戦闘描写は...今回だけは勘弁してください
ミレニアムサイエンススクールの高層ビル「ミレニアムタワー」にて
先生である僕は先ほど、崩壊した壁と共に落ちたユウカを救出。
その後、超強化された脚を使い、この場所までユウカを抱えたままジャンプしたというわけだ。
「…!?
アンタまさか、先生か?」
ダブルオーが僕にそう問いかける。彼女は大した傷こそないものの、床に拳を叩きつけたのだろう。ダブルオーが触っている床には血がぽとぽとと垂れていた。
「ご明察!この通り、僕は彼女を助ける寸前、大人のカードで変身したのさ。」
そう、僕は今。ロストドライバーという、ガイアメモリを安全に使用できる装置を使って変身している。
だが、とある特殊な事情により、僕は通常のロストドライバーを使用できない。ではなぜ、僕はこのドライバーを使い変身出来ているのか。
先ほども告げた通り「大人のカード」という、代償を支払う事で、その状況を打破できるパワーを身に着けることが出来る。正に魔法のアイテムを持っているのだ。
そいつから生成された僕専用のドライバーを、今身に着けているのだ。そしてメモリは「フールメモリ」、ポーカーとかの愚者の記憶を宿したメモリだ。
コイツは、「大人のカード」によって生みだされた訳ではない。
正確に言えば「呼び出された」メモリだ。
最初は、僕の来るところに必ずいたストーカーみたいなやつだった。なので当時、メモリ嫌いだった僕は師匠の相棒であり、メカニック担当のフィリップさんに破壊を頼んでもらった。
だが、あいにくT2メモリという、破壊できないタイプのメモリだったため、事務所の中で封印してもらっていたのだ。
まさか、僕がコイツのお世話になるとは…自分の変わり様に驚くよ。
「はぁ…?
なんでカード一枚で仮面ライダーになれて、更に高層ビルの高さまでジャンプ出来るんだよ…」
正直、ダブルオーの言い分は最もだが、そこは目をつむっていてほしい。
そういう細かい所は、僕にもわからないから。
何故僕がそんな万能カードを持っているのか、なぜフールメモリと惹かれ合ったのか…
まだまだ謎がたくさんだ。
でも
「まぁそんな事は一旦置いておいてさ。
今はあのバケモノを止めるのが先決だ。」
「ガァァァァァァァ!」
僕が皆にそう告げた後、アノマロカリス・ドーパントは雄叫びをあげた。
そろそろお喋りは終わりにして、さっさとケリをつけちゃいますか。
「とりあえず、ノアはユウカを連れて逃げてくれ!
ダブルオーは他の生徒たちの避難の手伝いをしてくれ!」
「…でも!それじゃ先生が!」
ノアはさっき預けたユウカを抱っこしながら、僕にそう叫んだ。
彼女はこっちを不安な目で見ていた。
『これは、先生失格だな』
アノマロカリス・ドーパントと手と手を合わせ、取っ組み合いのような形になっている中。そんな事を考えてしまった。
生徒を不安にさせたのは、僕がまた無茶な行動をすると思っているからだろう。
それに、連携して立ち回ることで、勝てるチャンスが増えるのも事実。全員で立ち向かうのは妥当だ。
だが、こうしている間にも被害は増え続ける。余裕が出来た今なら、避難連絡などが出来るのだ。
現在、対峙しているバケモノであるドーパントのメモリを破壊する手段を持つのは、今僕ただ一人のみ。ここを離れることはできない。
僕がこいつを止めるしか、この事件を収束させる手段はない。
「…大丈夫、先生は必ず君たちの所へ戻るよ。」
…少し無理があっただろうか。
そう思いながら、僕は取っ組み合いの最中、ちょこっとだけ彼女の顔を見ようと、ちらっと横目で見た。
「…はい!わかりました!」
彼女が納得したのかはわからない。でも、あれは決して、僕の事が不安という顔ではない。むしろ、僕を信頼している目…だと信じたい。その期待に応えるため、自分の全力を出して、このバケモノの目を覚まさせる!
「頑張ってくださいね!クォーターボイルドな先生!」
「ちょ、オイまて。誰がクォーターボイルドじゃあ!
