結局月曜に投稿出来てない……
ゴブリン達や牙狼族は一日経ったら目を覚ましたのだけど、寝ていた際のみんなの変わりようにワタシたちは驚いていた。なんとあの弱弱しく、ちょっと魔力を解放しただけで死にそうだったゴブリン達が一気に頼もしく見えるぐらいの進化をしたのだから。
男性のゴブリンは体格ががっしりしているし、女性のゴブリンも魅力? 美しさ? が上がっていた。双方に共通していることは身長が伸びた事と目に知性の光が宿っている事かな。前までは子供くらいの背の低さで意志薄弱そうな目つきだったからね。
何故かゴブタという名前のゴブリンだけはたいして見た目が変わっていなくて「才能的なのが伸びたんすよ」と言っていたけど、どういうことだろう?
牙狼族も以前と比べて大きくなって強さも増したみたいだし、新たなスキルも獲得したらしい。
どんな感じに進化するんだろうな~、と想像力を膨らませていたけど、みんなは想像の斜め上を突っ走って来た。ワタシ、結構永く生きてるけどこんな事例見たことないんだけど……みんな変わりすぎだよ……お兄ちゃんはこういった経験をしたことあるのかな?
ついでに、リグルドに至ってはヨボヨボの老人から筋骨隆々になっているため、普段から魔力の波形で個人を識別しているワタシでも、思わず誰? って思ってしまった。
更に、ランガは他の個体よりも更に大きく、体長五メートルぐらいになっていた。瞳の色が金色になり、額に大きな一本の角が生えていた。体の色は正反対だが、マスターの相棒であるJOKERみたいだね。
「えっと、みんなどうしたの?」
「よくぞ聞いてくださいましたユメ様! 実は先日の名付けで我々は
ワタシからの質問にリグルドは嬉しそうに答えた。その勢いにランガも続く。
「そして我々は牙狼族から
「あれ? でも牙狼族ってランガしか名付けてない気がするんだけど? どうして?」
「我々は全にして個なので同胞はみんな繋がっております故に、我が名は種族名となったのです!」
尻尾をブンブン振りながらランガが答えてくれた。
興奮しているのは分かるし、その仕草は可愛いんだけど、そのしっぽブンブンでスライム状態のリムルが吹き飛ばされそうだから少しだけ抑えて欲しいかな。
「ふ~ん、なるほどー」
「名付けってすげぇな」
ワタシが思わず呟いたらお兄ちゃんもすぐに同意した。
とりあえずみんなの進化状況は理解した。リムルの方も徐々にだが、名付けによって消費した魔素が回復しつつあり、明日か明後日には目覚めるだろうということをみんなに伝えると歓声が沸いた。大げさな人達だね。
「とりあえず家を全部壊しちゃったから木を刈ってきて。ついでに食べ物もお願いね~」
「ハハッ‼」
「リグルド、みんなへの役割分担を頼む」
「心得ました!」
お兄ちゃんがリグルドに仕事をぶん投げた?! まあお兄ちゃんって面倒は見るけど面倒くさがりだからね。というわけでみんな頑張って!
