キャストリアに転生したが原作を壊してしまった   作:霧ケ峰リョク

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みなさん、お待たせしました。
風邪を引いたり連続で夜勤をやって疲れ切ったり、ここまで遅くなりました。
取り敢えず他のも更新したいと思ってるのでゆっくりやっていきたいと思います。


楽園の妖精とたった一人の共犯者

 それはイギリスから日本に引っ越して来た時の出来事。

 前世が日本人――――多分日本人だった筈。兎も角、いくら自分が元は日本人だったとしても今はイギリスで暮らしている身だ。ましてや自分が知っている日本ではない可能性もあるし、そもそも日本だからといって土地勘があるわけじゃない。

 場合によっては法律も常識も違う事だってある。

 

「うわぁ…………とんでもない所に来ちゃったよ」

 

 だから日本の並盛町に来た時、黒髪の少年がトンファーのような物を持って年上の男性達を叩きのめしている光景を見てしまった瞬間に口から出た感想がそれだった。

 妖精眼を通して見ても非常に素直で正直な人間という事が分かる。が、それはそれとしてちょっとどうかと思うような少年だった。

 その少年以外にも「極限だーッ!」と叫んで走っている日輪のような少年やその兄の後ろを付いて歩く妹、そして朗らかな笑顔を見せているがその実土砂降りが降っている時のようにしっとりした内面を持つスポーツ少年が居た。

 けど、私が求める人は居なかった。

 だからこそ半ば諦めつつあった時に、彼に出会ったのだ。

 

「うぎゃぁ!」

 

 その少年は公園で一人で自転車の練習をしていた。

 今まで出会ってきた中で誰よりも普通で平凡で、自分に自信が無くて打ちのめされていて、だけれど他の誰かに汚されようと何一つ変わらない。

 今まで出会って来た人の中でも一番綺麗な心を、彼は持っていた。

 

「――――大丈夫ですか?」

 

 転んで怪我をした彼に思わず声を掛けてしまう。

 打算が無かった、と言えば嘘になるかもしれない。だけど、その時は何も考えずに半ば反射的に動いてしまった。

 

「怪我をしているみたいですが、痛みはありませんか?」

「は、はい…………大丈夫です」

 

 自分の言葉に対し彼は顔を背けながら呟く。

 その瞬間、彼の色が薄っすらと濁った。

 妖精眼は嘘を見抜いてしまう。たとえそれが強がりであったとしても。

 嘘を言ったつもりもないのだろう。この程度の傷ならすぐに治るし大丈夫ではある。だけど、それはそれとして痛い筈だ。

 

「強がりなのは分かってます。こう見えても私、嘘を見抜けるんですよ」

 

 彼の傷の手当てを始める。

 と、言っても大した事はしていない。ただ傷口に触れて直接治癒の魔術を使っただけだ。

 

「えっ、傷が…………?」

 

 傷が最初から無かったかのように消えた事に少年は酷く驚いた様子を見せる。

 その光景を見て思わずくすりと微笑んだ。

 

「申し遅れましたね。私はアルトリア・キャスター。魔術師です」

 

 それが彼、沢田綱吉との出会い。

 思い返してみれば、初めて会った瞬間から彼に惚れていたのかもしれない。

 

   +++

 

「――――アルトリア、大丈夫?」

 

 目を覚ますと私はツナの膝の上で横になっていた。

 そしてそんな私の事をツナは心配した様子で顔を覗き込んでいる。

 ああ、どうやら私は彼を心配させてしまったらしい。

 

「申し訳ありません。もう大丈夫です」

「嘘だよね?」

「…………はい。やっぱり大丈夫じゃないかも。ちょっと頭がぐわんぐわんします」

 

 嘘を一瞬で見抜かれてしまい、思わず布団で顔を隠す。

 妖精眼を持ってないにも関わらず嘘が見抜けるなんて妖精負けだ。

 まあ、私の嘘が下手過ぎるだけかもしれないが。

 

「ところで、私は何で眠ってたんですか?」

「…………えっと、頭を打って」

 

 ツナは私から目を逸らし、視線をある方向に向ける。

 私も釣られて同じ方向に視線を向け、其処に居る人達の顔を見て何で気を失ったのかを思い出す。

 そうだ。私はあの毒々しい料理の臭いを嗅いでしまって――――。

 

「ツナは本当に大変ですね」

「まぁ、そうなんだけど…………でもあの料理を毎日食べていた人が居るから」

「…………地獄ですね」

 

 誰の事を言っているのか一瞬で理解できてしまう。

 だってその当人がとんでもなく青い顔をして気絶しているわけだし。

 

「ねぇ、アルトリア。きみは今、幸せ?」

「…………その質問を今するのはちょっとずるいんじゃないですか?」

「ご、ごめん」

「ふふ、気にしないでください。まぁ、でも…………」

 

 私は視界に映る光景を見て思案する。

 能天気に笑ったり、言い争ったり、女の子同士で間違った方向に女子力を磨こうとしたり、群れているからって理由で殴りかかったり、眉間に銃弾を撃たれたと思ったら嘆きながら蘇ったり、関係無くボコられたり。

