改造スライムと転生スライム   作:黒井政人

1 / 16

初めての更新で作者ドキドキ。
1~3話くらいまでは転スラキャラは出てきません。



魔物達の主

 

 壊れた世界(ブレイクワールド)。そこは人間と魔物が共生している世界

 しかしながら最初から魔物と人間が仲良くしていたなんてことはなく、大昔は人間と魔物は敵対していた。魔王といった存在はいなかったものの、魔物はこの世界の特殊な要素“マ素”によって凶暴性が増したために、魔物は脅威の象徴だったのだ。当然ながら魔物によって家族や友人が殺されたなんてよくある話で、当時は共存なんて不可能だと思われた。

 

 だがそんな現状を変えた科学者がいた。その者は世間一般の考えや常識を持たず魔物が大好きであり、魔物と共生する未来を作るべく奮闘した。その結果、その科学者は人間と魔物が共生するための第一歩としてスカウトリングの作成に成功する。これは本当に偉業であり、その科学者の名はその星の大半の住民知れ渡ることになる。

 

 スカウトリングとは対象の体内のマ素を減少させ、凶暴性を抑えることが出来る指輪だ。

 魔物が恐怖の象徴であったために多くの人間が誤解していたのだが、魔物の本質が凶暴というわけではない。あくまでもその世界に漂うマ素によって凶暴性が増しているだけなのだ。

 粘性族(スライム)等は特にその影響を受けており、体内のマ素を減少させれば自然と人間に懐いてくる。

 

 このスカウトリングを使って魔物を仲間に引き入れ、魔物と一緒に戦うのが魔物使役者(モンスターマスター)と呼ばれる者達だ。そんなモンスターマスター達は魔物を捕獲して町に寄付したりして金を稼いだり、自身の仲間になった魔物達の能力(レベル)上げに時間を使ったりと多種多様である。

 更にスカウトリングを開発した偉大な科学者が主催のバトルGPという大会等も存在しており、そのバトルGPで優勝するために研鑽を積む者なんかもいた。

 

 そんな感じでこの世界は繁栄しており魔物と人間の溝は徐々にだが改善していく。歴史を見れば様々な事件があったものの、それらは優秀なモンスターマスターやとある一族の協力によって大きな被害が出ることはなかった。そのため平和な時代が何世紀も続き、それは永遠に紡がれると思われていたのだが……

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

 ブレイクワールドに散らばる星々。だがその星々に見えるものは星が砕けた後の残骸である岩石や、宇宙に生息しているような魔物達だ。今となっては安全な星など両手で数えられる程度しか存在しない。それくらいこの世界は崩壊しているのだ。

 

 その安全な“星”の一つ、ブレイクワールドの技術の粋が集められている“崩落都市”と呼ばれる場所にて、数えるのも億劫になる程の魔物達が大地を占拠し、大空を羽ばたいていた。他の星にここまでの数の魔物はいない。そして普段からここまでの数の魔物達が居る訳ではない。

 今日はこの世界最後のモンスターマスターに仕えている魔物達にとって、特別な日なのだ。

 

 

 

 

 崩落都市のまともに機能が稼働している建物の一つ、センタービル。

 それはハイテクな外見に、天まで届くかの如く高い建物だ。内部には様々な複雑怪奇な機械や闘技場などがあるが、今は内部ではなく外部……正確にはセンタービルの頂上に魔物達の好奇の視線が集められていた。その視線の先には大地や天空にいる数多の魔物達を従える白髪の少年と、その少年に付き従う藍色と翡翠色の二匹のスライムが居る。

 そして、その場所ではスライム達による報告会が行われていた。

 

 

「ふむふむ」

 

 

 少年は、配下の別世界の体験談を興味深々に聞きながら、最新鋭の技術で目の前に映し出される映像に目を奪われていた。その映像は別世界……ブレイクワールドとは違う世界の光景であり、スライム達の記憶を再現したものである。

 少年は報告を聞き終え映像をパッと消すと、スライム達の方に向き直り、告げる。

 

 

「ご苦労、やはり別世界は面白いな。まだ目標達成には至らないが、これは見事なものだ」

「「お褒めに預かり光栄でございます。これからもマスターのご期待に応えられるように尽力いたします!」」

 

 

 王者の風格が漂うその声に、二匹のスライムは同時にマスターに感謝の言葉を述べた。

 このスライム達は古来より、別世界に行きとある二つの目標を達成することと、その世界で体験したことを記録して報告し、見られるように映像を作ることをマスターから命令されていた。しかし話を見聞きするのと実感するのとではかなりの差があり、本当は自分が別世界に赴きたいと少年は思っているが、世界を渡れるほど少年は強くないのである。

