改造スライムと転生スライム   作:黒井政人

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 いろいろ忙しくてほぼ一か月ぐらい休んでしまった。
 そして申し訳ないことにこれからもかなり予定が詰まっているので本当に不定期更新になってしまいます。



調書作り

 

「さて、言い訳を聞こうか?」

 

 

 それは目の前で顔に青筋を浮かべながら俺達に事情聴取をしていた警備隊長の言葉だ。    

 俺達はドワーフ王国に入るための長い列に並んでいたのだが、そこでユメがひと悶着起こしたせいで、ユメと一緒に酒樽にぶち込まれ牢獄に入れられてしまった。

 先に言っておくが俺は何も悪くない。あの時の事を簡単に説明するなら……

 

 

1冒険者に絡まれた。

 

2ユメが冒険者達の挑発に乗った。

 

3冒険者達がユメに一斉に攻撃した。

 

4ユメが仕返しに少し威圧した。

 

 

 たったこれだけなので、俺とゴブタは何もしていないし、ユメだけが悪いというわけではないと思う。それにユメはあれだけの惨事を起こしたが、一応は周りに配慮して『威圧』の威力を最小限にしたらしい。

 

 

「多分ワタシが手加減なしで『威圧』していたらあの時いた人間全員と、ついでにゴブタも死んでたと思うよ」

 

 

 とはこんな事態にしてくれた張本人の言葉だ。怖すぎるだろ。

 

 

「ふむ、まあ確かに周りの者達との証言は一致するが……」

 

 

 警備隊長であるカイドウさんも渋々といった感じで納得している。

 その周りの人達の中にキョウムもいるんだろうなあ。アイツ、ユメと喧嘩していたとはいえ、俺達に何も言わず人型になって距離を開けていたせいで俺達と一緒に警備隊に連行されなかったので、今頃多分ドワーフ王国観光を楽しんでるはずだ。覚えてろよ……

 

 

「じゃあついでに聞くが、なんであんたはその冒険者達の攻撃を受けて無傷なんだ?」

 

 

 スライムなら普通やられるだろ……と、口ではそう言っていないものの、そんな言葉が聞こえてくるようだった。まあ確かに俺も前世の記憶や常識を照らし合わせてみても強いスライムなんて聞いたことがない。そんな話聞いても……まあユメやキョウム曰く、俺も充分規格外なスライムらしいけど……冗談だろという感想を抱いたと思う。

 カイドウ隊長の言葉に対しユメは少しムッとしたような感じだったが、それをすぐに引っ込めて俺に『思念伝達』をしてきた。

 

 

『ワタシ達の目的を達成するためにも、ちょっとワタシの作り話に協力してね』

 

 

 は? と思った俺の返答も聞かずにユメは『思念伝達』を打ち切り、カイドウ隊長の言葉に答えていく。ついでに言うとゴブタを『遮音結界』で閉じ込めている。恐らく余計な発言をされないためだろうが、そもそもコイツは今がどういう状況かも分からず爆睡していた。後で何らかの刑を与えておこうと密かに思う。

 

 

「実はワタシ達、ジュラの大森林の中でひっそりと暮らす魔女の末裔なんです」

 

 

 そう語り出したユメは、俺達が入っていた酒樽を抜け出し、スライムの姿を変化させ例の魔女っ娘姿を取って見せる。するとカイドウ隊長は思いっきり目を白黒させて驚いていた。まあそりゃあ、驚くよね。俺も最初はカイドウ隊長と同じ反応だったので、気持ちは分かる。

 そんなカイドウ隊長の様子をユメはクスッと笑いながら話し続ける。

 

 

「ワタシとお兄ちゃんとリムル以外の一族の者は全員他界してしまったのですけど、それでもワタシ達は仲良く魔法の深淵を覗く研究や、いろんな薬を作ったりして楽しく暮らしていたんですが……」

 

 

 いつの間に創り上げたのか、牢獄の中に似つかわしくない深紅のソファに腰掛けながら、ユメは身振り手振りを加えて言葉を重ねる。カイドウ隊長の方も突っ込むことなく、必死になって話を聞き、調書を作り上げている。俺? 俺は頷くのが仕事です。

 

 

「数十日前、ワタシが実験で作ったスライムの姿になってしまう呪いのポーションをリムルが調合室で割ってしまい、そこにいたワタシ達はその効果を受けることになりました。ワタシとお兄ちゃんは自身の魔法で中和できたんですけど、リムルは魔法使いとしてはまだ未熟なので人の姿に戻れないんです。それにタイミング悪くヴェルドラ様が居なくなった時だったため魔物が活発になっていて……、ワタシ達がスライム化で慌てていた時に家を壊されてしまったんですよ……」

