ヒーローになっていろんな人を捕まえたい!   作:CRAZY Choco

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入試結果!

1位 爆豪 勝己 77 0

2位 切島 鋭児郎 39 35

3位 麗日 お茶子 28 45

4位 影操 切 45 25

5位 塩崎 茨 36 33

 

「実技総合成績出ました!」

 

「レスキューポイント0で1位とはなぁ……」

 

「『1P』『2P』は標的を捕捉し近寄ってくる。後半他が鈍っていく中、派手な”個性”で寄せつけ迎撃し続けたタフネスの賜物だ」

 

「対照的に敵P0で9位。アレに立ち向かったのは過去にもいたけど……ブッ飛ばしちゃったのは久しく見てないね」

 

「思わずYEAH!って言っちゃったからな!」

 

「しかし自身の衝撃で甚大な負傷……まるで個性発現したての幼児だ」

 

「僕としては4位の子ですかね。ロボットが苦手なのか酷い顔色していましたけど……」

 

「今どき機械苦手なヤツも珍しい」

 

「あぁ、彼ね。個性よりも物理攻撃を主としていたけれど、個性もなかなか面白かった。弟はリカバリーガールに伸ばして貰いたいね」

 

「それはその子のやる気次第さね」

 

「まぁなんにせよこの子の合格に意義はあるかい?」

 

『「「「異議なし!」」」』

 

 

******

 

 

 

1週間後

 

 雄英受験から1週間、もう何もしようがないと知りながら、常にヒリヒリとした胃へのストレス溜めるしかないセツは郵便受けを今か今かと見続ける日々を過ごしていた。

古い金属の擦れるきぃーという音。

 

「あ、」

 

 そして今日、遂にそのストレスも終わるらしい。

ランニングから帰ってきたセツの目の前には2通の小さい封筒。ゴクリと無意識に唾を飲み込み郵便受けの中へゆっくりと手を伸ばす。想像より重いそれをしっかりと握って冬の太陽のパッキリとした光から逃げるように家へと入った。

 

「ユイ、」

「んー? 飯なら机だよ。僕は今自分用の作ってんの」

「手紙。ゆ、雄英の受験のっ」

「え!?…あ、ぎゃ、あ"ーッ!」

「ユイーーッ!?」

 

ドンガラガッシャン!

横の洗い物が音を立てて崩れた。

 

「ダッハッハ。やったなお前ッ」

「あぃてて……うるせえ手紙よこして」

「とりあえず顔拭けよ。おら、手紙は置いとくから」

「わぶっ、はぁ? やめ、やめろよ拭くなぁ!」

 

 セツは腹抱えて笑い、しゃがんでユイの色素の薄い顔を、犬みたいにぐわんぐわん拭った。ひとしきり笑って勝手に満足すると立ち上がり1人部屋へ足を向ける。

踵を返したセツの顔は、死んだガラスよりも冷たかった。

 

 

 

 

 部屋は暗かった。

2人して朝起きてもカーテンを開けないからだ。朝目を開けて日光が目なんて刺してきた日にゃ二日酔いみてぇな気分になる。それに日光は健康に悪いと憲法で決まっているし。

だから電気もつけなくて、余計うちの中は陰鬱だ。

 

それはつまり2人にとって生きやすい場所ということで、

ここは2人の肺だった。

 

 

 

 

水を得た魚は封筒を開けて雑に机に放り、そのまま自分の巣穴に寝っ転がった。

頭がぐるぐる廻る。最悪な気分だ。

憧れた人がその人間性を壊された時の、脳の血管ブチ切れそうな怒り。

沸騰した血液が身体ン中カッカッと燃やして、火刑にくべられた魔女だって、俺から逃げ惑うだろう。

まぁるい子猫のように丸まって、全身の筋肉が俺を引き裂こうとする。

 

「ンでダメなんだよォ……やってらんねぇ」

 

ぎ、ぎ、ぎ。

この音はどこから鳴っている?

俺の歯を食いしばる音だ。

 

 2人で合格したかったのに!

 クソ。クソ。クソ。

セツは知っている。先に郵便受けを見てしまったがために。なんで封筒が違う。なんで俺のには投影機が入っててアイツのは入ってない。

なんで、なんで……!

 

 セツという人間は馬鹿見てぇに卑屈で、ロケット作ってる人よりも心配性で情緒不安定で、なにより付き合うのがダルいくらいネガティブな人間だったのである。

 

 

 セツの机の上には合格通知があった。

衝動的に叩きつけたせいで投影機がコロコロ転がって机から落ちる。そのままベットの足にコツンと当たって死んだフリをするように倒れた

 

 

『やぁ! ネズミなのか犬なのか熊なのかかくしてその正体は……校長さ!』

「根津こうちょう……」

 

この人自分でも種族わかんねェんだ。

世界が膜ごしで脳がふわふわしていた。泣いたあとの倦怠感も合わさって酒をたっぷり飲み干したようだ。

  投影されたのは雄英高校の校長、個性道徳教育に多大な貢献をした世界での知名度も高い。もちろん何度も教科書に出てきた偉人である。

 

『早速君の成績を発表するのさ!

