-Double Archive-   作:幸田市

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死にかけです
9000字以上で死にました









・加筆修正
5/25 生徒の名字を漢字に固定しました。


第三話 Yの眼差し/先生ライダー

「…ッ!」

 

 バケモノへと変貌したヘルメット団の団員、彼女の姿は少女の身体から節足動物、アノマロカリスのような姿へと変質。目は丸くクリクリした巨大な漆黒、顔の部分には髪のようにくっついている触手。身体は青をメインとしていて、裏にはアノマロカリスそのものがくっついているかのようだ。

 

「止まりなさい!さもないと打ちますよ!」

 

 私はバケモノにそう忠告する。しかし、ソレは止まるどころか、むしろやってこい。と言わんばかりに両手を左右に伸ばした。

 

『やってみろよ。ま、今のアタシには効かないだろうけどな。』

 

 …やるしかない。

私は覚悟を決め、自分が常備している拳銃を取り出す。じりじり、と近づくバケモノ。近づきすぎれば、一瞬で死ぬだろう。それは、ヘイローを持っていた被害者たちの結果を見れば明らかだ。…間合いを詰められるのも時間の問題だ。しょうがない、こうなったら一か八でやるしかない。

 

 

“接近された瞬間、ゼロ距離で放つ。”

 

 普通の射撃では、倒すことなんて出来ない。爆発に巻き込む先生には申し訳ないとは思う。でも、そうじゃなきゃアイツを止められない。らしくないものの、今思いつく限りそれしかない。

 

「…」

 

『…ッハ!さすがのセミナー様も、この力には怖気づいちまったなぁ。』

 

『これじゃ、お前の仲間も簡単に殺せそうだなぁ?』

 

『ギャハハハハハハ!』

 

 …

 

 

 …

 

 

 

 …

 

 

 瞬間、私は引き金を引いた。

 

『…ッ!何すんだテメェ!』

 

 

「…す」

 

 

『あ?』

 

 

「殺すって言ったのよ、アナタを。」

 

 

『…やっとヤル気になったなぁ!待ってたぜぇ!』

 

 

 バケモノは意気揚々に、両肩を回した後。戦闘態勢へと入る。だが、そんなことは関係ない。

例え誰であっても、ユウカちゃんを傷つけるやつは許さない。私の友達は、何があっても私が守る。あんな奴に、私の友達を奪わせない。

 

「…」

 

『…ふん、来いよ。』

 

 その言葉を聞いた後、私は思考を放棄してしまった。ただ一点「コイツを黙らせる」という目標に向かう機械となった。

それが、敗因とも知らず。

 

「…ッ!」

 

『ハッ!かかったな阿保が!』

 

 バケモノは口からナニカを吐き出そうとしていた。それは見る限り、銃弾のような形をしていた。今わかることとしては、それを食らうと、ヘイロー持ちの私でも動けるかどうかというレベルの致命傷を受けるという事だけだ。

 

『死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“ごめん、ユウカちゃん”

 

 刹那、漆黒の闇に包まれた。

 

 

 

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「…私は…」

「…起きたか。」

 

「え…先生!?」

「あぁ、君の先生だ。」

 

ここはサイエンススクールのとある教室、とりあえずここまでくれば時間は稼げるだろう。

 

 

 僕が目覚めた時、ウシオはバケモノに向かい突撃をしていた。彼女はその時、激情に呑まれており、バケモノの策略に嵌ってしまっていた。…無理もないだろう、いきなり人が未知の怪物へと変質したのだ。その時点で、どんなに戦場慣れしている人間であっても動揺は隠せない。それに、僕が受けた傷はたった一つ、やつから彼女を守った時に受けたものだ。彼女は僕を守りながら戦ってくれたのだろう。

 

「ありがとうな、生塩。俺を守ってくれて。」

「とりあえず休んでくれ、ここはまだ安全だ。」

 

「いえ…私こそ…」

 

