ホグワーツは毎年日本から留学生を招いているらしいです   作:兵庫人

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第2話

 九月一日。ホグワーツへの留学が決まった重仁は今日、ホグワーツ魔法魔術学校へと向かう唯一の交通手段、ホグワーツ特急に乗るためにロンドンにあるキングズ・クロス駅に来ていた。

 

「ホグワーツ特急。乗り場はキングズ・クロス駅、9と4分の3番線か……」

 

 重仁は自分のところへ来たホグワーツ特急の切符を見て「上手く隠したものだな」と思いながら呟いた。

 

 魔法の存在は基本的にマグルには秘密とされている。だから鉄道のような大がかりな施設にマグルのものを利用する時でも、魔法族の存在が悟られぬようにされていて、今重仁が向かっている9と4分の3番線も、そんな魔法族の存在を隠すための魔法族専用の電車乗り場なのである。

 

「9と4分の3番線? そんなものはないよ?」

 

「そ、そんなはず……! いえ、すみませんでした」

 

「ん? あれは……?」

 

 すぐ近くで大人と子供の会話が聞こえてきて重仁がそちらを視線を向けると、そこには別の場所へ向かおうとする駅員と、その駅員の背中を見て途方に暮れた表情をしている重仁と同年代くらいだと思われる眼鏡をかけた少年の姿があった。先程聞こえてきた9と4分の3番線という言葉と眼鏡をかけた少年の表情から大体の事情を予測した重仁は、眼鏡をかけた少年の元へ行って話しかけた。

 

「ちょっといいか?」

 

「え? ぼ、僕? 一体何の用……て、僕、中国語は話せないんだけど」

 

 眼鏡をかけた少年は重仁の顔を見て彼を中国人だと勘違いしたが、重仁は苦笑を浮かべて首を横に振った。

 

「俺は中国人じゃなくて日本人だよ。それとこの国の言葉は話せるから安心してくれ。……それで君もホグワーツに行くんだろ?」

 

「! 君もって……!」

 

 ホグワーツという単語を聞いた眼鏡をかけた少年は驚いた顔となって重仁を見るが、それに構わず重仁は言葉を続ける。

 

「だけどホグワーツ特急に乗る9と4分の3番線の行き方が分からなくて困っている。……違う?」

 

「そう! そうなんだよ! 君は知っているの?」

 

「もちろん知っているよ。案内するからついてきて」

 

 必死な表情となる眼鏡をかけた少年に重仁は頷き、彼を9と4分の3番線へと案内する。

 

 キングズ・クロス駅の八番線と九番線の間には四本の柱がある。その中で入り口から三本目の柱、それが9と4分の3番線の入り口だった。

 

「ここが入り口。一見普通の柱だけど……ホラ」

 

「あっ!?」

 

 9と4分の3番線の入り口である柱の前で重仁が片手だけ柱の中に入れてみせると、眼鏡をかけた少年が驚いた顔となる。

 

「これで行き方は分かっただろ? それじゃあ俺はもう行くな」

 

「えっ!? ちょっと待って! 名前は……」

 

 後ろから眼鏡をかけた少年の声が聞こえた気がしたが、重仁は先に進んでホグワーツ特急に乗り込んだ。

 

 

 

 その後。ホグワーツ特急は午前十一時になると予定通り出発し、重仁が列車内にあるコンパートメントの一つで一人景色を眺めていると、そこに三人の男子生徒が入ってきた。

 

「やあ。僕達もここに入ってもいいかな?」

 

「あっ、ハイ。別に構わない……って、ドラコじゃないか! それにクラッブとゴイルも! 久しぶりだね」

 

「ああ、久しぶりだね。シゲヒト」

 

「ウッス」

 

「オッス」

 

 コンパートメントに入ってきた三人の男子生徒達を見て重仁が嬉しそうに言うと、三人の男子生徒達もまた親愛の笑みを浮かべて返事をする。

 

 ドラコ・マルフォイ。

 

 ビンセント・クラッブ。

 

 グレゴリー・ゴイル。

 

 彼らは重仁と同じく今年ホグワーツに入学する新入生であり、重仁とは昔からの知り合いであった。

 

 日本人の重仁とイギリス人のドラコ達。同じ魔法族とは言え、国籍が違う四人が知り合いであるのは「名前を呼んではいけない人」が起こした闇の魔法使い達による内乱が大きく関係している。

 

 今から十年以上昔。「名前を呼んではいけない人」は「先祖代々魔法族である『純血』と呼ばれる者達だけが魔法界を統べるべき」という考えをもっており、内乱を起こした際に闇の魔法使いだけでなく純血の魔法族にも自分に従うよう呼びかけた。この呼びかけに多くの純血の魔法族が賛同して内乱に参加したが、内乱に否定的な純血の魔法族もまた数多くいたのだ。

 

 内乱に否定的な純血の魔法族に対して「名前を呼んではいけない人」は力と恐怖で支配しようとしたが、この時に純血の魔法族に手を差しのべたのが日本の魔法族である。

 

 日本の魔法族は内乱の鎮圧に協力するのと同時に、「名前を呼んではいけない人」に狙われていた純血の魔法族を自分達の故郷である日本へと亡命させて匿うことにしたのだ。

 

 ドラコ達の両親も、この時日本に亡命していた純血の魔法族であった。

 

 ドラコ達の両親と重仁の父親はホグワーツ在籍時の先輩後輩という関係で、その縁から重仁の父親はドラコ達の両親を日本に亡命させ、ドラコ達の両親は「名前を呼んではいけない人」の手から逃れることができた。そしてこの事がきっかけで、十年前に内乱が鎮圧されてからもドラコ達の両親はたびたび日本に訪れるようになり、自然と重仁とドラコ達は知り合ったのである。

 

「皆だったら大歓迎だよ。早く入りなよ」

 

「ありがとう、シゲヒト」

 

「シゲヒト! 持ってきてるか? 日本のお菓子!」

 

「俺達アレ食いたい! 『ウマウマスティック』!」

 

「ウマウマって……。いい加減名前覚えてくれよ……」

 

 重仁の言葉にドラコが笑みを浮かべてコンパートメントに入ると、同時に入ってきたクラッブとゴイルが重仁に菓子をねだってきた。それに対して重仁は苦笑を浮かべると、見た目は小さいが中は倉庫並に物が入る魔法の袋からある物を取り出した。

 

 重仁が魔法の袋から取り出したのは、大量の「◯まい棒」であった。

 

 それから重仁とドラコ達は◯まい棒を分けあって食べていたのだが、その時ドラコが何かを思い出して重仁に話しかける。

 

「そういえばシゲヒト、知っているかい? このホグワーツ特急に例の有名人、ハリー・ポッターが乗っているらしいよ?」

 

「っ! ハリー・ポッターが?」

 

 ドラコの言葉に重仁は驚いたように目を大きく見開いた。




やっぱり続かない
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