 

 

 悲しんでいる表情に加えて、グスッと泣き真似をしながらユメは言うが、この一瞬でそんな法螺を吹きながら演技をするユメを思わず凄いと思ってしまった。いろんな世界を旅していたと言っていたので恐らく経験値が違うのだろう。

 

 

「ちょっと話が脱線しちゃったけど、ワタシ達はそこそこ強い魔法使いなのであの程度の冒険者の攻撃なら結界でどうにでもなるんですよ」

 

 

 まるっきり嘘なのだがその言葉にはそれが真実だと思い込ませる説得力があった。そのため、カイドウ隊長も完全にとはいかないだろうがほとんど信じ込んでいるようだ。

 

 続いてユメは俺の呪縛を解くため森で放浪していたという設定で、ゴブリン達との出会いからこの国に来た理由をかいつまんで説明した。ここは本当の話なので俺もところどころでフォローを入れる。

 

 更にここで天は俺達に味方してくれた。

 俺達の話が終わり、カイドウ隊長が「調書作りの協力感謝する……」と言った瞬間、バン! という音と共にドアが勢いよく開け放たれ、警備隊の一人が駆け込んで来て、隊長! と言いながら焦った様子で報告を始めた。

 

 話を盗み聞きしてみると、鉱山資源を取りに言った際に、甲殻蜥蜴(アーマーサウルス)が現れて鉱山夫が酷い重症を負ったそうだ。アーマーサウルスに関しては討伐隊が向かったため問題はないとのことだが、現在は回復薬が品薄状態で、このままでは重態となった鉱山夫達は助からないだろう、と。

 

 その鉱山夫達はカイドウ隊長の知り合いのようで、「奴らがくたばるなんてあってたまるか」と片手で頭を抑えながら呟いている。

 

 ユメがチラッと俺の方を見た。

 

 その視線だけで何をしてほしいか理解した俺はスライムボディを生かして鉄格子を潜り抜け、カイドウ隊長の傍に行った。

 

 

「隊長さん」

「あ! お前何勝手に……」

「そんなことよりカイドウ隊長。これ必要なんじゃない?」

 

 

 そう言って差し出したのはユメがくれた瓶に、俺が洞窟内で手に入れたヒポクテ草から作った回復薬を入れた物。飲んでよし、掛けてよしで、部位欠損も治る優れ物である。先程の作り話的に俺が回復薬を出しても疑われないはずだ。

 

 

「俺達が作った薬でその鉱山夫達を助けられるかもしれないぞ」

「効果は保証するよ!」

「…………お前らここから出るなよ」

 

 

 カイドウ隊長は俺達の言葉に一瞬だけ悩んだが、それだけ言い残すと慌てて部屋を飛び出した。

 その様子を見届けて、俺は牢屋の中に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「東京タワー」

「お~上手いじゃん!」

 

 

 カイドウ隊長達が去って数分後、暇を持て余していた俺は『粘糸』をあやとりの要領で使って遊んでいた。ユメはそんな俺の様子にパチパチと手を叩きつつ、目を輝かせながら真剣に見つめている。少し照れくさい。

 

 

「ワタシには『捕食』や殺した相手のスキルを獲得するスキルがないから羨ましいなあ」

「いやいや、そんな能力なくてもお前は十分強いだろ」

「そこは否定しないけど、そういう問題じゃないよ」

「否定しないのかよ……」

 

 

 当然のようにそう答えるので、ユメって思った以上に自信家なのか? なんて思っていたら、ユメの口からとんでもない言葉が出てきた。

 

 

「だってワタシ、生まれてから一度も魔界神様とお兄ちゃん以外に負けたことないし」

「……マジ?」

「マジ」

 

 

 その魔界神様という奴とキョウム以外に全戦全勝してるなら、その自信は納得だわ。もしかするとキョウムも負けたことがないのかも? 今度聞いてみよう。

 そんなことを考えていた俺だったが、でもさ……と、ユメが呟いたのを聞いてもう一度耳を傾ける。

 

 

「リムルのその能力とその輝きなら、いずれワタシを超えると思うよ。もしかしたらお兄ちゃんや魔界神様さえもね」

「俺がユメやキョウムを超えられるとは思えないけどな……ところで輝きってなんだ?」

「あ~……要するに強くなれる素質があるってことだよ。今はワタシ達に敵わなくても数十年、数百年、数千年経ったら匹敵すると思うよ。ワタシ達も負けるつもりはないけどね」