 生塩は落ち着いたのか、ガッチガチに固まっていた肩の重荷を下ろした。かなり精神を削ったのだろう、ぐったりと倒れこんでしまった。

 

「それと連続で悪いんだけどさ、一応早瀬に連絡だけしてほしい。」

 

「わかりました、ユウカちゃんにですね。」

 

 そういいながら、生塩はデバイスのような物を、ポケットから出した。「モモトーク」という連絡アプリを使い、極力音を出さない形でメッセージを送っている。

 

「先生…あのバケモノの事…知ってますか…」

 

 ふと、生塩がそんな事を言い出した。正直、教師の身である僕としては、これ以上アレに関わらせるわけにはいかない。

…しらでも切るしかないか。

 

「…知らないよ、あんな奴。」

 

「…」

 

 生塩は、僕の何かに気づいたのだろう。逃がすまいと言わんばかりに、僕に目を合わせてきた。

…仕方ない。

 

「…あぁ、僕はあのバケモノの事を知っている。」

 

 この状況なら、語るしかない。奴らの事を。

 

「奴はドーパント。」

 

「地球の記憶を内包した、怪物さ。」

 

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「ドーパント、ですか?」

 

 生塩は僕の言葉にオウム返しで答える。

 

「あぁ、地球には様々な記憶が眠っている。例えば、炎、水、土といった身近にあるものから、恐竜や宝石と言った鉱物生物や嵐などの現象も全て記憶されている。」

 

「そんな地球の記憶をUSBのような形で保存しているのが「ガイアメモリ」っていうものなんだ。」

 

「は…はぁ。」

 

 生塩は、話が壮大過ぎて頭が追い付かない。と言わんばかりの顔をしている。まぁ、いきなり地球だなんて単語が出てきちゃな。

 

「とりあえず、そこまでが「ガイアメモリ」の説明だ…大丈夫か?」

 

「は…はい、すみません。いきなり地球っていう単語が出てきたもので…」

 

「まぁ…そりゃそうだよな…」

 

 …とりあえず続けるか。

 

「で、ここからが問題だ。そのガイアメモリっていうのは、特殊な手術を施した人体に挿すと、さっきみたいなバケモノになる。」

 

「さっきのは「アノマロカリス・ドーパント」。古代生物「アノマロカリス」の記憶が入っているガイアメモリを身体に挿したバケモノさ。」

 

「…なるほど、あのUSBメモリにそんな効果が…」

 

 生塩は、興味深そうに僕の話を聞いていた。ここにペンとノートがあれば、今すぐにでも記録に残しそうなくらいに。だが、ふと止まった。そして、私の目を見てこう言った。

 

「なぜ、先生はそこまでガイアメモリに詳しいんですか?」

「もしかしたら、この事件と何か関わりでもあるのですか?」

 

 …やっぱこうなっちまうか。しょうがない、少し話すか。

 

「僕はね…探偵の元弟子なんだよ。」

 

「…?」

「それとガイアメモリのどこに関係が?」

 

「…その探偵の住んでいた町は、ガイアメモリが深く根付いた所でね。」

「よくメモリ関連の依頼が舞い込んでくる場所でもあったんだ。」

 

「なるほど…それでメモリ関連に詳しかったんですね。」

「でも、なんで弟子をやめてまで先生に?」

 

「僕はね…師匠に憧れていたんだ。何より、彼に救われた身でもあった。」

「昔の僕は兄貴が亡くなって、とても荒んでいたんだよ。」

 

「…ッ!」

「お兄さんは…」

 

「…メモリ犯罪の被害者さ、犯人は見つかってない。」

 

「…僕はメモリが嫌いだった。

でも、それ以上にそんな悪魔の箱を平然と使う大人が大嫌いだった。」

 

 

「だから、最初は師匠やその仲間の大人も大嫌いだった。でも、あの人たちは違った。」

 

