お弁当…また食べたいから   作:5の名のつくもの

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少女の献身と愛

「結構歩いたが、やっと到着だ。ここが我が家さ。旧二俣線の無人駅を使わせてもらってね。更に、自分でサバイバルDIYをしたんだ。まぁ、決して豪華絢爛とは言えないけど、家が無いよりはマシだろ。さ、入った入った」

 

シンジらが到着した土地は、ニアサー並びにサードを生き抜いたほんの一握りの人々が安寧に生きるシェルターだった。名前は簡単で第三村と呼ばれており、ここで暫くお世話になる。ただ、大多数の人が暮らす中心部からは少しだけ離れた無人駅、彼の旧友の家に居候することになった。本当なら奇跡的な再会を祝したかったところだが、シンジの状態は最悪に尽きている。そんな状態でお祝いなんて、もっての外だろうに。気分を上げるためにワイワイすることが考えられるかもしれないが、それは周囲の人(本人以外)のエゴでしかない。ゆっくりとした時間を過ごさせることが一番の療養になるはずだ。

 

「今から夕食を用意するけど。うん、そうだな。碇の隣にいてくれ。俺は夕食を食べ終えたら発電機を見てるよ」

 

「サンキュ。ケンケン」

 

家に帰るなり最低限の衛生対策をすれば、時間的に夕食となろう。しかし、どう見ても食べられそうもない少年が1人いるのである。健常者2人で夕食をとることは、彼を置いてけぼりにしてしまう。少女の方は訳ありで食事は不要だが、心の繋がりとして人間の営みは捨てていなかった。しかし、そうも言っていられない。そこで、旧友は気を遣わせて少女には少年といるように促した。少女は感謝して、とにかく彼の療養に献身する。

 

「ほら、あたしの寝床よ。まさか、地べたにシートを敷いて寝かせるなんてしない。私と一緒に寝ることになるけど、むしろ喜ばしいわよね」

 

寝床と言っても簡易的な物で、寒さをしのげるぐらいの設備しかなかった。いいや、贅沢なんて言えない。こんな世の中で雨風から身を守れて、食事を貰えるだけの場所があるだけ極上の贅沢だ。常人ならそう考えるかもしれないが、感情と思考を捨てた少年は何も感じていなかった。

 

いや、本当か?実は、最愛の人と一緒に生きられることについて何かを感じた(考えた)かもしれない。

 

(ちょっとだけ。表情が穏やかになったかな?)

 

身体は健康でも、体調はいつ急変してもおかしくない。だから、表情を含めて全身をくまなく、じっくりと見る。いやらしい?冗談はご勘弁願おうか。れっきとした、少女の心も身も尽くした献身なのだ。それが功を奏しているのか、少年の表情は極々僅かに穏やかさを持ち始めている。ただの見間違いじゃない。誰よりも少年を理解し、誰よりも愛するからこそ分かる。これは絶対。

 

「シンジは色んな意味で疲れたでしょ。今は横になっていてね。ただ、あなたは食べないと生きていけない。水と携帯食料(レーション)を持ってくるから、ちょっと寝ながら待ってて」

 

寝かせた少年に布を被せて、自分は同居人の所へ向かった。これからの予定を確認することを兼ねて、食料と水を受け取りに行ったのだ。さて、簡易寝台に寝かせてもらった彼はもぞもぞと動き始める。アルマジロのように体を屈め、頭を両足に埋めた。よく見て見れば、体が携帯電話のブルブルと同じ動きをしている。幸いにも痙攣の症状じゃなくて、単に泣いているようだ。そして、耳をすませば。何かが聞こえてくる。

 

「みんな…優しい。僕を虐げない」

 

シンジは14年の眠りから目覚めた時からの事を思い出していた。目覚めてから彼はどこへ行っても虐げられるだけだった。今こうして介抱してくれているアスカにも、一度は殴られている。ただ、彼女から思いを受け取ったことで、それは水に流しているので無問題。それに、過去に自分がしてしまったことを鑑みれば、納得もできる。それでも、その事以外ばかりは辛かった。NERVに戻って理解者が得られたが、自分のせいで失った。むしろ、自分が手を下したと表現しても過言ではないだろう。

 

それが今はどうだ。第三村に来てから旧友との再会もあったが、誰もが皆が自分に優しいではないか。否定され、傷つけられ、拒絶されて来た彼は他意が無い純粋な優しさを受けた。ぶっちゃけてしまえば、生きて来てここまで優しくされたことは無い。心を押し殺することで何とか耐えて来たものが溢れ出してくる。感じたことが無い感情によって、彼は自我を制御できなくなる。

 

その時だった。

 

「!!」

 

彼はクルッと180度回転した。もちろん、彼が自ら寝返りを打ったのではない。外からの力による。反射的に

己を隠すためにより一層顔を埋めるも、あえなく引っぺがされた。強制的に真っ正面を見させれ、そこには慈愛に溢れた少女の顔がある。

 

「泣いたっていいのよ。大丈夫。ここにはシンジを害しようとする人は誰もいない。それに、私がいるって言ったでしょ。信じられないなんて言うなら、行動で示すから」

 

そう言うと隙を与えない速攻で、唇と唇を合わせた。軽くなんてチャチな代物ではなかった。長く、深く、まさに愛に溢れた接吻であった。

 

「まだ泣くなら、今度は舌を入れるわよ」

 

「ア…アスカ」

 

少年は突然の事態に驚くしかなったが、さらに追撃を受けることになる。意識を思考から現実に戻して、眼前の少女の姿をまじまじと見つめた。14年前と変わりのない姿だったが、それは一糸まとわぬ、美しき少女の裸だ。

 

「こうした方が温かいでしょ?どうせ寝られないし、こんな体を預けられるのはシンジだけなの」

 

「あ、ありがと」

 

恐ろしくか細い声だったが、ちゃんと少年は少女に感謝を伝えた。これだけで素晴らしい進展があった。それを受けて少女は嬉しそうに笑って、少年を己の裸体で包む。

 

もう、離れない。もう、離さない。

 

それを体現していた。

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