でも石はイチカに消えたよ。僕だってみさきち欲しかったのに…(新約11巻見ろ)
いや、まだだ…俺には、大人のカードがあるッ!
ブルアカイベント予約はしたけど…これ当たんのかぁ?(白上フブキファンミ敗北)
生徒のお時間頂戴したいので、当選おねしゃす…
リボルギャリーの中は特に空調調節をする機能がなく、肌寒さが抜けない。全員で近づき暖を取ることで、その問題を解決し、今はゆっくり休みを取ることにした三人。二人はゆっくり休んでと言った先生であるが、休む気がないらしく、お互いシャキっとした目つきで見張りをしている。
ワカモは単純に、先ほど全く活躍できなかったという理由で、目をギラギラさせ獲物を待っている事を彼は知らない。だが、一方の小鳥遊は先ほどの戦闘を振り返っていた。
『あの程度でやられるとは到底思えない…必ず戻ってくる』
一度直接ドーパントと対峙した小鳥遊には、理解しているつもりだった。必ずお前を殺す、そんな狂気を孕んだ目線を一心に受けたら一溜まりもない。彼女の鋼鉄にも等しい精神力があったからこそ、先ほどの死線を乗り越えることが可能だった。これを乗り越えることが出来る存在は、ある種の化け物…決して銃弾一つで致命傷になる人間に耐えられるはずがない。そう判断せざるを得ないほど、濃厚な憎悪を身に受けた。
『先生、一体何者なの?』
先ほどまでは考える事さえなかった疑念が、彼女の脳に揺さぶりをかけてくる。そんな怪物を知っていて、冷静に対処をしている彼は何者なのだろう。本当に信用が出来るのか、そんな人間。ぐるぐると乱れる思考。
「…あ。」
一瞬、先生と目が合う。
強烈な漆黒。それはあまりにも尖り切っているので、人は「歪」と捉えるか「芸術」と感じるか、その二極に分かれる。だが彼女は例外であった。暗い瞳の中に、ぽつりと輝く優しい光。まるで深海の中で優しく光るクラゲが、細々と見える。嗚呼、今すぐあの光を抱きしめたい…いつか消えないように、どこかへ行かないように。
「…小鳥遊?」
「…え?」
なぜか、自身の手で先生の右頬を優しく撫でていた少女。驚きを隠せず、すぐさま手を放す。
急に訳のわからない行動を起こして挙動不審になってしまったので、誤解を解く為にも目の前の大人へ謝罪をしようと、彼の方へ目を向ける彼女。
しかし、そこにはワカモがいた。
「貴女…わたくしの運命の方の頬を…撫でるなんてッ…!」
「…あはは…」
『えぇ…そこ気にすんのか。』
乾ききった笑い声をこぼす事しか、今の彼女にはできなかった。ハイドは思わずツッコミをしてしまったが、触らぬ神に祟りなし、先生は無視を決め込む事にした。
「先生を助けてくださったので多少目を瞑っていましたが、もう我慢できませんッ!貴女を始末しますッ!」
「ちょ!?ワカモやめて!」
「離してくださいあなた様!この女狐はたぶらかそうとしてるのです!」
「ステイステイッ!ちゃんと君にも触らせるからッ!」
「それは恥ずかしいですあなた様。わたくし、段階を踏んであなた様とのお付き合いをしたいのです。」
「なんでそういう事だけ大和撫子っぽいの!?頼むから始末だけはしないで!」
「…ごめんね先生。」
「気持ちは嬉しいけどワカモ止めてくれ小鳥遊ッ!」
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「どうしてこうなった。」
ワカモを説得するため、あらゆる手を使い交渉をした先生。結果『彼を一日独占する事と、今後一切、小鳥遊は先生を誑かそうとしない』という決まりで、彼女の罪は不問とされた。そしてこの一年、彼の有給はこれで全て生徒の為に使われることが決定した。(ユウカ、ノア、ゲーム開発部etc…)
「あぁ…僕のハードボイルドな休日がぁ…」
『まぁいいだろ、生徒の為なんだし。』
「それもそっか」