「その町の為に、自分にできる事を全力でやっていた。依頼人を傷つけないために、絶対に諦めなかった。大人の悪意によって歪んだ僕を守ってくれた。」

 

「今度は、僕がそんな『子供たち』を助けたい。そう思っているうちに、いつの間にかシャーレの先生になってたってわけさ。」

 

 …懐かしいな、この気持ち。胸がほっこりと温まる、あの事務所での思い出。確かに、今の僕には力も信頼もないのかもしれない。それでも、きっとがむしゃらに私の生徒を守ることが、事務所を離れてでもやりたい、自分の中の真実なのだと思う。

 

「…そうだったんですね、先生。」

 

 ウシオは、僕に対し、まるで彼女の中の子供と女性が入り混じった、まさに本当の笑顔を見せてくれた。

…良かった。これで少しは僕の事を信頼してくれたかもしれない。

 

「…じゃあ、私も助けてくださいね。先生。」

 

 彼女は、今にも消え入りそうな笑顔で、そういった。

 

 

『見つけたぜぇ…アタシの獲物!』

 

 

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「…そりゃないぜ、そりゃあ。」

 

 ついに「アノマロカリス・ドーパント」に近づかれてしまった。奴は僕たちを見つけた瞬間、嬉々として僕たちへと向かってきた。接近してきた奴は、まず最初に生塩を狙った。右腕についている触手を彼女に思い切り振りかざした。しかし

 

「…ッ!」

 

 間一髪、彼女は左に避け拳銃から銃弾を放つ。だが、どんなに近距離であっても、奴に傷がつく事はなかった。それを好機と見たのか、アノマロカリス・ドーパントはウシオの首を掴む。

 

『ハッ!アタシの歯で殺してやるぜぇ!』

 

 ウシオは拳銃を手から離し、両手でもがきながら抵抗するが、ドーパントの腕力ではとても立ち向かえない。奴は口のような部分を開けた。おおよそ、あそこが発射部分なのだろう。

 

 …ならば、手段は一つ。

 

「ウォォォォォォォォ!」

 

 奴に向かって走る、全速力で。

 

『ヘッ!馬鹿かお前!先ずお前から殺してやる!』

 

 アノマロカリス・ドーパントは僕の方を向き、球を発射した。時速を計算している余裕はないが、少なくとも僕一人簡単に死ぬ程度のものだ。

 

    だが

 

『何ッ!』

 

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 僕は今までの人生経験(探偵の弟子)を活かし、床を滑った。つまりスライディングをして、あのバケモノの弾丸を避けた。素人はこれだけで拍手ものだ。だが、僕はこれだけでは終わらない。

すぐさま、生塩の落ちた拳銃を拾い、奴を押し倒した後、拳銃を口に押し付けた。

 

『フグッ!』

 

 

 

 「さぁ、少し痛い目見てもらうぜ。Bad Girl」

 

 

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「…ふぅ、何とかなったね。」

 アノマロカリス・ドーパントは、拳銃を押し付けた後。僕のあまりのハードボイルドさにやられ、そのまま気絶。メモリブレイクはされていないものの、無力化までは成功した。無事、生徒も傷つけず。事件は解決した。

 

「…どうしたの、生塩。」

 

「…ひぇ!?

なんでも…ないです。」

 

「…本当にどうしたの。体調でも悪いの?」

 

「…なんでそう思ったんですか、先生は。」

 

「…え、だってウシオ。今君の顔…」

 

「リンゴみたいに真っ赤だよ。」

 

 

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「先生!ご無事ですか!?」

 

 しばらくして、早瀬が僕らの所へやってきた。多数の機械とメイドさんを連れて。

…なんでメイドさんがここにいるのかは知らないけど、スカジャン着たメイドもいるし、まぁなんかの戦闘部隊的な奴だろう。

 

「早瀬ってメイドさん連れまわすの趣味なんだね。」

 

「何言ってるんですか先生は…それよりもノアはどこですか?

あの子も一緒にいるって聞いたんですけど…」

 

「生塩?

