-Double Archive-   作:幸田市

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待たせたな(n回目)

色々悩んだが…やっぱりこれしか思いつかんかった…

体操服ユウカとマリーはゲットしたものの、天井は痛すぎたYO…

次のイベントもアツそうっすなぁ…やっぱブルアカ最高すぎひん?




第十二話「Sに願いを/遠い星は砕けない」

 疾走る、疾走る。無数にわたる拳の応酬を、イナズマのように回避する少女。小鳥遊 ホシノは、目前の怪物「ドーパント」に対する効果的な対策を発見できずにいた。

 

『…これは骨が折れそうだねぇ。』

 

いつもなら柔らかい笑みを浮かべ、作業のように敵を処理する彼女。だが、そんな余裕が消え去るくらいこの状況はあまりに危険であった。

 

 数分前、先生からのアシストを受けた彼女とドーパントのワルツは、濃密なまでの心理戦と共に回り始めた。生半可な死線を潜ってきたものなら潰される程度の威圧、現状の視界から確認できる武装と戦略の全てを彼女のデータベース(脳内)へアクセス。あぶりだした結論はただ一つ、それは「拳によるインファイト」であった。

 

 この結論が出たという事は、それ以外の武器を持っているという可能性が上昇。最低でも武器取り出すための数フレームの瞬間に隙が出来る。間合いを意識し、冷静な対応を取ることが出来れば後輩を助けることが出来る。彼女はそう判断した。

 

 しかし、それを遮ったのは「経験」であった。

 

『本当にそうか?』

 

 幾戦にも及ぶ戦闘経験は、彼女の視覚情報を踏まえた結論をたった一言で悉く否定して見せた。実際にそういった隙を敢えて作る敵と対峙した経験もこの疑問を後押しする形となった。少々疑りすぎる節はあるが、どんなことにも絶対はない。それは戦闘という行為も例外なく、もし相手にリーチ差を補える要素が存在すれば…もし相手が自分の後輩を盾にしたら…考えれば考える程、沼に嵌ってしまう思考回路。

 

 普段ならば冴えた思考が、後輩の命の手綱を握っているという事実に雲隠れしてしまう。失う怖さを知っているホシノにとって、それは何よりも致命的な事であった。

 

 このバケモノに立ち向かうというだけでも思考が狂いそうな上、後輩救出の手段も考えなければならない。先輩というのは、かつての自分が思っていたより辛く苦しいものだという事に、どうしようもなく嗤ってしまいそうになるホシノ。

 

 すると、距離を見誤ったのかはわからない。ドーパントの拳が髪の毛の先につきそうなまでに近づいていた。咄嗟に膝を曲げ、拳が当たると予想するラインを回避。さらに反撃の態勢を取るため骨盤左に愛銃「Eye of Horse」を構え、一気に銃口を心臓部分である左側胸部へ押し付ける。

 

「…!」

 

瞬間、顔をあげたホシノと目線が合う。その凍り付いた視線をその身に受け、思わずたじろぐドーパント。その一瞬を少女が見逃すはずもなかった。

 

装填済みの弾丸、二発を胸部に放ったが、一発目でヒビが入った、二発目は無傷。命中したはずの胸部の亀裂が、今もギチギチと何かを目覚めさせようとしている。コンマ二秒ほどでこの行動が危険と理解した彼女は、対象を胸部から頭部へと変更。ショットガンの衝撃で正気を取り戻したドーパントは咄嗟に腕をクロスし、防御の姿勢を取った。

 

 だが、その行動こそが彼女の狙いだという事。それに気づいた頃には、ドーパントの右肩には何も残っていなかった。

 

「悪い、この子は僕の生徒だからね。」

 

 スパイダーショックのヒモに巻き付かれた黒見 セリカを、お姫様だっこの状態で抱える先生。完全に虚を突かれたドーパントは思わず彼の方を向いてしまった。

 

「…」

 

瞬間、ドーパントの意識は顎部分への衝撃と同時に、プツンと切れた。

 

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「ここを離れよう、またいつドーパントの意識が戻るかもわからない。」

 

 先生はセリカちゃんを背負ったまま、自身のスタッグフォンテンキー「1・3・#」を押した。私としては、こんな危険な状況で携帯をいじる場合ではないと言ってやりたい気持ちがあった。しかし先生の冗談のない表情を見て、この状況で必要な事だと察する。何をするかは自分の範疇にあることなので理解はできないが、少なくとも全てを任せることはとても心苦しかった。せめて自分の後輩くらいおぶらせて欲しかったので、先生に一言告げてセリカちゃんを背負う。

 

『…随分大きくなっちゃったねぇ、セリカちゃんも』

 

 一年の時よりも一回り大きくなったセリカちゃんに引っ張られ、こけそうになる身体を支えるため腰部分に力を加える。すると先ほどまで不安定だった重心が安定。なんとか状態を維持できる程度には体力があった事にほっと息をつく。

 