 本当に混沌(カオス)としか言いようのない光景だ。

 でも、決して悪いものじゃなかった。

 

「この光景が良いものであると、それだけは胸を張って言う事が出来る」

 

 ツナに告白をされてから一年、それだけの短い時間の中で沢山の思い出が出来た。

 それは良いものばかりというわけではなかったけど、悪いものだけでも無い。思い返せばつい笑ってしまうような記憶だってある。

 

「私にとって、素晴らしい春の記憶です」

 

 オリジナルと異なってこうして生きている時にこんな記憶が出来るなんて、本当に私は恵まれている。

 だからこそ、色々と複雑な気持ちになっているけど。

 本当に人でなしとしかいえない仕組みだ。人間じゃないのだから仕方ないのかもしれないが。

 いや、人間も大差ないか。

 そう考えているとツナが話しかけてきた。その顔は少しだけ暗いようにも見える。

 

「アルトリア。やりたくないのならやらなくて良いんだよ」

「…………正直な話、やりたくないですよ」

「なら――――」

「でも、やる。やらなくちゃいけないし、これが私の使命だから」

 

 逃げたところで誰も幸せにならない結末しか待っていない。

 なら逃げない方がずっと良い。此方もあまり良いものじゃないけど、それでもまだマシだから。

 どっちを選んでも地獄でしかないのは辛い話だが。

 

「私の方こそツナに辛い選択を選ばせたんです。今ならまだ――――」

「戻らないよ。それに、まだ新しい選択肢を、皆が幸せになれる道を作れるかもしれない」

「…………そう、ですね」

 

 まだ未来が決まったわけではない。

 ツナが言った新しい選択肢も作る事だって不可能じゃない。たとえその可能性が天文学的に低かったとしても0じゃないのだ。

 

「仮に他の選択肢を見つける事が出来なかったとしても、最後のその瞬間までオレはアルトリアの味方だよ」

「…………本当に、私には過ぎた恋人だよ。ツナは」

 

 きみと出会えたこの世界はきっと奇跡のようなものだろう。

 出来る事なら二人きりが良かったのだけれど。と、いうか周りの連中はもう少し空気を読んで静かにしてほしい。

 特にそこで風紀委員長にボコられているパンツ一丁の奴、私のツナを無理矢理合コンなんぞに連れて行った時の事忘れてないからな。あの時ストラップにされそうになっているツナを助けるのに大分苦労したんだから。

 

「そういえば、ツナはあれ(・・)使えるようになりましたか?」

「えっと、まだかな…………リボーンが居て中々練習出来ていないし」

「まああれは中々難しいから。その一部だけでも十分に破格ですが、使えるようになっていた方が良いですよ。凄く難しいとは思いますが」

「…………出来るのかな? 自分の心を形にするなんて。いや、一回見せてもらったから出来ないわけではないとは思うんだけど」

「私のアレは例外のようなものですけどね」

 

 そんなたわいも無い話をツナと交わしながら時が過ぎていく。

 出来る事ならばこのまま平穏な時がずっと続いてくれれば良いのに、そう思わずにはいられなかった。

 

   +++

 

 時間が経てば日が沈み夜がやってくるように、平穏な時間というのも永遠には続かない。

 並盛中からそう遠くは無い黒曜中学校にて一人の少年が断末魔に近い嗚咽を上げて地に倒れ伏していた。

 少年の名は日辻真人。この黒曜中で生徒会長をやっていた人物だった。

 不良が多く荒廃したこの黒曜中を更生させようと奮闘していたが道を踏み外し、最終的に顔面が変形する程に袋叩きにされたのである。

 尤も、全てが日辻真人の自業自得であったというわけではない。彼が道を踏み外し、暴力を振るっても何も感じなくなる程に堕ちたのは確かに事実だ。

 しかし、最初から最後まで日辻真人が悪かったと聞かれればそうではない。

 最終的に堕ち果てたのは彼自身の行いのせいだが、其処に至るまでの過程で第三者の策略があったのも事実だった。

 尤も、その策略を日辻真人が察知していたとしても結末は同じになっていたであろうが。

 

「クフフ…………中々に面白い見せ物でしたね」

 

 地に倒れている日辻真人を一人の少年が愉快そうに見下ろしていた。

 その少年の右目は赤く、漢数字の六という文字が刻まれている。

 

「ですが、あくまで前菜。本命は簡単にはいかないでしょう」

 

 オッドアイの少年は日辻真人から視線を外し歩き始める。

 その瞳には真人に対する興味は欠片も残っておらず、次なる標的に移っていた。

 否、最初から本命は別に居る。日辻真人はあくまでおまけに過ぎない。

 

「待っていなさい、ボンゴレ10代目。その身体、僕が有効活用してあげます」

 

 太陽の明かりに照らされた平穏な時間は終わり、暗い夜がやってきた。

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