筆記試験合格、ヴィランポイント45ポイント、これだけでも十分取れているけれど……我々が測っていたのは戦闘力のみならず! ヒーローとしての資質も見ていたんだ』

 

根津校長はキュートな短いおててをピンっと伸ばして笑った。

かわいかった。

 

『それがコレ、レスキューポイント! 君はこちらでも25ポイントも取っているのさ! 合計70ポイント!文句なしの合格だ! 来なよ。ここが君の"ヒーローアカデミア"なのさ!』

 

 

プツンと言うだけ言って映像が途切れる。

 

──受かった。

 

 

 

 セツはじっと映像の残影を追って、ついに消えたころ、ズッと鼻を啜った。

今の弟に聴こえたかな。もう手紙は読んだだろうか。これで気まずくなっちゃったりしたらどうしよう。いや、それどころか、嫌われたら?ユイに限ってそれはない。ないけど、けどいつかはそういう日が来るかもしれないし、そしたら……、

 

「……さみし」

 

 セツはユイとずっと一緒だったから、離れてしまうということが凄くさみしくて、新しくて、怖かった。しかもこんな内容だ。擦れに擦れて会話すら無くなったらどうしようとか、同じ部屋で寝る他人になるのかなとか思った。もう首吊って死ぬしかない。この世の全ての罪とかは全部俺のせいだったりするし。

 

 

「ごはん食べないのー?」

「……タイミング、わるっ」

 

呑気な弟の声が扉越しにくぐもって聞こえる。なんでだよ。気にしてない感じ?

、……いや、実際そうなのかも?

 

この時セツの心にようやくほんわかぱっぱな想像が膨らんだ。

もしかして全く気にしてないんじゃね?いや、全くはないだろうけど。ユイは医者にさえなれりゃいいって言ってたし。普通科でも頑張るって。ならヒーロー科は適してないとも言えるし。

 

ユイは普通科でベンキョーして医療系の大学入れりゃそれでいいんでは?

 

 

セツはクスリキメたやつより軽い頭で希望に満ちたリビングへ行った。なんならスキップなんかもしちゃったりして。

 

「ユイー、悪い、飯食わずに行っちま、」

「雄英落ちた」

「アッ」

 

ダメだった。

お花畑から葬儀場に落とされたセツは死んだ。

ギャップに耐えられたかったせいで白目むいて呼吸が止まった。でも体型がスラッと整って俳優さんみてぇだから映画のワンシーンみたいになった。

ユイはそれを見て、道端の小さな花みたいにクスッと笑って謝った。

 

「ごめんごめん。僕そんなに嘆いてないよ」

「許した」

「息ふきかえしたな。……僕、リカバリーガールに個性の使い方教えて貰えるようになったから、今はそれで充分」

「そういうもん?」

「そういうもんです」

 

 

 

 

  パチリ、目が覚める。蹴っ飛ばされベットから落ちかけている布団。目に痛いほど射し込む朝日。はい、二日酔いみてぇな気分。

  2人が着ているのは真新しい制服。グレーのブレザーに赤いネクタイ。深い緑のズボン。服が変わっただけ、それだけと言えばそうだがいつもよりどこか浮ついた気分になる。家を出て、気持ち速めに足を動かす。

春めいた日光になってきて、曇らねぇかな。とか思った。

 

「なァセツ見てみて、蝶!!」

「食えもしないのに捕まえるんじゃありません。ほらァ怪我しちゃった。治してあげなさい」

「はいはい。分かってるー」

 

もう春の風が吹いて、虫も目覚めたらしい。ユイは小三男子のようにはしゃぎ蝶を見せてた。それを注意するセツに口をすぼめて不満を呟く。「全くケチだー」「んだとコラァ」

ユイは蝶の羽を離した。

 

その羽は、乱暴に捕まれ千切れた傷跡ひとつない、本来の姿に戻っていた。

 

 

 

 

 いつ見てもデカい校舎にデカい廊下。扉すら普通の倍はある姿に切は呆れて苦笑する。切はA組だった。すぐそこで別れたB組の弟を思い出し、一緒じゃないのを寂しく思いながらも心機一転、扉を開ける。だよな、双子は大抵別の教室に入れられンだ。中学3年で俺はよぉ〜く知ったぜ。はァァァ……ここ雄英ダルォ???そういう伝統に縛られずにプルスウルトラしろよなァクソが。

もちろん、八つ当たりである。

 

「おはよう! 俺は私立聡明中学出身の飯田天哉だ。これからよろしく頼む!」

「……俺は影操 切。こっちこそよろしくゥ……」

「ああ! 席は前に貼ってあるから見るといい!」

 

 ガラッと思いのほか軽い感触で開いた扉の先には学友とおぼしき人が数人。今話しかけてきたのはその中の生真面目そうな1人だった。

どこかで見たことがある気がしてパッと、めっちゃ目立っていた受験番号7111君だ!と思い出した。合格していたのか。少しうるさくはあるがきっといい人なのだろう、入ってくる人全員に話しかけていた。律儀だな。

 

席に着いて息を吐く。セツはぼんやりと、少しづつ夢の内容を思い出してきていた。

 

『助けてくれなかった……!』

 

血だらけで世界を諦めたような、受け容れたように儚く笑ったあの子の顔が、今でも心の柔いところに刺さっている。あーぁ、気分サイアク。いつまでも俺の夢に出てきて何のつもりだよ、それとも何か? 俺に何か言いたいことでもあんのかよ、お前が? そんなこと言う間柄じゃなかっただろーがよォ……

 

 

ガタァン!!!

 

 

教室に似つかわしくない音。ぼんやりしていたセツはビクッと驚き頬杖から滑り落ちて、バッと音の発生源を見た。

 

「アァ゛? こっちみてんじゃねぇよ!」

 

発生源──つんつん頭の怒り顔の男がまた、扉をガタァン! と閉めた。クラスメイト、で、あっているの……か? ヒーロー科なのだがこのクラス。

皆がえぇ……???とドン引き中、セツは冷やされた頭で努めて冷静に、邪魔された鬱憤増し増しで言った。

 

 

「教室、間違えてンぞ」

「間違えてねぇわ!! 殺すぞ!!!」

 

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