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俺完全復活! いやはや、名付けをするだけで魔素を使い果たすとは、これからは少し気を付けるとしよう。
それにしても、寝ている間ずっと誰かに抱かれている気がする。
「起きた? おはようリムル!」
「ああ……おはようユメ」
起きたばかりの俺に真上から元気な声が投げかけられ、返事をする。そこには満面の笑みを浮かべているユメが居て、すぐそばにはスライム形態のキョウムが居る。
俺はユメに抱えられていたようで、俺の視界(魔力感知だけど)に映る彼女の笑顔はとても可愛らしいものだった。胸がないのは少しだけ残念だが、かなり快適である。今日はもうずっとこのままでもいいかも。
「俺が寝ている間になんか問題ごととか起きてないか?」
「大丈夫だよ! あっでもみんなすごく進化してたよ! おーいみんな、リムルが目覚めたよ~」
ユメが集合をかけると、村の中にいたゴブリン達と牙狼族が一斉にこっちにやってきて平伏してきたが、みんなの見た目が変わりすぎて俺は自分の視界を疑ってしまった。リグルドに関しては、元の面影なんて一切ないぞ。
ユメがざっくり説明してくれたが、雄のゴブリンがホブゴブリンに、雌がゴブリナに、牙狼族は
まさかこんな事になるとは。とりあえず今ここに全員いるので寝ている間に考えていたルールを開示する。
一つ、人間を襲わない。
一つ、仲間内で争わない。
一つ、他種族を見下さない。
このルールを開示するとリグルと名付けたホブゴブリンが「何故人間を襲わないのか?」と質問が来たが「俺が人間が好きだからだ」と言ったら納得してくれた。あまりにも素直すぎるので一応補足として、人間は集団で生活しているから大人数で討伐にでも来られたら面倒、という事を説明した。言うまでもなく先に述べた方が本音だけどな。
三つ目のルールも質問がきたがそれっぽい理由を返した。トラブルの原因はなるべく少なくしたいのだ。
「……まあ、別にいいんじゃない。リムルの意見に口を出したりはしないよ」
「強い奴が居れば戦ってみたいがな」
ユメやキョウムにも異論はないようだ。
この二人は俺の配下という訳ではないから、このルールに従ってくれるか疑問だったんだけど、それはどうやら杞憂に終わったようで安心する。ユメが若干不服そうだったのが気になるけど。
ルールを策定したから次は役割分担をしようと思ったがそれはキョウムがやってくれていた。というのも、キョウムが決めた訳ではなく、リグルドに丸投げしたらしい。「知力も高くなったみたいだし大丈夫だろ」とは丸投げした本人の言葉だ。
「リグルド!君をゴブリン・ロードに任命する! 村を上手く治めるように!」
俺もリグルドに丸投げすることにした。君臨すれども統治せず、いい言葉だ。
「ハハッ‼このリグルド、この身命を賭してその任、引き受けさせていただきます‼」
感涙に咽びながら、あっさり引き受けてくれた。そんなに嬉しいのか。少し大げさである。
そしてユメに抱かれたまま流れるように家の建設状況を見たがかなり下手だった。それに衣服も露出度が高く、ホブゴブリン達のゴブリナを見る目がヤバい。防具もボロボロ。唯一、ユメだけは人型の時に上等な衣服を着ているけど、問題は山積みである。
「なあ衣服とかって調達できないのか?」
「オレやユメなら魔力から服を創ることぐらい出来るぜ?」
「いやダメだ。例えその力で現状を解決しても、それは問題の先送りだ。特定の個人の力に頼っていたら、そいつが抜けた時にまた問題になる。だから技術を教えてくれそうな奴がいてくれたらいいんだが……リグルド、当てはあるか?」
「はっ! それでしたら今まで何度か取引したことのある者達がおります。」
キョウムが出した提案を却下してリグルドに聞いてみると心当たりがあるようだ。
その取引をしていた者達の種族名はドワーフといって器用な人達なので家の作り方も知っているのではないか、と。ドワーフと言えば、鍛冶の達人というイメージの、あの有名な種族か! 行くしかない!
「行ってみる。リグルド、準備は任せていいか?」
「‼ お任せください!今日の昼には全ての用意を整えましょうぞ!」
大張り切りのリグルド、ここは任せよう。
「この世界で初めての町だな。少し楽しみだ」
「そうだね! 人間の国だったらそこまで興味は湧かなかったけど、ドワーフの国は行ってみたい!」
俺のワクワクした気分に釣られてか、二人とも楽しそうだ。というかユメってもしかして人間が嫌いなのか? なんか言葉の節々で「ワタシは人間が嫌いです」って主張してるような気がする……まあ、後で聞いてみるか。
それにしても……こんな雰囲気の中、これを言うのはすごく心苦しんだけど……
「あの、二人とも……」
「うん、どうした?」
「どうしたの?」
「……二人のどっちかにはこの村の警備のために残って欲しいんだけど……」
「「……」」
俺が躊躇いがちにそう言うと二人は口を閉ざしてしまった。多分今の二人の気持ちを例えるなら、修学旅行を楽しみにしていた子が当日に風邪を引いて行けなくなった、みたいな感じだろう。
やがてキョウムがユメに向かって口を開いた。
「よし、ユメ勝負だ。勝った方がリムルに付いていく」
「ちょっと待ってよ! ワタシ今のところお兄ちゃんに全戦全敗中なんだよ! 大人げなさすぎでしょ‼」
「ヴェルドラも言ってたが、この世界は弱肉強食。勝った方の意見が採用されるんだぜ。それとも、負けるのが怖いのか?」
キョウムがそう挑発するとユメの雰囲気がガラッと変わった。
先程までの子供っぽい雰囲気は一瞬でなくなり、殺意MAXの鋭い眼光でキョウムを睨みつける。それと同時に俺を抱いている腕にも力が入り始め……俺は潰されそうになっていた。あの、ユメさん、俺の心配はしてくれないのかな? このままだと本当に圧死しそうなんだけど!
