改造スライムと転生スライム   作:黒井政人

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 二ヶ月も空けてしまって申し訳ない。
 投稿頻度は改善できそうにありません。ごめんなさい。



観光とスカウト

 

 時は少し遡る。

 ユメ達が騒ぎを起こしてドワーフの警備隊に連れていかれた頃、キョウムは赤の他人のフリをすることでリムル達と同じ末路を辿ることを回避した。キョウム自身、リムル達から距離を取った上で人型で列に並び、真っ黒の丈の長いレインコートを着込むという、完全に不審者かつリムル達と無関係であることを強調していたために疑われることはなかったのだ。

 

 せっかくの旅行なのに何してんだあのユメ(バカ)、というのが彼の偽りない本音だが、既に事が起きた後では擁護することもできない。それにユメを庇って自分まで共犯と思われてしまったらゆっくりと観光することさえ出来なくなる。故にリムル達が連れていかれるのを黙って見送ることになったわけだ。

 さあこれでドワーフ王国に入れると思ったキョウムだがそうは問屋が卸さない。

 

 

「失礼、少々お聞きしたいことがあるのですが」

 

 

 ユメが巻き起こした事態が着々と沈静化していく中でドワーフの警備隊が事情聴取を求めてきたのだ。

 キョウムはこれに内心でのみ舌打ちした。

 

 

(めんどくせーな。まあでもオレに話を聞こうとするのは当然か)

 

 

 事実、ユメが放った『威圧』によってキョウムの周りにいる人間や魔物、全員もれなく精神異常に陥っていた。死人が居ないのは唯一の救いだがそれにしても被害がでかすぎたのだ。

 時間が経っているとはいえ、まともに会話できそうなのが何の異常も見られずに立っていたキョウムだけであり、もはやこれは必然である。ちなみにキョウムやユメがいなくてもリムルがほぼ同じことを起こすのだが、それを二人は知る由はない。

 そのため、しゃーないかと思いながらやって来たドワーフに応じることにした。

 

 

「構わねえぜ、困った時は助け合いって言うしな」

 

 

 そんなことを嘯きながら、聞かれたことに対して虚言を混ぜながら素直に答えていく。

 冒険者がスライム達(ついでにゴブリン一匹)に喧嘩を売っていて、攻撃を仕掛けたこと。スライムがそれをノーガードで受け流した後に、魔法で周りの人達に効果を及ぼした、と。

 ドワーフ警備隊はそれを聞きながら木片にメモを取っていき、キョウムは内心でホッとした。

 ちなみに何故、真実の中に若干の噓を混ぜるのかというと。

 

 

(ユメの事だ。どうせ口八丁に嘘を重ねるんだろうし、それをサポートする方がいいよな)

 

 

 伊達にユメと永い年月を共にしているだけあって、ユメの行動について大方の予想がついていたからである。ユメは子供みたいな口調と性格だが、戦闘時や作戦立案などでは普段の姿からじゃ想像できないくらい、頭の回転が早い。日常生活ではバカそのものだが、それを活かせばかなりの世渡り上手となるのだ。残念なのは、普段からその賢さを活用していない点だろう。

 それを知っていたからこそ、キョウムはそう考えていた。そしてその予測は正解であり、ユメが自分は魔女だと語ったことで、キョウムは完璧な立ち回りに成功していたのだ。

 

 

「ご協力感謝します」

 

 

 ドワーフの警備隊は事情聴取を終えるなり、すぐにその場を後にした。

 キョウムはそれを見ながら大きな門のすぐそばにある入口前まで進んでいく。ユメが甚大な被害を出してくれたおかげで列の順番を気にする必要もなく、簡単に最前列に来れたのだ。

 ついでにその際、ユメの影響でこの場から逃亡した者が落としたお金を、誰にもバレないように細工しながら、ちゃっかり魔法で回収していた。ホブゴブリン達から貰った金額では心許なかったからであり、特に罪悪感等も抱いていない。

 

 

 門番であるドワーフからこの国に来た目的を問われ、キョウムは適当に観光しにきたという答えを返し、入国に際しての注意事項の説明を受ける。といってもそれは既にゴブタから聞いていた内容である、“国内での争い事は禁止”というものであり、キョウムは適当に相槌を打ちながら聞き流した。