 

 

「さて、お前たちは異界に赴いて疲れているだろう。ゆっくり休……」

「いいえ、それには及びません。オレ達が出向いた世界では戦闘といった概念がなかったために休む必要がございません。ですので、マスターが作り上げた魔物達と戦いたいと存じます」

「右に同じく。向こうの世界では影響を考慮して満足に戦うことができなかったために、体が鈍っているのです。このままではワタシ達の目標達成に支障が出かねません」

「「よろしいでしょうか?」」

 

 

 マスターが休めと命令しようとする前に、その前にスライム達は戦いたいと願いでる。

 

 ここで言われている『マスターが作り上げた魔物』について。

 このブレイクワールドでは魔物同士を融合させて新たな魔物を作り出す装置が開発されている。マスターは度々その装置を起動させては、魔物を作り出しているのだ。字面だけ見たらマッドサイエンティストのようなものだがこの世界では娯楽が少なく、故にそんな趣味に走るのも仕方ないのだ。

 

 

 あまりにも戦闘狂なスライム達のその様子に少年は若干呆れながらも、いつも通りのことなので許可を出す。逆にここで拒否しようものなら、スライム達も周りの魔物達もガッカリしたことだろう。

 

 

「いいだろう。星を砕く程でなければ好きに暴れて構わない」

「「ハハッ!!」」

 

 

 マスターからの許しを得たスライム達は歓喜し、センタービルの頂上から宙に舞う。

 それから自分達の目で周りを見渡し、備わっている口で思いっきり声を上げる。

 

 

「お前ら、久しぶりだな。マスターへの報告も終わったことだし、オレも体を動かしたいからお前らの相手をしてやるよ。オレらがいない間にマスターに更に鍛え上げられただろうし、退屈させるなよ!」

「みんな、久しぶり~! ユメだよ~! お兄ちゃんと一緒に遊んであげるから、全力で来てね~!」

「「「うおおおおおおおおおお!!」」」

 

 

 その二匹のスライムの名はキョウムとユメ。少年が初めて全ての魔物同士を融合させるのに成功した後に、様々な出来事が起こりそのスライムが誕生したのだ。だが、キョウムやユメのような存在を作れるかと問われれば答えは否だ。気持ち的な問題ではなく、技術的に不可能。それくらいキョウムとユメは特別なのである。ちなみにキョウムが藍色でユメが翡翠色だ。

 

 スライム達の言葉に魔物達は大歓声を上げる。その直後爆音が響き渡り、魔物同士での戦いが始まったが少年はそれを見ることなく、踵を返す。

 

 少年はセンタービルの内部に戻り、配下の魔物達に作り上げてもらった自室に戻るなり、深紅のベッドに身を委ねる。

 

 

「やはりあの二人は優秀だな………けれどもまだ、俺の望みは叶わない、か………まあ、いい。次の世界に期待するか」

「……相変わらず(なんじ)は旅に出すのだな。あの二人は(なんじ)の友であり他の魔物と同様しっかりした個性もある。退屈している(なんじ)の遊び相手になってくれると思うのだが」

 

 

 少年がそう呟くと、部屋の中にいた白い毛並みの翡翠の一本角が特徴的な狼が心配そうな声で言った。その狼の種族名はJOKERと言い、大昔から行動を共にしていた少年の相棒だ。

 

 だが、少年はそんな相棒の言葉にフッと表情をほころばせ、先程のキョウム達への言葉遣いとは違い、思いっきり砕けた口調で反論する。

 

 

「だからこそだ。あの二人は俺経由で造られたにも関わらずしっかりとした自我を持っている。こんな退屈な世界に縛る必要はないんだよ」

「……」

 

 

 JOKERは言葉を失った。少年は大昔に実行されたある作戦によって、死とは無縁の存在になっているのだ。故に少年はその見た目からは想像できないような永い年月を生きているため、世界の全てを理解している。自分の子供とも言える配下達をこんな世界に縛りたくないというのは心からの本音であった。

 無論それは相棒であるJOKERも対象である。

 

 

「…………お前も俺についてくる必要はない。お前には神獣界という家がある。こんな退屈な俺に縛られず自由気ままに生きてもいいんだぜ」

 

 

 それは遥か昔から変わらぬやり取り。少年がそう問えばJOKERの答えは決まっている。

 

 

「我は我の意思で汝の傍にいる。汝が……我の相棒なのだから」

 

 

 

 





 これからよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。