 

 

 ユメはニコニコしながら平然とそんなことを言ったが、数千年ってどれだけ長い目で見ればいいんだ。長命種ならではの発言(本人は若いと自称している)に驚愕しながら、ふと、疑問が浮かぶ。

 

 そういえば、前世の俺は人間だったから寿命なんて百年くらいだと思うけど、スライムの俺はどれだけの年月を過ごせるんだろうな、と。

 

 まあ考えても仕方のないことだな。前世は通り魔に刺されて死ぬくらいなのだから、死ぬときは死ぬのである。だが、せっかく第二の人生……いやスライム生なので、精一杯生きていく所存だ。だからこそ、目標の一つに“キョウムとユメを超える”を追加するとしよう。別に俺は戦闘狂という訳ではないが期待されている以上、打倒キョウム、ユメを目指してコッソリ努力するとしよう。

 

 そんなことを考えつつ、折角の機会なので、俺は前々からユメに聞きたかったことを尋ねた。

 

 

「なあ、ユメって人間が嫌いなのか?」

 

 

 洞窟内で語っていた過去話の時も、ゴブリン村の時も、さっきの冒険者達の事件の時も、ユメは人間に対して好意的な感情を全然示していなかった。むしろ、人間を嫌悪しているように見えた。

 俺に対してはほとんどそういった面は見せないが、元人間としては気になっていたのだ。

 ユメは俺の質問に、あーと若干困ったような表情を浮かべつつ、俺の質問に答える

 

 

「まず初めに言わせてもらうけど、ワタシは人間全てが嫌いなわけじゃないよ」

「うん、それは俺に対する態度や過去話なんかでなんとなく分かる」

「勇者や英雄のような強者もいるし、ワタシ達のマスターも、元は人類に与していた存在だからね」

 

 

 ユメとキョウムがマスターに対して並々ならぬ忠誠心を捧げていて、そのマスターが人間に近しい存在だとも言っていた。だからこそ、分からない。二人のマスターが人間に近いならユメの性格上、逆に人間のことが好きになりそうなもんだけど……

 

 

「リムルの今考えてることは『閲覧者(ミスカスモノ)』を使わなくても分かるよ? マスターが大好きならなんで人間が嫌いなんだって疑問に思うその気持ちはね」

 

 

 俺が考えていたことを言い当て、そこから何かを諦めたような表情でユメは語る。

 

 

「ワタシが人間のことが好きじゃないのは、言っちゃえば習性と記憶によるものだよ」

「習性と記憶?」

「うん。お兄ちゃんが言ってたでしょ? ブレイクワールドには戦闘に関する娯楽しかないって。だから、ワタシ達が相手を見極める際の判断基準は強さと性格なんだよね。でも、人間ってそんなに強力な種族じゃないから、あんまり好印象を持てないんだよ。それに、いろんな世界を旅してきて人間達の嫌な側面や馬鹿馬鹿しい争いや問題をたくさん記録してきたから……ここまで言えばワタシの言いたいことはわかるでしょ?」

「まあ……」

 

 

 理解は出来る。

 要するに世界間による常識の違いと、様々な経験によるものだということは。

 元人間である俺からしたら、その考え方は少し理不尽だと思ってしまうが……

 

 

「安心して。確かにワタシはそこまで人間は好きじゃないけど、ちゃんと相手を見て行動するから」

「その言葉は信じておくよ」

「ありがと。それじゃあ、今晩もワタシの相手をよろしくね!」

「はいはい」

 

 

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 

 

 

「「「ありがとうございました‼」」」

 

 

 そうやってお礼の言葉を述べながら頭を下げるのは四人のドワーフ。昨日ワタシ達を捕らえた警備隊隊長のカイドウさんは知っているけど他の人達は初対面。多分三人とも兄弟かな?

 

 

「あんた達がくれた薬のおかげで助かったぜ」

「今でも信じられんが千切れかけてた腕も治ったから職を失わずに済みそうだぜ」

「……」

 

 

 口々に礼を言うが最後の人は首を縦に振っているだけだった。

 最後の人何か喋ろう? それでも感謝の気持ちは伝わってくるから不思議だね。

 

 

「釈放だ。面目もあって一日は牢屋に入ってもらった。スマン」

「いえいえ、宿代が浮いて助かりましたし、ユメのおかげで快適に過ごせましたから」

 

 

 カイドウ隊長の言葉にリムルはスライムスマイル? を見せながらそう返した。

 実際、さっきまでこの部屋にはワタシの『物質創造』で作った家具等が置いてあったので、昨晩は硬い地面の上で寝るなんてことはなくフカフカのベッドでリムルを抱いて添い寝していた。ゴブタ? 勿論床だけど?