 

 あらかたの説明が終わったら問題なしという判定が出され、通ってよしと言われキョウムは扉をくぐった。そしてある程度進み、人の目が完全になくなったところでコートを脱ぎ捨て、武装国家ドワルゴンを吟味するような目付きで観察する。

 

 天然の洞窟を改造した美しい都。洞窟を利用しているため高い建物は存在していないようだが、それでも充分に発展しており、技術に関してはキョウムから見ても素晴らしいと感じるほど。道具屋や武器屋に売られている魔道具や武具も良質なものばかりであり、それ故にキョウムの目を飽きさせない。

 

 

(これはすげえな。いろんな世界を渡り歩いてきたが洞窟を改造させた国ってだけでもすげえのに、その上、武具も他世界に見劣りしない。いや、若干上回ってさえいるか?)

 

 

 様々な対象に『解析鑑定』を施しつつ、そんな評価を下したキョウム。

 事実、彼が行ったことのある世界で売られているものはなんの代わり映えもない銅や鉄の武具に粗悪な回復薬。鍛冶師の名工が打つような勇者の武器ならばともかく、一般に出回っている物は一流の魔物にとってゴミ同然のようなものなのである。故に戦闘においても全く役に立たないものばかりなので、キョウムからすれば見る価値もない。

 しかしこちらで売られている武器はそんな物とはひと味もふた味も違う。相変わらず下位の金属で作られた物には見向きもしないが、芯が紫色に光る物があったのだ。その材質が、ヴェルドラのいた洞窟にあった魔鉱石だということは既に『解析鑑定』で看破しているし、リムルが大量に保有しているが、それでも、いいものであることに違いない。

 店内に飾られている、魔鉱石を用いて作られた剣を、キョウムはじいっと観察する。

 

 

(恐らくだが、この世界の魔鉱石を使って打った剣は使用者に合わせて成長するんだな。武器は使用者を選ぶと昔聞いたことがあるし、そうでない武器はナマクラだと思っているが、それを大量に生産出来るだけでもこの国の技術の高さが窺えるな)

 

 

 この国の技術力に感心しながら、あてもなくぶらぶらしているキョウム。

 傍から見れば軍人がこの国を観光しているように見えるのだが、周りから奇怪な視線を向けられることはない。それどころかキョウムがいることにさえ気づかない。

 

 何故誰もキョウムに気づいていないのか?

 その理由はキョウムが周りの人の無意識に『認識阻害』というスキルを施しているからである。そのため、キョウムが居るという情報を脳がインプットすることはなく、誰一人として気付く事が出来ないのだ。

 

 キョウムはその後も居酒屋やギルドなんかにも寄ってみて、一日の最後にこの国の最高級の宿屋へと足を運んだ。流石に何かを購入する際や、宿屋にチェックインする時は『認識阻害』を解除している。

 一人部屋に入室して鍵をかけると、キョウムはすぐさまベッドに腰かける。残念ながら、ゴブリン達からもらった銀貨や銅貨や入国前にパクったお金は、魔道具代や宿屋代でほとんど使い果たしてしまったが後悔はない。それどころかその表情は満足気であった。

 

 

(これならばブレイクワールドの上級魔法くらいまでならリムルに教えてもよさそうだな)

 

 

 そう、キョウムは今回の旅で二つの目標を立てていたのだ。

 

 一つ目はこの世界の文化レベルを確認すること。

 五百年周期で行われる天魔大戦。その際に現れる天使族(エンジェル)は理由は不明だが発展した都市を狙う。それによって大っぴらに文化レベルは上がらないということはヴェルドラから聞いていたが、実際に見てみないとどれくらいの文明なのか分からなかったからだ。もっとも、キョウムは人間や亜人の文明にはあまり興味がないので、こちらは完全におまけである。

 

