る。

 それでも、この罠には対応は出来なかっただろう。

 多分今の私でも魔術を使わなければ対応出来ない。

 

「ちゃおっす」

 

 後方に吹っ飛ばされたツナを心配していると家の中から聞き覚えの無い子供の声が聞こえた。

 声がした方向に視線を向けると、そこには黄色のおしゃぶりを付け、黒いボルサリーノとスーツを着たくるくるのもみあげが特徴的な赤ん坊が立っていた。

 一目見ただけでただの赤ん坊ではないと分かる立ち振る舞い。

 赤ん坊なんだから立っているだけで異常と言われればそれまでの話だが、この身体(霊基)だからこそ分かるものもある。

 

――――呪い。

 

 黄色いおしゃぶりに身体を縫い付けるかのような、呪いとしか表現出来ない何かがこの赤ん坊の全身に纏わりついていた。

 仕組みは調べないと分からないが、多分肉体の生命エネルギーをおしゃぶりに流しやすくしているのか?

 どちらにしろ碌なものじゃない。まあ、私の存在もかなり碌でもないけど。

 

「え、っと…………貴方は?」

 

 此方の感情の機微を察知されないように戸惑った声音で問いかける。

 すると赤ん坊は此方を一瞬怪しむような目で此方を見た。

 一瞬、本当に一瞬。刹那の瞬きとしか言いようのない時間だったが、この赤ん坊は私を怪しんだ。

 人間じゃなかったから気付けた。いや、違う。妖精眼があったから気付く事が出来た。

 

「オレはリボーン。そこで無様な姿を晒しているダメツナの家庭教師だ」

「そうですか。私はアルトリア・キャスターと言います」

「子どもと思わないんだな」

「見た目通りの年齢じゃないでしょうから。失礼になると思って」

 

 私の言葉を聞いてリボーンはニヒルな笑みを浮かべる。

 そんな彼の姿を見て私は思わず苦笑いする。

 

「何ていうか…………私、貴方のこと苦手ですね」

 

 恋人と関係していなければ、あまり関わりたいと思えるような人じゃない。

 それが、私が家庭教師リボーンに対して抱いた、これから先未来永劫変わる事の無い第一印象だった。

 

   +++

 

 良い女ではあるが性格はあまり良くない。

 それがここ暫くを通して、そして実際に会って話したリボーンがアルトリア・キャスターに抱いた印象だった。

 読心術を通して見た内面はとても弱く、いじけ気質で悲観主義。

 自分に対しての自信も無く、性根からしてネガティブだ。一方で一般人には持ちえない何かしら特異な才能、もしくは異能を有している。

 でなければ、初対面にも関わらず自分を赤ん坊扱いしないなんていうのはありえない。

 

「今日は大人しくしてたな」

 

 普段からそうしていればいいのに、と毒づく綱吉の方にリボーンは視線を向ける。

 

「最初は死ぬ気弾を撃とうと思ってたんだゾ。だが、少し気が変わってな」

「出来ればそのまま変わっていてほしいんだけど」

「別に良いじゃねぇか。それよりもだツナ。お前、あいつと付き合い長いんだろ?」

「まあ、小学校からの付き合いだし」

 

 今は付き合っているけど、と照れながら綱吉は応える。

 内心その姿を見てうざいと思いながらもリボーンは問いを投げる。

 

「お前、あいつの事を何処まで知ってる?」

「何処までって…………アルトリアはあまり自分の事を話したがらないからなぁ。オレも聞く必要無いと思ってるし」

 

 リボーンの問い掛けに綱吉は顎に手を当て考える。

 それは知らないという態度ではなく、何処まで話して良いかを悩んでいるようにも見えた。

 

「…………これは聞いた話だけど、アルトリアは拾われた子なんだって」

「捨て子か?」

「アルトリア本人は気にしていないって口では言ってたけどね。でも、多分凄く気にしている事だと思う。でなければあんな顔しないし」

 

 綱吉の脳裏に浮かんだのは笑いながらその事を話す当時のアルトリアの表情だった。

 確かにあの時、彼女は笑っていた。しかしそれは朗らかというわけではなく、笑うしかないと半ば投げやりになっているようにも見える笑いだった。

 

「リボーン。オレはさ、お前がどう思っているのか分からないけど、アルトリアは良い奴だよ。確かに捻くれているところがないわけじゃないし、自分でも性格悪いって言っているけど…………でも、オレと違って彼女は逃げる事をしないから」

「それは、お前が今まで見て来たものか?」

「見て来たものだよ。アルトリアってさ、嘘を見抜けるって言ってるのに自分の嘘だって分かりやすいんだよ。猪みたいに猪突猛進だし、本当は逃げたいと思ってるのに絶対に逃げないし。オレが逃げてほしいって思ってる時だってそうだし」

「成る程、本当にお前はアルトリアの事が好きなんだな」

 

 リボーンの言葉に綱吉は顔を赤らめ照れたように頬を掻く。

 言葉にはしていないが、そういう事なのだろう。

 その様子を見てリボーンは諦めたように溜め息混じりに呟く。

 

「なら、アルトリアが何か隠し事をしていてもか?」

 

 そうリボーンに対し、綱吉は笑みを浮かべながら答える。

 

「大丈夫。その隠し事、オレ知ってるから」

 

 この時見せた綱吉の顔は、どこか悲しんでいるようにも見えた。

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