あの子ならあっちだよ。」

 

そうして、僕は彼女の方を指さすと…

 

「…」

 

 体育座りをして顔を俯かせている、生塩 ノアの姿があった。

 

「だ、大丈夫!?ノア!」

 

「うん…大丈夫だから、このまま運んで…」

 

「そう言われても…何があったの?」

 

「…本当に大丈夫だから、早く連れてって…」

 

「…もしかして、先生が何かした?」

 

「…!」

 

 あ、生塩がピクってなった。すると…

 

 

「せ・ん・せ・い?」

 

 

 あ、終わった。なんかすごいオーラ出てる。

 

「な…なんだい早瀬君…今回僕特に何も…」

 

「…」

 

「…なんか…すみませんでした。」

 

 

「なんかじゃないですよ、このバカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

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「…」

 

「チッ、完全に気絶しちまってんなコレ。」

 

 現在、アノマロカリス・ドーパントはC&C(Cleaning&Cleaning)によって捕獲。このバケモノの調査をミレニアム本部でするため、輸送車を手配している。

それまでの護衛を、先生がスカジャンを着たメイド服と言った少女、美甘 ネル(ミカモ ネル)。

通称OO(ダブルオー)に任されていた。

 

 話は先ほどまで遡る。彼女、ミカモはいつものごとく出席日数に余裕があるため、サボろうかと画策していた時。セミナーの早瀬 ユウカ(ハヤセ ユウカ)から唐突な依頼が舞い降りた。「キヴォトスを騒がせている怪人がミレニアムに出現しました。至急、C&Cに協力を要請したい。」と。だが、他のメンバーは別の依頼に出ており、今から間に合う距離でもない。なので、仕方なしに来たというわけだ。

 

「先生、ねぇ。」

このバケモノにヘイローなしで立ち向かった大バカ野郎、まさに「蛮勇」と呼ぶにふさわしい。生徒を守るのが先生とはいえ、少々オツムが弱いのだろう。

 

だが

 

「悪くねぇな、そういう大人も。」

 

 そういうやつがいたっていい。むしろ、現実ばっか見せつけてくる大人(金の亡者)よりも、多少バカでも、生徒を見捨てない大人の方がいいに決まってる。美甘はそう感じた。

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、さっさと終わらせるか。」

 美甘はそうと決めればやり切る女。この護衛は、その先生への為、全力でやり切ることを決意した。

 

 

しかし

 

 

 

 

 

『…』

 

 

 

事件はまだ、終わらない。

 

 

 

 

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「…」

 

「…」

 

 早瀬に反省を促されて早や十分、教室は静寂を保っている。

一体いつになったら終わるのだろうか、早くシャーレと言う名の家に戻ってコーヒーを作りたい。

 

「…あの、ユウカちゃん?」

 

「何?ノア。」

 

「そろそろ…先生を開放してもいいんじゃないかな?」

 

 ナイス!生塩!これ君のせいとかそんなの放ってもいいくらいナイスなアシスト!

 

「ダメよ、ノア。」

 

「えぇ…もう私は許してるんだけどなぁ…」

 

 …しょうがない、僕の切り札を切るしかない。

 

「…ユウカ。」

 

「何よノア…って先生!?

先生今私の事名前で言ったんですか?」

 

「あぁ、そうだよ。これからはユウカって…」

 

「私もノアって呼んでください!先生!」

 

 そんな剛速球を、ウシオはぶち込んできやがった。

 

「…はい?」

 

「…ユウカちゃんだけ名前で呼ぶなんて、ずるいです。私も呼ばれたいです!」

 

「…どうしたのノア?急にそんな事言うなんて…と言うか、先生が私の事名前で呼んだって、今の状態は変わりませんよ!」

 

 …本当にそうかな?

