推しはおじさん
水着ホシノがクッソほしいので書きました
まぁ、まだ出てこないんですけど。
・加筆修正
5/25 生徒の呼び名を漢字に固定しました!
第一話 Yの眼差し/先生はハードボイルド(自称
「…」
深夜、森林を走る男、言葉なんてものは、今の彼には存在しない。
考えていることは、自分をこんな目に合わせた誰かを恨む事だけだ。
「…ハァ…ハァ…」
息が詰まる。
血の味がする。胃が潰れたみたいに気持ち悪い。
「…ハァ…」
途中、都合よく隠れ蓑を見つけた。ちょうどよいので、隠れることにした。
「…ふぅ」
周りには自分しかいない。あるのはべちゃぁ、とこべりつく生ぬるいアカと、自分を貫いてしまいそうなくらいざぁざぁと降る雨だった。
それがあまりにも心地よく、今までの生死の現場を忘れさせてくれそうだ。
茂みの中で、今もぐしゃぐしゃであろう
ふと、考えた。俺はなぜ逃げてしまったのだろう。もう、取り返せない過ちだというのに。
もしかしたら、俺は頭が狂ってしまったのだろう。そんな俺を許してしまいそうな自分を、心底憎んだ。
『何言ってんだよ、このクズが。』
誰かがそんな事を言った気がする。あぁそうだ。オレは罪人だ。
人の人生を奪っておいて、今も平然と生きてやがる。
『とても生きてはいられない』
『なんでお前は生きているんだ。』
『あの人の代わりに』
あぁ、そうだな。やっぱり、そうだよな。
-
刹那、眩い光と共に、緑と黒の閃光が映る。
自分でも何を思ったのか、ふと、後ろを振り向くと。
-あぁ、とてもきれいだ-
一言、そう呟いた気がする。今日は風がよく吹く日だ。銀のマフラーが激しく舞う。
罪人を射抜かんとばかりの赤い目は、今の自分にとてもよく効く。でもそれ以上に、優しい目をしていた。
黒と緑のアンバランスなカラートーンは、まるで半分別の人間が中にいると勘違いしたくらい、雰囲気が異なる。
とても歪ではある。ただ、それさえ一種の芸術に思えた。
仮面ライダー、この町の切り札。風の噂で聞いたことがあった。
何故こんな事を今思い出したのか、わからない。
でも、本当に自然だったんだ。
きっと、生涯忘れることはないだろう。
きっと、これが本当に美しいものなんだ。
-いつか…あんな風に…-
プツン、と。
意識は切れた。
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連邦捜査部「S.C.H.A.L.E」通称シャーレ。ここはキヴォトスの行政組織、連邦生徒会を率いる生徒会長。
彼女が失踪する前に、先生である僕の活動拠点として誕生した機関の事だ。
主な業務としては、先生である僕を顧問として、キヴォトスに住んでいる生徒たちの相談に乗っかり、それを解決していく。
まぁ、師匠風に言うならば「ハードボイルドな探偵事務所」なのだろう。正直、話の6割は結局何が言いたいのかわからなかった。
僕はつい先日、そんなシャーレの先生となった。
その日は、サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すため。
その影響か、生徒たちは、僕の事をそれなりには歓迎してくれている。連邦生徒会の人たちとも、一応話せてはいる。
時折僕が奇妙な目を向けられることもあるが、それに関しては目をつむっておこう。
さて、そろそろ本題に入りたい。
僕は今、冬の真っ只中、キンキンの床に座っている。いや、正確に言うとするならば「正座させられている」のだ。
なぜ2日目でそんな状態になっているのだろうか。
私にはわからない。
特に何か悪い事をした覚えはない。というかこんな短時間でいきなり悪い事が出来るほど、僕のハードボイルドは尖っていない。
では、なぜ僕は、ついさっき手伝いをしに来てくれたであろう。彼女、
「先生、あなたバカなんですか。」
あぁ、笑っている姿はどんな怪物よりも恐ろしい。
美少女の笑顔はこんなにも画になるんですね。
「資金全部使ってェ!シャーレを探偵事務所にするとか…」
「大バカなんですかぁぁぁぁぁぁぁ‼」
バカじゃないもん、僕。
ハードボイルドだもん。
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そう、僕こと先生。この度探偵事務所を設立することにいたしました。
その名は「シャーレ探偵事務所」と。
ユウカ達と別れた後、最初に思った。
--ここはハードボイルドじゃない。今すぐ僕好みの空間にしなければ。--
思い立ったが吉日、建築業者に最速プランを依頼する決心をした。
さすがのアロナも、僕の決断の速さに唖然としていた。
まぁ当然だろう。彼女はシッテムの箱の中にいるAI。
いくら知識として「ハードボイルド」を学習していても、僕という本物を見たことがない。
そして、アロナは現実に戻ってきた途端に、僕に反論をかましてきた。
「本気で言ってるんですか先生!いきなりシャーレを改装するなんて…」
「うん、マジよ。」
「一応、生徒会長さんが作ってくださったんですから。しばらくこのままで…」
「なぜだいキャサリン?