 本命である二つ目は戦闘のレベルを知ることであった。

 キョウムの『万能感知』はこの国の全てを観測できた。この国に滞在している人間や魔物。兵士同士で模擬戦闘を繰り返しているドワーフ軍。更にこの国の国王及びその腹心達。

『万能感知』で捉えたそれらの情報を精査してみれば、この世界での一般的な強さは簡単に測定できた。無論、隠し持っている力はあるかもしれないが、それは実際に目にした時にユメの権能で探ればいい。

 そうすることで、どれだけの力や技術をリムルに教えてもいいかを推し量るのが今回の目的だったのだ。そしてそれは半ば達成されており、ベッドに体を預けながら、思案に耽る。

 

 

(後は、この国の図書館や王宮に保管されているような魔導書も見られたら完璧だな。明日か明後日にちょっとだけ覗きに行ってみるか)

 

 

 そんな犯罪行為を平然と考えながら、キョウムはリムルに教える魔法を選別するのだった。

 

 

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 

 

 外の時間帯で丁度朝を迎えた頃、この国で買った魔導書に向けていた意識を外へと向ける。

 ブレイクワールドの魔物は他世界の物質生命体と違って寝る必要がない。睡眠を取らないことで起こる肉体性能の低下も発生しないからこそ、長い夜の大半の時間も有効活用できる。そのため夜は、魔導書を読みふけるのに最適だ。

 一応、裏技を使えば眠ることは出来るが、味気ないし、何よりオレは人間じゃないので三大欲求というものが存在しない。進んでやろうとも思えない。最後に睡眠をとったのはいつだったかさえ、覚えていないな。

 

 そんなことを考えながらベッドから飛び起きて、窓の方へと歩く。ドワルゴンは洞窟内にあるので日光を浴びることはできず、それは少し斬新に思えた。貴重な経験なので、これもしっかり記録する。

 宿屋で出された朝食を適当に済ませ、ユメ達の方の様子を確認する。

 ユメ達の方は……問題なし。無事に釈放されたようだ。もしまだ解放されていなかったら、オレが無理矢理にでも連れ出そうと思ったがその必要はなかったな。

 

 宿屋のチェックアウトを済ませると、昨日と同じように町を歩き回ながら、図書館のような施設を探す。昨日で大体の商品や武器なんかは見たから、今日は蔵書目当て。本命である魔導書は当然として、この世界の歴史や魔物の種類なんかも知っておきたい。リムル達に会うのはその後でいいだろう。

 

 

 そう思っていたのだが……その考えはぶらぶらしていたオレに、並みの魔物を一撃で葬り去るような蹴りを叩き付けられたことで、木端微塵に粉砕された。当然、そんなものではオレにダメージが入ることはないが、その蹴りを繰り出してきた奴が問題だった。

 はあ~とため息を吐きながら後ろに振り返る。そこにいたのは。

 

 

「おはよう、お兄ちゃん。昨日は随分楽しんできたみたいだね?」

 

 

 満面の笑みを浮かべながら、オレに膝蹴りをくらわしたユメだった。

 こんなところでばったり会うなんて運が悪い。いや、周りの警戒を怠ったオレの落ち度だな。仕方がないので、周りの者達にかけていた『認識阻害』の権能も解除する。

 だがしかし、喧嘩している最中の妹相手に、自分の失敗を認めるような事はしたくないため、平然とした様子を心掛けて口を開く。

 

 

「まあそうだな。お前がバカな事をしてくれたお陰でオレは身軽になったからな。それにお前たちに会おうと思っていたらそっちから来てくれて、何から何まで大助かりだぜ」

 

 

 オレが淡々とそう告げると、ユメがむう……といった感じで頬を膨らませる。

 なにせ、今のオレの発言は言外に「お前がやらかしたからだろ」と言っているようなものだからな。実際、あそこまで被害者が多かったのは紛れもなくユメのせいだしな。

 オレに言い負かされ不満そうなユメを放置して、もう一人のスライムとホブゴブリンに声を掛ける。

 

 

「ようリムル。それにゴブタ。ユメのせいで災難だったな。同情するぜ」

「いやいや、確かにユメの行動には問題があったけど、結果的にはこれでよかったと思う」

「全然大丈夫っすよ!」

 

 