 

「なぁ、ユウカ」

 

「…」

 

「ねぇ、ユウカ」

 

「…」

 

「ユウカってば、おーい!」

 

「…」

 

「無視されると、さすがに悲しいなぁ…」

 

「…わかりました!正座はもういいです!」

 

 よし!これで正座はもう…

 

「じゃあ先生は、私の事を名前呼びするまで正座です!」

 

「えぇ…わかったよ。

ノア

 

「…声が小さい!もう一度!」

 

「…ノア」

 

「…えへへ~」

 

「…そこ!イチャイチャしない!」

 

「痛ェ!何するんだよハヤセ!」

 

「超イチャイチャしてたからですよ!

後私の事を永遠に名前呼びするまで正座!」

 

「そんな事できるかぁぁぁぁ!」

 

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「…はぁ」

 

 三人で思う存分ふざけた後、思ったよりはっちゃけ過ぎてしまった。まずい、もうそろそろで日が落ちる。

 

「ほら、日が暮れるから。良い子はおうちに帰りな。」

 

「むぅ、私の事子供扱いですか。」

 

「そりゃそうでしょノア、君たちはまだまだ子供。おとなしくおうちに帰りなさい。」

 

「…仕方ないですね、ここは先生のわがままを聞いてあげましょう。ね?ユウカちゃん。」

 

「えぇ、どうしてもって先生が言うんですもの。子供な先生のわがままを聞くのも生徒の役目ね。」

 

 こいつら…

しかし、まだ僕たちは帰れなかった。この後、奴に邪魔されてな。

 

 

『キシャァァァァァァァァァァァァ!』

 

 アノマロカリス・ドーパントに。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「逃げろ!お前ら」

先ほどいたスカジャンメイドが走りながらそう叫ぶ。

 

 

「クソ!まじかよ」

 

「あの気絶状態から復活したの!?

とてもじゃないけど信じられないわ…」

 

 アノマロカリスは、先ほど戦った時のような悪意などはなく。まるで本能のまま動く獣のように、僕たちに襲い掛かった。

 

「…クソっ!やはりメモリブレイクをしなきゃ、奴を止められないか!」

 

「メモリブレイク?何ですかそれ。」

 

 ユウカはアノマロカリス・ドーパントの攻撃をよけながら僕にそう言った。

 

「奴の力の正体はUSBメモリにある。体内にあるメモリを破壊しなきゃ、アイツは一生バケモノのままだ!」

 

「じゃあ、逆にメモリを破壊すればいいんですね!」

 

「あぁ、でも方法は一つしかない。

仮面ライダーのキッククラスの攻撃でしか奴のメモリは壊せない!」

 

 僕はそう答えた。だがそれをこの場にいる全員が出来ない事を僕は知っている。

 

「仮面ライダー、ですって?」

 

「社会の裏で、世に潜む悪を打ち倒すと言われる?」

 

「何っ!ってことは…」

 

 ユウカとノアとスカジャンメイドが各々反応を示す。しかし、スカジャンメイドだけは僕の言葉の意味を理解したようだ。

 

「あのバケモノを止められる方法は、ないってことか?」

 

「…なぜライダーのキック威力がわかったんだい。教えてくれ、スカジャンメイド。」

 

「あぁ…前に戦ったことあってよ。てかスカジャンメイドじゃねぇ、ダブルオーだ覚え解け!」

 

 …は?戦った?

 

「え、君戦ったことあるの!?そいつの名前教えてくれ。」

 

「今そんな事関係ないだろ!」

 

 そんな事を話していると

 

『ギシャァァァァァァァァ!』

 

 アノマロカリス・ドーパントが上空から強襲してきた。

 

「…ッ!」

 

 それを右によけ、スカジャンメイドことダブルオーと分断。ちょうど横にはユウカとノアもいたので、挟み撃ちの形となった。

 

「行け!ガジェット共!」

 

 そういうと、師匠たちが僕にプレゼントしてくれたガジェットシリーズを全放出させる。青を基調としたスタッグフォン、赤と黒を基調とするスパイダーショック、真っ黒なバットショットだ。