『立ち直りが早いッ…』とハイドが呟くが、それはしょうがない事である。「レディーファーストが出来てこそハードボイルド」という教えを守っている彼には、例えどんなに有給が消えようとも彼女たちには逆らえない立場なのである。なお、これを言った師匠である翔太郎は美人相手の依頼の際にのみ語っており、それを知った所長にシバかれるのはいつもの事である。
『…アビドスへの被害を抑えるためか。』
『まぁね、ここまでやらなきゃ奴は止まらない。』
リボルギャリーは山降りの途中、先生のお手洗いという名目で車両を止めた。だが、それはただのフェイク。本当の目的は、ここであのドーパントを倒すためであった。何故そこまでして今止めなければならないのか、それはこのアビドスを守るためにあった。現在のアビドスは砂漠被害と借金に追われている状況であり、それに加えヘルメット団、その裏にいる連中。総じて地雷要素ばかりの町である。
そこまでならば生徒と自分だけで対処できる問題だった。だが、そこにドーパントが蔓延っているなんて言ってみれば話は別。今でさえ人がいないアビドスは、今後増える事もなくなるのは火を見るよりも明らかだ。依頼を受けた以上、彼には彼女たちの安全とアビドス全体を守る責務がある。彼は現在茂みの中に隠れ、いつドーパントが現れても良いように準備をしている。
『やるのかよ結局…オレが止めた意味ねぇじゃねぇか。』
『いや、無駄じゃない。あの時戦ってたら、絶対に負けていたさ。』
『そうかい…オレもいるんだから死ぬなよ。』
『わかってるよハイド』
ハイドはやはり理解が出来なかった。唯一分かる事なぞ、この男は根っからのバカだという事だけだった。
「…ッ!来たか!」
先ほどとは比べものにならない威圧感を感じた先生、本当に切り札を切らなければならない状態だと即座に判断し、すぐさま大人のカードを取り出す。彼の意思に呼応し、白く光るカードは腰に巻き付いた。そしてその光が形を帯び、銀のベルトに赤のデバイス「ロストドライバー」へと変化する。右ポケットの入っている相棒「フールメモリ」を取り出し、銀色のボタンを押し込む。
『Fool!』
そのままメモリを上空に投げ、右手でキャッチすると同時に、45度左に向ける。
「変身!」
そのまま右手で「ロストドライバー」のスロット部分へメモリを差し込み、待機音を鳴らさずにスロットを倒す。
『Fool!!!!』
直後、サークルと共に現れた紙吹雪のようなものが、一気に彼の身体へと張り付いていく。そしてすぐそこに迫るドーパントに襲い掛かり、お互い茂みの中へ入る。
「…」
目の前に現れた標的を前に、ただの人間なら一瞬にして精神を壊す殺気を向ける「ドーパント」。しかし、彼はそれに心が折れる程やわな人生は送ってなど無い。
「よ、さっきぶりだね。イメチェンでもしたのかい?」
ドーパントは明らかに変化していた。先ほどまでの黒い隕石のような形から、超新星が起こっているとも勘違いしてしまうほどの熱量。そして先ほどの重工感あふれる体系からスリムな体系へと変化しており、見た目から見ればスピードに特化した形態だと察することが可能だ。
「…」
「…だんまりか。まぁいいや、悪いけどここから先を通すつもりは無いんだ。」
「…」
「…いくぞッ!」
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「遅いですわ」
「先生にも色々あるからじゃないかな~」
一方、リボルギャリー内で待機している二人。かれこれ5分以上経っている事実に不安を隠しきれないワカモは、今にも飛び出せるようリボルギャリーの開閉ボタンの周りをうろうろしている。
「…一分」
「はい?」
「一分経ったら先生を探しに行こうよ、流石にこれ以上経ったら心配になるし。」
「そんな事を言ってる暇などありません!今すぐ助けにいかなれば…」
開閉ボタンをすぐさま押し、兎の跳躍の如く茂みの中へ入っていったワカモ。
「うへぇ、もう行っちゃったよ…」
さすがに小鳥遊も心配が勝ったのか、腰を上げ外に出る準備をする。ずっと座っていたので、バキバキの身体をストレッチでほぐす。肩を回して伸ばす、それを三回繰り返し脚首を回す。
「…ふぅ、じゃ行こうか」