 リムルの言葉にユメがフフンと胸を張っているような気配がした。

 なんでドヤッってんだと思わずツッコミたくなったが、リムルからの報告を聞き、考え直した。どうやらいろいろあって、この国の警備隊長であるカイドウさんと仲良くなり金貨を貰った上に鍛冶師まで紹介してくれるらしい。

 

 なるほど。道理で昨日リムル達を捕らえたドワーフが一緒に行動している訳だ。オレ達の世界でも幸運を強化するネックレスは作れるが、その運の良さは見習いたいものだな。

 それはひとまず置いといて、警備隊長にも挨拶する。

 

 

「初めまして。妹が迷惑をかけてしまって申し訳ない」

「なあに、確かに大変だったが死者は一人もいない。それに既に全員回復しているからな。問題ないさ」

 

 

 オレの謝罪を笑って受け入れたカイドウ隊長。中々気持ちのいい性格だ。まあ、そうでなきゃわざわざこんな魔物達の頼みを聞いたりはしないか。

 それからオレは、少しばかり雑談してみんなに同行することになった。ユメが再度やらかした時用のストッパーをしなきゃだし、オレ達のお目当てである鍛冶師には流石に会っておきたいからな。本を漁るのはいつでも出来ることだ。

 

 

「ここだぜ。リムルの旦那」

 

 

 カイドウに案内されたのは昨日オレが立ち寄った鍛冶屋の一つ。武器屋に並んでいる魔鉱を素材にした剣を作っているのも、今からオレ達が会う人なんだと。それはいい。質も期待できそうだ。

 

 カイドウに続いてオレ達も店へと入ると四人くらいのドワーフが居て、その内に一人は戦いに臨むような表情をしながら剣を打っていた。まさにザ・職人。熟練の腕を持っていそうな雰囲気だ。

 

 他の三人に関してはリムルも面識があったらしい。というより昨日、リムルのポーションで助かったのがこの人達だったみたいだな。現に今もそのことについて、先程剣を打っていたカイジンというドワーフに説明している。

 

 カイジンはそのことについて礼を言ったが、今は手が離せないみたいで日を改めてくれと言っている。事情を聞いてみると、この国の大臣に無理難題の仕事を押し付けられて、このままでは締切に間に合わないとのこと。

 それなら最初から引き受けなければよくね? と思ったが大臣からの売り言葉に買い言葉でやらざるを得なくなったらしい。一応オレ達にもそういう経験はあるので、気持ちは分らなくもない。もっとも、オレ達の場合はどんな無理難題を押し付けられようと、軽々対処して、逆に依頼主を驚かせるが。

 

 

 それはともかくとして、この件はオレとユメは協力できそうになかった。

 カイジンに依頼されたのは銅の剣二十本と魔鋼の長剣(ロングソード)二十本。そして、銅の方は既に出来上がっているが魔鋼の方は在庫がないため一本しか作りだせていない状況。

 オレ達が持っているナマクラならいくらでも譲るのだが、この世界特有の魔鋼を使った武器は流石に持っていない。それにオレ達なら一応、マ素を固めて武器を作るぐらいは可能なのだが、それでは洒落にならない性能の武器が出来上がってしまうので、安易に作ることは出来ない。

 

 どうするべきかと悩んでいたが、リムルがカイジンに交渉を持ち掛けていたので、リムルに任せることにした。リムル曰く、自分がなんとかするから自分達の村に来てくれるような鍛冶師を紹介して欲しい、と。

 カイジンは少し訝しんでいるような様子だったが、このままでは締切に間に合わないのは目に見えていたらしく、協力は惜しまないと約束した。

 

 

 何をする気だ? と思っていたが、リムルの次の行動に久方ぶりに驚愕してしまった。魔鋼の長剣(ロングソード)を飲み込んだと思ったら、次の瞬間リムルの中から同じ物が二十本も出てきたのだから。

 

 

「魔鋼の長剣(ロングソード)二十本。完成だ」

 

 

 そう言ったリムルにドワーフ達は全員目を丸くしていた。

 やっぱりこいつも、充分規格外だな。

 

 





 チートスライム兄妹に出来ない事を平然と行うリムル。こちらも充分規格外ですね。
 
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