 

『ギシャァァァァァァァァ!』

 

 ガジェットたちは、三人と連携。上手く口の部分に銃弾がヒット。アノマロカリス・ドーパントに初めてダメージを与えることが出来た。

 

 しかし

 

『ギャァァァァァァ!』

 

「…キャ!」

 

「ユウカ!」

 

 ユウカが狙われた。アノマロカリス・ドーパントはユウカを壁に投げた、壁は衝撃に耐えられず、崩壊した。

バーン、という音とともに壁とユウカがミレニアムタワーから落ちる。

 

 しかし

 

 

「ユウカ!」

 

 僕はスパイダーショックを手に、ユウカが落ちた高所から飛び降りる。

 

「先生!」

 

「おい、先生!」

 

 ノアとダブルオーの声が聞こえた。声色はとても不安そうだった。でも、行くしかない。

もう二度と、僕は大切なものを失わせない。

 

 生徒も、教えも、何もかも!

 

 ユウカを掴み、応答が出来るか確認する。

 

「ユウカ!大丈夫か!」

 

 ユウカは答えない、相当ダメージを負っているようだ。

 

「クソ…僕はまた…」

 

 僕は…

 

【諦めそうになったら、依頼人…お前の場合は生徒か。】

 

【そいつの涙は、見たくないだろ?だから、諦めるな。】

 

【生徒を守ることを、諦めんなよ。“先生”。】

 

 

 …

 

 …

 

 …

 

 

「僕は…僕は!」

 

 

 

 

 

 

 

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 先生が飛び降りた。まさか、ここまでバカだとは思わなかった。普通生徒の為にこんな頑張るやついるかよ…

 

 

 

『…キシャァァァァァァァァァァァァ!』

 

「…ッ、まずいな」

 

 

 だが、バケモノは相変わらずアタシらを殺そうと近づいてくる。

体力は余裕があるもの、このままじゃ一生終わる気配がない。

 

「…おい!お前!」

 

「…え、私?」

「お前以外だれがいるんだよ…いいか?

奴に一気に攻撃を繰り出す。一二の三でやるぞ!」

 

「…う、うん。」

 

「行くぞ…一、二…」

 

「三ッ!」

 

 そういいながら、一気に口部分へ放出した。

 

しかし

 

 

「…まじかよ」

 

「…」

 

 口部分を歯の球で攻撃を守っていた。

 

「…」

いくらC&C最強であっても、人間の範疇を超えてしまう敵が来た時。かつ、そいつが無尽蔵に動くバケモノだった時。アタシたちはこんなにも無力になってしまうのか。いくら体力があったとしても、どんなに最強であっても、「倒す方法がない」というだけで、こんなバケモノが生きる事を許されてしまうのか。

 

「…ちくしょう。」

 

 いつぶりだろうか、こんなに悔しさを覚えるのは。

 

 だが、それも直に終わりを迎えた。

 

 

「よっ、と。」

 

 そんな軽そうな声を放ちながら、少女をお姫様抱っこしている仮面の戦士は舞い降りた。

 

 

『…』

 

 バケモノは自分の本能に従うように、触手を構えた。「コイツは止めなければ、死ぬ。」

 

そんな事を思いながら。

 

 

「お、来るか。

でもよ、その前に名乗らせてくれよ。一回やってみたかったんだよ。」

 

 

 そんなこと知るか。と言わんばかりにバケモノは襲いかかる。

 

 しかし

 

 するり、と敵の攻撃をかわした後。

 

「ハァ!」

 

 ずしん、と重厚なパンチを決めた。

 

痛みにもがいているバケモノ。そんな事はどうでもいいのか、仮面の戦士は名乗った。

 

 

 「名前はメモリから取るパターンだよな、コレ。」

 

 「じゃあ…僕は仮面ライダーフール」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さぁ、お前の罪を数えろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回
Yの眼差し/先生は1人で2人

お楽しみに!

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