-Double Archive-   作:幸田市

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うへ~、公式の生配信の情報密度すごいね~。
というかメンテ後のバグ多すぎだね~

まぁその分補填楽しみだね~




第七話 Sに願いを/突撃

「うへー、何とかなったねー。」

 

ここはカタカタヘルメット団のアジト、僕たちが来る前まではところどころホコリが目立つが、特に荒れてもいないよくある事務所だった。しかし、今はソファーから羽毛が飛び出し、家具は乱れ、割れたガラスの破片と銃弾がそこらかしこに落ちている。小鳥遊は舞ったホコリに耐え切れず、口を抑えながらガラスの破片を踏み僕のいるドア付近へ戻ってきた。激戦に次ぐ激戦で体力もキツイと思ったが、彼女は相も変わらず眠そうな表情だったので、キヴォトス人と僕の力の差を思い知る。

 

「…これでしばらくはおとなしくなるはず。」

 

シロコはそういいながら、愛銃「WHITE FANG 465」のスリングを斜めがけ肩かけバッグの要領で後ろに回す。彼女も肩や頭、ケモ耳にもホコリがかかっていたので、全身をブルブルとさせた後、猛スピードでこちらへ向かってきた。ハードボイルドらしくないが、彼女に小動物的な可愛さを覚えてしまった僕を許してほしい。

 

「奥空、奴らの状況は?」

 

「はい!敵の退却を確認!並びに、彼らの補給品の回収、アジト、弾薬庫の破壊を確認しました!」

 

奥空はそういいながら、今僕が手にしているアロナが入ったOS「シッテムの箱」に、戦闘データとジャックされたアジトのカメラを送ってくれた。

 

補給品が入っていた棚は空っぽ、弾薬庫は戦闘の際全て爆発させたので残ったのは瓦礫の山。アジトである事務所は現在、僕たちが占領しているので問題はない。これ以上ないまでの勝利であった。

 

「ふん!ざまぁ見なさい!」

 

黒見もこちらへ合流した。彼女は今までのただ一方的な防戦に思う事がありすぎたのだろう、ふんすと擬音が出てくるくらいのドヤ顔をしながら窓越しに逃げ遅れたヘルメット団を見つめている。その顔があまりにも出撃前のむすっと顔とギャップがあったせいか、思わず吹き出しってしまった。

 

「ブフッ…」

 

「…あんた…人が気持ちよく笑っているのによくそんな反応できるわねぇ!?」

 

黒見がすぐさま僕だと感知し、任務前のむすっと顔をしてこちらへ接近してきた。

 

「いやまぁ、そんなかわいい笑顔見たら誰だって笑うでしょそりゃ。」

 

「なぁに意味わかんない事言ってんのよ!」

 

黒見は顔を真っ赤にしながら、大声で僕に反論した。…なぜだろうか、女性に対するプラスな言葉はどんどんかけるべきだと学んだのだが、思いっきりマイナスだ。こういう時はどう声掛けすればいいのだろうか、今度あき姉とときめ姉さんに相談しよう。

 

「ほらほら~そこふたり。イチャイチャしてないでいくよ~」

 

「してないわよホシノ先輩!」

 

…なぜイチャイチャなのか、ただの喧嘩でしかないと思うのだが…まぁいいとしよう。黒見が小鳥遊の元に走る所を見ながら、僕は三人の後ろについていき学校へ向かった。

 

 

 

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「皆さん!お疲れさまでした!」

 

委員会の会議室へ着くと、奥空は笑顔で僕たちを迎えてくれた。机には多数の資料、どれも過去のヘルメット団との戦闘データだ。会議の際に使うホワイトボードの横にはドローン運搬される回復キットが積まれている。戦闘部隊が負傷した際、どんな状況であっても対応できるのは、彼女の「準備の良さ」があってのものだと理解できる。彼女がいなければ、アビドスは僕が来る前にカタカタヘルメット団に占領されていただろう。

 

そう考えると、アビドスはチームワークの高さはどの学園よりも上なのかもしれない。先ほどの戦闘であれば、小鳥遊が敵のヘイトを買ってる間、シロコとセリカの連携攻撃、トドメはノノミのミニガンでの掃討、そしてそれらを支える奥空の戦闘サポート能力。この連携能力はレッドウィンターの軍やヴァルキューレにも匹敵するほどだと評価できる。きっとそれは、彼女たち全員でこの学園の問題を乗り越えようとしているから生まれたものであり、彼女たちでなければなしえなかったものだ。

 