対するキョウムは怖気づく様子もなく未だスライム形態のままだ。
「そんな訳ないじゃん。いいよ、今日こそお兄ちゃんを殺してみせるよ」
「決まりだな。なら尋常に……」
「ストップ、ストーーップ!」
こいつらが戦ったら絶対にこの村が被害に遭うし、なんなら先に俺が死にそうだったので必死に声を上げた。それにこの村の警備を任せようとしてるのにその前にこいつらが滅ぼしたら本末転倒だろ!
ユメの腕の中からなんとか脱出して、リグルドの用意が終わるまで待った。
リグルドは宣言通り、昼には準備を済ませてくれた。荷物は食べ物三日分と銀貨七枚と銅貨が二十四枚。多分大した額じゃあないだろう。ドワーフの王国までゴブリンの足で二ヶ月掛かるらしいが、牙狼族の足があればもっと早く着くことができるとのこと。食べ物も少し不安だが足りなくなったら自給自足するつもりだ。
この村の守護にキョウムかユメのどちらかを置いておきたかったが、放置していたら兄妹喧嘩が始まってこの村が滅ぶ可能性が非常に高いかったため、仕方なく同行を許可した。
だがキョウムが村の防衛のために手を打ってくれた。
「デモンスペーディオ」
キョウムがそう唱えると、漆黒の毛並みに包まれ、赤い角を持つ金色の瞳の狼を召喚した。
そうか、二人の言うマスターに仕えている奴は、ブレイクワールドの技術を使って、契約した魔物を召喚することができるんだったな。
「この村の守備を命ずる。敵対者には容赦するな」
「御意」
かなり強そうな獣を召喚してくれたので俺も安心した。というか俺よりも強そうだ。
同行者はホブゴブリン数名とその相棒の嵐牙狼族数匹とキョウムとユメだ。俺はランガに乗って、ゴブリン達も自分の相棒に乗った。キョウムとユメは牙狼族に頼らず、キョウムが呼び出した魔物に二人で相乗りするらしい。
「JESTER」
キョウムはさっきと同じように獣を召喚した。だが今回呼び出されたジェスターという獣はさっきのデモンスペーディオと対照的で神々しい雰囲気を纏っていた。
キョウムが呼び出したジェスターという魔物は一言で言えば虎。しかしながら内に秘めた魔素量は測定可能な範囲で俺を大きく上回っている。真っ白の毛並みには所々水色の線が刻まれていて、かなり格好いい。モフモフすればかなり気持ちよさそうだ。そして額には翡翠の角が生えており、途轍もない強者の雰囲気が漂っている。
神聖な気配故か、それとも他に要因があるかは分からないが、絶対にジェスターにも逆らってはいけないと本能が訴えてくる。
「キョウム様って、どうやってそんな強そうな魔物を召喚してるっすか?」
今回の旅の案内をするホブゴブリンのゴブタが聞いていた。確かに気になるが、俺たちに理解できるのか怪しいし、素直に教えてくれるのか?
