キャストリアに転生したが原作を壊してしまった 作:霧ケ峰リョク
ちなみにトネリコは呼符で来ました。
ただ福袋とディスティニーはすり抜けたのでちょっともにょりますが。
並盛中の風紀委員が何者かに襲撃され始めた。
もう殆ど覚えていないしあやふやな前世の記憶しかないから断言は出来ないが、多分そう言う事なのだろう。
「…………もうちょっと、長く続いてくれれば良かったのにな」
この世界が前世で見ていた漫画かアニメ、どちらの世界線かは分からない。
それ以外の可能性だってあるわけだし全てがごちゃ混ぜになった可能性だってある。
いや、そもそもここに私が居る時点で平穏とは言えないまでも素直に笑い合える日常なんて偽りに過ぎないか。
それでも、あの日々がとても楽しいものだった事には変わりない。
だからこそ、それが終わってしまった事が酷く悲しい。私にとってもツナにとっても過酷な道が始まってしまったのだから。
「ツナが私より、ずっと過酷な道を歩む事になってしまったのは予定外だったけど」
本当、彼の名前を聞いた時点でどうして気が付けなかったんだろうか?
前世の記憶で知っているのなら違和感を覚えたり、同じ名前なんだなって思ったりしてもおかしくないのに――――まあ、凡そ想像はつくけど。
窓の外の空を見上げ、空に浮かぶ一つの星に視線を向ける。
「…………ただでさえ辛い結末が待っているのに、その過程がより辛いものになるのはなぁ」
とはいえ、自分に出来る事なんか限られているが、それでも全く何も出来ないわけじゃない。
この世界の事を知ったその日から少しでもツナの負担が和らぐように、力になれるよう準備をしてきたんだ。
心の中でそう思いながらテーブルの方に視線を向ける。
学生生活を送りながらだった上に慣れていない事もあったからかなり時間がかかってしまったけど、それでも何とか形にはなったと思う。
「後はこれをツナに渡すだけですね」
そう言って完成した物を手に取る。
剣の意匠が施された指輪、私がツナの為に作ったこれから先の辛い道を切り開く為の力。
「思ったよりも時間が掛かってしまったけど、何とか間に合ったから良しとしましょう」
参考にした物が物だけに及第点も高くなってしまい、いくつも失敗作を作ってしまった。
だがそれだけの能力を持っていると自負出来る。
後はこれをツナに渡すだけだ。そう考えながら私はツナに渡す為のプレゼントと参考にしたある物を懐に入れる。
正直参考にしたこれはあまり持ち歩きたくないような代物だけど、家に置いておくのも不安だ。
凄く苦労して手に入れた物である事以上に私の手元から離れたら悪さをしかねないし。
「そもそも肉食の指輪ってどういうことなんですかね?」
まあ使っている素材が素材なだけにそういった特異性を有するのもありえる話かもしれないが。
こんな物が後5つも世界に存在しているなんて、正直ぞっとする。出来る事なら一つ残らず回収して管理しておきたい。
「まあ、それはまた今度にして…………そろそろツナの所に渡しに行きますか」
渡す前にツナ達がこの襲撃事件の犯人達の所に向かって全てが終わってからじゃ遅すぎる。
この後の事も考えるとそれでも大丈夫かもしれないが早めに渡しておく事に越した事はない。と、いうかこれでも足りないくらいだ。出来る事ならツナにはあれを使えるようになってもらいたいし、私ももっと準備をしておきたい。
これで私がアルトリア・キャスターじゃなくトネリコだったならまた話は違ったんだろうなぁ。
自分の能力の無さに不甲斐ない思いを抱きながら玄関の扉を開けて外に出る。
そして自宅から数メートル程離れた場所で、人間一人分よりも大きいサイズの鋼球を担いだ男が立っていた。
男は黒曜中の制服を身に纏っており、どう見ても堅気の雰囲気じゃない。
「アルトリア・キャスターだな」
「…………人に名前を尋ねる時は自分から名を言ってからの方が良いですよ」
「オレは六道骸。悪いが、今から貴様に攻撃を仕掛ける」
六道骸と名乗った男はそう言うと背負っていた鋼球を繋いでいた鎖に手を伸ばし、ブンブンと回し始める。
人体よりも、回している自称六道骸よりも大きい筈なのに軽々と扱っている姿に思わず冷や汗を流す。
この人、かなり強い。
「苦しまないように一撃で沈めてやる」
彼は私に向かって鋼球を飛ばす。
攻撃の瞬間、酷い罪悪感に苛まれているのを妖精眼は見逃さなかった。
+++
今回の襲撃事件は自分に対して売られた喧嘩である。
風紀委員会の委員長、雲雀恭弥が襲撃事件の犯人の下に向かって安堵していた綱吉にリボーンはそう告げた。