「アヤネちゃんも、オペレーターお疲れ。」

 

黒見は奥空へ労いの言葉を向ける。その言葉の音色は優しく、決してお世辞などではない彼女が奥空へ向けた「心から出た言葉」だ。

 

「火急の案件だった、ヘルメット団の件が片付きましたね。これで一息付けそうです☆」

 

「うん、これで重要な問題に集中できる。」

 

十六夜、シロコはそういいながら、肩に背負っていた銃やカバンを下ろす。十六夜は肩がこるのか、両腕を回して疲れを取ろうとしている。一方、シロコは特に問題はないのか、そのまま水分補給を取ろうと冷蔵庫の方へ向かった。

 

「これも先生のおかげですね☆」

 

「うん、ありがと先生」

 

「そうだね~ありがとせんせ、お礼におじさんと一緒におひるねしよ~」

 

「何言ってるんですかホシノ先輩!…まぁ、一応感謝はしとくわ」

 

「あはは…ともかく、ありがとうございました。先生。お陰でようやく借金返済を再開することが出来ます!」

 

「ちょっとアヤネ!なんでそれ言っちゃうのよ!」

 

十六夜、シロコ、小鳥遊、黒見、奥空は僕の方を向きながら、感謝の念を述べてくれた。こちらもただ受け取るだけでは失礼だ、こちらも大人として恥ずかしくない挨拶をしようと「どういたしまして」と言おうと思ったのだが…

 

「あ…いや…その…うっす。」

 

『あー恥ずかし、そんなんだからクォーターボイルドなんだぞキミは』

 

ダメでした。

 

今まで探偵の弟子として、数々の事件に立ち向かった僕ではあるが、唯一といってもいい弱点として「褒められ下手」な所がある。ちょっとした事でキャパシティが限界を超えてしまうため、いつも依頼人に笑われてしまう、ハードボイルドな僕には大変よろしくない弱点なのだ。

 

「…?どうしたの先生」

 

「あれー、もしかして照れてるの?

うへー先生、そんなかわいい所あるんだー。」

 

「…っぷ!こんなことで照れちゃうなんて、先生もまだまだねー。」

 

「大丈夫ですか先生?私がいいこいいこしてあげますからねー。」

 

「あはは…先生もそういう顔するんですね。」

 

生徒の反応は五人五色。頭をなでようとするもの、にやにやと揶揄おうとするもの、あまりのおかしさに笑ってしまうもの、意外な反応に驚きを隠せないもの、そもそも気づいていないもの。僕は十六夜の手を左手で止め、黒見の反応についブチっと来てしまい…

 

「笑うなぁ!黒見!」

 

「いやまぁ『そんなかわいい顔見たら誰だって笑うでしょ』だっけ?だから笑ってるのよ。」

 

「…クソォ。」

 

このガキ一回シバいてやろうか。ハードボイルドな漢に一番言ってはいけないかわいいを言ったこの女をわからせなくてはならない。思考を巡らせろ、奴が最も動揺した単語を海馬から探し出せ…

 

『バカなんですかぁぁぁぁぁ!!!』

 

『待ってくれユウカ!僕はただこの帽子を買いたくて』

 

『知りませんそんな事!ただでさえあなたのせいでシャーレは自転車稼業やってるんですから…』

 

『仕方ない…

僕の愛しいユウカ、その手に持っているスタッグフォンを返してくれ。』

 

『…いとッ!?…すみません、もう一度お願いできますか…』

 

『えーやだ』

 

『…私がこの帽子を買ってあげますから。』

 

『生徒の施しを受けるのは半人前だと思ってる。』

 

『…許可します。』

 

『え?』

 

『言ってくださったら購入を許可します!これでいいですか!?』

 

『よっしゃぁ!愛してるよユウカぁ!』

 

『びゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!先生が!?わたしを!?だきしめ…』

 

『…どうしたユウカぁぁぁぁぁぁ!!!