 

 宿で思い出したけどそういえばお兄ちゃんは昨日何してたんだろ? ワタシ達を見捨てて。

 

 

「昨日の詫びだ。俺の知り合いの鍛冶師を紹介するぜ」

「え! いいんですか‼」

 

 

 ワタシが内心でお兄ちゃんに毒づいていると、リムルとカイドウ隊長の話し声が聞こえ、反射的にそう言ってしまった。こういうところがお兄ちゃんに子供っぽいって注意される要因なんだよね。何百年も直そうとは思っているんだけど直らない。気をつけよう。

 

 

「勿論だ」

「ありがとうございます」

「礼を言われるようなことじゃねえよ。だがもしよかったら昨日の回復薬が余っていたらいくつか譲ってくれねえか?」

 

 

 申し訳なさそうにカイドウ隊長は要求を告げてくる。

 ああ~そう言えば昨日、回復薬の在庫がないって言ってたっけ。リムルが作る製作費無料の回復薬を渡して鍛冶師を紹介してくれるなら安い買い物かな。

 

 

「俺達も使うので余っている分だけなら……」

「構わねえ。五個ぐらいあれば十分だぜ」

 

 

 ん? この感じだと……在庫が足りないから欲しいじゃなくてリムルの回復薬そのものを研究しようとしてるのかな?

 

 この世界の一般常識は知らないけど、確かに部位欠損さえも治す回復薬はいろんな世界を旅しているワタシでさえもあまり見たことがない。ワタシやお兄ちゃんは再生能力があるから気にしたことはないけれども、もし買うならばかなり高価だったことを記録している。ここは恩を売るという意味でも……欲を言えばお金も欲しいし……渡した方がいいと思う。

 

 ワタシがそう思ったことを知ってか知らずか、リムルは軽い感じでカイドウ隊長に回復薬を手渡した(手なんてないけどね)。カイドウ隊長はその事に礼を述べながら、金貨二十五枚が入った袋を差し出し、リムルはそれを受け取った。

 

 しかしここで問題発生。

 

 この世界でのお金の価値が分からないワタシ達はこの硬貨が高いか安いか分からないのだ。

 金だからホブゴブリン達が持っていた銀貨や銅貨よりは高そうではあるが、これがぼったくりだったら許せない。なので、直球でカイドウ隊長に聞く。

 

 

「カイドウ隊長、ワタシ達、森で自給自足の生活をしていたからあまりお金について詳しくないんですよ。よかったら教えてくれませんか?」

「構わねえぜ」

 

 

 カイドウ隊長は何も疑わずそう言ってくれた。ここでも昨日の作り話が生きてきた! はあ~よかった。

 

 せっかく綺麗な身になったのに詰め所で話を聞くのもあれだから、外に出て適当に食事ができる場所で話を聞こうと提案し、二人とも――リムルの回復薬で助かった三兄弟は再三礼をいいながら仕事に戻っていった――乗ってくれた。ちなみにカイドウ隊長のおごり。

 

 ドワルゴンには酒樽入国だったから観察することはできなかったんだけど、多くのドワーフや魔物、人間なんかもいて凄く活気に満ち溢れていた。この世界で初めての国なので、周りのお店に並ぶ商品等にも意識を向けながら、歩を進めていると、いつの間にか目的の場所に到着した。

 

 居酒屋? 食堂? どちらでも構わないけど、そこで食事をしながらお金について説明を受ける。

 

 ざっくり言うなら銅貨百枚で銀貨一枚、銀貨百枚で金貨一枚となり相当高い買い物でなければ一回の支払いは銀貨で事足りるらしい。ということはホブゴブリン達が持っていた金額はやっぱりたいしたことなかったみたいだね。

お金の説明が終わる頃に料理が丁度運ばれてきて、ワタシとカイドウ隊長とゴブタはぺろりと食べ終えてお店を出た。ごちそうさまでした。

 

 余談だけど、リムルは味覚がないためワタシ達の食事を羨ましそうに見ていた。ドンマイ! きっといつか味覚が手に入るよ! 多分ね‼

 

 

 いろいろと脱線しちゃったけど そろそろ本来の目的だった技術提供者に会うとしようか!

 

 

 

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