最初はいつもの脅しだと考えたがリボーンからの説明を聞いてその考えを改める。
今回襲撃を受けたのは並盛中喧嘩ランキングで24位以内に入っている者、そのランキングを作ったフゥ太の姿が見えない事、そしてフゥ太のランキングはマフィア界において多額の金銭を払ってでも欲しい情報の塊である事が理由だった。
過去にフゥ太のランキングを手に入れる為に襲撃者が来たり、兄貴分であるキャバッローネファミリーのボスであるディーノがスーツケースいっぱいの札束で取り引きをしようとしているのを見ている。
フゥ太のランキング能力を知っているのは当然裏社会の関係者であり、自然と自分を標的にしているということに結びつく。
一応他にもマフィア関係者は居るが、そっちは無いだろう。
「はぁ…………はぁ…………っ!!」
そして、そのランキング通りなら彼女も襲撃を受けるという事実を知り、我を忘れて少女の下に向かった。
既にボクシング部の部長、笹川了平や剣道部の部長、持田剣介も襲撃を受けている。
ならば彼女も狙われないわけがない。
「おっと、お前が沢田綱吉かびょん?」
そして、彼女の自宅を目指す道中、黒曜中の制服に袖を通した如何にも野生児と言わんばかりの少年が姿を現した。
特徴的な語尾だと思いながら綱吉は警戒心を露わにする。
「…………そうだと言ったら?」
「ひゃー、弱そうな奴。こりゃ柿ピーに譲った方が良かったびょん。こんな弱そうな奴がランキング2位とかたかが知れてるびょんね」
明らかに自身を見下した物言いに思うところがないわけではない。
しかし、今はそんな事を気にする余裕は無い。
綱吉は野生児染みた少年を睨みながら、背中にあるバットに手を伸ばす。
「単刀直入に聞く。フゥ太に何をした?」
「んぁ? ヒャハハハ!! まさかお前が骸さんが言っていたターゲットだったなんて、本当にラッキーびょん!!」
「…………悪いけど、お前なんかに構っていられる時間は無いんだ」
背中にあるバットを強く握りしめ、思いっきり振り抜く。
するとバットが潰れて中に隠れていた一本の刀が姿を現した。
山本のバット、ボンゴレファミリーの企画部が作ったと言う友人の名を冠した失礼な武器。彼女が危険に晒されていると思った綱吉が勝手に持ち出した武器だ。
「其処を退け。今のオレは刃向かう敵に容赦は出来ない」
剣を手にした事で頭の中で余計な考えが薄れて消えていく。
それでも優先すべきは彼女の下に真っ先に向かう事だ。
「はっ、如何にもマフィアが言いそうなセリフびょん」
「マフィアになったつもりは無いけど、お前等が言える台詞か?」
「…………ムカッて来たびょん。骸さんはお前を連れて来いと言ってたけど、どんな状態で連れて来るかは言われてねーびょん。その生意気な口がきけないように半殺しにしてから」
綱吉は一瞬で野生児染みた少年の前に移動し山本のバットを振るう。
少年は綱吉が接近した事に反応はおろか、気付く事すら出来ないまま刀の峰を胴体で受け止めて近くのゴミ捨て場に突っ込んだ。
「悪いけど付き合っている時間は無いんだ」
今の攻撃を受けたら暫く動く事は出来ないだろう。
沢山のゴミ袋の山に埋もれて見えなくなった少年から視線を外し再び進み始めようとする。
「グルルル…………」
だが綱吉の考えとは反対にゴミの山から少年の声が聞こえた。
声、というより獣の唸り声に近いもので、明らかに普通じゃない。視線をゴミ捨て場に戻すとそこには少年がゴミの山から這い出て立っていた。
だがその体躯は人間のものとは思えない程で、それこそゴリラを連想させる程の巨体になっていた。
「コングチャンネル…………つぅ、よくもやってくれたびょんねぇ!」
少年は雄叫びをあげて綱吉を睨み付ける。
「もうお前の事を雑魚だとは思わねぇ! この城島犬が、てめぇをぶっつぶしてやるぞボンゴレ!!」
「…………くそっ」
激高する少年、城島犬の姿を見て綱吉は内心舌打ちをする。
マフィア関係者である事は分かってはいたが、明らかに普通の人間ではない。
コングチャンネルということから動物の能力を使う事が出来るのだろう。恐らくだが、コング以外の動物の能力も使えると考えた方が良い。
いずれにせよ面倒な相手である事には変わりない。と、いうか普通に強いし厄介だ。
「…………仕方ない、全力でやってやる」
リボーンが居る前では一度も披露した事が無い、まだ未完成の奥の手を使う決意を決め、綱吉は刃を振るった。
この作品の並盛中の喧嘩ランキング
1位:アルトリア・キャスター
2位:沢田綱吉(剣を持った状態)
3位:雲雀恭弥
以降は原作通りの順番となっております。