これは魂の叫びなんだ。」
「こんなことに魂賭けないでください!」
「あと私はキャサリンじゃないです!アロナです!あ・ろ・な!」
そんなキャサリンの冗談を流しながら、業者に依頼する準備を整える。
観念したのか、これから鉛でも飲むかのような顔をしているキャサリンは言った。
「…わかりました、改装は許します。場所はどこですか。」
「え?シャーレ全部」
「バカなんですか!そんな事したらシャーレの資金吹っ飛びますよ!」
そんなこと知るか、これからシャーレをかっこよくするんだ。
あと僕はバカじゃない。ハードボイルドだ。
「考えなおしてください!せめて一つずつゆっくり改装してください!」
「…ねぇアロナ、探偵に必要なのはなんだと思う?」
「はい?なんで探偵なんですか。」
「いいから、早く答えてよ。」
「…ターゲットを追い続ける根気とか?」
「違うね。」
「…調査に必要な資料とか?」
「それも違う。」
「うーん…じゃあ何なんですか。」
「それはな…」
「ハードボイルドさ、だよ。」
「何言ってるんですか、このバカは。」
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そんなこんなで、無事にアロナを物理的に黙らせ(シャットアウト)
業者様に依頼も無事成功。結果として、現在絶賛工事中なのだ。
なので、今現在シャーレの事務所は使えない。
では、僕と早瀬はどこでお説教タイムを行っているのか。
答えは、ミレニアムサイエンススクール。ハヤセが今現在通っている学校だ。
部屋の中には、多数の実験器具とレポート。ともかく書類が多い。
なのに、びっちりと礼儀正しく積まれてあった。
「…」
「…」
お互いに声を出さない。時計もデジタルなので、周囲の音さえない。
そんな静寂のみが支配している世界の中で、声を出すのは至難の業だ。
というか早瀬が怖すぎて声が出ない。
「…それで?」
「…?」
意味が分からなかった。それで?と言われても。
別に自分は何か悪い事をしたつもりはない。
これは仕事に必要な事なのだ。僕がこの仕事に対して最もやる気を出せる空間を作っただけなのだ。
「…後悔はない…今までの行いに…これから起こる事柄に…僕は後悔はない…」
「先生が後悔してなくても私が後悔してますよ!ほんっと、なんでこんな人を生徒会長は選んだんですか…」
おいおい、そりゃあないだろ。
「オイ!オイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイ、オイ!」
「生徒会長の目が節穴みたいな言い方はないんじゃないか、オイ。」
「この態度を見れば、節穴かどうか一目瞭然ですよ…」
失敬な、生徒会長を馬鹿にしちゃあいけない。
僕の為にこんな資金を用意してくれた人間だ。さぞ素晴らしい人間性を持っているに違いない。
美人さんで、優しくて、僕のかっこよさを理解してくれる人間に違いない。
「なんですか…その目。」
「うん?その目とは?」
早瀬は、本当に釣り針で吊らせているのではないかと勘違いしてしまうほどの釣り目がピクピクしていた。
…何か僕に対する侮辱を感じたが、あえて黙っておくことにする。
すると、もう諦めたらしい。今まで、ガッチリと脇に閉まった腕を解き、ため息をつきながら言った。
「はぁ…もういいです。」
あ、もういいんだ。
「それで、リフォームの間はどこに住むんですか。」
「いや、野宿だけど。」
「はい?」
早瀬はクリクリした目をぐわッ、と開き。
「…」
「…」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
今日、一番の声を放った。
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【あなたのお悩み解決します。 シャーレ探偵事務所】
こんな看板をバイクに引っさげるのも、2日が経った。
確かにハードボイルドではない。僕としても死活問題なのだが仕方ない。
こうも言ってられない状況なのだ。あの魔王の「資金を作るため今から何が何でも依頼者を増やせ!」
という命令に乗っ取り、今現在は依頼者を増やすために宣伝中なのだ。
最初は勿論、奇異の目を向けられていた。
それはそうだろう、だってハードボイルドじゃないもの。
こんなカッコいいバイクに引っ提げているのは、プラスチックで出来ている質素な作り。文字も正直やわらかくてかわいい感じになってやがる。
端的に言うなら、センスのない看板なのだ。でも、文句を言うと早瀬にどやされる。
その上、俺のハードボイルドなバイクを勝手に売り払うなどほざきやがった。嫌がオウにも逆らえん。
ただ、それは最初の話。
「おう、先生。今日も寒いな。」
「あぁ、今日も寒いよ。」
