ホグワーツは毎年日本から留学生を招いているらしいです 作:兵庫人
「それでどうする? 今から探しに行ってみるかい?」
「いや、俺はいいよ。列車の何処にいるかも分かっていないんだろ? それに見せ物扱いされたら彼も可哀想だし……クラッブとゴイルは?」
座席から立ち上がり、列車にいるハリー・ポッターを探しに行こうかと聞いてくるドラコに即答した重仁は、自分達の隣で黙々と◯まい棒を食べているクラッブとゴイルに聞いてみた。するとクラッブとゴイルは◯まい棒を食べながら首を横に振る。
「いかない。ここでウマウマスティック食べてる」
「俺も。ウマウマスティック美味しい」
「……君達らしいよ」
重仁達の言葉を聞いてドラコは苦笑を浮かべると、ハリー・ポッターを探すの諦めたらしく座席に座り直して、自分も◯まい棒を食べ始めた。
そして重仁達がお菓子を食べながら雑談をしていると、突然彼らがいるコンパートメントの扉が開いた。重仁達が開いた扉の方を見ると、そこにはキングズ・クロス駅で会った眼鏡をかけた少年と赤毛の少年の姿があった。
「あれ? 君は……?」
「あっ! 君はあの時の!」
重仁を見て眼鏡をかけた少年は嬉しそうな顔となるが、一緒にいた赤毛の少年は反対に嫌そうな表情となる。
「うげぇ……! よりにもよってコイツらがいるなんて……!」
「いきなりご挨拶だね、ウィーズリー? でもそれは僕達も同じ意見だよ」
赤毛の少年の言葉にドラコは皮肉げな表情を浮かべてそう返す。
「? ドラコ、彼のことを知っているの?」
「ああ、前に一度だけ会ったことがある。彼の父親が僕の父上に付きまとっていてね。正直迷惑しているんだ」
「何だって! それは君のパパが闇の魔法の道具を集めているのが悪いんだろ!?」
「フン! 言いがかりは止めてくれないか、ウィーズリー。その証拠はあるのかい?」
重仁に聞かれたドラコが答えると、その言葉を聞いた赤毛の少年がくってかかり、彼とドラコとの間に険悪な空気が生じて、それを感じとった重仁が二人を止めようとする。
「二人とも落ち着いてくれ。こんな所で喧嘩なんかしても仕方がないだろ? ……俺の名前は猪牙重仁。君達の名前は?」
重仁が自己紹介をすると赤毛の少年は渋々といった感じで口を開く。
「……ロナルド・ウィーズリー。皆はロンって呼んでいる」
「僕はハリー・ポッター! よろしくね」
『『…………!?』』
赤毛の少年、ロンに続いて眼鏡をかけた少年が自己紹介をすると、重仁とドラコは驚きのあまり絶句して、クラッブとゴイルまでもが◯まい棒を食べるのを止めて彼の方を見た。
それもそのはず。まさかこの眼鏡をかける少年が、先程ドラコが探しに行こうと言っていた「あの」ハリー・ポッターだとは予想もしていなかったのだから。
「そうか……君がハリー・ポッターだったのか……」
「……うん。ロンからも聞いたけどやっぱり僕って有名みたいだね? それよりも駅ではありがとう。お陰で助かったよ」
どうやらハリーは自分がどれだけ魔法族の注目を集めているのか理解していないようで、重仁の言葉に複雑な表情で頷くと、それからキングズ・クロス駅でのことで礼を言ってきた。
「シゲヒト、駅で彼と何かあったのかい?」
「大したことじゃないよ。ただ9と4分の3番線の行き方が分からなくて困っていたのを見つけたから、行き方を教えただけ。だからハリーも礼なんて別にいいよ」
ドラコの質問に答えてから重仁がハリーに言うと、それまでじっと重仁を見ていたロンが話しかけてきた。
「ねぇ……? シゲヒト……だっけ? 君って日本人だよね? 兄さん達が言っていた。ホグワーツは毎年、日本から留学生を招いているって。それが君なの?」
「うん。そうだよ。今年、日本の魔法学校マホウトコロからホグワーツに留学するんだ」
「え? マホ……日本の魔法学校に入学してすぐにホグワーツに留学してきたの?」
何か誤解をしているハリーが言うと、重仁は首を左右に振って彼の言葉を否定する。
「いいや、違うよ。マホウトコロは七歳から入学することができて、俺も七歳の時にマホウトコロに入学したんだ」
「七歳で入学!?」
「じゃあ、もう魔法とかも使えるの?」
七歳で魔法学校に入学という情報にロンが驚きハリーが質問すると、重仁はもう一度首を左右に振った。
「いいや。本格的な魔法の授業はホグワーツと同じく十一歳から。それまでは基本的な授業をして魔法を学ぶ基礎を作るんだ」
「基本的な授業ってどんな?」
ハリーの質問に重仁は七歳から十一歳までのマホウトコロでの授業を思い出しながら答える。
「どんなって……まずは計算の練習をする算数だろ? 一般的な呪文とその効果を知る呪文基礎学。日本語と英語を初めとした外国の言葉を学ぶ語学。魔法族とマグル両方から見た世界の一般的な歴史と日本の詳しい歴史を学ぶ世界史と日本史。魔力を持った薬草について学ぶ薬草基礎学。魔法と魔法の道具を使わない錬金術のような理科。あとは剣道、柔道、家庭科、美術、音楽と……」
指をおりながらマホウトコロでの授業を口にしていく重仁に、ドラコは苦笑してハリーは目を丸くし、ロンとクラッブとゴイルは勉強漬けの毎日を想像したのか顔を青くしていた。
「面白くて優しい人だったね。シゲヒトって」
ロンと一緒にホグワーツ特急を探検していたハリーは、そこで再会した駅で自分を助けてくれた重仁のことを思い出しながら楽しそうにロンに話しかけるが、ロンの表情は暗かった。
「うん。そうだね……。でもハリー? 彼、シゲヒトに気を許さない方がいいかもしれないよ?」
「ロン?」
ハリーが思わずロンの方を振り返ると、ロンは視線を床に落としながら呟くように言う。
「僕の兄さん達は全員ホグワーツに入学していて、それでいて全員日本の留学生の友達がいるんだ。兄さん達は日本の留学生達をベタ褒めするんだけど、ビルとフレッドとジョージは『お祭り好きで楽しく騒ぐ時の最高のパートナー』、チャーリーとパーシーは『とても勉強熱心でルールを大切にする真面目な友人』って、言っていることが正反対なんだ。いくら何でもこれって変じゃない? ……それにさ?」
「……」
ロンの言葉に嫌な予感を覚えたハリーは、無言でロンの言葉の続きを待った。
「日本からの留学生は全員、『スリザリン』の寮に入っているんだ。スリザリンの寮は闇の魔法使いを多く出したことで有名で、シゲヒトもきっとスリザリンに入ると思う。だからハリー? シゲヒトには気をつけた方がいい」
やっぱり続かない