セリナ!ちょっと来てセリナぁぁぁぁぁ!!!』

 

 

まずい、なんかよくわからんが先週のユウカとの出来事を思い出してしまっていた。あの後、コンマ差で来た救護騎士団の鷲見(スミ) セリナは倒れたユウカをタンカに移した、一人だとタンカは運べないので手伝おうと思ったのだが、突如現れた狐の仮面こと狐坂(コサカ) ワカモが「あなた様がお手を患う必要はありませんわ。」と言いながらセリナと共にミレニアムの保健室へと連れて行ったという。

 

 ちなみに帰ってきたワカモから「あなた様から…その…ご褒美が欲しいのです」と言われ、その後延々と「愛してるよ、ワカモ」を囁き続けた。睡眠時間は死んだ。何故、ワカモが僕にこんな事をさせようとするのか、僕にもわからない。よくわかんないけどいつの間にか好かれていた。一体、僕が何をしたというのか。

 

相も変わらず謎が増え続けるばかりだ。

 

しまった、話を戻そう。海馬から記憶を探っていく内、黒見が妙に反応したワードが見つかった。

 

「借金って言葉、やけに反応したよね。黒見。」

 

「…あ…その話は忘れて!」

 

「いいじゃない、セリカちゃん。隠すようなことじゃあるまいし。」

 

「かといって、話すようなことじゃないでしょ!」

 

小鳥遊の言葉に極端に反応した黒見は、小鳥遊に詰め寄り彼女の意見を否定する。その姿を見たら、百人中百人が「この学校には借金がある」と確信できるほどの動揺だった。そして、彼女の否定にまた一人、意見を示すものがいた。

 

「ホシノ先輩の言う通りだよ。先生は信頼してもいいと思う。」

 

シロコであった。彼女は僕の方を一瞬向き、気取らないクールな物言いであった。どうやら彼女は思った以上に僕を高く買っているようだ。それは先生である自分としては、とても鼻が高い気分となった。数時間の間柄とはいえ、僕自身もシロコへの感謝の念を送りたくなった。だがそれ以上にどうやったらあんなクールな感じに語れるのだろうかが気になる、後で聞くことにしよう。

 

「確かに先生がパパっと解決してくれるような問題じゃないかもしれないけどさ。

でも、この問題に耳を傾けてくれる大人は、先生くらいしかいないじゃーん?」

 

小鳥遊はシロコが加勢した今が言い時と決めたのか、セリカに対しわが子を諭すような口調でそう言った。黒見は黙りこみ、顔を下へ俯ける。さすがにこれでは黒見に分がない。だが、彼女にも自分たちの学校は自分たちで守りたいという気持ちがあるのかもしれない。僕はできる限りそれを尊重はしたいが…ここまで関わってしまった以上、僕は後戻りという選択が消失した。ならば進める選択肢は一つ。

 

"…戦う、彼女たちと共に戦う。"

 

…うん、これで心スッキリだ。とある漫画でも言っていた通り「納得は全てに優先される」のだ。「先生」として、「探偵の弟子」として、「一人の人間」として、この選択は決して他者の為ではない。「自分の為」に後悔しない道。

 

よし、その選択をしたからには、まず真っ先にしなければならないことがある。僕は言い争いを今にも始めようとする黒見の前に立ち…

 

「…ッ!…何よ」

 

彼女は先ほどの怒りの表情が消え、困惑とほんのちょっとの恐怖がにじんだ顔を見せて僕を見ている。そんな状態の彼女の目の前で、僕は向かい正座をし、手のひらを地に付けた後、額を床スレスレに近づけた。いわゆる「土下座」というやつだ。

 

「…え?」

 

少し顔をあげると、黒見は虚を突かれ目を点にしていた。その目は「何かに化かされているのではないのか、大人がこんな事をするはずがない」なんて話し始めるのではないかと思った。それはシロコ含めアビドスメンバーも同じだ。

 

 

「…ごめん、黒見。今から僕は、借金の話を聞くっていう、君の想いを踏みにじる行為をする。これは決して許してほしいんじゃない。僕は君たちと共に戦いたいからしたんだ。必要ならバイクも売る、シャーレもやめる、帽子…はちょっと迷うけど、必要なら捨てる。少なくとも僕は大人のプライドなんかよりも、君たちと共に戦う事を優先したい。」

 

彼女たちと共に戦うためには、僕は黒見、奥空、十六夜、シロコ、そして小鳥遊の心のなかで対等にならなければならない。彼女たちからすると、先ほどまでの僕は「助けに来てくれたお客さん」状態だった。だからこそ、黒見は部外者である僕に全てを話すことが出来なかったのだろう。そんじょそこらの学園とは比べものにならないほどの絆を持った彼女たちと心の距離を近づけるには、「大人のプライド」を捨てる必要があったのだ。ちなみに、僕のプライドはユウカが既に破壊しているので実質ノーダメなのは、僕たちだけの秘密だ。

 

 

「…何言ってんのよ、あんた。」

 

黒見は、まるで僕を理解できない存在を目の当たりにした様子で、逃げるように去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回

第八話 「Sに願いを/忠告」
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