お弁当…また食べたいから   作:5の名のつくもの

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終焉を始めよう

宇宙空間にて、ある意味停泊しているヴンダーは艦の外で最終決戦の準備を整えていた。最後の決戦たる地は穢れ無き、祝福を受けし者しか立ち入ることが出来ない。したがって、穢れがある者たちは地上からではなく、宇宙からの大胆不敵な奇襲を仕掛けるしかなかった。奇襲は今は亡き自分勝手な男が遺したモノがあって、何とかの辛うじてで敢行が可能になる。

 

作業を監督する幹部クラスの人間と最高指揮官とその副官は、艦橋で切羽詰まった声の報告を受けることになる。

 

「NERV本部及び黒い月が移動を開始!セカンドインパクトの爆心地、南極に向かっています!」

 

「始まったわね」

 

「30分後には全ての作業を終了し、本艦は直ちに南極へ向かう。全てのカオスにけりをつけるため、我々は総力を以てアディショナルインパクトの不可逆的な阻止を狙う」

 

ヴンダー艦長にしてWille総司令である葛城ミサトの鶴の一声によって、艦の外を含めた全ての作業が30分後に終了される。そして、直ちにヴンダーは南極への奇襲作戦を発動させることになる。贅沢を言えばもっと余裕を持って動きたかったが、ノロノロしてインパクトを起こされては元も子もない。強引にでも出撃し、命を散らして全ての決着をつけるのだ。しかし、実際に作業を行う下位職員からは不満の声が上がって来ていたが、それらは監督する幹部職員が一蹴した。とにかく、早くしろと作業スピードを挙げろと檄を飛ばしていた。

 

その頃、彼らは。

 

「警報音…出撃のようね」

 

「さて、行きますか」

 

出撃が近しいことは前々から分かっていたため、元々のエヴァパイロット2名は準備を整えている。穢れ無き地やカオスの集積地でも満足に動けるために作成された特製のプラグスーツを用意し、今こそ着用する時が来た。普段(赤とピンク)身に着ける物では生命維持機能や汚染の防御などが不十分で、南極で動くには辛いものがある。そこで用意された物は白を基調として、所々が発色している。ゴージャスと言えばゴージャスなのだろうが、見方によっては死を覚悟した装束でもあった。

 

「悪いね。君の分は用意できなくて」

 

「僕はいいよ。むしろ、この格好がいいんだ」

 

「人を捨てたシンジならプラグスーツが無くても大丈夫でしょ」

 

この専用スーツは少女2人分しかなく、もう1人の少年の分が無かった。不親切とかではなく、単純に彼が死地へ赴くことは想定されていなかったためである。艦には乗っていても、基本的に監禁状態にいてもらう。運命は艦と共にしてもらうつもりだった。いいや、そんなことを問屋が卸すだろうか。卸すはずがなかろうて。

 

彼は艦なんて、どうだってよかった。

 

滅ぶときは皆一緒に。二度と離れることはないと3人は誓った。アスカ、マリ、シンジは契りを結んでいたのだ。誰も置いていかない、誰も先に行かせない、誰も死なせない、万が一のもしもの時は誰も生き残らせない。生きるときは皆で生き、滅び行き死するときは皆で死する。

 

したがって、シンジも穢れ無き地に降り立つことを選んでいた。

 

「あ、見ちゃう?」

 

「こんなことを言うのは憚られるけど、今回は許して欲しい。最期に目に焼き付けておきたいんだ。お互いを」

 

シンジは最早私服と化した中学時代の制服に身を包んでいるから着替えの必要はない。だが、2人は絶対に着替える必要があった。通常時ならシンジが退室するのだが、退室は原則許可されていないので出れない。逆に2人も同様なので密室にいるしかなかった。つまり、何をどうしても見るしかないのだ。マリは茶化したが、シンジは悲壮な笑顔で言った。これが最期になるかもしれないからと。彼の意を掬って両者は何も言わずに着換えを行う。少年は他意が無い、屈託もない笑顔で、終わりを迎える仲間を目に心に焼き付けていた。彼にとっての集合写真だった。

 

傍から見れば不健全だと怒り狂いそうな光景でも、それに対して何て失礼なことを言うと断罪できる。彼らの身にもなってみろ。世の中の誰が彼らを縛れるか。人は当たり前として、高貴な神であっても彼らを邪魔することは万死に値する。

 

数分程経ち、着替え終わった。両名はプラグスーツに身を預け、シンジは着慣れた制服に安堵感を覚えていた。しかし、ここから先が問題である。

 

「どうしようか…一緒に行けばすぐにバレる」

 

「2人とも先に行けばいいんだよ。出撃の時に2人だけで、部屋の僕だけが残れば全く怪しまれないでしょ?」

 

「でも、それじゃシンジは…」

 

「アスカは心配性だなぁ。とにかく大丈夫だから。後で合流しようね」

 

アスカは納得がいかないと怪訝な表情を示すが、シンジは朗らかに笑っていた。清々しい笑顔をしていた。だが、アスカはその笑顔には騙されない。彼の笑顔ほど眩しくて心が温まるものは無いとしても、今は話が別だった。流されないぞと不退転の姿勢でいた彼女は、妙技な彼の奇策に溺れることになる。

 

「おほ~青春っていいねぇ」

 

アスカの口は彼の口によって塞がれることになった。驚いて後ずさったタイミングで追撃を仕掛ける。左手で彼女の背中から頭にかけてを支え、右手で優しく頭を撫でてあげた。マリは興奮しているが、ひとまず除外しておく。

 

長い口づけが終われば、アスカの表情は和らいでいた。

 

「ね?」

 

「わかった…絶対に来なさいよ」

 

「うん。ほら、早く行かないと。怪しまれちゃうよ」

 

シンジは2人の退室を促した。出撃のアナウンスが入ってからそこそこ時間が経っているため、一時の別れを惜しみすぎると違う方面で危険になってしまう。やむを得ないが、これ以上は打ち止めであった。忘れ物が無いことを入念に確認してから、アスカとマリはエヴァがあるブロックへ移動する。部屋の中に残されたシンジは一旦ベッドに座り込んで、寂しい感じをアピールする。まだ、部屋は監視がされている。合流目的で急に動くと反逆の意思ありと見られかねない。

 

「まだ早い…」

 

それから暫くして、ヴンダーは宇宙上のドックから出撃した。南極に向けて急降下の体勢で自然落下の力も使って推進力との相乗効果で一気に突入する手筈である。ただし、その前に後を生きる者たちが少しでも生きながらえるように種子保存ユニットを射出する。これがあれば、仮に全滅しても第三村などの生存者達が再起を図れる。

 

それも全てを射出し終わり、もう何もやり残したことがなくなった。

 

後は、戦いに挑むだけ。

 

大気圏へ突入して一気に南極圏に入り込む。その時間は極めて危険な時間となるため、職員の多くは配置先で何かにしがみ付くしかない。艦橋にいる者も例外ではなく、手すりに掴まったり、ベルトを着けたりして体が吹っ飛ばされないように注意していた。幸いなことにヴンダー持ち前のパワーの甲斐あって大気圏突破は万事滞りなく終わる。

 

後はセカンドインパクトの爆心地へ一目散かと思われたが、突如として敵反応を捉えた。結界を破って姿を現したのは、絶望を司る巨大なアダムスだった。

 

血みどろの最終決戦が幕を開ける。

 

同時期のヴンダー艦内では、1人の少年がほっつき歩いていた。

 

彼女たちと(現地で)合流を果たすために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、立ちはだかる者ありけり。

 

「碇さん!」

 

続く

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