最近では話かけてくれる奴らも増えて、軽い挨拶をする程度の仲に慣れた。
「おはよーせんせー。今日もカッコイイねー。」
おぉ、未だに名前は知らんが僕の愛しい生徒が挨拶をしてくれた。
「おはよう。そりゃそうだよ。だって僕はハードボイ」
「おはようございます。先生。」
「げ」
あぁ、今日も
「げ、とは何ですか先生。せっかく私が毎日様子を見に来ているっていうのに。」
今日も空は青いなぁ…失礼。
そう、僕がこうしてホームレスもどきをしている間。なぜか早瀬、羽川、火宮、森月の4人は様子を見に来てくれたりした。
どうしてかと聞くと「何をしでかすかわからないから」とか「寒そうだから差し入れを用意した」など理由は様々である。中には「自分の学校に来ていただければ。」というお誘いを受けることはあった。だが、それは自分のポリシー的にしたくない。自分の責任は自分で負うものなのだ。少なくとも、どんなにクズに落ちたとしても、生徒を利用するつもりはない。「自分を頼ってくれた人間だけは裏切らない、利用しない。」師匠の教えである。生徒の頼れる先生として、一人の人間として、それをするつもりはない。後生徒のヒモみたいな感じだから嫌だ。
「先生、依頼は来ましたか?」
「いや、全然。」
確かに、このままではジリ貧だ。資金は改修費に全て使ってしまったので、あるのはバイクと自前のスーツだけだ。
さすがにこのままじゃまずいとは思っている。でも、依頼者が来る様子は全くない。
このままじゃ完全に話せるオブジェ扱いになってしまう。なんとしてもそれは避けたいところだ。
うーん…何か打開策はあるのだろうか。とりあえず看板は変えるべきだ。
あの看板のおかげで僕の頼もしさが薄れてしまっているに違いない。早急に変更すべきだ、うん。
「はぁ…わかりました。」
「おぉ、ついに看板を取ってくれるんだね。君ならわかってくれると思ったよ。」
「違います」
え、違うの。じゃあ何がわかったんだい。
「私から先生へ、依頼をします。」
とても真剣な顔をしながら、早瀬はそう言った。
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「なぁ早瀬」
「なんですか先生」
「君、僕に真剣な依頼があったんじゃないの。」
「えぇ、とても真剣な依頼ですよ」
「へぇ…でもさ」
「…?」
「なんでずっと町歩いてばっかなの?」
そう、僕たちはミレニアムの街中を回っている。早瀬がいつもとは違う真剣な眼差しを向けてきたと思い、これは真面目に聞こうと思った。だがしかし、その実態は町の散策であった。せっかく依頼が来たと思ったら、とんだ表紙抜けの依頼だ。
「先生に私たちの都市をもっと知ってもらうためです。」
「うっそだぁ、ホントは違うんでしょ。」
「そんなことないです。」
…本当かな?少なくともこの4日間、早瀬の行動を見る限り。彼女はいいやつではあるものの、こうして暇つぶしみたいな事を進んでするとは思えない。
何かしら他の目的があるはず。それに、あの目は何かある。そんな気がしてままならなかった。
「…そっか」
「はい…本当に散歩するだけです。」
「…じゃあさ」
「
「…それくらいいいじゃないですか。人間観察ですよ。」
まぁ、それはそうなのかもしれない。でもな、気づいちまったんだよ。
「別にそれは悪い事じゃないよ。でもさ、目ってのはその人が何か隠しごとをしている時。」
「ほとんどの人は隠している本人と目を合わせることが出来ないんだよ。」
「へぇ…そうなんですか。」
「…」
そう、早瀬は依頼を告げた後。僕の顔をほとんど見ていない。隠し事っていうのも勿論だけど、それ以上に気になることもある。
「君が僕を見なかった。いや、見る余裕がない理由があった。」
「それは目を離した瞬間、すぐに見逃してしまうという可能性が非常に高い。」
「人の動作の中で、最も見逃しやすい部分は手だ。一瞬で証拠を隠せる上に、人の手を見る人間なんざそうそういないからね。」
「つまり、君は手に持てる何かを探しているんじゃないかな。違うかい、早瀬。」
「…」
早瀬は目を見開き、口を開けていた。正に超びっくり!みたいな顔をしていた。
すると、観念したのか
「…素晴らしいですね、先生。私の目的が見破られるなんて…さすが生徒会長に選ばれた人です。」
「いやめっちゃわかりやすかったよ。早瀬はわかりやすいなぁ。」
「…」
早瀬は急に"は?"とも言わんばかりの顔をしながら
「先生のバイク売りますね」
「ちょ、いやちょっとまって。ちょ、おい。」
「やめろ、僕のバイク持ってかないでぇぇぇぇぇぇぇ!」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
感想、高評価お待ちしてます!
次回
第二話 「Yの眼差し/捜索開始」
お楽しみに!