僕はハードボイルドだって!ええい、邪魔だこの甲殻類お化け!」
「…グシャァ!」
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「…オラァ!」
何故野外であるこの場所を選んだか。理由は単純、奴の口から発射される歯の球を避けやすくするためだ。僕が変身した「仮面ライダーフール」には、遠距離に対応している武器はない。
それどころか、ナイフの一つだってない。
それならば、接近しなければ勝ち目はない。よって、僕が今すべき事は間合いを詰める事なのだ。室内戦の場合、遮蔽物が多く、あのバケモノの狙撃ポイントも増える。ただでさえリーチが短い僕にとっては、大きな痛手だ。
それならば、もういっその事野外戦で挑めばいい、遮蔽物も少なく、一気に間合いも詰めやすくなる。
僕も奴に追随しようと、先ほど早瀬を助けるため落ちた所から飛び降りる。
「…ッ!」
急速に落ちる身体のバランスを整え、タワーの窓部分に足を付けられるように構える。
「…」
ガラスと足がスレスレの位置になった。
その瞬間
「…!」
奴は僕に向かい、口から歯の球を放出した。
「…んなっ!」
歯には当たらないものの、お陰でバランスが崩れてしまった。
しかし
『足のバランスはオレが保つ!
オマエはヤツだけに集中しろ!』
聞いたことのあるような、無いような。そんな声が、僕の頭の中によぎった。
「はぁ?急になんだ。
というか君誰?」
『ゴタゴタいうな!一緒に死にてぇのか!』
謎の声はそういうと、どういうだろうか。声が言った通り、僕は再びバランスを取り戻した。その上、僕が意識しなくても勝手に調整してくれている。
…これなら何とかなりそうだ。
『パワーの調整はオマエに任せる!
さっさとヤツを倒せ!』
…よし、いくぜ!
そうして、僕はメモリブレイクを行うために、ロストドライバーに挿されている「フールメモリ」を取り出す。メモリを抜くと同時に解除音が鳴り、取り出したという確認が取れた後。
ベルト帯の右についている「マキシマムスロット」という、メモリを挿入することで発動するスロットにコイツを入れる!
「フール! マキシマムドライブ!」
男の声でそれが流れる。
すると
「…力が…右足に…」
つい、そう呟いた。
言った通り、右足に力が収束していく。謎の声の主はこれ以上力を貸すつもりはないらしく、黙ったきりだ。
僕は、落ちながら前方向へ高速スピンをして、タワーに足を置く。
すぐに、それをジャンプ台扱いとして、左足のみで飛ぶ!
「…いくぜ」
「…」
バケモノは止まっていた。まるで、僕に見惚れたように。
これはチャンス!このまま狙いを定め…キックの姿勢を取る。
マキシマムスロットについているボタンを押し、エネルギーを一気に放出した!
「…ライダーキック!」
ジャンプの勢いと、フールメモリのエネルギーの全てを収束した右足のキックは、アノマロカリスメモリを破壊するには十分な威力だった。
「…ギシャァァァァァァァァ!!!」
アノマロカリス・ドーパントは爆発。
残ったのはガタガタヘルメット団の団員と、壊れたアノマロカリスメモリのみだった。
「ふぅ…きまったぜ」
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改装されたシャーレのオフィス、僕はそこで、一連の事件を連邦生徒会に説明するため、ハードボイルドな報告書を作成している。シャーレのオフィスには、パソコンは一台のみ。それは報告書を書く為ではなく、あくまで調べものをする程度にとどめている。
実際に使うのは、シャーレの資金で購入したタイプライターだ。何故わざわざそのような物を使うのかと言うと、僕が関わる事件のほとんどは、ドーパントやガイアメモリなど、情報が漏洩したらとんでもないことが起こるからである。あとカッコいい。
ひと昔どころか、今では化石レベルのタイプライターのカチカチとなる音が、この事務所の雰囲気を更にクールにしている。
『あぁ、僕ってやっぱハードボイルドだなぁ』
自分自身に酔いしれながら、先ほど入ったブラックコーヒーを…
「にがッ!」