「え!?なんで私こんな所に!?」
何ともタイミング悪く、黒見が起きてしまう。彼女は状況が全く分かっておらず、気が動転し大声を出してしまった。その声で後輩と気づいたのか、小鳥遊はいつものテンションで話しかける。
『あー…そっか、セリカちゃんいたんだった。』
「あれぇ、セリカちゃん起きちゃったの?」
「この状況なんなのよ!?この部屋寒いし地面も…これ鉄?」
この短時間での疲れによって、完全に存在を忘れてしまっていた小鳥遊。さすがにそんなことを口が裂けても言える訳がなかったので、気持ちを抑え心の中で呟いた。
黒見は理解できなかった。何故自分がこんな場所にいるのか、何故この先輩は自分がこんな状況でものほほんとしているのか。もしかしたら先輩は何か洗脳でも受けてしまったのか、恐ろしいIFが彼女の心に襲い掛かる。
「…もしかして、何か洗脳とか…」
「うわー違うよ!先生に助けてもらったんだよ、セリカちゃんが助かったのも先生の道具の力だし。」
「こんな格好で助けたなんて嘘でしょ!?」
怒りに満ちた表情で、憎き彼を呼ぶ黒見。それもその筈、彼女はスパイダーショックの放った糸により、まるでミノムシのようなみっともない姿をしていたからである。もはや彼女にとって、彼は悪でしかなかった。必ず報復をするために策を巡らせようとする思考を止める人は、彼女を除いていなかった。
「…やっぱりアイツの事、信用できない。どうせ今回も私たちを利用して…」
「それは違うよセリカちゃん」
「…え?」
いつもとは全く違う雰囲気、温かい春のようなイメージはとうに消え、つららのように鋭い瞳を向ける小鳥遊。自身が知る先輩と大きく乖離した姿に、思わず背中を張ってしまう。
「先生は最近噂の怪物からさ、セリカちゃんを助けようって必死だったよ。私たちより弱くても、自分にできる事を一生懸命やろうとしてた。」
「怪物って…あのミレニアムで出た!?」
黒見は近頃の怪物騒ぎで、その恐ろしさは十分理解していた。ミレニアムで出たアレは、C&Cのエースの弾丸を受けても倒れず、暴走。最後は「仮面ライダー」と呼ばれる戦士により退治はされたと言うが、今もなお頻繁に怪物は出現すると言われている。銃弾、格闘…現存する手段では対処できない存在に、彼女は恐怖を覚えた事を今も忘れていない。
あんな存在に、銃弾一つで死ぬ人間が立ち向かおうとすること。それがどれだけ恐ろしい事か、彼に対する恐怖は未だある。だがそれ以上に、彼の心の強さに敬意を持ってしまった自分がいる事に彼女は気づけなかった。
「…確かに、あの人はよく分からない所も多いし、信頼できない気持ちもわかるよ。」
「…」
「でも、恩は返したいからさ、私は先生を守るよ。」
その瞳は、とても18歳の少女とは思えない戦士の目であった。その後、彼女は自身の後輩を背に、恩人を探しに行こうと決心する。
『先輩は、もしかして自分ごと…』
なんとなくではあったが、黒見はそんな印象を抱いてしまう。私たちを残して、どこかに行ってしまうのだろうか。子供のように泣き叫ぶ心、悲劇は悲劇で終わらせる世界。結局、助けてくれた恩人も、私たちの為に戦う先輩にさえ、何もできずに泣き叫ぶのか。
『そんなこと』
黒見は一瞬、迷う
『そんなこと』
黒見は一瞬で、その迷いを振り切り
「待って先輩!」
「…どうしたの、セリカちゃん。」
もう既に、少女は甘さも、自分が守られるだけの人間であることを捨てた。彼女を引き留めたのは、一緒に帰るという結果の為に使うのではない。
「私も一緒に行かせて、ホシノ先輩。」
自分が後悔しない過程を目指し、戦う事を決意した戦士である。
「そっか、でも先生のトイレがただ長いっていう可能性もあるけどね。」
「…ちょっと待ってホシノ先輩、今先生トイレ中なの?」
セリカ「なんで先生のトイレを覗くような真似する訳!?」
ホシノ「いや…まぁなんといいますか…」
セリカ「先生にもプライバシーはあるのよ?」
ホシノ「…」(後輩がまともな事を言い出したので恥ずかしい)