 時刻は夜23時、いつもならばとうに寝ている時間。だが、まだここは危険地帯である以上、安易な思考が死をもたらす。倒れたドーパントの異変にすぐさま気づけるように、決して対象から目を離すことはない。そうこうしている内に、先生が私の隣へと来た。

 

「ありがとう、小鳥遊。今度は僕が。」

 

「大丈夫…と言いたいけど、アレ強いからねぇ。おじさんもセリカちゃん守りながらはキツイかも。

…セリカちゃんの事、任せたよ先生。」

 

「あちゃあ、これは大事なもの背負わされちゃったか。」

 

 先生は少し崩した笑顔を見せながら、割れ物のように優しく抱える。先ほどまでの凛々しい瞳とは違う優しい瞳だった。

あの子を優しく抱える彼は、まるで子を慈しむ親のような表情をしていて少し心の芯が温まる。

 

 

 

 

 

 

 

しばしの沈黙の後、私は先生に切り出す。内容は先ほどの発言との矛盾の件についてである。

「…先生、いろいろ聞きたい事があるんだけどさ。なんで今すぐ逃げないの、また目覚めたら今度こそ手に負えないよ。」

 

 彼はその疑問に対し、特に驚きも感じない表情だった。大方、私が疑問を持ちかける前からその答えを用意していたのだろう。

 

「最初はそれが最適解だとは思った。けど、それは徒歩かバイクによる手段しかない。バイクは論外、4人を乗せる事は不可能だしね。」

 

先生が視線をバイクへ向ける。これは私も理解できた。だけど、徒歩以外の策がない事も、この状況で理解できるはずだ。

 

 

「そしてここは一直線の道、ドーパントの多くは人間である以上、どんなに逃げた所で道の先に必ずいると考える可能性もある。森の中に入れば一時的な避難は可能だ。だけど逸れる可能性も、遭難する可能性だって十二分にある。生き残るために逃げるはずが、却ってそれが困難な状況になるんだ。」

 

 残酷なまでの客観的事実に、思わず俯きそうになる気持ちを抑える。

 

 

『そんな事を考えるのは、本当にどうしようもなくなった時!』

 

 一瞬でも絶望の沼に引き込まれかけた自分に喝を入れる。こんなザマではあの人に顔向けできないし、何より自分で自分が許せなくなる。だから最後まで諦めたくない、どんな手を使ってでも後輩だけは助ける。例えそれが、自身の破滅を招くことだとしても。

 

 私がそう決意し、改めて先生の話を聞こうと顔を向ける。

 

「…大丈夫?どこか痛むとか…」

 

 先生は急に、というか今更そんな事を言い始めた。なんでそんな事…まさか!?

 

「ごめん先生、もしかして…怖い顔しちゃってたかな私。」

 

「…!

ああいや、まぁ…その…」

 

「…」

 

 言葉を濁してはいたが、どうやら私の予想は当たっていた。

 

「…」

 

「もしかして…見られたくなかったかな。だとしたらごめん!」

 

 先生は私が気に障ったと勘違いしたのか、90度ぴったりの綺麗な謝罪をした。質、速度ともに良質すぎて、もはや狙ってやったのではないかと勘違いしてしまうほどだ。もしかしたら、こと謝罪において彼は天下を取れるのではないだろうか。

 

 閑話休題。

 

 先生は私が怒っていると勘違いしているが、実際はもっと別の事だ。『私はまだ彼と出会ったばかりだというのに、何故こんなにも本音を表に出したのか』という自身への疑問だった。いつもは部外者、ましてや大人ともなるとどこで私たちを騙そうとするかわからない。なのになんで今更、こんなに自分を出してしまいたくなるのか、彼に心を許してしまいたいたくなるのか…私を見ているようで、本当は誰も見てない瞳に狂わされそうになる。

 

『やっぱり、大人は嫌いだ。』

 

まるで子供の癇癪じゃないか、私。

 

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「えーっと…話の続きをしていいかい?」

 

「うん、大丈夫だよ。」

 

「…そっか」

 

先生は気づいていた。彼女が仮面を付けなおした事を、だがそれを指摘する必要もないと思った。無理に距離を詰める事は黒見と同じ事になるだろうと判断したからだ。

 

「早速話の続きを…と思ったんだけど、噂をすれば…」

 

 彼はそう言い、一本道の方を見やる。小鳥遊もワカモも視線を合わせると…

 

「あの巨体…まさか!」

 

「…え?わかるのワカモ。」

 

「…最近シャーレに来た『アレ』かと思ったのですが…」

 

「なんでわかるの君…」

 

「あなた様の事なので♡」

 

 黒いボディに赤い瞳のようなバイザー、その上には二本のアンテナが出ている。中心には銀の線。まるで「仮面ライダーフール」の容姿をモチーフとしたデザイン、その後ろには円形の格納庫「リボルバーハンガー」がむき出しになっていて、赤の物体と黄色の物体が格納されている、巨体かつ個性的な四輪車が迫ってきた。

 

「えぇ…何アレ先生。」

 

 小鳥遊は困惑の感情を抑えきれず、つい口にしてしまった。

 