つい苦くて言ってしまった。わざわざ「あの人」に教えてもらったコーヒーの入れ方を無駄にしたくはない。そう思い、コーヒーをいれたものの、結局飲めそうにはない。
何とかコーヒーを飲むため、どう工夫しようかと考えていると
コンコンコン、と事務所のドアがノックされた。
「どうぞー」
僕がそういうと、カチャというドアが開く音ともに。
「失礼します。
…おはようございます、先生。」
「あぁおはよう、リンちゃん」
「…リンちゃんはやめてください、先生。」
連邦生徒会の会長が不在となり、現在代理を務めている
そんな彼女が僕の元へ来た理由は一つ、今回の事件の詳細を知るためだろう。
僕は、アノマロカリス・ドーパントのメモリをブレイクした後。「ヴァルキューレ」という、キヴォトスの警察的な存在に連絡をした。「怪物騒ぎの犯人がいる。今すぐミレニアムタワー近くに来てくれ。」という内容でだ。すぐに彼女たちは到着、その後、主犯格であるガタガタヘルメット団団員を確保。団員の罪は、きちんと法の下で裁かれるだろう。
ノア、そしてスカジャンメイドことダブルオーこと「
美甘は僕を多少信頼してくれたのだろう。名前を教えてくれたのは、とてもうれしかった。
二人は特に問題がなかったものの、早瀬はかなり戦闘でのダメージがひどく、当分の間は安静だそうだ。とはいえ「私が見ていないとあの学校は崩壊する。」とか何とか言って、遠隔ロボットを操作していたので、多分大丈夫だろう。
破壊された「アノマロカリスメモリ」に関しては、今現在僕が預かっている。これは後に連邦生徒会へと譲渡し、今後のガイアメモリ犯罪に対する抑止力を作ってほしいというからだ。
ではなぜ、そんな抑止力を作ってほしいと考えたのか。理由は単純。
「大人のカード」の反動である。こいつは確かに、今まで変身できなかった僕を仮面ライダーにできる魔法のアイテムだ。ただその分、代償もある。どうやら僕の寿命を消費する力らしく、一回の変身で十数年分は刈り取られた。
僕だって死にたくはない。できればこの力は極力使いたくない、なのでキヴォトス自体の対策力を上げなければならないのだ。
それに、まだまだ問題はある。
『…』
『君もいたなぁ、うん。』
「大人のカード」でロストドライバーと共に出現した…と予想する存在。こいつは、僕がドーパントの攻撃でバランスを崩した時に現れた。あの声と同じ存在だ。よくわからないが、なぜか僕のサポートをしてくれた。まるで兄貴分のような事をする、変なやつなのだ。
なぜ僕のサポートをしてくれたのか、あの後質問しても
『…気分ってやつだ、気にするな。』
なんていう意味の分からない理由で僕を助けてくれた。
…何か隠している気がするので、あまり信頼しないようにしておく。
ちなみに、こいつは俺の心の中に存在しており、念話という形で話している。決して「独り言がヤバいヤツ」のような扱いはされないだろう。
まだまだ謎は多いし、問題は山積みだ。
だが、一応僕の初依頼は「犯人を止めた」という形で達成したのだ。
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「なるほど…そういう事だったのですね。」
「うん、そういう事。」
一連の事件をリンちゃんに説明し終わった後。
彼女と共にコーヒーを飲みながら、ゆっくりしていた。
「…わかりました。後日、報告書の提出もお願いできますか?」
「うん、今絶賛書いてるとこ」
「え…その…」
「…?」
「…本当に、アレで書くのですか?」
彼女がタイプライターに指を向ける。どうやら、コレでは不満らしい。
「…リンちゃん、これで書くことでネット流出を防ぐんだよ。実に合理的ではないかね。」
「いや…別にそれはいいんですけど…
先生、英語で書けるんですか?」
「いや、書けないけど」
「…先生、今からでも遅くないです。パソコンで書きましょう。」
「いや、ちょっと待とうよリンちゃん。
英語ね…うん、英語で書くから…ね?」
「…改築工事の料金」
「…ッ!」
「今からでも、請求出来るんですよ?」
「Yes Ma'am!(了解しました!今すぐやらせていただきます!)」
次回
第1章 アビドス対策委員会編
「Sに願いを/本格営業開始」
お楽しみに!!!