「それはオレの故郷に関する魔法技術だから話す気はない。ちなみに二匹とも“神獣”だからまあまあ強いぞ」
「神獣?」
あくまで教えるつもりはないみたいだが、神獣っていうヤバそうな単語には問い返さずにはいられなかった。
「長々と説明しても分かりにくいだろうから簡潔に言うと、魔素のバランスを司る、神に遣わされた存在だよ。魔素を浄化することができるから、魔物を相手取るならこの子達は最適だよね~」
キョウムの代わりにユメがそう答えたが、その内容に俺達は絶句してしまった。
魔物にとって、魔素はなくてはならない物質であり、人間でいうところの血液みたいなもの。それを浄化出来るってことは本当に魔物の天敵みたいな存在ってことだろ? うん、取り敢えずヤバいという事だけは分かった。
「なんなら試してみる? ホブゴブリンくらいなら一発で存在消滅するだろうけど」
「やめろバカ妹。無駄なことするな」
「は~い」
そしてこんな事を平然と言うユメってやっぱりヤバい奴なのでは? いや、馬鹿なだけか。
そんなことを考えながら、俺たちは旅立ったのであった。
旅はかなり順調だった。ランガ達は時速八十キロ近くをキープして走り続けており、『粘糸』で体を固定していないとすぐさま吹き飛ばされそうである。チラッと後ろの方を見ると……ゴブタの顔がとんでもないことになっていた。鏡があったら見せてやりたい。
キョウムやユメは慣れているのか、スライム形態のままくつろいでいる様子だった。というか、この二人は空を飛ぶことができるんだから、そっちの方がいいんじゃないか?
そう思って『思念伝達』を使って二人に聞いてみたのだが、
『こういうのは雰囲気が大事だろ?』
『そうそう、みんな騎乗しているのにワタシ達だけが飛んでいたら浮いちゃうじゃん。浮くだけに、なんちゃって』
ユメのしょうもないギャグは無視するとしてあくまでも雰囲気が大事なのだと二人は語る。
そういうものなのか。
『そういうもんだよ』
俺の思考を読み解いたかのように、ユメはそう言った。
俺が考えていたことが読まれた? あ、ユメの『
心の中を読まれるのはいい気分がしないから、出来るだけ妨害したいんだが……『大賢者』
《了、個体名:ユメの『思考看破』への
「あ!」
『大賢者』からの報告を聞いた直後、ユメの驚くような声が聞こえてくる。いくら友達といえど、俺の全てを覗き込まれるのは勘弁だからな。これくらいは別にいいだろう。
ゴブリン達は進化の影響で、以前と比べて格段に体力が上がったようだが七時間ぐらい経って一旦足を止めて、今日はここで野宿をすることにした。もう日も落ちているし、無理は禁物だし、ゴブタが今にも吐きそうだったし。
全員が止まったのを確認して俺は体を休めておけと命令を下した。
……はずなのに……
「それじゃオレはドワーフ王国までの道のりに危険な魔物がいないか調査してくる」
「ワタシは周りを警戒しておくよ。リグル、もし魔物と出会ったら『思念伝達』で報告して」
「心得ました。御二方もどうかお気を付けて」
こいつら、休むつもりが一切ない! 働きすぎは体に毒なのに……
キョウムとユメがこの場を離れ、リグル以下ホブゴブリン達は食料調達班と休息班に分かれて、行動している。ゴブタは酔いを覚ますために近くの木陰で休んでいて、ランガもすぐ側にいる。
働き者だな……と思いながら周囲を探検し、見つけた川辺のすぐ近くで様々なスキルの実験をしてみることにした。『捕食者』の『擬態』を使って変身してみたり、獲得した技を試してみたり。
そんなことをしているとあっという間に時間が過ぎるようで、休憩を始めて既に一時間半くらい経っていた。そろそろみんなの所に戻ろうと思い……ふと、すぐそばにある川に近づき、水面に反射して映る自分の姿を眺める。
そこに映っているのは当然だが、スライムである俺の姿だ。
「何度見ても、マジで俺スライムだなー」
なんて言葉を発していると、突然目の前の川が光りだした。
何故……と思う暇もなくその光に飲み込まれたのだった。
色々予定ができて一か月くらい休止させていただきます。