 

 無理もない、キヴォトスという都市であんなものを作れるのはミレニアムのクレイジー二アス共(エンジニア部)くらいなものだ。何をどうしたらこんなものを先生が持っているのだろうか、彼女はいろんな意味で先生が怖くなった。

 

「あれはリボルギャリー、僕の探偵道具の一つさ。乗り心地は最悪だけど安全に脱出ができる。」

 

 リボルギャリーは先生たち一行の前に着くと停止。中心部分の銀の線が開くと格納庫のような形態「オープンハッチ」となり、先ほど確認できた黄と赤の物体の他に緑の物体もそこに現れた。

 

「さぁ、乗ってくれ。」

 

 先生の声に従い、段差をもろともしないジャンプで飛び乗る。中を見ると、運転システムも搭乗席もない事に気づいたワカモ。

 

「あなた様…座れる場所などは無いのでしょうか…」

 

すると彼は一瞬、こちらを見ながら答える。

 

「ああ…うん。ないよ。」

 

「…」

「…」

 

 絶句した二人、さすがのワカモでも「マジかこの人」という目線を向けてしまった。座り心地のクソもない、そもそも座る場所がないとか…それは人を乗せる車としてどうなのだろうか。二人の意見が初めて合致した瞬間だった。

 

「…あー、はい。今度座席付けとくよ…」

 

 今思えばよくこんなの乗ってたなと思う先生だった。

 

 閑話休題。

先生はキヴォトス人ではないものの、長年乗ってきたものなので乗る時間も大してかかることはなかった。無論、黒見はあらかじめ小鳥遊が乗せている。これで準備は完了し、いつでもこの場を離れることが出来る。

 

「よし、出発!」

 

スタッグフォンのコールボタンを押すと、リボルギャリーは先ほどの四輪車モードへと変形する。バイザー部分がもとに戻ることで真っ暗となる車内、これからどうやって運転するのだろうかと不安8割緊張2割の心情である小鳥遊。すると、右輪と左輪が逆方向に回転。先ほどまで走行していた道路方面へリボルギャリーが右回転する。方向転換が終了、すぐさま目的地へ向かいだした。

 

 

「せんせぇ!これどうやって運転するのぉ!」

 

「AIだよ!一応目的地をシャーレにしたけど大丈夫!?」

 

「明日帰れば大丈夫!」

 

 装甲車の車輪で音がかき消されると考えたのか、彼女は普段より大きめの発声で告げる。先生もそれに返した。

 

『このままだと、酔っちゃいそうかも』

 

小鳥遊そう思いつつ、荒れ狂う車内で吊り橋効果を狙い先生へ抱き着く小坂 ワカモを呆れた目で見ていた。

 

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 「おやおや、これは随分と。」

 この町を乱す物の怪、小鳥遊が討伐したかに思われるソレの前に、突如現れた男。名は木内、彼はあまりにも甘美なエンターテインメントに目がない。アニメも好きだし、マンガも好きだ。ドラマも好きかもしれない…なぜなら、他人の人生を誰にも咎められず楽しむ事ができるからだ。

 

 歪な価値観を理解するものはいない。その目的さえ違う世界の人間に、彼の思想は夢たりえなかった。歪なあり方を求める愚かもの、その同士たりえるものなぞ人間性のたかが外れてる。苦痛、快楽、勇気、臆病、欲望、義務。相反する存在を彼は愛する。言い換えれば、全ての人類を愛しているともいえる。

 

『人間は、苦悩にこそ生きる意味がある。』

 

 矛盾に悩み、傷つき、愚かにも喪失を選ぶ人間。それでもと歩み続ける人間。その全てを美しいと感じる彼には、どうしても受け入れられない男がいる。

 

『先生、どうやらあなたは迷いも苦悩も捨ててしまったようですね。』

 

 生徒の為に戦う、素晴らしい美徳だ。

実に気に入らない、苦悩すらしない人間なぞ人間たりえない。彼は正に機械となってしまった哀れな子羊だ。あなたに苦悩がもたらされるよう、せめてもの慈悲をあげなければならない。そんな歪を押し付ける事こそが、彼にとっての生きがいである。その場に先生がいれば「不愉快な男だ」と吐き捨てるだろう、まぁ木内本人も「かわいそうな男」としか考えないが。

 

 「どうやら、あなたに見本を見せなければならないようだ。」

彼はドーパントの胸部へ右手を当てる。すると、何かに目覚めるように亀裂が増える。

 

 『全ては迷える生徒(先生)の為、精々彼女には頑張ってもらうとしよう』

 

 瞬間、ドーパントの身体は迸る流星のように、光り輝く閃光と化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ワカモ「あなた様…私酔ってしまいそうです~」

先生「…ちょ!?ワカモさん!?」

ワカモ「この酔い…あなた様の優しい抱擁で治していただけないでしょうか…」

先生「…ガハッ!」

ワカモ「…いやだ…死なないであなた様ぁ~!?」


小鳥遊「…何やってるんだろ二人とも」
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